『ポリスアカデミー5/マイアミ特別勤務』:1988、アメリカ

深夜、ハリス警察署長はラサール校長の足を引っ張る材料を見つけるため、プロクター警部補を連れてハースト警察長官の部屋に侵入した。ハリスはラサールの資料を見つけ、彼が去年の誕生日で本来は定年に達していることを知った。ハリスはラサールを退職に追い込むため、その資料を人事部に送った。警察学校では1988年度の卒業式が催され、ラサールは卒業生のハウスたちに卒業証書を渡した。ハーストはラサールが長年の功績を認められ、マイアミで開かれる全米警察署長大会で表彰を受けることを発表した。ラサールは喜ぶが、「定年を迎えたので今季限りで退職する」という発表にショックを受けた。
ラサールは落ち込むが、ハイタワー&タックルベリー&ジョーンズ&キャラハン&フックス&ハウスに励まされて元気を取り戻した。彼は「胸を張って表彰式に出席する。皆も出席してくれ」と言い、マイアミ警察に勤める甥のニックもいると述べた。ハリスは次期校長として、ハーストに警察学校の改革案を提出した。ハーストが「今の君に校長の大任は務まらない。ラサールは生徒に尊敬されてた。君は?」と言うと、ハリスは素直に受け入れた。彼はマイアミビーチへ行ってラサールの表彰を祝福し、心の広さを見せようと考えた。
ハリスはプロクターに、マイアミ行きのファースト・クラスの航空券を取るよう命じた。プロクターは間違ってラサールの部屋に電話を掛けてしまい、ジョーンズが受話器を取った。プロクターの勘違いに気付いたジョーンズは、空港の職員に成り済ました。ジョーンズから話を聞いたハイタワーは、オンボロのレンタル貨物機を手配した。深夜、古代エジプトのダイヤモンド展が開催されている市立博物館に窃盗団のトニー&マウス&シュガーが忍び込み、大量の宝石を盗み出した。
ハイタワーやラサールたちが空港に行くと、窃盗団も同じ飛行機に搭乗した。ハリスとプロクターは、ヤギやニワトリと同じ貨物機に搭乗した。マイアミ空港に降り立った窃盗団は、ラサールのせいで宝石の入った鞄を落としてしまった。ラサールは鞄を取り違えて立ち去り、窃盗団はラサールの鞄と気付かずに拾い上げた。ラサールは市長や大会の世話役を務めるマードック本部長たちの歓迎を受け、ニックとも久々に再会した。市長夫人のアイリーンは、歓迎委員会の会長を務めていた。
窃盗団はマリーナへ行き、ボスのデンプシーに鞄を渡した。トニーは「宝石はビデオカメラに隠してある」と説明するが、鞄にはラサールの金魚鉢が入っていた。中身が入れ替わっていることを知ったデンプシーは、24時間以内に取り戻せと命じた。窃盗団はラサールが宝石を持っていると確信し、捜索を開始した。ラサールは会場を視察し、ハイタワーたちは大会が始まるまで遊ぶことにした。窃盗団はマイアミのホテルを全て捜すが、ラサールは発見できなかった。
翌朝、一味は手分けしてビーチを捜そうとするが、3人組がラサールを発見した。すぐに後を追った3人組だが、そこは会場で大勢の警官が集まっていた。トニーたちは「部屋を間違えた」と誤魔化し、慌ててホテルから逃げ出した。ホテルの部屋に戻ったラサールは、連れて来た金魚を日光浴させようとする。鞄を開けると金魚鉢は無かったが、箱に入ったビデオカメラを見つけた彼は「誰かの心遣いだ」と誤解した。彼は喜んでカメラを取り出し、向かいの部屋にいるカップルを撮り始めた。シュガーはラサールの部屋に忍び込み、ビデオカメラが入っていると思い込んだまま鞄を入れ替えた。
鞄を受け取ったトニーは中にカメラが無いと知り、奪還しようとする。ことごとく失敗に終わったため、窃盗団は大会が開かれる会場へ乗り込んだ。トニーはラサールに近付き、「カメラを返せ」と奪い取ろうとする。トニーとラサールは揉み合いになり、カメラから宝石が飛び散った。トニーはラサールに拳銃を突き付けて人質に取り、手下たちに宝石の回収を命じた。ラサールは大会の体験訓練だと思い込み、窃盗団に協力した。彼は自分の部屋に窃盗団を案内し、屋上からヘリコプターで脱出する方法を提案した。ハイタワーたちは救出作戦に参加させてもらい、ラサールの部屋へ向かった…。

監督はアラン・マイヤーソン、キャラクター創作はニール・イズラエル&パット・プロフト、脚本はスティーブン・J・カーウィック、製作はポール・マスランスキー、共同製作はドナルド・ウエスト、撮影はジェームズ・パーゴラ、美術はトレヴァー・ウィリアムズ、衣装はロバート・ムスコ、音楽はロバート・フォーク。
出演はババ・スミス、デヴィッド・グラフ、ジョージ・ゲインズ、G・W・ベイリー、マイケル・ウィンスロー、マット・マッコイ、レスリー・イースターブルック、マリオン・ラムジー、ジャネット・ジョーンズ、ランス・キンジー、ルネ・オーベルジョノワ、ジョージ・R・ロバートソン、タブ・タッカー、アーチー・ハーン、ジェームズ・ハンプトン、ジェリー・ラザルス、ダン・バロウズ、ダナ・マーク、リチャード・ジェイセン、ルース・ファーレイ、キャスリン・グラフ、ヴィア・ヴァン・ネス、A・L・ミート、ダン・フィッツジェラルド、アーサー・エドワーズ、ジェフ・ギレン、スーザン・ハットフィールド他。


シリーズ第5作。監督は『プライベイトレッスン』のアラン・マイヤーソン。脚本はTVドラマ『ファミリー・タイズ』のスティーブン・J・カーウィックで、これが映画デビュー作。
ハイタワー役のババ・スミス、タックルベリー役のデヴィッド・グラフ、ラサール役のジョージ・ゲインズ、ハリス役のG・W・ベイリー、ジョーンズ役のマイケル・ウィンスロー、キャラハン役のレスリー・イースターブルック、フックス役のマリオン・ラムジー、プロクター役のランス・キンジー、ハースト役のジョージ・R・ロバートソンは、シリーズのレギュラー。
ハウス役のタブ・タッカーは、前作からの続投。
ニックをマット・マッコイ、トニーをルネ・オーベルジョノワ、マウスをアーチー・ハーン、シュガーをジェリー・ラザルスが演じている。

本作品の最大のトピックスは、前作まで主役のマホーニーを演じていたスティーヴ・グッテンバーグが降板したことだ。
これはシリーズにとって、ものすごく大きなマイナスだ。
しかも、消えたメンツはスティーヴ・グッテンバーグだけではない。
他にも2作目からレギュラーだったボブ・ゴールドスウェイト(ゼッド役)、ティム・カザリンスキー(スウィートチャック役)、アンドリュー・パリス(バド役)、アーサー・ベタニデス(タックルベリーの義父役)が、今回は登場しない。

さらに、1&3&4作目に出演していたスコット・トムソン(コープランド役)、3&4作目に出演していたブライアン・トチ(ナガタ役)も登場しない。
2&4作目に出演していたコリーン・キャンプ(タックルベリーの妻のカークランド役)とジャッキー・ジョセフ(タックルベリーの義母役)も登場しない。
これだけお馴染みのメンバーが減ってしまうと、それに伴ってシリーズのパワーも減退する。
ぶっちゃけ、このシリーズって「お馴染みのメンバーが顔を揃えている」ってのが、ほぼ全てと言ってもいい映画だからね。

ラサールは長く校長を続けているし、その仕事が好きなので、退職を通告されて元気か無くなるのは理解できる。
しかし、年齢的に定年を迎えているわけだから、退職するのは当たり前なのよね。
なので、それに対してハイタワーたちが「酷いことだ」「許せない」と憤りを見せるのは、ちょっと反応として違和感を覚えるぞ。
むしろ、「今までお疲れ様でした」ってことで、労をねぎらうべきじゃないかと。
あと、ラサールを励ます教え子たちの中に、当たり前のようにハウスが並んでいるのは「まだ早い」と言いたくなるぞ。

そもそも、ラサールが「卒業生の中で最も目立つ存在」と卒業式で言っているのも「そうかな」と言いたくなるぞ。
前作におけるハウスは、アーニー&カイルと一括りにされる程度の扱いだったし。市民パトロール隊員の中では、最も目立たない存在と言ってもいいぐらいだ。
っていうか、そもそも市民パトロール隊員の面々って、そんなに存在感を発揮できていなかったからね。
最も目立っていたのはビリー・バードが演じていたフェルドマン夫人だけど、完全に「いなかったこと」にされているし。

「天然ボケのラサールが気付かずにドジを繰り返し、周囲の人間が迷惑を被ったり振り回されたりする」ってのが、ギャグの主軸になっている。
ハイタワーたちは慣れているので、落ち着いて対応する。しかし窃盗団は初めて接するので、酷い目に遭ったりイライラしたりする。
他のネタとしては、ハリスとプロクターがトラブルに見舞われたり、周囲から仕返しで嫌がらせを受けたりする。ハイタワーは怪力を披露し、ジョーンズは得意の声帯模写を披露する。タックルベリーはすぐに銃を撃ちたがり、キャラハンはセクシーなフェロモンを撒き散らし、フックスは嫌な男を懲らしめる。
ザックリ言うと、いつものパターンの繰り返しだね。

ハイタワーたちは会場を見学した後、「大会が始まる午後まで楽しもう」ってことで遊びに出掛ける。ところが彼らは、午後どころか日が暮れても遊び続けている。
そこからシーンが切り替わると、翌朝になっている。いやいや、どういうことだよ。
「大会は午後から始まっているけど、表彰式はまだだから」ってことなのか。だとしても、「午後まで楽しもう」という言葉と、夜遅くまで遊び続ける様子が続く構成は、整合性が取れてないだろ。
あと大会が始まっているなら、せめてそれを示すシーンは挟むべきだし。

トニーたちは盗んだ宝石をビデオカメラに隠し、そのビデオカメラを箱に入れてラッピングし、鞄に入れている。
一応は「空港の検査を通過するため、ビデオカメラに隠してある」という言い訳があるが、それよりも「ラサールがビデオカメラに興味を示して使い始める」というトコからの下手な逆算だろう。
別にビデオカメラである必要は無いからね。
っていうか、幾らラサールが天然ボケであっても、「大事に飼っている金魚がいない」という問題を完全に忘却しちゃうのは、いかがなものかと思うぞ。

粗筋では大幅に省略しているが、窃盗団がラサールの部屋に忍び込んで鞄を入れ替えた後、会場でビデオカメラを奪い取ろうとするまでに、色々な出来事が描かれている。
「窃盗団がビデオカメラを奪い返そうとするが、ことごとく失敗する」という手順の他に、大会が開催されている会場の様子が描かれている。
そっちを描かないと、ほぼ「ラサールと窃盗団の絡み」ばかりになってしまい、ハイタワーたちの出番が無くなってしまうからだ。

で、そんな会場ではどんな出来事が起きているかというと、例えば銃を持ったタックルベリーが我を忘れて撃ちまくるとか、ジョーンズが空手を披露するとか、フックスが急に大声で罵るとか、そんな感じだ。
ニックが婦警のケイトにアタックする出来事も申し訳程度に描いているけど、それ以外は「お馴染みの光景」である。
吉本新喜劇と同じような、お約束の連発だ。
それを「またかよ」と思うか、「待ってました」と思うかは、受け取る側の意識によるだろう。
っていうか、まあマンネリなんだけどね。

クライマックスに「全員で何かしらのミッションを遂行するアクションシーン」を用意するのは、このシリーズのパターンになっている。
今回はラサール救出ミッションであり、いつものようにハリスは調子に乗って失敗する。ラサールはギリギリまで訓練だと思っているが、最後の最後でニックに「本物だ」と言われる。
ここでラサールは全くアタフタせず、すぐにトニーを殴って宝石を取り戻す。一番の仕事を、ラサールが持って行くわけだ。
マホーニーの穴を埋めるにはニックでは力不足だし、ハイタワーはキャラ的に主役を担当するには厳しい。
なので、ほぼラサールが主役みたいな扱いになるわけだね。

(観賞日:2024年10月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会