『ハートブルー』:1991、アメリカ

新米のFBI特別捜査官ジョニー・ユタは、ロサンゼルスに配属されることになった。彼は勤続22年のベテラン捜査官アンジェロ・パパスとコンビを組む。ジョニーとアンジェロは、銀行強盗グループの捜査を担当することになる。
その4人組の強盗グループは、3年で27件の犯行を重ねている。彼らは歴代大統領の仮面を被り、わずか90秒で仕事を片付ける。リスクの多い金庫を狙わず、カウンターの金だけを奪って立ち去る。捜査は難航していた。
犯行の様子が録画されたビデオに映った犯人の日焼け跡や、犯行が夏の時期に集中していることから、アンジェロは犯人一味がサーファーではないかと考えていた。現場に残された泥からは、サーフボードの手入れに使うオイルが検出された。
アンジェロの指示を受け、ジョニーは素性を隠してサーフィンを始めることにした。溺れそうになった彼は、タイラーという女性に助けられた。彼女が両親を亡くしているという情報を得たジョニーは、自分が両親を亡くしていると嘘をついて接近する。
ジョニーはタイラーにサーフィンを教えてもらうようになった。やがて、ジョニーはタイラーの元恋人ボーディや彼の仲間達と出会う。ジョニーが大学時代に名クォーターバックだったことから、ボーディ達はすぐに彼を受け入れた。
ジョニーがボーディ達と親しくなっている間にも、強盗グループは犯行を重ねていた。やがてジョニーは、ボーディ達が強盗グループではないかと疑うようになる。しかし、ボーディはタイラーを監禁し、ジョニーに強盗の手伝いを強要してくる…。

監督はキャスリン・ビグロー、原案はリック・キング&W・ピーター・イリフ、脚本はW・ピーター・イリフ、製作はピーター・エイブラムズ&ロバート・L・レヴィ、共同製作はリック・キング&マイケル・ローチ、製作総指揮はジェームズ・キャメロン、撮影はドナルド・ピーターマン&ビリー・クレヴェンジャー、編集はハワード・E・スミス、美術はピーター・ジェイミソン、衣装はコルビー・P・バート&ルイス・インファンテ、音楽はマーク・アイシャム。
出演はパトリック・スウェイジ、キアヌ・リーヴス、ゲイリー・ビジー、ロリ・ペティー、ジョン・マッギンリー、ジェームズ・レグロス、ジョン・フィルビン、ボジェシー・クリストファー、ジュリアン・レイス、ダニエル・ビーア、クリス・ペダーセン、ヴィンセント・クリン、アンソニー・キーディス、デイヴ・オルセン、リー・タージェセン、シドニー・ウォルシュ他。


様々なアクションに恋愛、その他諸々を詰め込んだ作品。ジョニーをキアヌ・リーヴス、ボーディをパトリック・スウェイジ、タイラーをロリ・ペティが演じている。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアンソニー・キーディスがちょっとした役で顔を見せており、他にもトム・サイズモア、そしてエリザベス・バークレイも出演している。

サーフィンを始めるジョニーの相棒アンジェロ役が、『ビッグ・ウェンズデー』のゲイリー・ビジーというのは、なかなかニヤリとさせられるキャスティングだ。
どうせなら、「俺も昔はサーフィンをやってた」的なセリフを言わせれば良かったのに。

一応は刑事映画のはずなのだが、それよりもサーフィンやスカイ・ダイビングといったスポーツ・アクションの醍醐味の方を重視しているようだ。
実際、捜査は「全て勘」という状態だし、そこで面白さを出そうとはしていない。

ボーディと仲間が登場した時点で、彼らが犯人一味だということは誰にでも分かるだろう。だから、犯人探しの面白さは無い。それどころか、ジョニーが別の連中を疑って捜査する流れなどが、単なるマヌケに見えてしまう。

序盤、ジョニーはヘタレっぷりを披露する。
サーフィンで溺れるのは初心者だから仕方が無いとして、チンピラ風サーファー達に絡まれて一方的に殴られたりもする。
ボーディの助太刀で、ようやく反撃開始。
そこに強さは感じられない。

物語が進む中でジョニーが次第に強さを見せるようになるのかと思いきや、彼は延々とヘタレのままである。自分の背後で強盗グループが銀行に入って行ったのに、全く気付かずに、呑気にメシなど買っている。
それは不注意だから仕方が無いとしても、強盗グループを捕まえたり射撃したりするチャンスが何度もありながら、全て見逃してしまう。
ついには、自分が邪魔をしたせいでアンジェロを殺されるという始末。
最低である。

前半はカッコ良さを見せていたボーディだが、後半に入るとタイラーを仲間に監禁させるなど、どんどんクソ野郎っぷりを出してくる。ジョニーとボーディの友情と、そこから生まれるジレンマで引っ張るのかと思ったら、全く違う状態になっていく。
しかし、ボーディがクソ野郎に成り下がったことで、せっかく前半に作り出していた雰囲気は全てブチ壊しになる。やはり、ボーディは「ワイルドだけど根はイイ奴」という設定のままで引っ張るべきだったと思うなあ。

前半で、ボーディはサーファーとしてカッコ良さを感じさせるセリフも吐いている。
しかし、後半に化けの皮がはがれるので、その言葉までが嘘に感じられる。
「悪党だけどカッコイイ」という扱いにしてあげれば良かったのになあ。

で、ジョニーはクソ野郎に成り下がったボーディを捕まえたにも関わらず、「サーフィンさせてくれ」と言われて手錠を外してしまう。
もはや情けを掛けるような友情も無いだろうに。
やっぱり、ジョニーは最後までヘタレだったのである。

 

*ポンコツ映画愛護協会