『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』:2014、アメリカ

かつて農薬散布用飛行機だったダスティー・クロップホッパーは、世界一のレーサーとして活躍を続けていた。そんなダスティーはコーン・フェスティバルに参加するため、地元のプロップウォッシュ・ジャンクションに戻って来た。スキッパーと一緒に空を飛んだダスティーは、途中でエンジンが一時停止するトラブルに見舞われたので空港に戻った。ドッティーが機体を調べ、ギアボックスが壊れていることを突き止めた。ダスティーが交換を求めると、ドッティーは製造中止になっていることを教えた。
ドッティーは「トルクを8割以下に抑えないとエンジンが停まって墜落する」と警告し、警告ランプを付けるとダスティーに言う。「もうレースは出来ない」と告げられ、ダスティーはショックを受けた。チャグとスパーキーは「ギアボックスを見つけ出す」と協力を申し出るが、待ち切れないダスティーは空へ飛び立つ。トルクメーターをレッドゾーンまで上げると警告ランプが点灯したため、ダスティーは速度を落とした。しかし操縦を誤り、着陸に失敗して空港で火事を起こしてしまった。
メイデイが出動して消火活動に当たるが、装備が古すぎてホースから水が漏れてしまった。メイデイはダスティーたちに協力してもらい、給水塔を倒して鎮火させる。翌日、TMST(運輸安全管理局)のライカーが調査にやって来た。彼は新しい装備を付けて消防士を1人増員するまで、空港を閉鎖すると通告した。新しい装備はドッティーが用意することを引き受けるが、増員の当ては無かった。空から水を撒く飛行機の存在を知ったダスティーは、自分が資格を取得しようと考えた。
メイデイはダスティーに、ピストン・ピーク国立公園へ赴いてレスキュー隊リーダーのブレード・レンジャーに会うよう促した。ブレードはメイデイの旧友で、ダスティーの訓練を依頼しておいたのだ。ダスティーがレスキュー隊の基地に到着すると、ブレードは見回りに出ていて不在だった。レスキュー隊員のディッパーやウィンドリフターたちは山火事の通報を受けて出動し、ダスティーは見学に赴いた。彼が基地に戻ると、ブレードは修理工のマルーに指示して車輪をフロートに付け替えさせた。
ダスティーはブレードの指導を受けて、消火用飛行機の訓練を開始した。ブレードは谷間が続く障害物コースに彼を連れて行き、そこを飛ぶ練習を繰り返させた。谷間は余裕で突破したダスティーだが、橋をくぐり抜ける時はトルクを全開にする必要があった。ダスティーはトルクメーターがレッドゾーンに入ると減速するが、ブレードにはギアボックスの問題を明かさなかった。そのため、他の訓練は順調にこなしても、障害物コースだけはどうしてもクリアすることが出来なかった。
ダスティーはプロップウォッシュ・ジャンクションに通信を入れてチャグやスパーキーと話し、知り合いがギアボックスを持っていて数日で届くと知らされた。基地を訪れた園長のキャド・スピナーは有名人のダスティーを見て喜び、ロッジのリニューアルパーティーに参加してほしいと要請した。彼はレスキュー隊の予算の8割をロッジの改装に使っており、パーティーには内務長官も招待していた。ブレードが予算の使い方に苦言を呈しても、キャドは全く耳を貸さなかった。
キャドは基地を去る時、ブレードを「ブレージン・ブレード」と呼んだ。その意味が気になったダスティーに、ディッパーたちは「今夜、誰にも言わずメイン格納庫へ」と告げた。夜、ダスティーがメイン格納庫へ行くと、ブレードを除く隊員たちが集まっていた。ダスティーは彼らから、かつて放送されていたTVドラマ『ハワード・ザ・トラック』のビデオを見せられた。その人気番組でブレードは、ルーピンという相棒と組んで主役を演じていた。そんな彼がレスキュー隊になった理由を、隊員は誰も知らなかった。
翌日、落雷によって火災が発生したため、ブレードはディッパーとウィンドリフターを連れて出動しようとする。ダスティーが同行を希望すると、ディッパーとウィンドリフターはチャンスを与えるようブレードに進言した。ブレードは仕方なく了承し、火災現場へ向かった。パラシュート隊のダイナマイトたちが炎に囲まれたため、ブレードはディッパーに消火剤を撒くよう指示した。しかしダスティーが「僕が行く」と言い出し、消火剤を撒いた。レスキュー隊は無事に仕事を遂行し、後は自然鎮火を待つだけになった。基地に戻ったダスティーは、ブレードから「勝手にフォーメーションを乱すな」と注意された。
その夜、ダスティーはディッパー&マルー&ウィンドリフターを伴い、ロッジのパーティーに出席した。キャドの出迎えを受けた内務長官は、ツアーバスのジャマーや消防車のプラスキーたちと出会った。ダスティーは結婚して50年を迎えるウィニー&ハーヴィーと出会い、思い出話を聞かせてもらった。翌朝、ダスティーはチャグたちと通信し、ギアボックスが自分用の物ではなかったことを知らされた。さらにチャグたちは、どこを探してもダスティー用のギアボックスが見つからなかったことを伝えた。
ダスティーはショックを受けたまま、ブレードに指示されて消火活動に出向いた。火災現場が2つに分かれたため、ブレードはダスティーを連れて行く。火災がロッジに迫る危険があったため、ブレードはマルーにロッジの客を避難させるよう指示した。しかしマルーから連絡を受けたキャドは、その要請を拒否した。炎が尾根を越えるのを防ぐため、ブレードは消火剤を撒くことにした。ダスティーは「半分ずつ撒け」という彼の指示を聞いていなかったため、一気に全ての消火剤を使ってしまった。
ブレードはダスティーを叱責し、基地へ戻るよう指示した。しかしダスティーは「僕はやれる」と言い、湖で水を汲もうとする。「横風が強すぎる」とブレードが止めてもダスティーは勝手に行動し、バランスを崩して水に落ちた。エンストを起こしたダスティーは川を流され、ブレードはワイヤーで引き上げようとするが倒木に妨害された。彼はダスティーに、滝の直前でエンジンを全開にして飛び立つよう指示する。しかしダスティーは全開に出来ず、ブレードが何とか救助した。
周囲に炎が迫って来たため、ブレードは小屋に避難するようダスティーに告げる。ダスティーが「嫌だ。逃げ道を見つける」と反発すると、ブレードは「なぜ命令に逆らう?お前に消防士なんて無理だ」と怒って説教する。ダスティーが「いいよ、本当はなりたくなかった」と言うと、彼は「じゃあレーサーに戻れ。トロフィーを貰って喜んでろ」と告げる。ダスティーは「戻れない」と漏らし、ギアボックスの故障を告白した。ブレードに諭された彼は、小屋に避難した。ブレードは彼を炎から守る盾になり、油圧装置が黒漕げになってしまう。炎が去ってから基地に戻ろうとしたブレードは、墜落して重傷を負ってしまう…。

監督はボブス・ガナウェイ、原案&脚本はボブス・ガナウェイ&ジェフリー・M・ハワード、製作はフェレン・バロン、製作総指揮はジョン・ラセター、製作協力はメリッサ・カーツ、編集はダン・モリーナ、アート・ディレクターはトビー・ウィルソン、アニメーション・スーパーバイザーはイーサン・ハード、ヘッド・オブ・ストーリーはアルトゥーロ・ヘルナンデス、テクニカル・スーパーバイザーはダグ・リトル、音楽はマーク・マンシーナ、音楽監修はランシス・デバーン、音楽製作総指揮はマット・ウォーカー。
声の出演はデイン・クック、エド・ハリス、ジュリー・ボーウェン、カーティス・アームストロング、ジョン・マイケル・ヒギンズ、ハル・ホルブルック、ウェス・ステューディー、ブラッド・ギャレット、テリー・ハッチャー、ステイシー・キーチ、セドリック・ジ・エンターテイナー、ダニー・マン、バリー・コービン、レジーナ・キング、アン・メアラ、ジェリー・スティラー、フレッド・ウィラード、デイル・ダイ、マット・ジョーンズ、ダニー・パルド、ブライアン・カレン、コリー・イングリッシュ、カリ・ウォールグレン、パトリック・ウォーバートン他。


2013年の長編アニメーション映画『プレーンズ』の続編。
監督はビデオ作品『スティッチ!ザ・ムービー』『ティンカー・ベルと輝く羽の秘密』のボブス・ガナウェイ。
原案&脚本はボブス・ガナウェイ監督と『プレーンズ』のジェフリー・M・ハワードによる共同。
ダスティー役のデイン・クック、チャグ役のブラッド・ギャレット、ドッティー役のテリー・ハッチャー、スキッパー役のステイシー・キーチらは、前作からの続投。
他に、ブレードの声をエド・ハリス、ディッパーをジュリー・ボーウェン、マルーをカーティス・アームストロング、キャドをジョン・マイケル・ヒギンズ、メイデイをハル・ホルブルックが担当している。

前作のダスティーは、農薬散布用飛行機の上に高所恐怖症という弱点を抱えていたが、それでも「世界一のレーサーになる」という夢を叶えるために奮闘した。
そんなダスティーが、今回は序盤でギアボックスが壊れて「もうレースは無理」と宣告されてしまう。
それなら、そこからはダスティーがギアボックスを見つけ出そうとするとか、他の方法を探るとか、とにかく「簡単には諦めず、レーサーとして活躍を続けるための方法を模索して奮闘する」という物語が予想された。
ところが実際には、消防士の訓練に入るのだ。

もちろん、ダスティーは本人のミスで火事を起こして空港が閉鎖になったのだから、責任を取るために行動するのは主人公として間違っているとは思わない。ただ、話としては、のっけかからピントがボヤけている。
何しろ、ダスティーのレーサーとしての悩みや苦しみ、焦りや奮闘が、まるで描かれなくなってしまうのだから。
今回は序盤で「レーサーとして活躍していました」ってことに触れるだけで、完全に「消防士を目指す物語」になっている。それって、もう完全に別の話じゃねえか。
続編という形を取っているけど、本来なら別のキャラでやるべき話じゃないのか。レーサーとしての物語を、そんなに簡単に放棄しちゃっていいのかよ。

ダスティーはレスキュー隊の訓練を開始すると、ギアボックスの故障について誰も話さない。
これが「バレたらレースに出られなくなる」ってことなら、隠すのも分からんではない。しかしレスキュー隊員に隠すのは、「消防士の資格が貰えなくなるから」ってことだ。
「全力が出せなきゃ資格は取れないぞ」とブレードに言われているので、どっちにしても厳しいんじゃないかと思うが、それは置いておくとして。
ギアボックスの問題は「レーサー生命が断たれるかもしれないピンチ」ってことだったはずなのに、いつの間にか遠く離れてしまい、別の問題に摩り替っているのだ。

ダスティーがキャドからロッジのパーティーに誘われるシーンがあり、その後には彼が仲間を連れてパーティーに参加する展開がある。
そういう流れになっているのだから、パーティーのエピソードは「キャドがダスティーを内務長官に紹介する」という手順の消化は必須だと言っていいだろう。
ところが実際には、紹介されないままで終わるのだ。
キャドはダスティーの元へ来て「内務長官に紹介する」と口にするが、すぐに離れてしまい、そのまま戻って来ないのだ。

内務長官はキャドの出迎えを受けた後、粗筋にも書いたようなキャラたちと出会う。そのキャラは、そこが初登場の面々だ。そいつらを登場させる必要なんて全く無いが、玩具でも売りたかったのかね。
一方、ダスティーは老夫婦と出会って思い出話を聞くが、こちらも何のために用意されているシーンなのかサッパリ分からない。
ダスティーが老夫婦を自分の境遇に重ね合わせる部分なんて、何も無いし。その夫婦の言葉が、悩みを抱えるダスティーを導く力を持っているわけでもないし。
ロッジのパーティーのシーンは、何の意味も見出せない無駄な道草にしか思えないんだよね。

ダスティーが火災に巻き込まれたウィニー&ハーヴィーの救助に向かう展開があるので、そこで一応は老夫婦の存在意義を持たせている。
だけど、別にウィニー&ハーヴィーじゃなくて他の客でもいいようなシーンだからね。それがウィニー&ハーヴィーであっても、ドラマを盛り上げるための貢献度なんてゼロだからね。
それなら、前作からのレギュラーキャストの誰かが巻き込まれる形にしたほうが、ずっとマシだよ。
前作からのレギュラーキャストって、今回は出番が少なくて存在意義が弱いんだから。

ダスティーはブレードが自分を庇ってダメージを負ったのに、そんなに罪悪感を抱いている様子は無い。設定としては罪悪感を抱いているみたいだけど、そういう様子は薄い。
そこは置いておくとしても、「自分の身勝手な行動のせいで、多くの犠牲が出たかもしれない」という問題に対する意識が乏しいってのは確かだ。消防の仕事ってのは、そういうことだからね。
でもダスティーには、消防士としての自覚や責任感が欠如しているとしか思えない。
そして、それに対する反省の色も見られないままで終わっちゃうのよね。

森林火災が鎮火した後、ダスティーはマルーにギアボックスを修理してもらい、レースにも出場できるようになる。そしてダスティーは、消防士をやりながらレーサーとしても活動を続けることになる。
なんちゅう軽薄な御都合主義なのかと。
あと、そういう兼業をOKにするなら、前作でダスティーが全否定した農薬散布の仕事を続けていても良かったんじゃないかと思っちゃうぞ。
そっちを続けながらレーサーとしても活動すれば良かったんじゃないのか。農薬散布だって、消防士に負けないぐらい大切な仕事だぞ。

(観賞日:2022年7月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会