『ペット・セメタリー2』:1992、アメリカ

女優のレニー・ハーロウは、ホラー映画の撮影に参加していた。休憩に入った時、彼女は見学に来ている息子のジェフに気付いた。レニーが「パパとの週末は?」と訊くと、ジェフは「楽しかった。パパに会いたがってた」と答える。夕食に誘われたレニーは、「夕食には賛成だけど、すぐに仲直りできるかどうか」と述べた。撮影が再開された直後、スタッフのミスによってレニーは感電死した。獣医である夫のチェイスは電話を受け、妻の死を知った。
レニーの葬儀には知人や友人の他に、マスコミも押し寄せた。保安官のガスはマスコミを注意し、チェイスに挨拶した。チェイスは息子のことを考え、ロサンゼルスからレニーの故郷であるルドローに引っ越した。家政婦のマジョリーを雇うと、彼女はレニーの大ファンだった。マジョリーがレニーのドレスを見て興奮すると、ジェフは不愉快そうに「触らないで。ママが生きていたら怒る」と告げた。チェイスは廃墟となっている動物病院を借り受け、そこで仕事を始めることにした。
チェイスとジェフが動物病院を訪れると、3匹の捨て猫が箱に入れられていた。ジェフはチェイスに承諾を得て、その内の1匹を飼うことにした。ガスは息子のドリューを連れて、挨拶にやって来た。愛犬のゾーイが猫に飛び掛かろうとするので、ドリューは慌てて制止した。ガスはチェイスに、ウサギに鼻を引っ掻かれて気が立っているのだと説明した。チェイスはゾーイを診察し、薬を塗った。ガスはジェフに、「私はママと親しかったんだよ」と告げた。
新しい学校へ赴いたジェフは、いじめっ子のクライドと悪友2人に目を付けられた。クライドたちはジェフがタイガーと名付けた猫を奪い、自転車で逃亡する。ジェフが急いで追い掛けると、クライドたちは動物墓地の手前で待ち受けていた。彼らは「ペットの墓地に埋めた」「クリード殺人事件を知ってるか?」「死者が蘇る墓地の話は?」と言い、「あそこにママを埋め直したらどうだ。祈り方次第では生き返るかもな」と馬鹿にして笑った。ジェフはクライドに殴り掛かるが、すぐに反撃を受けた。
クライドたちが去った後、ジェフは動物墓地へ赴いた。檻に入っているタイガーを保護すると、ドリューが来て「良く頑張ったな」と言う。「親の死を考えたことがあるか」とジェフが問い掛けると、ドリューは「ガスが死ねばと思うことがある。本当の父親じゃないんだ」と告げた。ガスは高圧的な態度で、ドリューに服従を要求していた。ガスが自分の前でも母のアマンダに抱き付くような態度にも、ドリューは嫌悪感を抱いていた。
ガスは複数のウサギを飼っており、ゾーイに襲われないよう小屋に電流を流した。またゾーイがウサギ小屋に襲い掛かったので、激怒した彼はショットガンを持ち出した。ガスはドリューの制止を無視し、走り去るゾーイに発砲した。ドリューが捜しに行くと、ゾーイは死んでいた。彼はジェフにゾーイが死んだことを話し、埋葬の手伝いを頼んだ。ドリューは「いい場所がある。沼の向こうだ」と言い、先住民の墓地へ行く。彼は死者が蘇るという言い伝えを守り、自分で穴を掘ってゾーイを埋めた。
その夜、ゾーイが蘇って戻って来るが、すっかり凶暴化していた。ガスはゾーイが死んで蘇ったと知らず、「絶対に中には入れるな」とドリューに命じた。ゾーイが撃たれて大怪我を負っていたため、アマンダがチェイスを呼んだ。ドリューはチェイスに、治るまで預かってほしいと頼んだ。チェイスに同行したジェフは、ゾーイが死んでいなかったのではないかと考えた。帰宅したジェフは、椅子に座っているレニーが「待ってるわ」と呼び掛ける夢を見た、ジェフが驚いて目を覚ますと、その椅子にはゾーイが座っていた。チェイスがゾーイを預かって3日が経過するが、診察すると心音が聴こえなかった。彼はゾーイの血液を採取し、知人のラドマンに送って調べてもらうことにした。
ハロウィンの夜、ドリューはガスに内緒で仮装し、ジェフと共に出掛ける。予定より早く帰宅したガスは、アマンダがドリューの外出を許可したと知って激怒した。子供たちはペット・セメタリーに集まり、クライドがクリード家の事件に関わる怖い話をする。そこへガスが来たため、子供たちは慌てて逃げ出した。ガスは逃げ遅れたドリューを捕まえ、ジェフの眼前で折檻した。そこへゾーイが現れ、ガスの首筋に噛み付いて殺害した。ドリューはジェフに手伝ってもらい、ガスの遺体を先住民の墓地へ運んで埋葬した。ガスは蘇って帰宅し、アマンダを荒々しく犯した。
チェイスはラドマンからの連絡で、血液検査の結果を知らされる。ラドマンはゾーイが死んでいると解釈していたため、チェイスは生きていることを告げる。しかしラドマンは「細胞が死んでいるのに?」と言い、疑問を呈した。チェイスはラドマンから、自分の前に動物病院を経営していたヨランダも死んだ動物の血液を送っていたことを聞かされた。捨て猫を貰いに来た母娘が悲鳴を上げたので、チェイスは慌てて駆け付けた。すると捨て猫が惨殺されており、ゾーイは檻を破壊して姿を消していた。
チェイスはヨランダの元を訪れ、話を聞こうとする。しかしヨランダはクリードの猫もゾーイと同じ状態だったことを告げると、「あの町から早く出て行け」と怒鳴ってチェイスを追い払った。ガスはジェフとドリューの前でウサギを次々に惨殺し、皮を剥いで肉を食らった。眠りに就いたチェイスは、妻が情事を求めて迫って来る夢を見た。目を覚ますとゾーイが上に乗っており、チェイスに襲い掛かって来た。慌ててチェイスが抵抗すると、ゾーイは窓から逃げ出した…。

監督はメアリー・ランバート、脚本はリチャード・アウテン、製作はラルフ・S・シングルトン、撮影はラッセル・カーペンター、美術はミシェル・ミンチ、編集はトム・フィナン、衣装はマーリーン・スチュワート、音楽はマーク・ガヴァナー。
出演はエドワード・ファーロング、アンソニー・エドワーズ、クランシー・ブラウン、ジャレッド・ラシュトン、ダーラン・フリューゲル、ジェイソン・マクガイア、サラ・トリガー、リサ・ワルツ、ジム・ペック、レン・ハント、リード・ビニオン、デヴィッド・ラタイチャク、ルシウス・ホートン、ウィルバー・フィッツジェラルド、エリザベス・ジーグラー、ケン・フィッシャー、ギル・ローパー、ロバート・イーストン、ジャドソン・ヴォーン、ブルース・エヴァーズ、ジャネル・マクラウド、クリスティー・デニス他。


スティーヴン・キングの小説を基にした1989年の映画『ペット・セメタリー』の続編。
監督は前作に引き続いてメアリー・ランバートが担当。脚本は『NEMO ニモ』のリチャード・アウテン。
ジェフをエドワード・ファーロング、チェイスをアンソニー・エドワーズ、ガスをクランシー・ブラウン、クライドをジャレッド・ラシュトン、レニーをダーラン・フリューゲル、ドリューをジェイソン・マクガイア、マージョリーをサラ・トリガー、アマンダをリサ・ワルツが演じている。
前作ではキング自らが脚本も執筆していたが、この続編では原作者としての表記も無い。つまり、完全にノータッチってことだ。

『ペット・セメタリー』の続編を製作するにあたって、まず考えられるのが「前作に登場したクリード家の後日談」にすることだ。
しかし、前作はホラーとして綺麗に決着が付いていた。
完全ネタバレになるが、クリード家は全滅したのだ。なので、「その後のクリード家」を描こうとしても、それは絶対に不可能だ。
そこで、「同じ町に引っ越してきた面々が、先住民の墓地で死者が復活する出来事に関与する」という内容にしてある。
続編を作るとなれば、それは妥当な考えだろう。

チェイスはクリード家の事件を知らず、ドリューも「噂は知っているけど事実は知らない」という設定だ。なので、彼らに愚かな行動を取らせることは、そんなに難しくない。
そしてザックリと言ってしまえば、前作と似たような出来事が繰り返される展開になる。
シリーズの続編だし、「先住民の墓地に埋めた死者が蘇る」という要素が肝なので、それが繰り返されるのは当然っちゃあ当然だ。
ただし、何から何まで同じことの繰り返しだと、ただの焼き直しになってしまう。
なので一応は前作との違いを付けているが、その中でプラスに作用していると思えるポイントは何も見当たらない。

ゾーイは登場した時、捨て猫に襲い掛かろうとしている。ウサギ小屋に襲い掛かるシーンもあるし、かなり荒っぽい性格という印象だ。
もちろん、ガスはクズ野郎としてのキャラクターを分かりやすくアピールしているし、ゾーイに発砲する行為に弁明の余地は無い。
ただ、小屋を攻撃してウサギに襲い掛かろうとするゾーイの行動にも、問題はあるわけで。そこで「ゾーイにも落ち度がある」という形にしておくことには、何のメリットも無い。
それと、蘇ったゾーイが凶暴化していても、「そもそも死ぬ前から、そういう兆しはあったし」ということになってしまう。「優しく穏やかだった犬が豹変した」というケースに比べると、どう考えてもマイナスだろう。

ドリューはゾーイが蘇った時、凶暴化したのを目にしている。それなのに、ガスが死んだ時も先住民の墓地へ埋めるのは引っ掛かる。
幾ら「事件を隠ぺいしなきゃ」と思ったにしても、せめて少しは迷ったりしろよ。ガスも凶暴化することは、容易に想像できるんだし。
っていうか、ドリューはガスを嫌っていたんだから、死んでラッキーだったんじゃないのか。そもそも自分が殺したわけでもないし、事件を隠蔽する必要性を感じないので、放っておけばよくないか。
あと、ガスはゾーイ以上に、最初から暴力的な性格なのよね。なので蘇って凶暴化したところで、「そもそもの性格がエスカレートしただけ」になってしまう。

ゾーイはチェイスがレニーの夢で目覚めた後、彼に襲い掛かる。
だが、ゾーイがチェイスを襲う理由はサッパリ分からない。
凶暴化して無差別に人を襲う奴に変貌しているならともかく、そうではない。チェイスを狙って家に忍び込み、わざわざ目が覚めるのを待ってから襲っているのだ。
ガスの時は「自分を可愛がってくれたドリューが折檻されているから、ガスを殺した」ということで理解できるけど、チェイスの時は何の動機も無いわけでね。

ドリューはゾーイが戻って来ても、まるで喜んでいない。
最初の時点で凶暴化していることに気付いたからだろうが、あれだけゾーイの死を悲しんで、「藁をも掴む思い」ってな感じで墓地の言い伝えに頼ったのに、そのリアクションの薄さは何なのかと。
しかも、ゾーイの時は全く喜ばなかったのに、なぜかガスの時は大歓迎の態度なのだ。「朝食の時は笑顔さえ浮かべてた。パンケーキのお代わりをくれた。外出は禁止?と訊いたら、いいよって。まるで本当の家族みたいなんだ」と好意的に受け止めている。
でも以前と比べて愛想は良くなっているかもしれんが、ただ不気味なだけだろ。

そもそも、「蘇ったガスをドリューもジェフも歓迎する」というストーリーの進め方をしている時点で、それは違うだろうと言いたくなる。
あと、なぜガスがドリューに対して愛想良くなるのか、それも理解できないんだよな。
むしろ、自分を襲うゾーイを制止できなかったことで憎しみを抱き、ドリューを殺そうとしてもいいぐらいなのに。
ガスにしろゾーイにしろ、蘇った奴の動かし方がデタラメで、全く計算が出来ていないようにしか思えない。

前述したように、ドリューはゾーイが蘇っても全く喜ばない。一方、ガスを蘇らせる時は、「愛ゆえに」の行動ではなく、ただの自己保身に過ぎない。
前作のクリード家にあったような「愛と苦悩」という要素が、この2作目では大幅に軽視されている。その要素は「ジェフやチェイスのレニーに対する思い」という部分で使えるはずだが、そこは終盤まで放置されている。
途中でジェフとチェイスがレニーの夢を見るシーンはあるが、「蘇ってほしい」という思いに繋がっているわけではない。また、なぜかゾーイと関連付けるという奇妙な描写になっている。
ジェフの時は、「レニーの頭部がゾーイになっている」という夢だし、チェイスの時はゾーイがレニーの夢を見させたような描写になっている。まるでワケが分からない。

ジェフがクライドに襲われると、ガスが駆け付けて助けてくれる。その後、彼はクライドを殺害し、目撃したドリューと彼を助けようとしたアマンダを始末する。
行動が支離滅裂で、どういう理念に基づいているのかサッパリ分からない。
そこでドリューを殺すぐらいなら、もう蘇った時点で殺せば良かっただろ。ジェフにしても、ゾーイやガスを見て「蘇らせると危険」と分かり切っているはずなのに、ママを生き返らせると言い出すのがデタラメにしか見えない。
「危険なことになると分かっていても、それでもママを生き返らせたい」という彼の強烈な思いなんて、これっぽっちも表現できていないのだ。

ジェフが「ママを生き返らせる」と言っている段階で、既にガスがレニーの遺体を掘り起こして先住民の墓地へ運んでいる。そして家を抜け出したジェフが墓地へ行き、ガスと合流する。
いつの間に2人の中で、そんな約束が交わされていたのか。
ガスが持ち掛けた計画だとして、それに何の迷いも無く乗るジェフがデタラメにしか見えない。
ガスにしても、なぜレニーを蘇らせたいのか分からない。チェイスを襲う時に「彼女を抱きたくなった。最初の男は俺だ」と言うけど、それが理由だとしてもバカバカしすぎるわ。

蘇ったレニーと再会した時のジェフの顔は、ものすごく不気味でヤバい奴にしか見えない。「早く死ねばいいのに」と思っちゃうぐらいだ。
マジョリーが殺されても、ガスに怪我を負わされて戻ったチェイスが「それはママじゃない。離れろ」と言っても、ジェフは全く気にしない。ひょっとすると「洗脳状態」という設定なのかもしれないけど、全く伝わらない。
っていうか、彼が洗脳されるシーンなんて何も無かったし。そして洗脳状態だとしても、ジェフへの不快感が消えるわけではないし。
最後にガスを退治し、燃える家にレニーを残して脱出しても、何一つとしてリカバリーできていないからね。「テメエのせいでマジョリーが殺されたんだぞ。少しぐらいは罪悪感を抱け」と言いたくなるだけだ。

(観賞日:2018年1月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会