『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海』:2013、アメリカ

パーシー・ジャクソンはポセイドンと人間の間に産まれたハーフゴッドである。7年前、彼と同じハーフゴッドの子供であるアナベス、グローヴァー、ルーク、タレイアは、訓練所へ向かっていた。しかし一行は怪物に襲われ、タレイアは他の3人を逃がして戦いを挑んだ。タレイアが深手を負って死を迎えようとした時、父であるゼウスは彼女の姿を木に変えた。仲間が自分と同じ死に方をしないように身を捧げ、バリアーを張って訓練自余を守るのはハーフゴッドの役目だ。
現在、パーシーは仲間たちと共に、訓練所で生活している。かつてオリンポスを救ったこともあるパーシーだが、軍神アレスの娘であるクラリッサからは馬鹿にされている。その日の競技でも、パーシーはテレウスを助けに戻って彼女に負けた。クラリッサは競技会で好成績を出し続けており、「最初の冒険で活躍できたのはマグレだったんじゃないの」とパーシーをコケにする。グローヴァーやアナベスは腹を立てるが、パーシーは「彼女は間違ってない」と2人に言う。
タレイアのバリアーを超えて訓練所に入って来たタイソンという若者の出現に、所長のミスターDと教官のケイロンは困惑した。するとタイソンは、自分がホセイドンの息子だと告げた。ケイロンはパーシーに、異母弟がいることを教えた。ただしハーフゴッドではなく神とニンフの間に産まれた子供だと、彼は説明する。タイソンがキュクロプスだったので、パーシーは戸惑った。タイソンは彼に、父の矛に導かれて訓練所へ来たことを話す。クラリスはタイソンを見て、馬鹿にするような態度を取った。
タイソンが牛の匂いを嗅ぎ取った直後、訓練所が大きな揺れに見舞われた。ハーフゴッドたちがバリアーを見に行くが、クリスだけは「俺はいい」と留まった。バリアーを破ってコルテスの雄牛が突進して来たので、パーシーたちは武器を取って戦った。クラリスが激しく弾き飛ばされると、タイソンが牛の前に立ちはだかった。彼は炎の噴射を浴びるが、全くダメージを受けなかった。パーシーは剣を口の中に放り込み、牛を爆死させた。
パーシーの前にルークが現れ、「俺は簡単には死なない。予言を知ってるか」と言う。予言を知らないパーシーに、「ケイロンは隠しているのか。奴もミスターDも、俺たちを何とも思ってない。奴らに取って、俺たちは命令通りに動く兵隊に過ぎない。不満なのは俺だけじゃない。良く考えろ」とルークは語り、その場から姿を消した。タレイアの木に触れたケイロンは、毒に冒されていることを知った。パーシーはケイロンや仲間たちに、ルークの仕業であることを教えた。
解毒剤を作り始めたケイロンに、パーシーは予言のことを尋ねる。するとケイロンは、「知識が力になるとは限らない。重荷になることもある」と告げた。それでもパーシーが知りたがるので、ケイロンはビッグハウスの屋根裏部屋へ行くよう指示した。パーシーが屋根裏へ行くとデルポイの霊が現れ、「未来を知る前に、まず過去を知るのだ」と告げた。デルポイの霊はパーシーに、オリンポスの神々が現れる以前、タイタンが世界を支配していた時代のことを語る。タイタンの王である邪悪なクロノスは、息子であるゼウス、ハデス、ポセイドンが逃げ出した。彼らはクロノスを倒し、その屍はタルタロスの淵に落とされた。
デルポイの霊は、「やがてクロノスが蘇り、オリンポスと人間世界への復讐を果たすだろう。クロノスを倒せるのは、3兄弟の子であるハーフゴッドの1人だけ。その子は救世主かもしれないが、世界を破滅させるかもしれない。全ては3兄弟の神の子と、稲妻を盗んだ者が金の羊毛を奪い合うことから始まった」と語る。ケイロンはパーシーに、「それに該当するハーフゴッドは君しかいない」と告げた。
一方、アナベスは木を治す方法を見つけ、グローヴァーの反対を振り切ってミスターDの元へ行く。アナベスはミスターDに、タレイアの木を治すために金の羊毛を捜す冒険に出たいと申し入れる。「木を治せばバリアーも復活する」と彼女が言うと、ミスターDは「羊毛を追ったサテュロスは全滅したんだぞ」と反対する。さらに彼は、羊毛が魔の海と呼ばれるバミューダ三角海域にあることを説明し、誰にとっても危険な場所だと告げた。
ミスターDはアナベスが行くことを認めなかったが、生徒たちを集めて「金の羊毛を手に入れればタレイアの木を治せる」と発言する。そして彼は羊毛を取りに行く任務を、サテュロスのイクヌーテとクラリサに命じた。パーシーからルークに注意するよう言われたクラリサは、「関係ないわ」と軽く告げた。パーシー、グローヴァー、アナベスが冒険に行こうとすると、タイソンが同行を求めた。パーシーは反対するが、タイソンは「羊毛を守ってるのはポリュペモス。キルケの国にいる。俺ならキュクロプス同士で話せる」と言う。アナベスも反対するが、グローヴァーはキュクロプスを連れて行くべきだと主張した。
アナベスはタイソンの同行を渋々ながら認めるが、ミストを使うよう要求した。そのミストを噴射すれば、一時的に顔が普通の人間と同じ外見に変化するのだ。アナベスは「地獄の戦車」であるタクシーを呼び寄せ、一行はフロリダへ向かう。運転手のグレイ・シスターズは、猛スピードでタクシーを走らせた。彼女たちは予言について、「30、31、75、12」というヒントを与えた。4人の所持金が不足していたため、姉妹はワシントンで彼らを降ろした。
パーシーたちはバス・ターミナルへ向かうが、クリスの一味にグローヴァーが連れ去られた。すぐにパーシーは、ルークが黒幕だと悟った。グローヴァーの居場所を突き止めるため、アナベスはパーシーとタイソンを連れてオリンポス宅配便の事務所に入った。3人はヘルメスに、ルークが仲間を拉致したことを説明した。ヘルメスは蛇のマーサとジョージに、ルークの検索を依頼した。彼はルークと戦う時のため、開けると暴風が吹き荒れるヘラクレスの魔法瓶と、テープでなぞると何でも消せる物質抹消器を3人に渡した。
マーサとジョージの検索によって、ルークがアンドロメダ号でチェサピーク沖にいることが分かった。パーシーたちが港へ行くと、既にルークの船は出た後だった。タイソンがポセイドンに呼び掛けると、海馬がやって来た。3人は海馬の背中に乗り、アンドロメダ号の後を追った。パーシーたちが船に忍び込むと、クリスの他にイーサンとシレーナも乗っていた。ルークは3人を捕まえ、「グローヴァーは魔の海だ。時間が無いから先に送り込んだ。ある物を蘇らせるために羊毛が必要だ。それは木じゃない」と言う。
ルークはタルタロスの底で見つけたクロノスの遺骸を見せ、羊毛で復活させてオリンポスを滅ぼす計画を口にした。パーシーたちは船底に監禁されるが、物質抹消器を使って脱出する。アナベスは救命ボートに乗り込むが、タイソンがエンジンを海に落としてしまう。アナベスはヘラクレスの筒を使い、ボートを発進させる。パーシーはルークから仲間になれと誘われるが、拒否して波に乗った。ルークが追って来ると、パーシーは海に突き落とした。
パーシーはアナベスに、タイソンを嫌っている理由を尋ねた。するとアナベスは、タレイアを殺したのはキュクロプスだと話す。魔の海に近付いた時、タイソンがヘラクレスの瓶を落としたためにボートは停止した。そこに海の怪物であるカリュブディスが現れ、彼らをボートごと飲み込んだ。カリュブディスの胃の中には、父の船で来たクラリサも閉じ込められていた。彼女は船員であるゾンビのリアドンたちに、修理を急がせていた。一行は船の機関砲を放ってカリュブディスに胃痛を起こさせ、脱出に成功した…。

監督はトール・フロイデンタール、原作はリック・リオーダン、脚本はマーク・グッゲンハイム、製作はカレン・ローゼンフェルト&マイケル・バーナサン、共同製作はビル・バナーマン、製作総指揮はクリス・コロンバス&マーク・ラドクリフ&マーク・モーガン&ガイ・オゼアリー&グレッグ・ムーラディアン、製作協力はジェフリー・ハーラッカー、撮影はシェリー・ジョンソン、編集はマーク・ゴールドブラット、美術はクロード・パレ、衣装はモニク・プリュドム、特殊メイクアップ効果デザイン&創作はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、音楽はアンドリュー・ロッキングトン。
出演はローガン・ラーマン、ブランドン・T・ジャクソン、アレクサンドラ・ダダリオ、ジェイク・アベル、ダグラス・スミス、レヴェン・ランビン、ネイサン・フィリオン、アンソニー・スチュワート・ヘッド、スタンリー・トゥッチ、メアリー・バードソング、イヴェット・ニコール・ブラウン、ミッシー・パイル、コナー・ダン、パロマ・クウィアトコウスキー、アリーシャ・ニュートン、ビヨーン・イヤーウッド、サミュエル・ブラウン、ケイトリン・メジャー、クリストファー・レッドマン、ジョーダン・ウェラー、カミーラ・アテベ、アンソニー・シム、ロバート・ネッパー、ロバート・メイレット、リチャード・イヤーウッド他。


リック・ライアダンによるファンタジー小説シリーズを基にした2010年の映画『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の続編。
監督は『ホテル・バディーズ ワンちゃん救出大作戦』『グレッグのダメ日記』のトール・フロイデンタール、脚本は『グリーン・ランタン』のマーク・グッゲンハイム。
パーシー役のローガン・ラーマン、グローヴァー役のブランドン・T・ジャクソン、アナベス役のアレクサンドラ・ダダリオ、ルーク役のジェイク・アベルは、前作からの続投組。アンクレジットだが、ゼウス役のショーン・ビーンも引き続いて出演している。
ケイロン役は前作のピアース・ブロスナンからアンソニー・スチュワート・ヘッド、ヘルメス役はディラン・ニールからネイサン・フィリオンに交代。タイソンをダグラス・スミス、クラリスをレヴェン・ランビン、ミスターDをスタンリー・トゥッチ、グレイ・シスターズをメアリー・バードソング&イヴェット・ニコール・ブラウン&ミッシー・パイル、テレウスをコナー・ダン、タレイアをパロマ・クウィアトコウスキーが演じている。

まず最初に言いたいのは、「なんだよ、この無駄に長いタイトルは」ってことだ。
前作の邦題が『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』で、そこにサブタイトル的なモノとして「魔の海」という言葉を付け加えているわけだが、どう考えたって、もっと短く出来るし、短くすべきだわ。例えば『パーシー・ジャクソンと魔海の』とか、そんな感じでいいでしょ。「パーシー・ジャクソンと」という部分さえ残せば、絶対に続編だってことは分かるはずだし。
「オリンポスの神々」の部分を残さないと、ギリシャ神話がモチーフってことが分かりにくいだろうという判断だったのかもしれないけど、それを残したところで、そんなに訴求力があるとも思えんぞ。

前作の製作費は9500万ドルで、実は全米の興行収入では赤字を出している。
世界市場の収益で黒字が出たので、原作と同じくシリーズ化を想定してスタートした企画だったこともあって続編の製作は決まったが、製作費は9000万ドルに下がっている。わずか500万ドルの差ではあるが、その影響もあったのか、前作よりもキャスティングの段階で質が落ちている。
ただし、出演者の問題よりも引っ掛かるのは、神々のメンツが減ったってことだ。
配役以前に、登場人物の部分でランクを落としてどうすんのよ。
前作はハデス、ペルセポネ、アテナ、ポセイドンが登場し、チョイ役だけどアフロディーテやアポロンなどオリンポス12神も出て来た。しかし今回は、パーシーの父であるポセイドンさえ登場しないのだ。
配役を変えてもケイロンやヘルメスを登場させるなら、他の神々も出せばいいだろうに。

冒頭、タレイアが仲間3人を守った過去の出来事が、パーシーのナレーションで語られる。その出来事をパーシーは体験しているわけじゃないので、あくまでも「そんな話を聞いた」ということだ。
だったら後から仲間たちに聞かされる形でも別にいいんだけど、どうしても冒頭でタレイアの存在を観客にアピールしたかったんだろう。
ハッキリ言って不格好なネタ振りではあるが、タレイアを重要人物として扱いのなら、まあ理解は出来る。しかし、そうやって無理をしてアピールした割には、タレイアって、あまり存在価値が高くないのよね。
もちろんタレイアを救うためにパーシーたちは冒険に出掛けるんだけど、ぶっちゃけ、別に目的はどうでもいいんだよな。その目的は、いわば「パーシーたちが冒険に出る」という展開を作るためのきっかけとして使われるだけで、それ以上の意味は無いのよ。

そもそも、タレイアの設定って大きな穴があるんだよね。
だってさ、タレイアがバリアーになったのは、わずか7年前の出来事なのよ。だったら、それ以前の訓練所は、どうやって守られていたのかと。
「それ以外にもバリアーがある」ということなのかもしれないけど、ミスターDやケイロンたちは「タレイアのバリアーが破られたら訓練所は滅びる」と言っているんだよね。
いやいや、そんな脆弱な警備システムでいいのかよ。

序盤、訓練のシーンで、パーシーはテレウスというハーフゴッドを助けている。
そこで名前が出て来るし、パーシーが助けているんだから、テレウスは主要キャラなのかと思ったら、それ以降は全く物語に絡まず、「その他大勢」に紛れてしまう。
それにしては、アレスの子であるテレウスの名を貰っているので、無駄に意味ありげなんだよな。
あと、イクヌーテが「頭が幾つもあるヒドラのスキュラが現れて、任せろと言ったのが最後よ」というクラリスの簡単な説明だけで片付けられるのは、扱いが酷すぎるだろ。

前作と同様、まるで安っぽいファンタジーRPGのようにサクサクと話は進んでいく。
しかもコントローラーは付いていないので、こっちの自由に操作することは出来ない。
「伏線を張っておいて、かなり後になってから回収する」とか、「その時点では何のことか分からない謎を提示し、後になって答えが判明する」とか、そういう形で引っ張ろうという意識は薄い。
グレイ・シスターズのヒントだけはネタを割るまでに引っ張っているけど、勿体を付けているのは、それぐらいだろう。

「金の羊毛が云々」という予言が語られてシーンが切り替わると、すぐに「タレイアの木を治すには金の羊毛が必要」という情報が提示される。
どうやってフロリダまで行くのかと思ったら、タクシーを呼んで乗り込む。
そのタクシーの情報をどこで入手したのかは知らないが、「最初からアナベスが知っている」という設定だ。
そういう御都合主義は他にもあって、グローヴァーが拉致された時も、アナベスが宅配便の会社へ行くと、そこがオリンポス宅配便に変化する。

パーシーたちは船に忍び込むと、すぐに捕まる。ルークはパーシーたちを捕まえると、すぐにベラベラと目的を明かしてくれる。パーシーたちは船底に監禁されると、ヘルメスから貰ったアイテムを使って脱出する。
貰ったアイテムの使用を終盤まで引っ張らず、貰った直後に使う展開にしてある辺りも、チープなRPGっぽい。
タイソンがエンジンを落とすのは、ヘラクレスの瓶を使う」という展開にするためのヘマであり、予定を消化するためにキャラが駒として利用されているという形だ。
この映画、そういうシーンのオンパレードである。

基本的には、何かヒントや道具が提示されると、それを使った展開がすぐに用意される。
「最初はミッションに失敗し、苦労して何とかクリアする」とか、そういう展開で話を盛り上げようという気も無い。
また、前作と同様、冒険の舞台は全てアメリカ。なぜか神話の世界の住人たちは、みんなアメリカに住んでいるのだ。
だから、神々&ハーフゴッドの話なのだが、そのスケール感で小さくまとまっている。
そして、数多くのファンタジー系映画が公開されてきた中、既視感に満ちた場面や映像が続く。

相変わらず人間ドラマは薄っぺらく、ストーリー展開を消化することで手一杯になっている。
例えば、タイソンがパーシーの異母弟として登場しても、そこからパーシーと彼の関係を使って物語を進めて行くことはやらない。
パーシーとの兄弟の絆とか、そういうトコのドラマは全く充実していない。
終盤になって、取って付けたように「兄弟の絆が芽生えた」という着地を用意しているが、そこに向けた流れが薄弱なので盛り上がりに欠ける。

今回の冒険では、あまりにも万能すぎるアイテムをパーシーたちが手に入れる。
金の羊毛はタレイアの木を治せるだけでなく、「あらゆる物を治せる」という道具なのだ。
傷付いた人間を治癒するだけでなく、死んだ人間を復活させることも出来る。しかも、何度使っても効力は失われない。
つまり、無限に使えるエリクサーなのだ。
そんなモンを手に入れたら、もはや「パーシーたちが死ぬかも」というトコロでの緊迫感が生じなくなっちゃうでしょうに。

前作で感じた違和感や疑問は、まるで解消されていない。
まあシリーズ作品だし、急に2作目から世界観が変化しても、それはそれで変だろうから、仕方が無いとは言えなくもない。
でも、事情は理解できても、「だから違和感も受け入れられる」とはいかない。
例えば、今回もパーシーたちは剣や槍といった武器で戦うんだけど、現代の訓練所で訓練を積んでいるのに、なぜ武器だけは古代や中世の世界観になっているのか、なぜ拳銃やライフルといった現代の武器を使わないのかと。

例えば「特殊な金属じゃないと怪物は倒せない」ということだとしても、その金属を現代の武器に加工すればいいだけのことだ。
そもそも、「特殊な金属じゃないと怪物は倒せない」という設定なんて説明されていないし、そういう裏設定がある気配も無いし。
コルテスの雄牛なんて機械仕掛けの加工が施された怪物なんだし、こっちだって現代的な武器を使えばいいでしょうに。
そこだけ神話の世界観を守ったところで、「現代アメリカに神話の世界が入り込む」というトコで話を作っているんだから、あまり意味は無いと思うし。

前作では途中で「実は仲間じゃなくて悪党だった」ってことが明らかになったルークが、今回は最初から悪党として登場する。
前作で死亡したはずだったのを「実は生きていた」ってことで再登場させるのは、もちろん原作通りの展開なんだろう。
だけど残念ながら、ルークには悪党としてチンケすぎるんだよね。「パーシーたちの前に立ちはだかる一味のボス」としての存在感を、全く感じさせない。
同年代のガキという時点で弱いんだけど、せめて奥底の見えない不気味さがあるとか、かなりのキレ者っぷりがあるとか、そういうトコでボスの雰囲気でも出してくれれば何とかなるが、「ただの不良」ってな感じなんだよな。

ただし、一方のパーシーにしても、残念ながら主人公としての魅力に欠ける。
見た目からして、どうにも冴えないんだよな。
キャラ設定からすると、普段は冴えなくてもいいだろうけど、「いざという時は英雄として輝いている」というギャップを見せなきゃいけないのに、パッとしない印象が持続してしまう。
パーシー役のローガン・ラーマンにしろ、ルーク役のジェイク・アベルにしろ、壮大なシリーズを引っ張って行かなきゃいけないキャラを演じているんだけど、それに見合うだけのカリスマ性やオーラを感じさせない。

あと、「それを言っちゃあ、おしめえよ」ってことなんだろうけど、こいつらって神の子供なのよね。
つまり、オリンポスの神々が本気になれば、ルークの野望なんて簡単に阻止できちゃうんじゃないかと思ってしまうのよ。
それにルークの父はヘルメスなんだから、あんまり勝手なことばかりしていたら、そっちからの動きもあるんじゃないかと。
なぜ神々がルークの行動を放置しているのか、それがサッパリ解せないのよ。ルークの野望は、神々にとっても阻止すべき問題じゃないのかと。

途中でヘルメスは出て来るけど、「息子は反抗期に入っていて言うことを聞かない」という程度の認識しか無い。
ルークはオリンポスと人間世界を滅ぼそうとしているわけで、もはや「反抗期のガキがやらかす軽犯罪」というレベルじゃ済まないような状況なのに、認識が甘すぎる。
しかも、その動機が「父親への反抗心」なんだぜ。
「しょっぱい」という言葉が、あまりにもピッタリとハマるガキだ。

実際、ルークはクロノスにあっさりと食われちゃうので、「しょっぱいガキ」という印象は、そんなに外れちゃいない。
だけど、じゃあルークを食っちゃうクロノスが「パーシーたちに立ちはだかる巨大な強敵」としての存在感を発揮してくれるのかというと、そうじゃないってのが困りものだ。確かに見た目だけは巨大だけど、せいぜい前作で初登場した時のポセイドンと同じ程度なのよ。
クロノスは巨人族の長なんだから、オリンポスの神々と比較しても巨大じゃなきゃマズいんじゃないかと。
しかも、見た目のデカさが物足りないだけじゃなく、あっさりとパーシーたちに退治されちゃうのよ。ちっとも歯応えが無いのよ。

(観賞日:2015年3月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会