『ペンギンズ from マダガスカル ザ・ムービー』:2014、アメリカ

何年か前の南極。ドキュメンタリー作品のスタッフは、ペンギンの行進を撮影している。子供ペンギンの隊長は、行き先も分からず行進する仲間たちを馬鹿にする。彼は部下のリコ&コワルスキーと共に空を飛ぼうとするが、羽を使っても全く飛べなかった。卵が勢いよく転がって行くのを見た隊長は、すぐに止めようとする。しかし大人のペンギンたちは淡々とした口調で、「それは無理だな」「あっちの方は危ない。ペンギンはキュートで可愛いだけ」「卵が無くなるのは自然なこと」と言う。
隊長は納得せず、「自然に逆らってやる」と卵を助けに行く。卵は崖から落下し、難破船の甲板に辿り着いた。そこへヒョウアザラシが現れたので、隊長たちは難破船へ行く方法を考える。その様子を見ていた撮影クルーの監督は、照明スタッフにペンギンたちの背中を押すよう命じた。難破船へ滑り落ちた隊長たちはヒョウアザラシに包囲されるが、卵と共に氷山へと脱出した。すると目の前で卵が孵化し、隊長は誕生したペンギンを「新人」と名付けた。4匹は氷山に乗って、海を流された。
10年後、ペンギンズはサーカスの芸人として活動していた。4匹は新人の誕生日を祝うため、豪邸へ忍び込んだ。警備員をガスで眠らせたペンギンズは、金庫に足を踏み入れた。その奥にはスナック菓子「チーズ・ディブルス」の自動販売機があり、新人は大喜びする。新人はコインを投入してスナック菓子を買おうとするが、取り出し口から引っ張り込まれてしまう。隊長たちは呆れるが、大きなタコの触手によって自販機の中へ引き込まれた。
自販機から足を伸ばしたタコは豪邸を飛び出し、ヘリコプターに吊るされてベネチアへ移動した。檻に閉じ込められたペンギンズは脱出し、殺人光線の装置を発見した。そこへ遺伝学者のオクト博士が現れ、「久しぶりなんだ、もっと喜べよ」とペンギンズの名前を呼ぶ。全く見覚えの無いペンギンズに、オクトは「古い名前で知っているはずだ」と告げる。彼はタコの姿に変身し、「デーブ」と名乗った。しかしペンギンズは、彼のことを全く思い出せなかった。
腹を立てたデーブは、過去のことを語る。かつてデーブは、ニューヨークのセントラルパーク動物園で人気者だった。しかしペンギンズが来たことで人気を奪われ、お払い箱となった。その後も彼は様々な動物園や水族館を転々とするが、必ずペンギンに人気を奪われた。怒りと復讐心を燃やしたデーブは、そのために緑の液体を発明していた。ペンギンズは液体の入った瓶を奪い、アジトから脱出した。4匹はデーブの手下に追われて街を逃げ回るが、袋小路に追い詰められた。
ペンギンズの前に特殊部隊のノース・ウィンドが現れ、タコ軍団を退治した。ノース・ウィンドはリーダーであるオオカミのシークレット、アザラシのヒューズフクロウのエバ、シロクマのコーポで構成された、か弱い動物たちの救助を目的としている。ノース・ウィンドはペンギンズを飛行機に乗せ、コワルスキーはエバに一目惚れした。シークレットはペンギンズを本部へ連れて行き、オクトを捕まえる目的を明かす。情報提供を求められた隊長は、オクトの正体がタコのデーブだと教えた。
ノース・ウィンドはオクトがメデューサ血清を開発したことを突き止めていたが、その効果までは分かっていなかった。そこでペンギンズは、運び出した血清の瓶を提供した。オクトは本部のモニターをハッキングし、まだ大量に血清があることを教えた。オクトはベルリンやロンドンの動物園から、ペンギンたちを次々に誘拐した。ペンギンズはオクトの退治に出動しようと意気込むが、足手まといだと考えたシークレットは麻酔弾で眠らせた。
シークレットはペンギンズを段ボール箱に入れ、マダガスカル島へ送ろうと目論む。しかし4匹は空輸の途中で目を覚まし、飛行機から飛び降りた。他の飛行機に乗り換える作戦は失敗するが、何とか無事に着地した。繁華街に異動したペンギンズはアイルランドにいると思い込むが、実際は上海だった。ペンギン誘拐のニュースをテレビで知った4匹は、オクトが今まで追い出された動物園や水族館を標的にしていることに気付いた。
次に狙われるのが上海だと確信したペンギンズは段ボール箱に入ってトラックの荷台に隠れ、上海まで届けてもらうことにした。そこが上海なので、あっという間に4匹の段ボール箱は荷台から降ろされた。4匹はペンギンの人魚ショーが開催されている上海マリンワールドへ潜入し、オクトを発見した。隊長はリコとコワルスキーを配置に就かせると、新人には囮として人魚に化けるよう指示した。彼は「他の仕事を下さい。もっとチームのために、役に立ちたいんです」と言うが、隊長は「今のお前は、可愛い笑顔を見せていればいい。隊長を信じろ」と告げた。
オクトが新人におびき寄せられたので、ペンギンズは襲い掛かった。水族館の係員は新人が勝手に外へ出たと思い込み、水槽へ投げ込んだ。隊長たちはオクトを捕まえ、駆け付けたノース・ウィンドの前で自慢げな態度を取る。しかしシークレットがオクトを連行しようとすると、既に排水管を使って逃げた後だった。オクトは水槽に侵入し、水族館のペンギンと新人を拉致して逃亡した。ペンギンズがノース・ウィンドの飛行機を奪って追跡しようとするが、誤って自爆装置を起動させてしまった。
脱出したペンギンズは、ノース・ウィンドに捕まった。ノース・ウィンドは追跡装置を使い、デーブのアジトがある島を発見した。デーブは檻に閉じ込めたペンギンたちの前で実験台を使い、血清を使えば容姿が醜く変貌することを見せた。島に潜入したペンギンズとノース・ウィンドは、アジトの様子を観察した。隊長とシークレットは、どちらも相手を囮に使おうとして譲らない。そこでエバがコンペを提案し、両者が作戦を説明した。
シークレットから「上海ではデーブに逃げられ、部下をさらわれた」と言われた隊長は、彼らの作戦に従おうと決めた。ペンギンズは囮役としてデーブの手下たちを引き付け、その間にノース・ウィンドが基地へ潜入する。しかしデーブはノース・ウィンドを待ち受けており、簡単に捕獲した。隊長たちも捕まり、地下室へ送られた。デーブは隊長たちの前で、縛り付けた新人に光線を浴びせた。しかし予想とは違って新人の姿が消失したので、「崩壊してしまったのか」と彼は首をかしげる。
デーブは「次からはパワーを下げればいい」と軽く言い、その場から立ち去った。隊長たちは気付かなかったが、新人は間一髪で拘束を抜け出し、身を隠していた。基地を移動した新人は、処刑されそうになっていたノース・ウィンドを救出した。シークレットが作戦を立て直すために本部へ戻ろうとするので、新人は「隊長なら計画が無くても、凄い装置が無くても、仲間を見捨てたりしない」と訴えた。だが、シークレットは「我々はペンギンじゃない」と告げ、その場を後にした。デーブは捕まえたペンギンたちを潜水艦に乗せ、ニューヨークへ赴いた。彼は「オクト博士が行方不明のペンギンを見つけた」と騒ぐマスコミと観衆に、メデューサ血清で変貌させたペンギンたちの姿を見せた…。

監督はエリック・ダーネル&サイモン・J・スミス、原案はアラン・スクールクラフト&ブレント・サイモンズ&マイケル・コルトン&ジョン・アボウド、脚本はマイケル・コルトン&ジョン・アボウド&ブランドン・ソーヤー、製作はララ・ブレイ&マーク・スウィフト、共同製作はトリップ・ハドソン、製作協力はジェニファー・ダールマン&ダミアン・デ・フロヴァーヴィル、製作総指揮はトム・マクグラス&ミレーユ・ソリア&エリック・ダーネル、編集はニック・ケンウェイ、プロダクション・デザイナーはシャノン・ジェフリーズ、視覚効果監修はフィリップ・グラックマン、アート・ディレクターはルーベン・ペレス、音楽はローン・バルフェ。
声の出演はトム・マクグラス、クリス・ミラー、クリストファー・ナイツ、コンラッド・ヴァーノン、ジョン・マルコヴィッチ、ベネディクト・カンバーバッチ、ケン・チョン、アネット・マヘンドル、ピーター・ストーメア、アンディー・リクター、ダニー・ジェイコブズ、ショーン・シャルマッツ、ウェルナー・ハルツォク、スティーヴン・ケアリン、ケリー・クーニー、スーザン・フィッツァー、クリス・サンダース、エミリー・ノードウィンド、マイク・ミッチェル、ホープ・レヴィー、ウォルト・ドーン他。


ドリームワークス・アニメーションが製作した3Dアニメーション映画『マダガスカル』シリーズのスピン・オフ作品。
2008年からTVシリーズ『ザ・ペンギンズ from マダガスカル』が放送されており、その劇場版と捉えることも出来る。
監督は『マダガスカル』シリーズのエリック・ダーネルと『ビー・ムービー』のサイモン・J・スミス。
隊長役のトム・マクグラス、コワルスキー役のクリス・ミラー、新人役のクリストファー・ナイツ、モート役のアンディー・リクターは、本家シリーズと同じ声優陣。リコ役はジョン・ディマジオからコンラッド・ヴァーノンに交代。ジュリアン役のダニー・ジェイコブズは、TVシリーズの声優。
他に、デーブをジョン・マルコヴィッチ、シークレットをベネディクト・カンバーバッチ、ヒューズをケン・チョン、エバをアネット・マヘンドル、コーポをピーター・ストーメアが担当している。

まず冒頭、ドキュメンタリー作品っぽいナレーションが入り、ペンギンたちの様子が写し出される。しかし、すぐに隊長たちが喋り始めて、「それを撮影しているドキュメンタリー作品のクルー」ってのが写し出される。
つまり、ドキュメンタリーとしての体裁は、最初に入るナレーションだけだ。
そんな中途半端でチョロッとした表現だけで終わるなら、最初から入れない方がいい。
たぶん「撮影クルーが写る」というトコでオチ的に使っているつもりなんだろうけど、まるで機能していない。っていうか、邪魔。

「ドキュメンタリー作品の監督が面白い映像を撮影するため、崖っぷちのペンギンズを崖から突き落とす」という描写はあるけど、それも含めて要らない。
「ペンギンズが卵を助ける」という手順を消化するためだけに撮影クルーを都合良く利用しているのが、不恰好な形で見えちゃってるし。
しかも、そんな手助けが無くても、例えば「ペンギンズが誤って崖から落下する」ってことでも、まるで同じ展開を用意できるし、喜劇としても成立するし。

子供時代の隊長たちの様子から始めているってのも、上手い方法とは言えない。
これが「まだペンギンズが結成される前」ってことでの描写なら、それは分からなくもない。しかし、既に隊長は隊長としてのポジションを確立し、リコとコワルスキーを従えている。つまり、ペンギンズは子供時代から既に組織されていたってことになる。
でも、せっかく幼少期から始めるのなら「ペンギンズが結成される経緯」を描いた方がいいでしょ。あと、その頃から仲間として活動している新人が、成長しても「新人」のままなのは違和感があるし。
だから、どっちにしろ子供時代から描くんじゃなくて、『マダガスカル』シリーズより少し前の話や、3作の間に起きた出来事にでもしておいた方がいいんじゃないかと。

デーブが登場すると、「過去にペンギンズとこんな因縁がありまして」ってのを回想シーンで説明しているのだが、この構成は上手くない。
もちろん、それを現在進行形で描き、「それから10年後」という時代に飛ばす構成にするのは、もっと良くない。
ってことは、そもそも「ペンギンズが過去の因縁で恨みを買って」という内容にしていること自体が、失敗だったんじゃないかってことだ。
現在のペンギンズが、現在の出来事で恨みを買う羽目になるという形にしておいた方がいい。そうすれば、10年前のシーンなんて完全に要らなくなるわけで、一石二鳥じゃないかと。

途中から上海が舞台になることへの違和感が拭えず、「中国資本でも入っているのか」と思ったりもしたが、そういうことは無かった。
ってことは、単純に「中国市場を見据えた内容」ってことなのかもしれない。中国市場でヒットすれば、仮にアメリカ国内の興行で赤字を出しても充分に元は取れるしね。
ちなみに、この映画は製作費が約1億3千2百万ドルで、アメリカでの興行収入は約8千3百万ドル。
つまり、大幅な赤字を出して興行的には大失敗に終わっている。
中国での興行収入は不明だが、ちゃんと媚びは売ったんだし、きっと赤字は回避できたはずだ。

ペンギンズの面々をフィーチャーするんだから、その4匹を掘り下げるのかと思いきや、すぐにオクトやノース・ウィンドといった面々を登場させる。
そりゃあペンギンズだけで物語を構築することは難しいし、新しいキャラクターを登場させるのは当然のことだ。
ただ、それは一向に構わないのだが、「とりあえず新キャラを出しておけば見栄えが良くなるでしょ」という安易で雑な考えが見え隠れするのよ。
実際、そいつらが魅力的に描かれているか、充分に活用されているかというと、てんでダメなわけだから。

ほぼ出ずっぱりに近いペンギンズだが、「とにかくガチャガチャと動きまくり、喋りまくっているだけ」という印象が強い。
動きまくってくれるから、画的には次々に変化する。停滞しているという雰囲気は全く無いし、どんどん次の展開へと転がって行く。
だからテンポがいいと言えなくもないのだが、メリハリには欠ける。
なので、次々に物語が展開し、様々なアクションが繰り広げられる割りには、面白味が薄いという印象を受ける。

基本的にはファミリー向けのアニメーション映画であり、主なターゲットは低年齢層の子供たちだろうから、そんなに複雑な物語や深いドラマを用意する必要は無いと思うのよ。
ストーリーが単純明快なのは、決して悪いことじゃない。
ただし、「それにしても」と言いたくなるぐらい、ドラマとしての中身が薄っぺらいんだよね。
一応、始まってから40分ほど経過した辺りで「新人がチームの役に立ちたいと希望する」という要素は示されているけど、そこを使ったドラマは全く膨らまないのよ。

新人のドラマが膨らまないのも当然で、何しろ彼はデーブに捕まっちゃうからね。
それでも「捕まった新人の様子」を描くならともかく、隊長たちの方に集中しているから、しばらくは物語から消えているからね。
そして脱出した後も、「新人が自分の役割について悩み、現状を打破するために奮闘する」という展開なんて全く用意されていない。
「オクトがペンギンを醜く変貌させる」という話が進められる中で、「新人の悩み」という要素は完全に埋没している。いや埋没っていうか、そもそも使おうという意識が感じられない。

シークレットに「上海ではデーブに逃げられ、部下をさらわれた」と批判された隊長が珍しく落ち込み、指揮権を委ねる展開がある。
だが、「隊長の新人に対する思い」という要素も、そんなにうまく使われていない。
新人が「隊長なら計画が無くても、凄い装置が無くても、仲間を見捨てたりしない」とシークレットに訴える展開があり、そこでは「新人の隊長に対する思い」が示されているが、これまた上手く機能していない。
その理由は簡単で、その場だけで終わっているからだ。それが後の展開に上手く繋がっていない。

終盤、オクトはペンギンたちを結成で醜く変貌させ、それを見たニューヨーク市民がパニック状態で逃げ出すという展開がある。
だけど、「逃げ出すほど不気味な姿かなあ」と思ってしまう。そりゃあ確かに体の一部は変化しているけど、「もはやペンギンとは似ても似つかぬモンスター」ってほどじゃないのよね。
体が緑色っぽくなっていたり、「正気を失っているペンギンたちが人間たちをハグしようと追い回す」ってトコで、誤魔化している印象を受けるぞ。隊長たちが正気を取り戻し、目が飛び出してラリパッパ状態になっていたのが元に戻ると、その見た目は「可愛いと言われていた頃のペンギンズ」と大して変わらんのよね。
ホントなら、そこは「ペンギンたちが追い掛けるから人間が逃げ出す」ってことじゃなくて、「見た目が不気味だから敬遠する」という形じゃないとダメなんじゃないのか。そうじゃないなら、いっそのこと「見た目は変貌したけど、それでも人間たちが嫌わないのでデーブの目論みが外れる」という形にしちゃった方がいいし。
それと、幾ら姿の変貌したペンギンが走り回ったからって、すぐに害獣駆除業者が現れて捕獲するのは、さすがに無理があるだろ。

隊長たちを正気に戻した新人は光線をリバースさせて皆を元に戻そうと考えるが、それには血清に代わる要素として「キュートさ」が必要だと判明する。
そこで新人は自らが装置に入って犠牲となり、隊長たちが光線を発射する。ペンギンたちは元に戻り、新人は頭にトナカイの角が生えた姿へと変貌する。
隊長は彼に、「今回の冒険で学んだことは、見た目は関係ないってこと。何をするかが問題だ」と告げる。
だけど新人の姿って、普通に可愛いでしょ。ちっとも「光線のせいで醜く変貌した」という姿じゃないぞ。
だから隊長の言葉には、何の重みも無くなっちゃってるのよ。

それと、隊長は新人に「ウチのチームで一番役に立つメンバーだ」と言っているけど、それは「新人が自分は役に立たないと思っていた」ってのが前提に無ければ効果的に機能しない台詞だ。
もちろん前述したように、そう思っていることを示すシーンは用意されている。だが、終盤の展開では、その要素が完全に死んでいた。
そして「見た目の変貌してしまった新人に掛けてやる言葉」として隊長の台詞があるのだが、そこは上手く繋がっていない。
だって新人は、どんな風に見た目が変貌したかも分かっちゃいないし、そのことを気にする様子も無いわけだからね。

あと、「ペンギンは可愛いから人間に愛される。タコは可愛くないから嫌われる」という問題提起をしておきながら、そこを上手く閉じているとは思えないのよね。
本来なら、前述した隊長の「見た目は関係ないってこと。何をするかが問題だ」ってのが答えになるべきだろうと思うのよ。
でも、人間たちは見た目で判断しているわけで。
その台詞を機能させるためには、「ペンギンたち醜く変貌したが、その行動によって人間たちに愛される」という展開が必要だったんじゃないかと。

(観賞日:2017年1月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会