『パラノーマル・アクティビティ 呪いの印』:2014、アメリカ
2012年6月12日、カリフォルニア州オックスナード。リンカーン高校では卒業式が行われ、総代のオスカー・ロペスが卒業生の代表としてスピーチした。卒業式を終えたジェシー・アリスタは、友人のヘクター・エストレラ、姉のエヴェット、父のセザール、祖母のイルマに迎えれて一緒に写真を撮った。オスカーが来たのでジェシーが声を掛けると、母のアナと兄のアルトゥーロを紹介された。アパートに帰宅したジェシーはビデオカメラを借り、室内の様子や愛犬のチャボを撮影した。ジェシーは同じアパートに住む恋人のマリソルを見つけて声を掛け、「仕事が忙しくて行けなかった。でも料理を作った」と告げられた。ジェシーはヘクターに、下の部屋に住むアナが変人だと話す。アナは窓に新聞を貼り、外から見られないようにしていた。セザールの部屋の通気口はアナの部屋と繋がっており、夜中になるとうめき声のような変な音が聞こえてきた。
翌日、ジェシーは新品のビデオカメラを購入し、自動車修理店で働くヘクターに見せた。ヘクターはカメラを借りて撮影するが、ギャングに「カメラなんか向けやがって」と怒鳴られる。カメラを奪われそうになったヘクターは、ジェシーと共に逃走した。ジェシーは洗濯かごにカメラを取り付け、ヘクターに乗るよう指示した。ヘクターは嫌がりながらも承諾し、洗濯かごに乗って外の階段を滑り落ちた。かごから落ちたヘクターをジェシーが笑っていると、アナの部屋から「やめて」という叫び声が聞こえてきた。直後にオスカーが出て来たのでジェシーは「何してんだ?」と問い掛けるが、彼は無言のまま去った。
夜、ヘクターがアリスタ家のキッチンでイルマと酒を飲んでいると、アナの声が聞こえた。ジェシーはヘクターと寝室へ行き、ケーブルに繋いだカメラを通気口に入れた。すると全裸の若い女性が写し出されたので、ヘクターは興奮する。しかし全裸のアナが現れたので、彼はガッカリした。アナは指で若い女性の腹部に赤い丸を描き始めるが、カメラの方に視線を向けた。ヘクターはジェシーに指示し、急いでカメラを引き上げさせた。ジェシーは軽く笑うが、ヘクターは「あの女たち魔女なのかも」と口にした。
翌日、ヘクターとジェシーはマリソルに、昨夜の出来事を話した。ヘクターが「売春の元締めなのかも」と言うと、ジェシーは「妊婦も出入りしてたぞ」と告げる。近所の人々は、アナが魔女ではないかと噂していた。ジェシーは少年のイーバーを呼び、アナの家のドアを激しくノックして「おい魔女」と叫ぶよう指示した。すると外出していたアナが戻り、激怒してジェシーたちを追い払った。夜、ヘクターは叔父に貰った打ち上げ花火をジェシーに見せ、庭で遊ぼうとする。するとオスカーが飛び降り、そのまま逃走した。何台ものパトカーがアパートへ押し掛け、警官がヘクターたちに撮影を中止して部屋へ入るよう命じた。ヘクターたちが様子を見ていると、アナの遺体が部屋から運び出された。
翌日、犯人は捕まらず、警察は何の手掛かりも得ていない様子だった。ヘクターとジェシーはアルトゥーロがギャングのボスであることから、オスカーのことを警察には話さなかった。夜、ジェシーはヘクターに、アナの部屋を調べようと持ち掛けた。ドアには鍵が掛かっていたため、2人は裏口の窓から侵入した。冷蔵庫は施錠されており、室内には悪臭が漂っていた。アナは独り暮らしだが子供部屋があり、ベビーベッドが置いてあった。
子供部屋の棚には幾つものハサミやペンチが並んでおり、クローゼットには大量のビデオテープが保管されていた。ヘクターがテープを手に取ると、『ケイティーとクリスティ 1988年』とタイトルが書いてあった。2人が最後の部屋に入ると血だらけで、床にノートが落ちていた。彼らが部屋を出ようとするとアルトゥーロが現れ、「弟が殺したと思ってるんだろ。でもオスカーじゃない」と凄んだ。
次の日、ヘクターが昼まで寝ているジェシーを起こすと、彼は「変な夢を見た。農場に大勢の婆さんがいる夢だ」と語った。シーツには血が付いており、ジェシーは左腕を押さえて「何かに噛まれたかもしれない」と言う。チャボはジェシーを見て唸り声を上げ、彼が近付こうとすると逃げ出した。ジェシーはアナの部屋からノートを持ち出しており、それをヘクターとマリソルに見せた。ノートには多くの写真や絵が貼り付けてあり、あるページには「そのドアを作れば時空を移動できる」「ドアからは汚れた場所にしか行けない」と記されていた。ノートには地図が破算であり、別のページには中世の絵が貼り付けてあった。
絵を見たヘクターは、アナが全裸の女性に描いていたのと同じ印に気付いた。それは何かの儀式を描いた絵で、「いでよ、インキュバス。そなたを召喚する」という呪文が記されていた。3人は古いゲーム機で遊ぼうとするが、ジェシーがボタンを押しても全く動かなかった。しかし呼び掛けると応答したので、ジェシーは様々な質問を投げ掛けてみることにした。すると質問に応じてイエスとノーを的確に言い当てたので、3人は興奮した。そこへイルマが来たので、ジェシーはゲーム機の遊び方を説明した。するとイルマは「これで遊んじゃダメ。邪悪な魂が宿ってる」と注意し、ゲーム機を没収した。
ヘクターとジェシーはジェシーへ遊びに出掛けた帰り、2人のギャングに絡まれた。2人組はジェシーの鞄を奪い、殴り付けた。その直後、2人組は見えない力で激しく吹き飛ばされた。翌日、その様子を撮影した映像を、ヘクターとジェシーはマリソルに見せた。夜になり、3人は再びゲーム機を持ち出す。ジェシーが「貴方が倒したんですか」と訊くと、ゲーム機はイエスと答えた。しかし「守護天使ですか」という質問には「ノー」で返し、「いい奴?」と問い掛けると反応は無かった。
次の日、ジェシーはヘクターを呼び、人間離れした様々な能力が身に着いたことを教える。ヘクターは彼のパフォーマンスを撮影して動画をネットに上げるが、インチキ扱いされてしまった。車で出掛けた2人はパーティーが開かれている民家に入り、ペネロペとナタリアという女性たちをナンパした。彼らは女性たちをアパートに連れ帰るが、ジェシーの家に入ろうとするとイルマが待ち受けていた。ヘクターの家は大勢が住んでいるので、ジェシーはアナの家で楽しもうと考える。彼はペネロペとセックスするため、ヘクターにナタリアを連れて行くよう頼んだ。
ジェシーがコンドームを取りに自宅へ戻った後、ペネロペは床下から大きな物音を耳にした。床下を調べた彼女は隠し部屋を発見すると、中からオスカーが現れて引きずり込もうとした。ペネロペは悲鳴を上げて逃走し、戻って来たジェシーの前にオスカーが現れた。オスカーはジェシーに、「奴を入れられた。だからアナを殺した。俺は変えられた」と言う。彼が「君の中にもいるんだろ。同じ印がある」と右腕を見せると皮膚の中で虫のような存在が動いていた。オスカーは「こいつを止めるには死ぬしかない。誰かを殺す前に死ぬことだ」と告げ、イルマがジェシーを捜しに来ると逃走した。ジェシーが急いで追い掛けると、オスカーは飛び降り自殺した。
次の日、ヘクター、ジェシー、マリソルはオスカーを捉えた映像を確認し、隠し部屋に入った。するとジェシーの写真や、1994年11月3日に撮影された3人の女性の写真が置いてあった。女性たちは若い頃のアナ、亡くなったジェシーの祖母のマリア、そしてヘクターたちは知らないが3人目はロイスだった。さらにオスカーの写真もあり、壁には謎の模様が幾つも描かれていた。ドアが開いて誰かが入って来る音が聞こえたので、ヘクターたちは身を潜めた。黒ずくめの白人女性が去ったのを確認し、ヘクターたちは外へ出た。
帰宅したジェシーは家族に女性3人の写真を見せ、「母さんは俺を妊娠してる」と言う。「アナが何かしたから母さんは死んだのかも」と彼が話すと、エヴェットとセザールは否定した。異変を感じたジェシーは洗面所へ行き、目から黒い糸が出て来たので困惑した。ヘクター、ジェシー、マリソルはアルトゥーロを訪ね、オスカーが1ヶ月ほど前から話もしなくなって異常だったと聞く。オスカーの部屋の壁には世界中から集めた新聞記事や写真が貼り付けてあり、アルトゥーロは「自分みたいな人間が他にもいて、印があるって言ってた。魔女たちが集結しようとしてるって」と述べた。
記事は全て長男の誘拐事件に関する内容で、アルトゥーロはオスカーが養子だと明かした。オスカーは母親が彼を産んで死亡したため、アルトゥーロの家に引き取られていた。新聞の切り抜きの中で1つだけアリ・レイという女性に関する記事があり、彼女の電話番号もメモしてあった。買い物に出掛けたジェシーはヘクターに話し掛けられて激しい苛立ちを示し、マリソルと話す男に殴り掛かった。ヘクターとマリソルが制止しても彼は耳を貸さず、店主が出て行くよう要求するとバットを奪い取って脅しを掛けた。
翌日、ジェシーはヘクターとマリソルに、自分の力を制御できなくなっていることへの不安を吐露した。2人にゲーム機を使ってみるよう促されたジェシーは、もう自分に構わないよう呼び掛けるが拒否された。夜、ジェシーはチャボを捜してアナの家に行き、隠し部屋に入る。すると2人の幼女がいたので、彼は慌てて逃げ出そうとする。しかし隠し部屋の扉が見えない力で塞がれ、ジェシーは閉じ込められて何者かに襲われた。
翌日、ヘクターがジェシーの部屋に行くと、壁には「Meus」という謎の文字が記されていた。ヘクターが意味を尋ねると、ジェシーは何も答えなかった。「無視するなよ。親友だろ」とヘクターが言うと、彼は「親友なんかじゃない」と冷たく告げた。ヘクターはマリソルと会い、彼女が行った時もジェシーは冷たく無視したことを知る。ヘクターはアリに電話を掛けて事情を説明し、マリソルと共に会いに行く。アリはオスカーの部屋に残されていた印について、魔女集団の印だと教える。さらに彼女は、産婆たちが産まれる前の男児に印を付け、悪魔に憑依される年になるまで待つのだと説明した。
ジェシーもオスカーも悪魔の数字を足した18歳になったため、儀式が始まったのだとアリは語った。最後の儀式が終われば奇妙な行動は無くなるが、元の状態には戻れないと彼女は告げた。ヘクターがアパートに戻ると、イルマが「悪魔がジェシーの中に入ってる。助けて」と頼む。ジェシーは悪魔の力で天井にチャボを押し付け、不気味に笑っていた。イルマはヘクターとマリソルを伴って浄化できる男性の元を訪れ、助けを求めた。男性は奥の部屋へイルマを案内し、儀式を行った。
帰宅したイルマは教えられた通りに浄化の儀式を執り行おうとするが、ジェシーは無言で制止した。彼は悪魔の力で部屋を荒らし、意識を失って倒れた。イルマはジェシーをベッドに運び、祈りを捧げる。しかしヘクターが目を離した隙に、ジェシーはイルマを階段から突き落として姿を消した。マリソルはアリから魔女が最後の儀式を行う場所を聞き、嫌がるヘクターを説得して車で向かおうとする。しかし車は動かず、ジェシーが現れてヘクターに襲い掛かった…。脚本&監督はクリストファー・ランドン、原案はオーレン・ペリ、製作はジェイソン・ブラム&オーレン・ペリ、製作総指揮はスティーヴン・シュナイダー、共同製作はサムソン・ミュッケ&グレゴリー・プロトキン、撮影はゴンサーロ・アマト、美術はネイサン・アマンドソン、編集はグレゴリー・プロトキン、衣装はメアリールー・リム。
出演はホルヘ・ディアス、アンドリュー・ジェイコブス、ガブリエル・ウォルシュ、ケイティー・フェザーストン、ミカ・スロート、リチャード・カブラル、ノエミ・ゴンザレス、カルロス・プラッツ、デヴィッド・サウセド、レニー・ヴィクター、グロリア・サンドヴァル、フアン・ヴァスケス、カルロス・ロメオ・アラナ・フィゲロア、モリー・エフライム、アロンソ・アルヴァレス、クリストファー・M・パケット、アンジェリーナ・モラレス、エディー・ペレス、ジョーイ・アナヤ、ロドリゴ・ヴェラ、フランク・サリナス、キャサリン・トリビオ、ジジ・フェスホールド、シルヴィア・カリエル他。
「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ第5作。
次の『Activity: The Ghost Dimension』が『パラノーマル・アクティビティ5』という邦題で公開されたが、実際はシリーズ第6作。ただし今回は直接的な続編ではなくスピン・オフ的な内容なので、そういう邦題にしてあるんだろう。
シリーズ2作目から脚本を担当してきたクリストファー・ランドンが、今回は監督も兼任している。
ヘクターをホルヘ・ディアス、ジェシーをアンドリュー・ジェイコブス、マリソルをガブリエル・ウォルシュが演じている。
ケイティー役のケイティー・フェザーストンは、シリーズ1作目からのレギュラー。ミカ役のミカ・スロートは、2作目以来の登場。アリ役のモリー・イフラムは、2作目に続いて2度目の登場。このシリーズはPOV方式のモキュメンタリーだが、固定カメラの映像を多く使っているのが大きな特徴だった。しかし今回は固定カメラの映像を完全に捨て去り、ただのPOV方式になった。
固定カメラを放棄すると、「パラノーマル・アクティビティ」シリーズである意味が極端に薄れる。しかし一方で固定カメラを続けると、マンネリズムに陥ってしまう可能性が高い。
そこは悩ましい問題ではあるのだが、実はハッキリとした答えが分かっている。
それは「どっちにしてもマンネリズムだよ」ってことだ。
固定カメラを放棄した程度で、何とかなるようなレベルではない。冒頭、卒業式の様子を誰かがビデオカメラで撮影している。最初はヘクターがカメラを回しているのかと思ったが、卒業式の後のシーンを見る限り、彼も撮影される側だ。そしてジェシー、エヴェット、セザール、イルマも、やはり撮影される側だ。
そうなると、そのカメラを回している人間は誰なのか。
アパートに戻ったジェシーがビデオカメラを借りているけど、それを貸した人間は誰なのか。
ジェシーの知人や身内なんだろうってのは分かるけど、一度も登場しないし、紹介の手順は無いから、変な謎が残るんだよね。ジェシーはビデオカメラを購入し、ヘクターに見せに行く。この時、ずっと彼はカメラを回しながらヘクターの元へ向かっている。カメラを借りたヘクターはギャングに凄まれて焦るが、それでも撮影は続ける。洗濯かごにカメラを取り付ける時も、ずっとジェシーは撮影している。ヘクターが階段を滑り落ちる時には、洗濯かごに取り付けたカメラの映像を見せるのかと思いきや、「その様子をジェシーが撮影している」という映像が入る。
つまり、ジェシーは別にカメラを持っているってことだ。
アナの部屋を調べる時も、通気口に入れたカメラの映像だけでなく、「通気口にカメラを入れる様子」をヘクターが撮影しているカメラの映像が写し出される。洗濯室でチャボを遊ばせる時には、ジェシーもヘクターもカメラを持たず、洗濯機の上に置いて撮影している。
そこまでしてでも、とにかく常にカメラを回しておきたいのだ。ジェシーもヘクターも、とにかく何でもかんでも撮影したくて仕方がないのだ。
他愛無い会話をしているだけの時でさえ、ずっとカメラは回しっ放しにしている。パーティー会場に入ってペネロペたちをナンパする時でさえ、ヘクターとジェシーはカメラを回し続けている。ジェシーがアナの部屋で楽しもうとする時は、ヘクターがカメラを回している。
なので、このままだとヘクターとナタリアのパートだけが写し出されることになる。
でも、むしろ必要なのはジェシーの方なので、ここで都合良くジェシーがカメラマンの仕事をバトンタッチする。なぜジェシーが撮影を交代したのか、その理由は不明だ。
撮影は交代したジェシーだが、カメラは床に置いている。しかし撮影を放棄したわけではなく、ずっとカメラは回し続けている。
普通に考えれば、ジェシーがコンドームを取りに戻る時は、カメラも持って行くはずだ。しかし、それだとアナの部屋で起きる異変を撮影できないので、不自然であっても「カメラはアナの部屋に残す」という状況を用意しているのだ。POV映画が逃れられない問題として、「どんな状況でも登場人物がカメラを回し続けるのは不可解極まりない」ってことが挙げられる。
この作品も、この問題を解決することが出来ていない。それどころか、「常にカメラを回し続ける理由」さえ、マトモに用意していない。せいぜい「買ったばかりのビデオカメラだから」という程度だ。「ドキュメンタリー映画を撮影している」とか、「旅の記録として撮っている」とか、そういった明確な目的は無い。
なので巷に腐るほど存在するPOV映画の中でも、かなり「カメラを回す根拠」が希薄な部類に入るんじゃないか。
まあ、そもそも前述した問題を解決するのって、たぶん誰であろうと無理だろうけどさ。ヘクターとジェシーはアルトゥーロがギャングのボスだからってことで、「タレ込んだら殺される」という理由でオスカーのことを警察に言おうとはしない。
ところがマリソルから「逃げるオスカーを撮影した映像を消した方がいい」と忠告されると、「オスカーはカメラに気付いていなかった」「凄いスピードだったから写っていてもオスカーかどうかは分からない」と理由を付けて消そうとしない。
そこまで頑なに映像の消去を拒む理由は、サッパリ分からない。
っていうか、腑に落ちる理由なんて何も無いと断言できる。その後もヘクターとジェシーは、何があってもカメラを回し続ける。ジェシーはどんどんヤバい奴になっていくのに、それでもカメラを回すことだけは決して忘れない。
そして、そんなジェシーのヤバさを感じ取っているヘクターも、彼を救うことよりもカメラを回すことを優先する。終盤のヘクターなんて、恐ろしい目に遭って逃げることだけで精一杯のはずだが、それでもカメラは回し続ける。
このシリーズに登場する他の面々と同じく、彼らはカメラを回すことに取り憑かれているのだ。
悪魔が誰かに取り憑く恐怖を描くシリーズだが、そこまで異常なほどカメラに取り憑かれているのも、同じぐらい怖い。(観賞日:2020年10月25日)