『パラノーマル・アクティビティ4』:2012、アメリカ

2006年9月、カリフォルニア州カールズバッド。クリスティーはビデオカメラを回して、ケイティーとハンターを撮影した。ケイティーはハンターを抱き、彼にネックレスをプレゼントした。2006年10月9日、ハンターは誘拐された。悪魔憑きのケイティーがクリスティーとダニエルを殺害し、ハンターを連れ去ったのだ。ケイティーとハンターの行方は、今も分かっていない。
2011年10月31日、ネバダ州ヘンダーソン。15歳のアレックスは6歳になる弟のワイエット、父親のダグ、母親のホリーと幸せに暮らしている。両親が出掛けた後、アレックスは恋人のベンや友人たちと自宅でビデオゲームに興じる。アレックスとベンが庭にある子供の家へ行くと、ワイエットと同年代の男児がいた。アレックスは驚くベンに「向かいに住んでる子ね」と言い、男児に「家まで送ってあげる」と優しく語り掛けた。家まで送り届けたアレックスが名前を尋ねると、彼は「ロビー」と告げた。
翌朝、アレックスはベンに、「ロビーの家はシングルマザー。仕事で忙しくて、あまり家に帰って来ないらしい。引っ越してくる前も、夜中に隣の家で遊んでたんだって」と語った。夜、アレックスがベンとライブチャットをしていると、向かいの家に救急車が来た。次の日、ロビーの母が入院したため、アレックスの家で彼を預かることになった。ホリーから「他に親戚もいないので仕方が無い」と言われたアレックスは、不安を覚えた。
アレックスとワイエットは、寝室へロビーを案内した。ロビーは「特別な物」としてフォークを見せ、それは未来を教えてくれるのだと言う。夜、アレックスはベンとライブチャットで話し、両親が円満ではないが離婚は無いだろうと語る。ベンは「倦怠期じゃないのかな」と言うが、アレックスは「目も合わせない」と告げる。アレックスが席を外したので、ベンは何度か呼び掛ける。戻って来たアレックスは、「ロビーがキッチンに立って、開けっ放しの裏口をじっと見てた。ヤバすぎでしょ。気持ち悪い子」と語った。
翌朝、ベンはチャットの動画をアレックスに見せて、「パソコンが自動的に録画していた」と釈明する。映像を見たアレックスは、ロビーが深夜に部屋へ来て隣で寝ていたことを知る。彼女はホリーに事実を離して「気持ち悪い」と訴えるが、数日だけ我慢するよう言われる。アレックスが子供の家へ行くと、ワイエットとロビーがいた。ワイエットは「ロビーの友達がそこにいる」と、誰もいない場所を指差した。アレックスは「ホントだ。はじめまして」と芝居をするが、ロビーは無表情のまま「見えてないでしょ」と指摘した。
ベンがリビングへ行くと、ワイエットがビデオゲームで遊んでいた。ソファーに座ったロビーは「ワイエットが僕の友達と対戦してる」と言い、トビーのことを口にする。アレックスが来ると、ベンは部屋の電気を消してカメラの暗視モードを使う。彼は全員に音楽に合わせて踊るよう促すが、ロビーはソファーに座ったまま動かなかった。後で映像を再生したアレックスとベンは、ロビーの近くで煙のような何かが動いているのに気付いた。
第1夜 2011年11月6日。深夜に物音で目を覚ましたアレックスは、家の中を調べた。子供部屋へ行くとアレックスの予想通り、ロビーの姿は無かった。リビングに移動したアレックスは、ロビーを見つけて呼び掛けた。彼は誰かと話している様子だったが、アレックスから質問されると「別に」と答えた。天井から大きな物音が響き、ロビーは走ってリビングを去った。翌朝、アレックスはロビーを撮影した映像をベンに見せ、正体不明の何かが横切っていることを教える。ダグが来たのでアレックスは彼にも見せるが、作った映像だと思い込んで軽く笑うだけだった。アレックスはベンに、自宅のパソコンのカメラを自動録画設定にするよう頼む。彼女は母と弟のパソコンやゲーム機の設定を密かに変更してもらい、全ての部屋が監視できるようにした。
第3夜 2011年11月8日。ロビーは深夜になってワイエットを起こし、キッチンやリビングで遊ぶ。目を覚ましたホリーが注意すると、彼らは子供部屋に戻った。翌日、アレックスが帰宅すると階段の上からバスケットボールが落ちて来た。ワイエットの仕業ではないかと思ったアレックスだが、子供部屋には誰もいなかった。アレックスが寝室にいると、階下で物音がした。気になった彼女が様子を見に行こうとすると、今度は大きな物音がした。
アレックスが廊下に出ると玩具が並べてあり、それは子供部屋の収納室まで続いていた。アレックスが収納室を確かめていると、子供部屋に置いてある電車の玩具が動き出した。怖くなった彼女が1階へ行くと、リビングのシャンデリアが揺れていた。キッチンのシャンデリアが眼前に落下し、アレックスが見上げると階段の上にロビーがいた。ロビーは「彼が撮るなって言ってる」と告げるが、何が起きているのか説明を認められると黙り込んだ。アレックスは「事故じゃない。ロビーが家に何か連れて来た」と両親に説明するが、まるで相手にしてもらえなかった。
第6夜 2011年11月11日。深夜に物音で目を覚ましたアレックスは、向かいの家に多くの車が停まっているのを目にした。外へ出た彼女が家に近付いて中を覗き込むと、大勢の女性たちが集まっていた。敷地に侵入して詳しく調べようとしたアレックスだが、突如として現れた女性に「ご用ですか」と話し掛けられたので慌てて逃げ出した。翌日、ワイエットが車の玩具を運転して遊んでいると、リビングの椅子が動いて邪魔をした。ワイエットが車を降りると、勝手に動き出した。
夜、アレックスはベンに昨夜の映像を見せた。ロビーはワイエットに「彼を見たい?」と問い掛け、付いて来るよう指示した。大きな物音を聞いたアレックスが子供部屋へ行くと室内は散らかっており、ワイエットとロビーは収納室にいた。ワイエットは上半身裸になり、体に幾つかの印が描かれていた。ベンは「彼を見られるように絵を描いた」と説明するロビーに「彼って誰?」と質問するが、「彼はアンタが好きじゃない」と拒否された。
第7夜 2011年11月12日。深夜にワイエットはリビングへ行き、見えない誰かと話す。次の日、アレックスが「なぜ夜中に起きたの?」と尋ねてもワイエットは口をつぐみ、ロビーは「言っちゃダメだよ」と釘を刺した。アレックスは子供部屋で撮影した時の映像をベンに見せ、ワイエットの体に描かれたのと同じ印が砂場にあることを指摘する。彼女はインターネットで検索し、それは悪魔が男児を手に入れる儀式で使われる印だと突き止めた。キッチンで料理をしていたホリーは、ワイエットの呼び掛けに気付いて返事をする。彼女が目を離した隙に、使っていた包丁は無くなっていた。
次の日、ロビーがワイエットを誘って向かいの家へ赴いたので、気付いたアレックスは急いで後を追う。彼女は玄関のドアをノックするが、応答は無かった。ドアが開いていたので、アレックスは中に入る。ワイエットとロビーがいたので連れ帰ろうとすると、ケイティーが現れた。彼女は退院したことを話し、ロビーを預かってくれた礼を述べた。ケイティーの様子を見たアレックスは、病気で入院していたとは到底思えなかった。ホリーは留守電にメッセージが入っていたことをアレックスに知らせ、ロビーは向かいの家に戻った。
第9夜 2011年11月14日。深夜にダグがリビングでテレビを見ていると、物音がした。キッチンのテレビが勝手に付き、ダグが消しても再び付いた。天井から包丁が落下し、ダグは驚いた。翌日、ワイエットはアレックスからロビーの家へ行った理由を問われ、「あの人に会いに」と答えた。ケイティーから何を言われたのかアレックスが訊くと、彼は「僕もロビーも養子だから仲良くなれるんだって」と話す。ケイティーはワイエットが養子だと知っており、「もう一つの家族に帰れ」と促していた。
第10夜 2011年11月15日。深夜に子供部屋のドアが開き、ワイエットはリビングへ移動した。彼は見えない誰かと会話を交わし、「違う、僕はハンターじゃない」と声を荒らげた。翌日、アレックスはワイエットが子供の家でロビーと一緒にいるのを見つけ、急いで駆け寄った。するとロビーの姿は無く、ワイエットは「準備が出来たって言ってた。僕の番だって」と口にした。夜、入浴したワイエットは、大きな物音を耳にした。彼は浴槽に引きずり込まれ、しばらくすると水面に顔を出した…。

監督はヘンリー・ジュースト&アリエル・シュルマン、原案はオーレン・ペリ、原案はチャド・フィーハン、脚本はクリストファー・ランドン、製作はジェイソン・ブラム&オーレン・ペリ、製作総指揮はアキヴァ・ゴールズマン&スティーヴン・シュナイダー&クリストファー・ランドン、共同製作はグレゴリー・プロトキン&アレグラ・クレッグ、製作協力はジェームズ・モーラン、撮影はダグ・エメット、美術はジェニファー・スペンス、編集はグレゴリー・プロトキン、衣装はリア・バトラー。
出演はケイティー・フェザーストン、キャスリン・ニュートン、マット・シヴリー、エイダン・ラヴカンプ、ブレイディー・アレン、スティーヴン・ダンハム、アレクソンドラ・リー、ジョージカ・ペタス、アリーシャ・ボー、ブレンドン・エガートセン、コンスタンス・エスポジート、タイ・ドーソン、ジョナー・パスコ、ライトー・ドイル、タマラ・バーセイン、タジ、ジョン・デュアラー、ジェイク・プロトキン。
声の出演はジェニファー・ヘイル、ロバート・クロットワーシー、エスター・オースティン、メアリー・ペイン・モーラン。


シリーズ第4作。
監督のヘンリー・ジュースト&アリエル・シュルマン、脚本のクリストファー・ランドンは、いずれも前作からの続投。
ケイティー役のケイティー・フェザーストンは1作目からのレギュラー。
アレックスをキャスリン・ニュートン、ベンをマット・シヴリー、ワイエットをエイダン・ラヴカンプ、ロビーをブレイディー・アレン、ダグをスティーヴン・ダンハム、ホリーをアレクソンドラ・リーが演じている。
スティーヴン・ダンハムは公開1ヶ月前に心臓発作で死去し、これが遺作となった。

今さら言うまでも無いだろうが、このシリーズはPOV方式のモキュメンタリーである。
「実際にあった出来事」と建て前で、「登場人物の誰かが撮影した映像を使っています」という設定になっている。
これまた今さら言うまでも無いことだろうが、もちろん何から何までフィクションである。前作に引き続いて、今回も「その映像は誰が提供したのか。どこから流出したのか」という説明は何も無い。
それが手抜き仕事であることは、わざわざ言う必要も無いだろう。

3作目において、全ての始まりはロイスたち魔女軍団が目的を果たすためにあったことが判明した。
2作目で言及された設定も合わせると、「魔女であるロイスは悪魔と取引し、その血筋で最初に産まれた男児を差し出すことを約束していた」ってことだ。
しかしジュリーは娘しか産まなかったので、ロイスは孫に期待することにした。
そしてクリスティーがハンターを産んだので、悪魔憑きのケイティーが彼を連れ去ったというのが時系列順に並べた簡単な経緯だ。

1作だけで終わるはずだったのに、大ヒットを受けてシリーズ化に繋がったことで、製作サイドは最初に想定したより遥かに大きな稼ぎを得ることが出来ただろう。
ただ、そもそも続編のことなんて考えずに「その場限りの恐怖」だけで1作目を作っているので、そこに新たな展開を持ち込もうとした時、まるで整合性が取れなくなっている。
例えば、ケイティーに憑依した悪魔がミカを殺す必要性は全く無い。そもそも悪魔の狙いはハンターにあるわけだから、そこで怪奇現象を起こしても何の意味も無い。
クリスティーの家での怪奇現象にしても、それが「ハンターを手に入れる」という目的のための手段として正しいとは到底思えない。

ホラー映画としては、「やたらと怪奇現象を起こす」という観客を怖がらせるための目的がある。そして劇中の悪魔には、「ハンターを手に入れる」という目的がある。
この2つの目的を果たすための作業が、上手く合致していない。
整合性が破綻している原因は他にも色々とあるが、そこが最も大きな問題だろう。
今さら取り返しが付かないので、もちろん今回も整合性は取れていない。「どうせ無理だから」と開き直ったのか、それとも最初から何も考えちゃいないのか、ますますデタラメ度数は上昇している。

1作目から3作目までは、「ケイティーと彼女の身内」が怪奇現象に見舞われる内容になっていた。それは時間を遡って描いていたからこそ、可能だったと言ってもいい。
何しろ1作目で「ケイティーか悪魔憑き」ってことが判明しているし、ミカは殺されている。2作目でクリスティーとダニエルが殺されているし、ハンターは連れ去られている。
とは言え、まだアリは残っているから、彼女を使えば身内で話を続けることも出来なくはない。ただ、もうケイティーがハンターを手に入れているので、今さら悪魔や魔女軍団がアリを狙う必要性が全く無い。
なので、ホントは何らかの形で「その後のアリ」を絡めた方が「パラノーマル・アクティビティ的サーガ」になるとは思うけど、それは色々と難しいだろう。

ってなわけで、この4作目ではケイティーと何の血縁も無い一家が標的になる。
しかし、そんな連中を標的にするからには、それなりの理由が必要になる。
ってなわけで、「実はワイエットがハンターだった」という設定を用意している。
ただ、「じゃあロビーってのは何者なのよ」と多くの人が言いたくなるんじゃないか。こいつの正体は最後まで謎で、「ロビーがハンターだと思わせる」とミスリードのためだけに配置されたキャラでしかないのだ。

そんなミスリードは全く要らないし安っぽいだけだが、そういうことは置いておくとしても、「真相が明らかになっても、ちゃんと存在意義のあるキャラとして造形する」ってのは最低限の仕事でしょ。
だけど、そこの作業を完全に無視している。
ロビーを育てている養母はケイティーなんだけど、そんなことをしている理由がサッパリ分からないしね。
ロビーを預けて、アレックスの家で色々な怪奇現象を引き起こす必要性も皆無だし。

あと、そもそもケイティーがハンターを他人の家に預けた理由って何なのかという疑問もあるぞ。
悪魔はハンターを手に入れたんだから、すぐに目的を果たせばいいはずで。
ケイティーの台詞からすると準備が必要だったみたいだけど、だからって他人の家へ養子に出す意味は無いし。ケイティーが何か子育てに従事できない環境に置かれているならともかく、ロビーを息子として育てているんだし。
どんなに強引なこじ付けを捻り出そうとしても、「ケイティーがハンターを養子に出した理由」は何も思い付かないわ。

それとさ、悪魔がハンターを手に入れて何をやりたかったのか、それがサッパリ分からないぞ。
「そいつに憑依して人間社会に入り込む」ってのがアメリカの悪魔では良くありそうなパターンだけど、そういう気配は無いんだよね。なぜか悪魔は、ケイティーに憑依したままだ。
どうやら、よっぽどケイティーの体が気持ちいいらしい(おっと、決して下ネタじゃないよ)。
もしかすると、ハンターに憑依するための準備に時間が掛かったってことなのか。だとしたら、拉致するまで、もう少し待てば良かっただけだし。

ロビーは「単なるガキンチョ」ってわけではなくて、悪魔の姿は見えているし、何か知っている様子はある。
ただ、たぶん「実はこういう立ち位置で」みたいなガッチリした設定は、たぶん用意していないだろうと思われる。
そんなロビーの扱いが顕著に表しているように、この映画の設定は粗さに満ち溢れている。
ホラー映画の場合、ある程度の不条理さや説明不足は「恐怖や不安を煽るための仕掛け」と許容されてもいいと思うんだけど、その領域を遥かに超越しているからね。ただ手抜き作業で雑になっているだけだからね。

(観賞日:2020年3月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会