『パラノーマル・アクティビティ2』:2010、アメリカ

カリフォルニア州のカールズバッド。ダニエルは娘のアリ、再婚相手のクリスティー、産まれて間もない息子のハンターと共に、新居へ引っ越してきた。お手伝いのマティーンも一緒で、愛犬であるジャーマン・シェパードのアビーも連れて来ている。アリはビデオカメラを回し、家族を撮影する。ダニエルはカメラを借り、ハンターに家の中を紹介した。クリスティーの姉であるケイティーが出産のお祝いに訪れ、ハンターを抱いて挨拶した。
アリは恋人のブラッドが遊びに来たので、ケイティーに紹介した。ケイティーは恋人のミカについてアリに訊かれ、「今日は出掛ける気分じゃないからって、家にいる」と答えた。外へ出ていた一家が戻ると、室内が激しく荒らされていた。お金や宝飾品は盗まれていなかったが、クリスティーがケイティーにもらったネックレスだけが無くなっていた。他の部屋が全て荒らされている中で、ベビールームと地下だけは何も変化が無かった。
1週間後、ダニエルは防犯の専門家を呼び、監視カメラを設置してもらう。ダニエルは24時間の監視が可能になること、暗視カメラがあることを説明してもらい、設置を依頼した。第1夜、2006年8月7日。プール用の掃除機が作動し、ダニエルは戸締まりを確認した。朝になり、アリはカメラを回しながらハンターを撮影する。視線を移した彼女は、、マティーンが呟きながら何か妙な動きをしているのに気付いた。アリが何をしていたのか尋ねると、マティーンはスペイン語で「悪い霊を追い払っていた」と説明した。
第2夜、2006年8月8日。ハンターが夜泣きしたので、ミカと遊びに来ていたケイティーが抱いてあやす。2006年8月9日、ミカが死ぬ60日前。ダニエルはミカに侵入者があったこと、監視カメラを取り付けたことを話す。クリスティーはケイティーに、「何も盗まれてないけど、まだ家にいるような気がするの。感じるの。子供の頃に良くあったような」と語った。クリスティーは物音が聞こえたので、ハンターを抱いてベビールームに行く。特に何も無かったので彼女が部屋を出た後、ベッドメリーが勝手に動いた。
第3夜、2006年8月9日。ハンターはベッド立ち上がり、何かをじっと見つめて手招きした。朝、クリスティーはアリに幼い頃のケイティーの写真を見せた。アリはマティーンに、両親も自分も夜は出掛けることを話した。第5夜、2006年8月11日。異変を感じたマティーンが屋内を調べていると、大きな物音が響いた。ハンターが泣き出したので、彼女は慌ててベビールームに駆け込んだ。マティーンはハンターを抱いて1階に戻り、線香を焚いて除霊の清めの儀式を始めた。
そこへダニエルとケイティーが帰宅し、その行為を咎めた。ダニエルは線香を消すよう命じ、ケイティーがハンターをベビールームに戻す。朝になり、ダニエルはマティーンに2ヶ月分の給料を渡して解雇を通告した。マティーンは危険が迫っていることを訴えるが、ダニエルは耳を貸そうとしなかった。クリスティーはハンターにカメラを向け、「パパが喜ぶよ」と告げる。彼女は「こっちだよ」と呼び掛けるが、ハンターは何かを追うように別の場所ばかり見ていた。アリはマティーンをクビにしたと知り、ダニエルに不満をぶつけた。
第8夜、2006年8月14日。ハンターが泣き出したので、クリスティーがベビールームへ行って抱き上げた。彼女がハンターをあやしていると、ドアが勝手に開いた。クリスティーが窓から外を見ていると、大きな衝突音がした。朝になり、ダニエルは鳥の死骸を袋に入れて処分した。第10夜、2006年8月16日。キッチンに吊るしておいたフライパンが落下し、クリスティーは元の場所に戻す。しかし再びフライパンが落下し、クリスティーは怖くなって逃げ出した。
朝、ダニエルは遊びに来たミカに「幽霊がいるらしい。フライパンが落ちた。彼女は何でも霊に結び付けるんだ」とクリスティーを茶化すように話す。ミカは彼に「ケイティーも同じだ。子供の頃、霊と交信していたらしいよ」と教え、軽く笑った。クリスティーはダニエルが馬鹿にした態度を取ることに腹を立て、何度もプールクリーナーがプールサイドへ出ている出来事を指摘する。しかしダニエルは「誰かが泳ぐ時に外へ出しているんだろう」と言い、異変が起きていることを認めようとしなかった。
クリスティーの要求で、一家は監視カメラの映像を確認した。深夜にプールクリーナーが外へ出る様子が写っていたが、ダニエルとアリは位置設定のミスとしか考えなかった。アリはダニエルに、「霊は大歓迎よ。いい霊かもしれない」と笑いながら語った。第12夜、2006年8月18日。ハンターは立ち上がって何かを見つめ、アビーは激しく吠えた。朝になり、ダニエルはプールクリーナーの謎について「水を逆噴射させれば外に飛び出す」とクリスティーとアリに説明した。
ダニエルはクリスティーをディナーに誘い、アリにハンターを任せて2人で出掛けた。ブラッドが遊びに来ると、アリはウィジャボードを始めた。幽霊に望みを尋ねると、「HNT」という答えが出た。ブラッドが帰った後、アリはリビングのソファーで転寝する。黒い影が接近するが、アリが目を覚ますと消えた。玄関のドアが少し開いていたのでアリは閉めるが、外で物音がした。アリが外へ様子を見に行くと、ドアは勝手に閉まって施錠された。裏口も鍵が掛かっており、アリは中に入ることが出来なくなった。
ハンターは見えない力に引っ張られ、宙に浮かび上がる。彼は直立姿勢で歩き出し、ベビールームを出て家中を歩き回った。彼は階段を軽やかに上がり、ベビールームまで戻った。ダニエルとクリスティーが帰宅すると、ハンターはベビーベッドに入っていた。アリは必死で事情を説明するが、ダニエルは頭ごなしに怒鳴り付けた。アリは「寝ていたら何かに呼ばれた。気配を感じた」と訴えるが、ダニエルは信じようとしなかった。
朝になってからアリはパソコンを開き、インターネットで悪魔について調べる。彼女は馬鹿にした態度を取るブラッドに、「人間が悪魔と取引した場合、その血筋で最初に産まれた男児を差し出さねばならない。約束が守られない場合、その家系に取り憑いて離れない」という解説文を見せる。アリは玄関のドアを閉まる監視カメラの映像を確認し、ダニエルに見せる。しかしダニエルは風で閉まったと決め付け、アリの主張に耳を傾けなかった。
第17夜、2006年8月23日。アリは物音に気付き、カメラを回しながら1階へ様子を見に行く。すると汽車の玩具が置いてあり、勝手に走り出した。夜が明けて、アリはクリスティーに昨晩の出来事を知らせた。彼女はクリスティーに、マティーンが「この家には悪霊がいる」と話していたことを教える。クリスティーは遊びに来たケイティーにアリから聞いたことを語り、「私も似たような経験をした。子供の頃に感じた恐怖に似てた。また起きているのかも」と言う。「何があったか覚えてない。いつも怯えてたことしか」と話す彼女に、ケイティーは苛立った様子で「ママはピリピリしてた。完全に無視するのよ。じゃないとママみたいに変になる」と告げた。
アリがアビーの散歩に出た後、クリスティーはキッチンで湯を沸かす。台所の棚が一斉に開いて中の物が飛び出したので、ケイティーは「来ないで」と叫んだ。戻ったアリから「何かあった?」と訊かれたクリスティーは、「ケイティーに言われた。この件について騒いだら事態は酷くなる。だから何も言わない」と語った。第19夜、2006年8月25日。アビーはベビールームを出て1階へ行き、激しく吠えた。アビーが何かに激しく吹き飛ばされ、声を耳にしたダニエルとアリが急いで駆け付ける。アビーが意識を失って倒れていたため、2人はクリスティーにハンターを任せて動物病院へ向かう。残ったクリスティーは悪魔に襲われ、地下室に引きずり込まれた…。

監督はトッド・ウィリアムズ、原案はマイケル・R・ペリー、脚本はマイケル・R・ペリー&クリストファー・ランドン&トム・パブスト、製作はジェイソン・ブラム&オーレン・ペリ、製作総指揮はスティーヴン・シュナイダー&アキヴァ・ゴールズマン、撮影はマイケル・シモンズ、美術はジェニファー・スペンス、編集はグレゴリー・プロトキン、衣装はクリスティン・M・バーク。
出演はケイティー・フェザーストン、ミカ・スロート、ブライアン・ボーランド、モリー・イフラム、スプレイグ・グレイデン、ヴィヴィス、セス・ギンズバーグ、デヴィッド・ビーレンド、ウィリアム・ジュアン・プリエト、ジャクソン・クセニア・プリエト。


2007年の『パラノーマル・アクティビティ』に続くシリーズ第2作。
監督はオーレン・ペリから『ドア・イン・ザ・フロア』のトッド・ウィリアムズに交代している。
脚本はTVドラマ『ミレニアム』『デッド・ゾーン』のマイケル・R・ペリー、『アナザー・デイ・イン・パラダイス』『ディスタービア』のクリストファー・ランドン、これがデビューとなるトム・パブストの共同。
ケイティー役のケイティー・フェザーストンとミカ役のミカ・スロートは、前作からの続投。
ダニエルをブライアン・ボーランド、アリをモリー・イフラム、クリスティーをスプレイグ・グレイデンが演じている。

続編ではあるが、物語としては前日談になっている。
1作目の続きから話を進めようとすると、同じ方式で描くのは難しいだろう。そこで、時間を遡って話を作ることにしたわけだ。
この2作目では、ケイティーが悪魔に憑依された原因を明かしている。いきなり完全ネタバレを書いてしまうが、クリスティーに悪魔が憑依されてしまったので、ダニエルが彼女を救うための身代わりとしてケイティーを選んだのだ。
でもダニエルとクリスティーも殺されるので、見事にバッドエンドである。
ただ、これで「ダニエルとクリスティーは助かりました。めでたし、めでたし」だと、それはそれで胸糞の悪い作品になるからね。まだ2人が死んだ方が、バッドエンドとしては心地良い(それを「心地良い」と表現していいのかどうかは微妙だけど)。

大まかに言うと、やっていることは前作と同じである。
なので、「何か起きそうで何も起きない」という時間が大半ってことだ。ほんの小さな怪奇現象が申し訳程度にあるだけで、ダラダラと退屈な時間帯が続くわけだ。
前作が大ヒットしちゃったもんだから、「同じことを繰り返せば受けるだろう」と製作サイドは勘違いしてしまったようだ。
前作は出会い頭のラッキーパンチに過ぎなかったのに、それを全く分かっちゃいなかったようだ。

「何か起きそうで何も起きない」と断言しちゃうと、ちょっと語弊があるかもしれない。
厳密に言うと、もちろん「何か」は起きている。ただ、それは「大きな物音がする」とか、「ハンターが何かを見つめる」とか、その程度だ。つまり、ザックリ言うと「コケ脅し」の連続に時間を費やしているってことだ。
ある程度の時間なら、それでも緊張感を持続させたり、観客の興味を引き付けたりできるだろう。
ただ、その「ある程度の時間」ってのは、この映画の製作サイドが思っているほど長くはないぞ。

前作と同じで、ホラーとしての演出は基本的に「急に何かが動く」「急に大きな音を出す」という方法となっている。ようするにジワジワと忍び寄る雰囲気で怖がらせるのではなく、ただ「不意を突く」という手口で脅かしているだけってことだ。
それはショッカー演出として定番であり、この映画だけがやっている方法ではない。ただ、同じような調子で同じようなことが繰り返されるだけなので、次第に慣れてくる。
もちろん急に大きな音が鳴ればビックリするけど、「ただそれだけ」としか感じなくなる。
慣れてくるってことは、飽きてくるってことでもある。そして、それは当然のことながら退屈を招くことになる。

前作と同じく、POV方式のモキュメンタリー・ホラーとして作られている。シリーズとして、そこは踏襲せざるを得ないだろうってことだったようだ。
前作は「この映像をパラマウント・ピクチャーズに提供してくれたミカとケイティーの家族、及びサンディエゴ警察に感謝する」という文字が最初に表示されていたが、今回も「遺族とカールズバッド警察が映像を提供してくれた」という設定になっている。
今さら言うまでも無いだろうが、もちろん真っ赤な嘘である。
さすがに、もはや「これは実際にあった出来事で、全ては本物の映像」と信じ込んでいるような観客はいないだろう。

前作と同じく、POV作品ではお決まりの問題が今回も含まれている。そこが前作の欠陥だとは思っていなかったのか、何も解消されていない。
前作の批評でも書いたが、その問題ってのは「どんな状況でも登場人物がカメラを手放さず回し続けるのは不自然」ってことだ。
監視カメラを設置してからは、その固定カメラの映像が残っているのは分かる。しかし、毎日必ず、手持ちカメラの映像も存在するのだ。
つまり、家族の誰かがずっとカメラを回しながら生活しているってことなのだ。
そりゃあ世の中にはカメラが大好きな人もいるだろうけど、そこを何の違和感も抱かずに受け入れることは難しいぞ。

それでも、まだ「家族の生活を撮影する」とか、「ハンターに赤ん坊時代の様子を見せるために記録しておく」という目的を設定すれば、かなり強引ではあるが納得できないこともない。いやホントは厳しいんだけど、まあ百万歩譲っておくとしよう。
ただ、それだけでは説明の付かないシーンも、この映画には含まれている。
例えば、アリがネットで悪魔について調べる時、なぜか彼女はカメラを回しているのだ。
そこで彼女がカメラを回す意味って、何も無いでしょ。その不自然すぎる行動は、さすがに何の説明も思い付かないわ。
アリが「今、下で物音がした気がする」とカメラを回して様子を見に行くのも、「余裕があるじゃねえか」とツッコミたくなるし。

クリスティーがプールクリーナーの問題を指摘した時、ダニエルとアリは彼女の要求に応じて監視カメラの映像を確認する。ところがアリが怪奇現象に襲われた時は、なぜか誰も監視カメラの映像を確認しようとしない。
次の夜になってから、ようやくクリスティーとアリは玄関のドアが閉まる映像を見る。
だけど、なぜ他の映像はチェックしないのか。そこで怪奇現象が起きているなら、他にも何か起きている可能性は充分に考えられるはず。その手間を惜しむような状況でも無いし。
そこで「全ての監視カメラの映像をチェックする」という行動が入らないのは不自然だし、御都合主義が下手すぎる。

前作は1万5千ドルという超低額の予算で自主制作されたが、口コミで人気が高まり、最終的には興行収入で1億ドルを超える大ヒットとなった。
私は問答無用の駄作だと思っているのだが、前作がヒットした理由については「ファースト・インパクト」が大きいと思っている。
出演者も監督も無名の超低予算映画で当初の上映館数も少なかったので、事前に情報を持っている人は皆無に等しかっただろう。そんな中、口コミで映画館に駆け付けた観客からすると、「こういう映画は初めてだ」という印象が強かったのではないだろうか。
POV方式のモキュメンタリー・ホラーは他にも色々とあるので、そういう意味では珍しくも何ともない。ただ、もう少し細かく分類したら、「今まで無かったタイプ」ってことになると言ってもいいだろう。

ただ、そのアイデアは、1作限りだからこと受けるわけで。つまり前作の大ヒットは、あくまでも一発屋としてのモノだったわけで。
それと同じことを繰り返しても、もはや大半の観客は仕掛けを知っている状況だ。
前作と違って、大ヒットを受けた続編としての2作目なので、おのずと事前に公開される情報も多くなる。だから前作と同じことをやっても、それだけで多くの観客を引き付けることは無理だ。
それはたぶん、かなりのバカでも分かることだ。

ところが製作サイドは驚いたことに、前作とほぼ同じことを漫然と繰り返しているだけなのだ。
どうやら製作サイドは、「かなりのバカ」という言葉では足りないぐらいのバカだったようだ。もしくは「同じことを繰り返すだけじゃダメ」なんてことは分かっているけど、ただ楽して儲けたかったので手抜き作業に終始しただけなのかもしれない。
どっちにしろ、観客を舐め切ったような仕上がりになっている。
終盤の展開は少しだけ派手さがあるけど、その程度で貯まった負債がチャラになるほど甘くはないよ。

(観賞日:2020年2月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会