『バッド・ウェイヴ』:2017、アメリカ

ヴェニス・ビーチで唯一の探偵免許を持つスティーヴ・フォードは、地域社会の指導者を自称している。彼はスケートパークの子供たちに、正しく生きるよう説く。探偵になる夢を持つジョンは、スティーヴに助手として雇ってもらった。彼は最初の仕事を任され、ノラというサモア系の家出娘を監視する。ノラが建物に入って行くので、ジョンは禁酒会だと推理して潜入した。しかし集団セラピーで最初に起立したリックは、セックス依存症だと告白した。次に指名されたジョンは、自分もセックス依存症だと嘘をついた。
セラピー終了後、ジョンはノラを尾行するが気付かれる。ジョンは「君のお兄さんたちが、僕の上司に捜索を頼んだ。家に帰ってほしいそうだ」と説明し、スティーヴの家へ行くよう頼む。ノラが承諾したので、ジョンは車でスティーヴの家まで送り届けた。彼が去った後、スティーヴはノラとセックスした。部屋の壁には、「不祥事を起こした刑事が探偵に」という新聞記事が飾ってある。ノラの兄2人が部屋に乗り込み、「妹に出しやがって」と激怒してスティーヴに殴り掛かった。
スティーヴは全裸のまま、窓から脱出した。スケボーで逃亡したスティーヴは、警官のビルに呼び止められた。ビルはスティーヴと気付き、「年寄りらしく、おとなしくしろよ」と呆れた。彼がパトカーで去った後、スティーヴはノラの兄たちに車で追われる。スティーヴはティーノのピザ屋へ行き、助けを求めた。ティーノが盗まれた車のことで嘆くので、スティーヴは取り戻すと約束して匿ってもらった。ティーノは車について、スパイダーの家の車庫にあると話した。
スパイダーは街の麻薬市場を仕切るボスであり、スティーヴは行くことを嫌がった。しかしティーノから約束を守るよう迫られ、仕方なくピザの配達を装って家へ行く。彼はトイレを借りるフリをして車庫に潜入し、ティーノの車を発見した。気付いたスパイダーの手下たちが発砲したので、スティーヴは慌てて車を発進させた。そのせいで道路に停めてあった別の車にぶつけてしまうが、そのまま彼は逃亡する。無残な姿になった愛車を見て、ティーノは泣いた。
スティーヴはティーノと別れ、親友のデイヴが経営するサーフショップへ行く。デイヴは離婚を迫る妻のアンから全財産を渡すよう要求されており、スティーヴに「在庫品は全て売るつもりだ」と話す。翌朝、スティーヴはデイヴとサーフィンに出掛けるが、「そろそろ犬を迎えに行かないと」と言う。彼は愛犬のバディーを、義妹であるケイティーの家に預けていた。弟が貯金を持ち逃げして以来、スティーヴはその妻であるケイティーと娘のテイラーを支えていた。 スティーヴはバディーをビーチで遊ばせた後、コーヒーショップに立ち寄った。そこへユダヤのルーという商売人が現れ、仕事を依頼する。彼は「落書きアーティストが俺の物件に描いてる」と言い、引き受けてくれればスティーヴの両親の家を譲り渡すと持ち掛けた。ルーは所有するアパートへ案内して落書きを見せ、4度も塗り直したことを話す。探偵事務所に戻ったスティーヴはジョンに落書きアーティストの捜索を命じ、散らかった机を探って両親の家の写真を見つけ出した。
スティーヴはデイヴから手を貸してほしいと頼まれ、彼の車に乗り込んだ。スティーヴはデイヴにイヤホンを渡し、「俺が指示を出す」と告げる。デイヴがレストランでアンと会う様子を、スティーヴは車から観察した。アンが離婚届にサインするよう迫ると、スティーヴは「サインするな。立ち去れ」とデイヴに指示する。しかしアンから「もう終わりなの」と冷たく言われたデイヴは、離婚届にサインして「店も全部くれてやる」と言い放った。
スティーヴはルーのアパートを張り込むが眠り込んでしまい、翌朝になると壁に落書きが描かれていた。事務所に赴いたスティーヴは、熟練の芸術家を当たるようジョンに指示した。彼が帰宅すると、ノラが待ち受けていた。スティーヴは困惑して「もう君とは会えない」と告げるが、ノラはセックスを求めた。そこへテイラーから電話が掛かり、スティーヴは「泥棒に入られた」と聞く。彼が家へ行くとテレビやゲーム機などが盗まれており、バディーもいなくなっていた。
スティーヴは隣の雑貨店へ行き、店主のラジーシュに監視カメラを確認させてほしいと頼む。金を要求されたスティーヴは仕方なく支払い、監視カメラのテープを貰う。ラジーシュは彼に、「2人のジャンキーが盗品と酒を交換しようとした」と教えた。スティーヴは2人のジャンキーを見つけて脅しを掛け、「犬はスパイダーに売った」と聞き出す。スティーヴはマフィンを手土産にスパイダーの家を訪ねてガレージの一件を謝罪するが、すぐに捕まってしまった。
スティーヴは事情を説明し、「今の姪にはバディーだけが慰めなんだ」と訴える。スパイダーの愛人であるルペはバディーを気に入っており、返すことを拒否した。しかしスパイダーはスティーヴに賠償金として4千ドルを請求し、24時間以内に支払えば犬を返すと約束した。スティーヴは金貸しのユリに接触し、5千ドルを貸してもらった。彼はルーと会い、2日以内に落書きの犯人を見つけ出せば両親の家は無料で取り戻せる約束を取り付けた。
ジョンは画廊を訪ねてオーナーに落書きを見せ、犯人がサルヴァトールという男だと突き止めた。スティーヴはスパイダーに金を渡すが、「犬はルペが勝手に連れて行った。大量のヤクも持ち逃げした」と聞かされる。スパイダーが「ルペとヤクを見つけてくれたら金は返す」と持ち掛けると、スティーヴは金を3倍にする条件で承知した。スパイダーは彼に、ルペの妹であるコンスエラが『ラ・ペトランカ』というバーの常連であることを教えた。
ジョンはバーへ行き、バーテンダーと話してルペとコンスエラが『ハリウッド・プレミア』というモーテルにいることを知った。彼から報告を受けたスティーヴは、すぐにモーテルへ向かった。アパートの張り込みに向かうジョンは、ノラと遭遇した。彼女がサルヴァトールのファンで「顔を見てみたい。一緒に連れてって」と言うので、ジョンは同行を許可した。しかしジョンが車内でノラに誘われてセックスしている間に、サルヴァトールはアパートの敷地に忍び込んだ。
スティーヴはルペとコンスエラの外出を確認し、2人が泊まっている部屋に侵入したるバディーを見つけた彼は立ち去ろうとするが、そこへドラァグクイーンのジジが現れた。メイクアップアーティスト志望だったジジはスティーヴを殴り付けて椅子に拘束し、女装させて顔にメイクを施した。彼は剃毛しようとするが、スティーヴは拘束を外して殴り倒した。スティーヴはバディーを連れて、モーテルから脱出した。彼が帰宅するとユリが用心棒と共に待ち受けており、金を返せと要求した。「返済は1週間後だろ」とスティーヴが言うと、ユリは「1日だ」と告げる。彼は「今から分からせてやる」と述べ、用心棒にスティーヴを殴らせた。
翌朝、ルーは新たに描かれた落書きをスティーヴに見せ、「もう時間が無い。明日は中国人が来る。何とかしろ」と言われる。スティーヴは昼間から酒を飲んでいるデイヴの元へ行き、「5千ドルと利子を返さないと殺される」と相談する。デイヴはセールで稼いだ金を渡し、スティーヴはユリに借金を返済した。ジョンはサルヴァトールを発見し、スティーヴに連絡を入れた。スティーヴはアトリエへ乗り込んでサルヴァトールを取り押さえ、全て話すよう要求した。スティーヴがアトリエから出て来ると、スパイダーが手下のオスカーと共に現れた。スパイダーはスティーヴに、「24時間以内にブツを見つけろ」と釘を刺した…。

監督はマーク・カレン、脚本はマーク・カレン&ロブ・カレン、製作はローラ・フォード&ニコラス・シャルティエ&ゼヴ・フォアマン&マーク・カレン&ロブ・カレン、製作総指揮はヴァレンティナ・ガーダニ&パトリック・ニュウォール&スティーヴン・イーズ、製作協力はマーク・コトーン&ジャック・ドナルドソン&デレク・エリオット、撮影はアミール・モクリ、美術はグレッグ・グランデ、編集はマット・ディーゼル、衣装はレベッカ・グレッグ、音楽はジェフ・カルドーニ。
出演はブルース・ウィリス、ジョン・グッドマン、ジェイソン・モモア、ファムケ・ヤンセン、トーマス・ミドルディッチ、クリストファー・マクドナルド、モーリス・コンプト、アダム・ゴールドバーグ、カル・ペン、エリザベス・ローム、ビリー・ガーデル、ウッド・ハリス、ステファニー・シグマン、エミリー・ロビンソン、ジェシカ・ゴメス、アドリアン・マルティネス、ケン・ダヴィティアン、ヴィクター・オルティス、サミ・ロティビ、タイガ、ケヴィン・ブレズナハン、ロン・フンチェス、カレティー・ウィリアムズ、マイルス・ハンフス、コリン・ケイン、ビリー・ガーデル、キャンディス・コーク、ソル・ロドリゲス、インディア・ワッズワース、マイケル・スミス、ラルフ・ガーマン他。


『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』の脚本を手掛けたマーク・カレンが、映画初監督を務めた作品。
スティーヴ役のブルース・ウィリスがトップ・ビリングを務めるのは、2013年の『REDリターンズ』以来のこと。
その間に彼は9本の作品に出演している。
他に、デイヴをジョン・グッドマン、スパイダーをジェイソン・モモア、ケイティーをファムケ・ヤンセン、ジョンをトーマス・ミドルディッチ、オスカーをモーリス・コンプト、ルーをアダム・ゴールドバーグ、ラジーシュをカル・ペンが演じている。

冒頭、スティーヴは「俺と同じ過ちを繰り返すな。大麻に手を出したら次はコカインだ」などと熱く説いている。でも、それを話している相手はスケートパークへ遊びに来た12歳以下の少年たちだ。
なので、「子供たちは唖然とする」とか、「スティーヴは相手にされない」と行った反応になるのかと思いきや、ちゃんと聞いている。
で、そこからスティーヴたちがスケボーで遊び始めてタイトルロールに突入する流れなのだが、それだと綺麗に区切りが付いたとは到底言えない。
そこは何かオチが無きゃダメな雰囲気だぞ。

集団セラピーのシーンは、リックがセックス依存症について話すけど、そこに集まった全員がセックス依存症なのかどうかは判然としない。
また、ジョンがセックス依存症を装って適当な嘘を喋るるが、今一つ弾けた内容になっていない。
参加者が困惑した様子を見せたり、途中で発言を終わらせたりしているけど、そこまで引くような内容でもない。
ジョンは「相手は誰でもいいが、18歳以下は駄目だ。むしろ熟女好きで、百歳でもいい」などと語るけど、アブノーマルをアピールする狙いとしてはパンチ力が弱すぎる。

ノラをスティーヴの家まで送り届けたジョンが去った後、カットが切り替わると「スティーヴがノラと激しいセックスをしている」という様子が写し出される。
笑いの作り方としては、大きく間違っているわけではない。しかし、そこがスティーヴの2度目の登場シーンってことが間違いだ。
初登場のシーンで子供たちに正しく生きることを説いているので、ひょっとすると「それなのにノラとセックスする」というトコで笑いを狙ったのかもしれないが、そうじゃないでしょ。
むしろ、女好きを先にアピールしておいた方がいい。

全裸でノラの兄たちから逃げたスティーヴはビルに呼び止められると、拳銃を尻の割れ目に挟んで隠す。
でも、ビルが全く気付かずに去るだけで終わっちゃうので、これだと喜劇として無意味に近い。
「拳銃所持がバレないよう尻の割れ目に隠す」ってのは、「これから笑いを取りに行く」というスタート地点に立ったのと同じような状態なのよ。
そこから何か別のネタを乗っけないと、喜劇のシーンとしては弱くなってしまうのよ。

スティーヴがアパートを張り込んでいる内に眠り込んでしまうエピソードでは、翌朝に目を覚ますと落書きが完成している。それだけではなく、スティーヴの後頭部も青いペンキが塗られている。
でも、これだと何の笑いにもならないでしょ。
まず、後頭部を青く塗り潰しているだけってのが弱すぎる。スティーヴにも落書きするなら、何か絵を描くか、せめて文字ぐらい残してくれないと。青色であることに何か意味があるならともかく、そうでもないし。
また、「車を降りたスティーヴが振り向いたら、後頭部が青く塗られている」という流れなのだが、その落書きをバラすタイミングもイマイチ。

スティーヴは家で待ち受けていたユリから金を返すよう迫られた時、「返済は1週間後だろ」と言っている。しかし彼がユリに金を借りるシーンで、「返済日は翌日」と説明されている。
だから、そこで「1週間後じゃないのか」と驚くのは筋が通らない。
ただ、返済日が翌日であっても、まだ期限は来ていない。なので「まだ1日あるはずだ」と主張できるはずであり、そう言わないのは変だ。
それと、もうユリが「今から分からせてやる」と言った時の用心棒の動きで、こいつに殴らせるつもりなのはバレバレだ。なので、「スティーヴがパンチを浴びました」ってトコで翌朝のシーンに切り替えているけど、それだとオチが付いてないのよ。

映画が始まると早々にジョンがナレーションを語り、彼が進行役を担当している。
なので、彼は基本的にスティーヴと行動を共にするのかと思いきや、まるで違っていた。むしろ、映画の大半でジョンはスティーヴと別行動を取っている。それぞれが別の仕事を担当しており、この2人によるコンビネーションは皆無と言ってもいい。
ここをバディーとして使わないのなら、ジョンって要らなくないか。彼が担当する仕事の大半は、スティーヴに任せても問題は無いし。
むしろ、そのエピソードによってメインに据えたキャラが笑いを発信しようとするので、その担当者が分散してしまうというデメリットが生じている。
ダブル主演ってわけでもないんだし、スティーヴだけにすればいいのよ。助手を置くにしても、その扱いは大幅に変更してしまった方がいい。

後半に入ると、スティーヴがコンビを組んで行動する展開に入る。しかし、ここでコンビを組む相手はジョンじゃなくてデイヴだ。
じゃあジョンの存在意義って何なのかと考えた時に、「いなくてもいいだろ」と思ってしまう。
ノラと付き合うようになるとか、そのおかげでノラの兄2人がスティーヴに協力してくれるとか、それなりに役割は与えてもらっている。
ただ、他の脇役キャラと比較しても、存在意義は薄いんだよなあ。

ブルース・ウィリスは『ダイ・ハード』の大ヒットでブレイクしたせいで、どうしてもアクション俳優として見られがちだ。実際、それ以降はアクション映画への出演が多かった。
ただ、そもそも彼は、TVドラマ『こちらブルームーン探偵社』で人気が出た俳優だ。なので本作品は、ある意味では原点回帰と言えるかもしれない。
しかし『ハドソン・ホーク』が大コケしたように、コメディー・センスがあるかってのは微妙なトコなのだ。
今回は『ハドソン・ホーク』のように「はしゃいだら空回り」ってことではなく、「落ち着いたトーンで笑いを取りに行ったら外した」という形ではある。
ただ、どっちにしても、コメディーとして寒々しいってのは同じだからね。

(観賞日:2019年8月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会