『ベスト・キッド4』:1994、アメリカ
カリフォルニアに暮らす老人ミヤギは、沖縄出身で空手の達人だ。ある時、第二次世界大戦時の日系アメリカ人の活躍を表彰する受賞式に出席するため、ワシントンを訪れていた。表彰式の会場で、ミヤギは亡き戦友ジャック・ピアースの妻ルイーザと再会する。
ルイーザの暮らすボストンの家に招待されたミヤギは、そこで彼女の孫娘ジュリーと会った。ジュリーは両親を交通事故で亡くして依頼、ルイーザに反抗的な態度を取るようになっていた。ミヤギはルイーザに、カリフォルニアの自分の家に移らせる。そしてミヤギはルイーザに代わって、しばらくの間、ジュリーの家で暮らすことにした。
ジュリーの通う高校では、デューガン大佐が率いる自警団“アルファ・エリート”が学校を取り仕切っていた。アルファ・エリートのリーダーであるネッドはジュリーに言い寄って断られ、彼女がタバコを吸っていたとデューガンに嘘の報告をする。
ジュリーはエリックという同級生と親しくなる。彼はパイロットになることを夢見ており、空軍士官学校への推薦をデューガン大佐から貰うため、アルファ・エリートに入っていた。だが、彼は過剰な暴力に訴えるアルファ・エリートの行動には否定的だった。
2週間の停学処分を受けたジュリーを、ミヤギは旧友のいる禅寺へと連れて行き、空手の練習を積ませた。学校に復帰したジュリーは、アルファ・エリートを辞めたエリックからプロムに誘われる。だが、デューガン達がジュリーとエリックを狙っていた…。監督はクリストファー・ケイン、脚本はマーク・リー、製作はジェリー・ワイントローブ、製作協力はスーザン・イーキンズ、製作総指揮はR・J・ルイス、撮影はラズロ・コヴァックス、編集はロナルド・ルース、美術はウォルター・P・マーティシウス、音楽はビル・コンティ。
出演はノリユキ・“パット”・モリタ、ヒラリー・スワンク、マイケル・アイアンサイド、コンスタンス・タワーズ、クリス・コンラッド、アーセニオ・トリニダード、マイケル・キャヴァリエリ、ウォルト・ゴギンズ、ジム・イシダ、ロドニー・カゲヤマ、セス・サカイ、ユージーン・ボールズ、キーナ・キール、トム・オブライエン、トム・ダウニー、ブライアン・マクグレイル、ウェイン・チョウ他。
主人公がダニエル少年から少女に変更されたシリーズ第4弾。
ミヤギをノリユキ・“パット”・モリタ、ジュリーをヒラリー・スワンク、デューガンをマイケル・アイアンサイド、ルイーザをコンスタンス・タワーズ、エリックをクリス・コンラッドが演じている。話のパターンは今までと全く一緒。主役がいて、主役に敵意を抱くボンクラがいて、ミヤギが主役に空手を教えて、主役がボンクラを倒す。敵の性格は毎度の如く、カッとなりやすいアンポンタン。ついでにエリックもアンポンタン。
ただし1作目から考えると、パワーダウンは著しい。
既に3作目の段階で絞りカスさえ無かったのに、4作目を何の工夫も無く同じパターンで作ってしまうってのが凄い。
ただ主役の性別を変えただけ。
ワルとの対決ムードは全く盛り上がらない。
映画を締めくくるのは、漫画『ドカベン』の不知火もビックリの、ミヤギによるハエが止まるような超スロー回し蹴り。もう最初の段階でムチャをやらかしている。
「ルイーザをカリフォルニアに行かせて、ミヤギがボストンの彼女の家でジュリーと同居する」という展開に無理がありすぎ。
別にルイーザが一緒にいても構わないような気がするんだが。
よく彼女が承諾したよな。
大体さ、ミヤギとジュリーの家が近ければ、そんな奇妙な展開にしなくてもいいんだから、最初の設定を少し触ればいいでしょ。ミヤギがカリフォルニアからボストンに引っ越したとか、ジュリー達がボストンではなくカリフォルニアに住んでいるとかさ。今回のミヤギは、何かに例えてカラテを教える変わりに、その逆パターンを披露する。
ジュリーにカラテの型を教えて、それを利用してワルツの踊り方を学ばせるのだ。
名付けて「カラテ・ワルツ」だ。
おいおい、踊ってる暇があったらカラテやれよ、カラテ。劇中、ミヤギとジュリーは禅寺に行く。
でも、そこは石造りの修道院みたいな場所。
だけど住んでるのは坊さん。
ラジカセの音楽に合わせて、妙なダンスを披露する。
ミヤギ曰く、「ダンスも出来ない禅僧に、修行など無理だ」ということらしい。
禅寺(?)の敷地には、手入れされた石庭がある。
ミヤギは石庭の中で、ジュリーにカラテの練習をさせる。
せっかくの石庭が、足跡でメチャクチャだ。
そんな風に、一応はカラテの練習も積んでいるが、かなりノンビリとしたムードが流れる。この映画のコメディー映画としての最大の目玉は(コメディー映画じゃないってば)、ボストンに来た禅僧がボーリングをする場面だろう。
目を閉じて念じると、全てストライク。
名付けて「禅ボーリング」である。
なんとガターの溝に落ちたボールがラインに戻ってピンを倒したりする。
それ、禅じゃなくて超能力になっちゃってるぞ。いっそのこと、坊さん達の出番を大幅に増やした方が、かなりイケてるコメディーになったかもよ。
女の子がカラテの凄腕になるというギャップよりも、坊さんがボストンの町で料理したりボーリングしたりするギャップの方が、よっぽど面白いもんなあ。
しかし、これって完全なコメディー映画ではないのか。でも、コメディーじゃなくても、ジュリーが戦うより、坊さん達がアルファ・エリートの連中と戦ってくれた方が楽しめたような気がするなあ。
何しろ、坊さんが登場するシーン以外に、観るべきポイントが見当たらないんだよなあ。
第17回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門