『美少女探偵ナンシー・ドリュー』:2007、アメリカ
リバーハイツで暮らす高校生探偵のナンシー・ドリューは教会のクローゼットに隠れ、盗みを働く2人組を観察していた。クシャミのせいで見つかった彼女は、2人組が錠前師マクダフの手下で最近の連続強盗の実行犯だと指摘した。彼女は「検事の狙いはマクダフだから取引できる」と持ち掛け、告訴しないよう頼んでほしければセラピーを受けるよう促す。2人組は承諾するが、すぐに口論を始めた。ナンシーは約束が破られると悟って教会から脱出し、2人組は突入した警官隊に逮捕された。
ナンシーの父で弁護士のカーソンは、連絡を受けて現場に駆け付けた。カーソンが「大丈夫か」と心配すると、ナンシーは「探偵には良くあることよ」と軽く告げた。ナンシーはカーソンの仕事で、数ヶ月だけロサンゼルスで暮らすことになった。カーソンは「向こうでいる間は探偵を辞めてくれ」と頼み、ナンシーは承諾するフリをした。彼女は友人のネッドから餞別としてコンパスをプレゼントされ、向こうで謎を解くつもりだと明かした。
転居先の屋敷を決めたのはナンシーだが、かつてディーリア・ドレスコットが住んでいた場所というのが理由だった。25年前、人気絶頂時にディーリアは5ヶ月も周囲に何も言わず姿を消した。戻って来た彼女はパーティーを開くが、招待客と会わないままプールで遺体として発見されていた。ロサンゼルスに着いたナンシーとカーソンは、不動産屋のバーバラに案内されて屋敷に入った。すると邸内には映写機が仕掛けてあり、ディーリアの出演作が急に映し出されてナンシーを驚かせた。バーバラは楽しそうに、この家には色々な仕掛けがあることを明かした。彼女は隣のアパートに住む管理人のジョン・レッシングを紹介し、屋敷を後にした。
寝室に入ったナンシーは荷物を片付けようとするが、物音がしたので廊下を覗いた。誰もいないので部屋に戻ると、ベッドの上に置いた靴と資料が無くなっていた。彼女は警察に電話して盗難を伝えるが、馬鹿にして笑われた。夜中に物音がしたので、ナンシーは誰かが潜んでいると確信する。彼女は屋根裏部屋に飛び込むが、誰もいなかった。ナンシーは屋根裏部屋でディーリアの本を見つけ、挟んであった手紙に気付く。その手紙には「Zへ。急に消えてごめんなさい。先週、重大なことがあったの。ある人のために新しい遺言を書くわ。Dより」と綴ってあり、ナンシーはDがディーリアでZが恋人だと推理した。
翌日、新しい高校へ赴いたナンシーは、インガとトリッシュの2人に目を付けられた。インガたちはナンシーに皮肉を浴びせたり、カップケーキを盗んだりという嫌がらせを仕掛けた。インガは弟のコーキーに喉が詰まった芝居をさせ、蘇生術を学んだナンシーにキスさせようと目論む。しかしコーキーが笑い出したため、この策略は失敗に終わった。帰宅したナンシーは映写室を発見し、スタジオのディーリアを撮った映像を見た。そこへ来たレッシングはナンシーの質問を受け、「1971年に映画会社から派遣されて家の映写技師になり、そのまま彼女の世話をした」と答えた。
ディーリアは1981年11月29日、41歳で亡くなっていた。ナンシーはファンサイトを見つけ、撮影中のディーリアを捉えた写真に映り込む謎の男性に注目する。彼女は男の正体を突き止めるため、知っている人がいたら教えてほしいと書き込んだ。コーキーが来てキス未遂の件を謝罪し、姉に命令されたのだと釈明した。「ここは謎の家だよ、知ってるの?」と彼が言うとナンシーは「知ってる」と答え、ディーリア、の遺作『ニュー・センチュリー』の写真を撮影順に並べて見せた。彼女は失踪直前のディーリアの写真が全て胸から上だけであることから、妊娠していたのではないかと推察した。
復帰直後のディーリアを捉えた写真では着用しているバスローブにXの文字があり、ナンシーは隠れていた場所のマークだと睨んだ。写真に映る男は顔が見えない状態だが、それがZだとナンシーは確信した。衣装に詳しい人物に話を聞くため、彼女は映画スタジオを訪れた。スタジオでヤシの木のセットを目にしたナンシーは、Xがパームだと思い付く。ネットで調べた彼女は、ツインパームズ・バンガロー&スパというホテルを発見した。しかし彼女がホテルへ出向くと、20年前の火事で記録は消失していた。
ナンシーはホテルの近くにある病院へ行き、24年前に養女に出された赤ん坊の情報を調べようとする。すると担当の事務員は、郡が養父母に紹介する小児科医の記録を当たってみるよう助言した。ナンシーは該当する3人の新生児の情報を入手し、同姓同名の人物を片っ端から訪ね回った。彼女はアリーという娘と暮らすジェーン・ブライトンに会い、当該の養女だと知った。ナンシーはディーリアが実母であり、遺産を残した可能性があることをジェーンに伝えた。
ナンシーがコーキーと歩いていると、車が猛スピードで迫って来た。ナンシーは慌てて回避するが、ディーリアを調べているせいで命を狙われたのだと確信した。彼女は「ディーリアを調べるなら痛い目に遭うぞ」と脅迫電話を受けるが、全く怯まなかった。彼女は遺産管理弁護士のダシール・ザッカリー・ビーダーマイヤーに会って話を聞こうとするが、軽くあしらわれた。ナンシーがジェーンの元を再訪すると、「遺産の話は忘れて。もう放っておいて」と拒絶された。
その夜、ナンシーが寝室にいるとディーリアの幻影が出現し、「遺言書は中国製の箱の中」と教えて姿を消した。しかしレッシングに聞くと、その箱は美術商に売却されていた。ナンシーはカーソンからの電話で「少し早い誕生日プレゼントがある」と言われ、外に出るよう促された。彼女が外に出ると、リバーハイツで使っていたロードスターをネッドが運んで来てくれた。コーキーがナンシーと一緒にいて馬鹿にする態度を取るので、ネッドは激しい嫉妬心を覚えた。
ナンシーは中華街で美術商のルイを訪ね、箱を見せてもらうが中身は空っぽだった。彼女が車に戻ると、時限爆弾が座席に置いてあった。ナンシーは爆弾を工事中のマンホールに投げ込み、現場から逃走する犯人の車を追い掛けた。しかし同乗していたネッドから「お父さんの約束は破ってない?」と問われ、追跡を中止して家に戻った。「普通の子にならなきゃ」と考えるナンシーだが、それは一瞬で終わった。ネッドの何気無い言葉にピンと来た彼女は屋根裏部屋を調べ、秘密の通路を発見した。
ナンシーは通路から地下に移動し、洗濯室に抜けるトンネルを見つけた。彼女は誕生日パーティーを家で開くと決め、招待状を学校の面々に配った。ナンシーがジェーンの元へ行くと、立ち退き勧告を受けて姿を消していた。レッシングがトンネルを知っていたことが判明し、ナンシーは「貴方がZなの?」と尋ねるが返答は得られなかった。ネッドがリバーハイツに帰る時、ナンシーは遠回しに恋心を告白した。彼女が家にいるとジェーンが現れ、「児童保護施設がアリーを連れてった。何もしないのに私は母親失格だと」と嘆いた…。監督はアンドリュー・フレミング、キャラクター創作はキャロリン・キーン、原作はキャロリン・キーン、原案はティファニー・ポールセン、脚本はアンドリュー・フレミング&ティファニー・ポールセン、製作はジェリー・ワイントローブ、製作総指揮はスーザン・イーキンス&マーク・ヴァーラディアン&ベンジャミン・ウェイスブレン、共同製作はシェリルアン・マーティン、撮影はアレクサンダー・グラジンスキー、美術はトニー・ファニング、編集はジェフ・フリーマン、衣装はジェフリー・カーランド、音楽はラルフ・サル。
出演はエマ・ロバーツ、ジョシュ・フリッター、マックス・シエリオット、テイト・ドノヴァン、レイチェル・リー・クック、バリー・ボストウィック、ケリー・ヴィッツ、ダニエラ・モネ、キャロライン・アーロン、マーシャル・ベル、パット・キャロル、ローラ・エレナ・ハリング、エイミー・ブルックナー、ケイ・パナベイカー、クリフ・ベミス、アダム・クラーク、リッチ・クーパー、アダム・ゴールドバーグ、ダナ・リー、エミー・レイボーン、ロバート・メリル、ケイトリン・ヴァン・アイテム、ジョアン・バロン、ライアン・ラダッツ、エリサ・ダヴァロス他。
キャロリン・キーンの児童向け推理小説『少女探偵ナンシー』シリーズを基にした作品。
『ザ・クラフト』『セイブ・ザ・ワールド』のアンドリュー・フレミングが監督を務めている。
ナンシーをエマ・ロバーツ、コーキーをジョシュ・フリッター、ネッドをマックス・シエリオット、カーソンをテイト・ドノヴァン、ジェーンをレイチェル・リー・クック、ビーダーマイヤーをバリー・ボストウィック、トリッシュをケリー・ヴィッツ、インガをダニエラ・モネが演じている。
アンクレジットだが、強盗2人組の1人としてクリス・カッタン、映画俳優の役でブルース・ウィリス、病院の事務員役でエディー・ジェイミソンが出演している。冒頭シーンはナンシーが探偵であることを示すためにあるのだが、それにしては中身が粗いしピントがズレている。
巧みな弁舌で犯人にセラピーを承諾させるとか、約束がホゴにされると悟ったらスタントアクション的な動きで脱出するとか、そういうのって「いかにも探偵らしい行動」とは言えないんじゃないか。
犯人に探偵グッズを見せているのは、探偵であることをアピールす手法として下手過ぎるし。
そもそも、なぜクローゼットに隠れていたのかも良く分からないし。しかも、本来なら「高校生でありながら探偵をしている」ってのを見せておくべきだろうに、ナンシーの学生としての姿は全く描かない内にロサンゼルスへ移ってしまう。
いきなり地元であるリバーハイツから離れて暮らし始める展開は、どういう計算なのか。
これがシリーズの何作目かってとこなら、それも分からんではないよ。だけど1発目なんだから、地元で活躍する物語の方がいいだろ。
そうじゃないから、冒頭で登場させた地元の面々の内、ネッド以外は全く使われない。
それはどういう類の贅沢なのかと。さらに言うと、わざわざリバーハイツではなくロサンゼルスという場所を使ってナンシーの調査対象にするのは、1981年に起きた映画女優の失踪に関する謎。
持ち込まれた案件でもなければ、巻き込まれる事件でもない。自分から見つけた謎であり、しかも遥か前に起きている出来事。
仮に映画のシリーズ化を狙っていたとしても、一発目から変化球になってないか。
それとも私が未読だから知らないだけで、原作も全て変化球みたいなミステリーばかりなのか。ナンシーがロサンゼルスに引っ越した後、高校生活が描かれる。だが、これがディーリアの謎を調べる本筋とは全く関係が無い。
だからインガたちの嫌がらせは全く要らないし、コーキーとネッドの対立も探偵モノの本分とは上手く絡み合っていない。
さらに、唐突に「幻影のディーリアが出現して助言する」というオカルト要素も入って来て、散らかりまくっている。
しかもオカルト要素に関しては、その箇所だけで終了しており、完全に放り出されたままで終わっているし。時限爆弾のシーンは、実行犯の行動が色々とバカすぎる。
まず目的はナンシーを殺すことじゃなくて、脅しを掛けてディーリアの調査から手を引かせることのはずだ。殺すつもりなら、座席に爆弾を置かず、見つからない場所に仕掛けるはずだからね。
でも脅しとしては、爆弾は明らかにやり過ぎだ。下手すりゃナンシーが死んでしまう威力の爆弾なんだから。
あと脅しが目的なんだから、「ナンシー車に戻ったら残り10秒」という時限爆弾じゃなくて、リモコンか何かでタイミングを見計らって爆破できるような装置の方が確実だろ。
それと爆風で倒れたナンシーがネッドに起こされてから、車で逃げるってのも行動として変だし。粗筋では触れなかったが、ネッドが車を届けた時にインガとトリッシュがナンシーを張り込んでいる。
インガはネッドに惹かれて尾行し、中華街でナンシーたちがルイの店を訪れる時には同行している。爆発騒ぎの時も、ナンシーの近くにいる。
でもインガとトリッシュがいることで、そのシーンに何か影響があるのかと言うと、特に何も無い。
その後にはインガがネッドにアプローチする展開があるが、これまた大して意味が無い。
そのせいでナンシーとネッドの関係に波風が立つわけでもないしね。ナンシーが誕生日パーティーを開いてクラスメイトを招待するシーンがあるが、これもミステリーとは何の関係も無い。
このパーティーは、「トリッシュがピーナッツ・アレルギーで倒れ、ナンシーが蘇生術で助けたことでインガたちとの関係が一気に変化する」という展開を描くためだけに存在するシーンだ。
だけど、そんなの別に無くてもいいよ。
仮にインガとトリッシュが最後まで憎まれ役のままだとしても、何一つとして困ることは無いし。最後に、事件の真相についてネタバレ全開で書いておく。
ナンシーを脅していた黒幕はビーダーマイヤーで、ディーリアを殺した犯人でもある。
Zはビーダーマイヤーのミドルネームのイニシャルで、屋敷に潜入したり爆弾を仕掛けたりした実行犯は彼の手下たち。
ディーリアは赤ん坊を手放した後、引退して娘の父親であるレッシングと暮らすと言い出した。
クライアントを失うことになるビーダーマイヤーは激怒し、彼女を殺したのだ。ビーダーマイヤーの動機は浅いし、種明かしの全てを本人の告白に頼っている。
ナンシーが「犯人はビーダーマイヤー」と気付くのも、Zがミドルネームだと知っただけで判断している。
それ以外に今まで集めた手掛かりが色々とあって、「ビーダーマイヤーのミドルネームがZ」と知った時、「ピースが揃ってパズルが完成する」ってな感じで犯人だと特定するわけではない。
他にミスリードを誘う容疑者がいるわけでもないし、ミステリーとしての醍醐味は全く味わえない。
だからって青春ドラマとして良く出来ているわけでもないし。(観賞日:2025年11月2日)