『ハリウッド・ミューズ』:1999、アメリカ
スティーヴン・フィリップスは、ハリウッドで長く活躍し、オスカー候補にもなったことのある脚本家だ。だが、最近の彼が書いた脚本はキレが無く、パラマウント社の重役から契約解除を宣告されてしまう。脚本家仲間のジャックに相談したスティーヴンは、彼がロブ・ライナーからミューズを紹介してもらい、ヒット作を生み出したことを知る。
スティーヴンはジャックの仲介で、サラに会うことになった。しかし、サラは贅沢で注文の多い女性で、高級ホテルのスウィートに宿泊させるなど、様々な要求をスティーヴンに押し付けた。スティーヴンは作品のためと我慢して、彼女の要求を全て聞き入れた。
スティーヴンの妻ローラはサラと会い、すぐに意気投合した。クッキー作りが得意なローラは、サラのアドバイスを受けて、それを商売にしようと考える。やがてローラのクッキーはウルフギャング・パックのレストラン“スパゴ”で売られ、評判となる。一方、サラを自宅に住まわせ始めたスティーヴンは、なかなか脚本の執筆が進まない…。
監督はアルバート・ブルックス、脚本はアルバート・ブルックス&モニカ・ジョンソン、製作はハーブ・ナナス、製作総指揮はバリー・バーグ、編集はトーマス・E・アッカーマン、編集はピーター・テシュナー、美術はディナ・リプトン、衣装はベッツィー・コックス、シャロン・ストーンズ・ワードローブはエマニュエル・ウンガロ、音楽はエルトン・ジョン。
出演はアルバート・ブルックス、シャロン・ストーン、アンディー・マクドウェル、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、モニカ・ミカラ、ジェイミー・アレクシス、マーニー・シェルトン、キャサリン・マクニール、マーク・フューステイン、ロレンツォ・ラマス、ジェニファー・ティリー、ブラッドリー・ホイットフォード、スキップ・オブライエン、オード・チャールズ、アンジェ・ビルマン他。
俳優にして、西海岸のウディー・アレンの異名を持つアルバート・ブルックスが、監督&脚本&主演を務めた作品。スティーヴンをアルバート・ブルックス、サラをシャロン・ストーン、ローラをアンディー・マクドウェル、ジャックをジェフ・ブリッジスが演じている。
主人公はハリウッドの脚本家で、舞台となっているのはハリウッドの映画業界だ。だが、ハリウッドの内幕を風刺で綴るというコトは、ほとんど見られない。それよりも、主人公がワガママ女に振り回されるという話が描かれる。
ところが、この部分が全く笑えない。
サラは「ワガママだが憎めない女」ではなく、単なるイヤな女になっている。そうなっているのは、サラのキャラクター設定やシャロン・ストーンという女優の資質、彼女の芝居だけの問題ではない。それを受けるスティーヴンのキャラクター設定やリアクションにも問題がある。スティーヴンというキャラクターに対するアプローチが悪いために、彼がサラに振り回される様子が可笑しく感じられないのだ。
スティーヴンにミューズの存在を教えるというジャックの役回りは、本物の脚本家か監督にやらせるべきだろう。そして、本人が作った実際の映画名を出して、「あの映画はミューズのおかげでヒットした」と言わせた方がいい。そうすることで、最初の段階において、「ミューズの力で作品が成功する」という与太話に具体性を持たせるべきだ。「女神のおかげで、こういう作品がヒットした」という事実だけでは、笑いにならない。「最初はこういう内容だったが、女神のアドバイスでこういう部分を変更してヒットに結び付いた」というように、細かい所を突いていかないと、笑いにならない。
いちいち突っ込みが浅く、鋭さが足りない。もう1つ捻ったり、もう1つ深く突っ込んだりしないと、笑いにならないと思う個所が幾つもある。例えば、最初にスティーヴンがサラに会いに行くシーンが、ものすごく普通。そこはファースト・インパクトで観客を惹き付けるためにも、サラの特異性をアピールすべきではなかったか。
例えば、スティーヴンが駄作だと言われた脚本は、どういう内容だったのか。それを簡単に説明するシーンを用意すれば、そこで1つ笑いが作れる。終盤、ロブ・ライナーの映画がポシャった理由にしても、それを説明すれば、1つの笑いになったはず。この作品には、何人かの有名人が本人役で出演している。だが、ジェームズ・キャメロンとマーティン・スコセッシはともかくとして、ロレンツォ・ラマス、ジェニファー・ティリー、ロブ・ライナーに関しては、ただ顔を見せてすぐに引っ込むだけで、セルフ・パロディーになっていない。シビル・シェパードやウルフギャング・パックも、まあ出てるだけかな。
第22回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪の主演女優】部門[シャロン・ストーン]
<*『グロリア』『ハリウッド・ミューズ』の2作でのノミネート>
ノミネート:【最悪のヘアスタイル(女性)】部門[シャロン・ストーン]
<*『グロリア』『ハリウッド・ミューズ』の2作でのノミネート>