『バズ・ライトイヤー』:2022、アメリカ
地球から420万光年、未知の宇宙。スターコマンドSC-01探査船には1200名の乗組員が冷凍睡眠で搭乗していた。インターナル・ヴォイス・アクティヴェイテッド・ナビゲーターのアイヴァンが生命体の存在する可能性を探知し、スペースレンジャーのバズ・ライトイヤーが冷凍ポッドから出て来た。彼は調査のため、アリーシャ・ホーソーンと惑星へ降り立つ。バズは面倒だと感じて新人のフェザリンガムスタンを同伴しなかったが、規則なのでアリーシャが連れて来た。バズは疎ましがるが、仕方なく受け入れた。
星に生息する植物の襲撃を受けたバズたちは、急いで探査船に逃げ込んだ。バズは探査船で脱出を図るが、機体が損傷して墜落してしまう。ハイパースピードクリスタルが完全に破壊されたため、探査船は動かなくなった。バズはアリーシャに、軍法会議に掛けて解任するよう要求した。アリーシャは拒否し、任務を最後まで遂行するよう説いた。専門家チームのディアス航空士たちは星の豊かな資源を活用し、1年後にはハイパースビードのテスト飛行が実施されることになった。
テスト飛行に臨んだバズはアイヴァンの警告を無視し、パワーを最大まで上昇させた。ハイパースビードに到達せずにバズが惑星に戻ると、4年2ヶ月が経過していた。驚くバズに、アリーシャはウラシマ効果だと教えた。彼女はバズに、他の方法が見つかるまでテスト飛行は控えた方がいいと告げる。アリーシャは3年前から科学者のキコと交際していること、婚約したことを明かした。スターコマンドはバズのため、猫型の友達ロボットであるソックスを用意していた。それは決まりだったが、バズは余計なお節介にしか感じなかった。
探査船の墜落が自分のせいだと感じていたバズは、テスト飛行を続けることにした。ソックスが仕事を求めると、彼は燃料の安定性を調査するよう指示した。バズが何度もテスト飛行を重ねる中でアリーシャは妊娠し、息子を出産した。息子は成長し、孫娘のイジーが誕生した。年老いたアリーシャは、バズにビデオメッセージを残して息を引き取った。新たな司令官に就任したカル・バーンサイド中佐は、バズにテスト飛行の終了を通告した。彼はレーザーシールドで惑星を覆い、その中で暮らすことに決まったのだと説明した。
バズはソックスから、燃料の問題が解決したことを聞かされた。そこへ警備担当者が現れ、セキュリティーの問題でソックスのプログラムをシャットタウンすると告げる。バズはソックスを連れて窓から逃亡し、テスト機を使って惑星から飛び立った。ハイパースピードに到達したバズが惑星に戻ると、22年が経過していた。彼はジュニア・パトロール隊員になったイジーから、現在の状況を知らされた。1週間前に宇宙船ザーグシップが出現し、ロボット軍団が基地を包囲した。イジーが中と連絡を取ろうとしても、音信不通になっていた。
イジーはバズを仲間のモー・モリソン、ダービー・スティール、ロボットのデリックの元へ連れて行き、サプライズ・パーティー作戦を開始しようとする。彼女は地上のロボットにパワーを送っているザーグシップを爆破し、基地に入ろうと考えていた。ロボットに襲われたバズは、イジーたちが新人の士官候補生だと知った。イジーたちはボランティアのチームで、戦闘経験は一度も無かった。月に一度だけ訓練のために集まっていたものの、技能が充分とは到底言えないだけでなく、モーは辞めたがっていた。
イジーたちは運良くロボットを撃退するが、バズは自分だけで計画を遂行することに決めた。彼は運用可能な小型宇宙船のアルマジロがある補給基地まで案内してもらい、訓練施設まで戻るようイジーたちに指示した。補給基地に入ったバズは、スペースレンジャーのスーツを見つけた。彼がスーツを着ているとイジーたちが来て、車の鍵を持って行ったからだと告げる。鍵を手に取ったモーは誤って大きな音を出してしまい、基地の奥にいた巨大昆虫の群れが襲い掛かって来た。イジーは急いでドアを封鎖し、バズは武器を持たせて突破しようと考える。しかしイジーが全員でスーツのステルスモードを使って脱出する案を出すと、バズは承諾した。
バズはアルマジロに荷物を運び込み、イジーたちは補給基地から抜け出そうとする。しかしタイマーが切れて昆虫の群れに気付かれたため、慌ててアルマジロに飛び込んだ。バズは仕方なくハッチを閉じ、アルマジロを発進させた。しかしロボットの操縦する戦闘機に攻撃され、惑星の裏側に不時着した。ソックスの分析により、電気系統がショートしていること、また飛ばすための素材が必要であることが判明した。イジーは鉱山施設を発見し、そこにあるコンソールのコイルを使えば修理できるとバズに語った。
バズたちは鉱山施設へ行き、指令室で起動コイルを入手する。しかしモーのミスでセキュリティーシステムが起動し、全員が捕獲バリアに閉じ込められてしまう。バズたちは力を合わせ、指令室から脱出した。しかし今度はモーがソックスを誤って蹴り飛ばしてしまい、機能を停止させてしまう。ソックスは再起動で復活するが、モーは謝罪して落ち込む。イジーは「ちょっと失敗しただけよ」と彼を励まし、バズにも同意を求めた。バズはアカデミー時代に失敗ばかりだったこと、アリーシャに才能があると言ってもらったことを語った。
巨大ロボットに襲われたバズは、標的が自分だけだと気付く。追い込まれた彼は、ロボットから「バズ、一緒に来い」という声が聞こえて驚いた。ダービーが巨大ロボットを撃ち、バズたちはアルマジロに乗り込んだ。コイルのインストールに5分が必要なので、それまでバズはホバーリングでロボット軍団から逃走する。インストールが完了し、バズはイジーに発射準備の指示を出す。しかしイジーが違うボタンを押したため、クリスタルがアルマジロから放出されてロボットに奪われた。そこへ巨大ロボットが現れ、バズを連れ去った…。監督はアンガス・マクレーン、原案はアンガス・マクレーン&マシュー・アルドリッチ&ジェイソン・ヘッドリー、脚本はジェイソン・ヘッドリー&アンガス・マクレーン、製作はゲイリン・サスマン、製作総指揮はアンドリュー・スタントン&ピート・ドクター、製作協力はマイケル・ウォーチ、製作総指揮協力はエミリー・モーレンコップ、ストーリー・スーパーバイザーはディーン・ケリー、編集はアンソニー・J・グリーンバーグ、プロダクション・デザイナーはティム・エヴァット、視覚効果監修はジェーン・イェン、アニメーション・スーパーバイザーはデヴィッド・デヴァン、撮影はジェレミー・ラスキー&イアン・メギベン、キャラクター・デザイナーはマーク・ピレッティー、音楽はマイケル・ジアッキーノ。
声の出演はクリス・エヴァンス、キキ・パーマー、ピーター・ソーン、タイカ・ワイティティー、デール・ソウルズ、ジェームズ・ブローリン、ウゾ・アドゥーバ、メアリー・マクドナルド=ルイス、イザイア・ウィットロックJr.、アンガス・マクレーン、ビル・ヘイダー、エフレン・ラミレッツ、キーラ・ヘアーストン他。
『トイ・ストーリー』シリーズのスピン・オフ映画。
シリーズの主人公であるバズ・ライトイヤーは、アンディー少年が好きなアニメ映画のキャラクター商品という設定だ。本作品は、そんなアンディーが好きな映画という設定になっている。
『ファインディング・ドリー』の共同監督だったアンガス・マクレーンが、長編初監督を務めている。
脚本は『2分の1の魔法』のジェイソン・ヘッドリーと、監督のアンガス・マクレーンによる共同。
バズの声をクリス・エヴァンス、イジーをキキ・パーマー、ソックスをピーター・ソーン、モーをタイカ・ワイティティー、ダービーをデール・ソウルズ、ザーグをジェームズ・ブローリンが担当している。前述したように、これは「アンディーが好きだった映画」という設定だ。そこをフワッとさせたままにしておく方法もあるが、この作品は冒頭のテロップでハッキリと「1995年、アンディーは誕生日にバズの人形を貰った。バズは大好きな映画の主人公。これは、その映画だ」と書いている。
そんな始まり方にしている以上は、『トイ・ストーリー』シリーズで示された設定と矛盾しないってのは絶対条件のはず。
ところが、『トイ・ストーリー2』では「ザーグはバスの父親」という設定が明かされたのに、この映画では改変されているのだ。
どんな理由があろうとも、それは絶対にやっちゃいけない改変じゃないかと。
そりゃあ、『スター・ウォーズ』のパロディーとして、その場の笑いのために持ち込んだネタなのは分かってるけどさ、「だから簡単に改変してもOK」ってことじゃないよ。根本的な問題として、「果たして『トイ・ストーリー』シリーズのファンは、こういう映画を見たいと思っていたのか」ってのが気になる。
『トイ・ストーリー』シリーズのファンにとってのバズ・ライトイヤーは、アンディーが持っていた人形だ。決して「アンディーが好きな映画の主人公」ではない。
何しろ、その映画の主人公であるバズを我々は見たことが無いからだ。
そして『トイ・ストーリー』シリーズで登場したバズと本作品のバズは、全くの別物になっている。
そうなると、「コレジャナイ感」を強く抱く人が少なくないんじゃないかと思ってしまうんだよね。「1995年に公開された映画」「アンディー少年が大好きな映画」という設定の部分でも、大いに引っ掛かる。
アリーシャは同姓の恋人と付き合って婚約しているが、1995年の子供向けアニメーション映画で、そんな設定が採用されるだろうか。また、仮に採用されたとしたら、それをバズが何の驚きもせずに受け入れているのも不自然だし。
また、内容は決してワクワクさせられるようなヒーロー映画やSF映画とは言い難いので、それをアンディーが大好きだったというのも違和感を覚える。
アンディーが「年齢に似合わぬ大人びた少年だった」とか、そんな感じのキャラクター設定ならともかく、そうじゃないんだし。バズはテスト飛行から戻って4年2ヶ月が経過しているので驚き、ウラシマ効果だと言われても説明されるまで全く理解していない様子だ。ウラシマ効果だと伝えるアリーシャも、テスト飛行からバズが戻るまでは気付いていなかった様子だ。
それは不可解だわ。
どっちも鍛錬や勉強を積んで宇宙飛行士になったはずでしょ。1995年という時代でも、ウラシマ効果ってのは既に広く知られていた現象だったはず。
もちろん観客に説明するためってのは分かっているけど、「バズもアリーシャも認識している」という設定でも、その手順を消化することは出来たはずで。バズ・ライトイヤーと言えば、『トイ・ストーリー』シリーズでは「無限の彼方へ、さあ行くぞ」という決め台詞にとして使われていた。
本作品における「無限の彼方へ、さあ行くぞ」は、テスト飛行に臨むバズとアリーシャが交わす挨拶のような形で使われている。まるで「お馴染みの掛け声」みたいな感じで、何気なく出て来る。
それはどうなのよ。
口癖みたいな言葉として設定するにしても、例えば「それを口癖にしていた人間が死亡し、その意志をバズが引き継いで」みたいな流れで、もっと意味を持たせた方が良くないか。
特に何でもない挨拶みたいに使うのは。いかがなものかと。2度目のテスト飛行から戻って来たらアリーシャが亡くなっているシーンまでは、音楽に乗せたダイジェスト映像の形で描かれる。
その中で起きる「アリーシャの妊娠」「息子の誕生」「息子の成長」「息子の結婚」といったイベントの1つ1つを丁寧に描いていたら時間が全く足りないし、そこをダイジェストで片付けるのは基本通りの演出だ。
ただし、そこには決定的に欠け落ちている要素が1つだけある。
それは、バズの苦悩や葛藤だ。バズはテスト飛行を重ねる中で、アリーシャが年老いていく姿を見ている。そんな中で、バズは戻って来る度にアリーシャや息子を見ては微笑を浮かべるだけだ。
「自分はアリーシャが生きている間に惑星から脱出させられるのか」「アリーシャの余生を考えると、次のテスト飛行の間に死んでしまうかもしれない」といった不安や焦り、迷いや悩みの感情が一切見えないのだ。
フェザリンガムスタンを含めた他のクルーの存在感が皆無に等しいので、バズにとってアリーシャは唯一の盟友と言ってもいい存在になっている。
そんなアリーシャに対する気持ちが全く見えないまま彼女の死が訪れるのは、雑じゃないかと感じるのだ。イジーが「ザーグシップが出現し、ロボット軍団が基地を包囲している」という状況を説明した時、「だったら最初から、それだけで良くないか?」と言いたくなる。
「バズが仲間と協力して悪のロボット軍団を倒す」という話でも、「アンディー少年が大好きな1995年の子供向け映画」としては成立するでしょ。
単純明快な「明るく楽しいヒーロー映画」でも、別に良かったと思うのよ。
それが変に凝ったことをやろうとして、思い切り裏目に出ているんじゃないかと。ジュニア・パトロールの面々をコメディー・リリーフのように使っているが、こいつらが全く笑えないんだよね。それどころか、不愉快で疎ましいだけの存在になっている時間が長い。
まだイジーは有効なアイデアを出してくれるからいいものの、モーはホントにウザいだけの迷惑な奴でしかない。
ソックスの機能停止で落ち込む様子を見せられても、まるで可哀想だなんて思えない。
もちろん、ただの足手まといでは終わらせないけど、トータルで考えると邪魔。これが例えば「真面目に取り組んでいるけど上手く行かない」とか、「張り切っているけど空回りする」とか、そういうことから分からんでもないのよ。だけどモーの場合、単に能天気なお調子者が、不注意な行動を取って何度もトラブルを招くだけなのよ。
ソックスの件があるまでは、全く学習も反省もしていないし。
そりゃあ、バズがイライラして単独行動したがるのも当然じゃないかと。
とは言え、バズがイライラしてばかりで全くカッコ良さが感じられない時間が続くので、「これでアンディーが大好きになるのは変じゃないか」と言いたくなっちゃうぞ。粗筋でも書いたように、肝心な時にイジーがエジェクトのボタンを押したせいでクリスタルがアルマジロから放出されてしまう。
だけど最後の最後だけボタンを間違えて押すってのは、さすがに無理があるだろ。操作が複雑ってわけでもないし、「これだけは絶対に押しちゃダメ」と釘を刺されていてプレッシャーに押し潰されたわけでもない。
本人は「混乱していた」と言うけど、その直前までは冷静に対処していたし。その前に間違ってエジェクトのボタンを押すミスをやらかしていて、それを伏線に使っているわけでもないし。
そこまではミスでピンクを招く役割をモーに任せていたのに、そこだけ急にイジーってのも、作劇として上手くないと感じるし。ネタバレになるが、終盤に入るとザーグの正体が年老いたバズだと判明する。
バズはテスト飛行から戻ってバーンサイドに逮捕されそうになり、逃走して未来に辿り着いた。
そしてクリスタルを使えば時間を巻き戻せると気付き、惑星に着陸する前に戻るために現在のバズに協力を要請するのだ。
だけど、こんな内容でホントにアンディーが「この映画が大好き、バズが大好き」となるかね。子供向け映画だから子供騙しにしろとか、そんなことを言うつもりは無いのよ。
だけどアンディーのキャラクターを考えると、もっと単純明快で明るく楽しい勧善懲悪の映画の方が合っているんじゃないか。
そもそも、この映画ってバズ・ライトイヤーのことを既に知っていて、脳内補完しながら観賞する内容になってないか。
あとバズが主人公のはずだけど、やたらとイジーの存在感がデカくて、終盤は実質的にダブル主人公みたいになってるし。(観賞日:2025年7月3日)