『ハッスル』:1975、アメリカ

マリブの海岸で、家出中の娘グロリアが死体で発見された。ロサンゼルス警察のフィル・ゲインズ刑事は主任警部サントロに、グロリアは自殺だったと報告する。だが、グロリアの父ホリンジャーは納得せず、娘は誰かに殺されたのだと主張する。
グロリアの財布には、1人の男が映った写真が入っていた。その男は、高級コールガールのニコルをフィルに紹介した大物弁護士レオ・セラーズだった。一方、ホリンジャーはグロリアの友人ペギーから、2人が乱交パーティーに参加していたことを聞き出した。
フィルは、パリ生まれのニコルと同棲生活を送っていた。ニコルは足を洗って結婚したいと考えているが、フィルは煮え切らない態度を取り続ける。しかし、一方で商売に出掛けるニコルに腹を立てるので、フィルは彼女とケンカになったりもした。
フィルは同僚ルイスと共に、グロリアの出演しているポルノ・フィルムをホリンジャーに見せた。ホリンジャーはペギーからセラーズの名前を聞き出し、屋敷に潜入した。ポーラから連絡を受けたフィルとルイスは、急いでセラーズの屋敷に駆け付ける…。

監督&製作はロバート・アルドリッチ、脚本はスティーヴ・シェイガン、製作協力はウィリアム・アルドリッチ、撮影はジョセフ・バイロック、編集はマイケル・ルシアーノ、美術はヒルヤード・ブラウン、衣装はオスカー・ロドリゲス&ベッツィー・コックス&ノーマン・セーリング、音楽はフランク・デヴォール。
出演はバート・レイノルズ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ベン・ジョンソン、ポール・ウィンフィールド、アイリーン・ブレナン、エディー・アルバート、アーネスト・ボーグナイン、キャサリン・バック、ジャック・カーター、シャロン・ケリー、デヴィッド・スピールバーグ、デヴィッド・エストリッジ、ピーター・ブランドン、カール・ルーカス、パトリス・ローマー、ケリー・ワイルダー、ベン・ヤング他。


『ロンゲスト・ヤード』の監督&主演コンビで作った作品。フィルをバート・レイノルズ、ニコルをカトリーヌ・ドヌーヴ、ホリンジャーをベン・ジョンソン、ルイスをポール・ウィンフィールド、ホリンジャーの妻ポーラをアイリーン・ブレナンが演じている。また、終盤にフィルの入った店で拳銃強盗をする男の役で、ロバート・イングランドが出演している。

ロバート・アルドリッチ監督が語っているのだが、この映画はラブ・ストーリーとして作られている。しかし、それなら最初にグロリアの死体が発見されるシーンを持って来るのは違うだろう。その入り方だと、どうしたって事件が中心だと思ってしまう。
そんで実際、映画を見ていても、やっぱりグロリアの事件が中心なのよね。もっと凄いのは、この映画の真の主人公はフィルではなくホリンジャーだということ。ろくに捜査もしないで自殺と断定するフィルより、娘を失った哀しみと警察への憤り、犯人を探そうという執念を持って行動するホリンジャーの方が、圧倒的に印象に残るのだ。

フィルとルイスは、警察署にやって来たホリンジャーを死体安置室に案内する時、ご陽気にアメフトの試合の話題で盛り上がる。娘を失った親への心配りなんて、まるで無い。そんで死体を見たホリンジャーに、「警察は何をやってるんだ」と殴られる。
御門違いと言えば御門違いだが、そりゃあ殴られても仕方が無いだろうと思う。だけど、ルイスはホリンジャーに対して、「ぶちこんでやろうか。とんでもない父親だ」と言う。いやいや、とんでもないのは、被害者の家族の前でヘラヘラしてる貴様らだ。
で、フィルは自殺と断定した後、全くグロリア事件の捜査は進めない。捜査を進めるのはホリンジャー。「怪しいので調べてみたい」というのはルイス。そんでフィルは何をやっているのかというと、ニコルとイチャイチャしたり、ケンカしたりしている。

ニコルはセラーズと接点があるので、事件と全くの無関係というわけではない。しかし、フィルとニコルの関係が描かれるシーンは、事件とは全くの無関係。それなりに2人のシーンに時間は使われているが、それが話の中心とは言えない。
大体、オンナとチチくり合っている暇があったら、事件を調べ直してみろと言いたくなってしまう。ハードボイルドなタッチにしたいのかもしれないが、フィルが何もせず、ホリンジャーに冷徹な態度を取り続けるのは、怠慢で性格が悪いようにしか見えない。

終盤になって、ホリンジャーから批判されたフィルとルイスは、グロリアが出演したポルノ・フィルムを見せる。それ、ただ文句を言われて腹が立ったから、「これでも見さらせ」ということでしょ。サイテーじゃん。何も捜査していない上に、そう来るか。
結局、フィルがホリンジャーを追い詰めてるとしか見えないのね。
最終的に、セラーズがグロリアを殺したのか、本当に自殺だったのかは分からない(だってマトモに捜査してないから)。だけど、もし自殺だったとしても、ホリンジャーを殺人者にしたのはフィルだからねえ。どっちにしたって、ひどい刑事だ。
だから最後に殺されても、何とも思わない。

 

*ポンコツ映画愛護協会