『ハンター』:1980、アメリカ

ラルフ・ソーソンは保釈金の保証人の依頼を受け、保釈中に逃亡した犯罪者を捕まえる賞金稼ぎ。黒人少年トミー・プライスを捕まえ、さらにビリー・ジョー・フェイスを捕まえようとする。ところがジョン・ストロング保安官がすぐに町を立ち去れと脅してくる。ビリーは彼の甥だったのだ。
そんな脅しは無視して、ビリーを捕まえたソーソン。トミーとビリーをロス警察に引き渡し、教師をしている恋人ドッティの待つ自宅へ。彼女は妊娠しており、周囲からは結婚を勧められているソーソンだが、彼は結婚する気になれない。
以前に捕まえたことのあるロッコ・メイソンというヤク中の男から、殺すという脅迫電話が掛かってくる。メイソンはドッティの学校にも姿を現し、彼女を怖がらせる。彼女を心配しつつも、ソーソンはブランチ兄弟を捕まえに出掛けていく。
ブランチ兄弟を捕まえて戻ってきたソーソン。友人であるロス警察のピート・スポータ刑事と会い、彼がヤクを横流ししてしまったことを聞かされる。スポータは自殺し、ショックを受けたソーソンはドッティとケンカ。怒ったドッティは家を出て行ってしまう…。

監督はバズ・キューリック、原作はクリストファー・キーン&ラルフ・ソーソン、脚本はテッド・レイトン&ピーター・ハイアムズ、製作はモート・エンゲルバーグ、撮影はフレッド・J・コーネカンプ、編集はロバート・ウォルフ、 美術はロン・ホッブズ、衣装はデニータ・デル・シグノレ&トーマス・ウェルシュ、音楽はミシェル・ルグラン。
出演はスティーヴ・マックィーン、イーライ・ウォーラック、キャスリン・ハロルド、レヴァー・バートン、ベン・ジョンソン、 リチャード・ヴェンチャー、トレイシー・ウォルター、トム・ロザレス、セオドア・ウィルソン、レイ・ビッケル、ボビー・バス、カール・シュエネマン、メアリー・マーガレット・オハラ、ジェームズ・スピンクス、フランク・デルフィーノ、ゾーラ・マーゴリス他。


実在した賞金稼ぎラルフ・ソーソンの物語。
ラルフ・ソーソン本人も、バーテンダーのトミー役で出演している。
スティーヴ・マックィーンの遺作だが、残念ながら駄作である。
ソーソンとドッティの恋愛劇を中心に据えた段階で、この映画は失敗だろう。
人間ドラマとしてもアクション映画としても、中途半端になっている。

実際にはレーシングドライバーとして活躍していたマックイーンに、運転が下手というキャラクターを演じさせたことに、意外性はある。
ただし、それは効果のある味付けとはなっていない。
素直に運転技術のある人物設定にしておいた方が良かったのではないだろうか。

どうにも芯が通っていない、フワフワしたストーリー展開だ。
順番に犯罪者を捕まえていくというパターンの繰り返し。
エピソードを順番に繋げているだけだ。
全体を通しての主軸となる事件が無く、これでは盛り上がっていくことは難しい。

ソーソンは幾人もの犯罪者を捕まえていくのだが、彼と犯罪者の関係性が弱いため、その追跡&逮捕劇に深みが生まれない。
メイソンにしても、最後の敵としては出番が少なすぎるし、キャラとして弱すぎる。
やっぱり最後の敵として、大ボスがいた方が良かった。

使える要素を全く使わずに捨てていく。
例えば序盤で登場するストロング保安官などは、もっと生かすことが出来たはず。
自分の要求に逆らって甥を捕まえたソーソンを怨んで仕返しをするとか、最後まで引っ張ることの出来る要素を持ったキャラクターだ。

多くのキャラクターが登場するが、全く生かそうとはしない。
意味ありげに登場した人物の多くが、その場面だけで消えてしまう。
トミーとスポータは何度か登場するのだが、生かしているとは言い難い。
彼らには、もっと大きな役目を与えても良かったはずだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会