『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』:2015、アメリカ

喉を痛めたカットニスは包帯を外してもらい、かすれ声でプルタークに「ピータと会わせて」と頼む。しかしプルタークは「まだ早い」と却下し、「他の治療法を試してみる。まずは故郷の人間に会わせてみる」と告げる。プルタークの指示を受けたプリムローズは、ピータが監禁されている部屋に入った。故郷への攻撃で家族が助からなかったことを知ったピータは、「カットニスのせいだ。あいつは怪物だ。キャピトルが作ったミュットだ。あいつを殺せ」と喚いた。
ピータの様子をマジックミラー越しに見ていたカットニスは、強いショックを受けた。彼女はコインの元へ行き、「スノーに復讐したい。私をキャピトルに送って」と要求する。コインが「今は送れない。第2地区を陥落させてからよ」と告げると、彼女は「では第2地区へ。反乱軍の士気を高められるわ」と述べた。ゲイルとビーティーは新型爆弾を使って敵を避難場所へ追い込み、2発目を爆破しようと考えた。それを聞いたカットニスは、「人間のすること?最低限のルールは?」と批判した。するとゲイルは、「スノーを無慈悲にピータを洗脳した」と述べた。
政府支持派の多い第2地区へ到着したカットニスと援軍は、ホームズ伍長の案内でペイラー司令官の元へ行く。ペイラーはテレビ電話を通じ、コインに状況を説明する。キャピトルの攻撃を担う軍事施設「ナッツ」には、政府軍と協力者の民間人がいる。ナッツは岩盤の下にある要塞で、手を出せないのだとペイラーは語る。ゲイルが「要塞を無力化させればいい。ホバークラフトで周辺を攻撃し、全ての出口を塞げば戦闘機も飛ばせない」と提案すると、カットニスは民間人が犠牲になることに反対した。
ボッグスは補給トンネルを使って民間人を脱出させ、降伏するチャンスを与えるべきだと主張した。ゲイルは「第12地区の時はチャンスなど無かった」と冷淡に言うが、コインは「民間人を広場へ脱出させ、投降するようカットニスに説得してもらいましょう」と指示した。ゲイルはカットニスから「誰を殺してもいいのね」と責められ、「これは戦争だ」と反論する。「私情で殺すわけじゃない」と彼が言うと、カットニスは「戦争は全て私情よ」と声を荒らげた。
カットニスがプロポの撮影をしていると、生存者を乗せた列車が到着した。ボッグスたちが警戒する中、列車を降りた1人の男が拳銃を構えた。ボッグスたちが銃を捨てるよう要求しても、男は応じなかった。どこからか銃声が響いて男が倒れ込み、カットニスは慌てて駆け寄った。彼女は「救護班を」と叫ぶが、それは男の罠だった。銃を突き付けられたカットニスは、「殺せばいい。スノーが喜ぶわ。殺し合いが続いて、いつも勝つのはスノーよ。どの地区も戦う理由なんて無い」と語る。
男が銃を下ろすと、カットニスは生存者に向かって「反乱軍は貴方たちの敵ではない。敵はスノーだけよ」と呼び掛ける。しかし彼女は発砲を受け、その場に倒れ込んだ。カットニスが撃たれる映像を見たアントニウスは祝杯を挙げようとするが、スノーは「なぜ死んだと決め付ける?」と口にする。彼は「反乱軍は数日で町外れまで来るだろう。我々は住民を避難させ、備えを万全にした上で彼らを入れる。そしてゲーム・メーカーの作る地獄の責め苦に遭わせ、撮影して見世物にするのだ」と語り、アントニウスを毒殺した。
防弾服で一命を取り留めたカットニスは、ヘイミッチの指示を受けてピータと面会する。ピータはカットニスと会った幼少期のことを思い出していたが、「君にパンさえあげてなきゃ苦しまずに済んだ」と言う。悲しい気持ちになったカットニスはコインとプルタークに面会し、キャピトルへ送ってほしいと頼む。しかしコインは怪我を治して休むよう説き、プルタークは「君が死んだと思われているのを利用して、第13地区でプロポを撮影する」と告げた。
フィニックとアニーの結婚式に参列したカットニスは、ジョアンナに「スノーを殺すわ」と強い意志を明かす。ジョアンナは「今夜0時に第2格納庫から医療物資の便が出る」と教え、援護することを申し出た。カットニスは貨物機に忍び込み、キャピトルを攻撃する部隊のゲイルたちと合流した。コインはプルタークに、「全て我々の計画ということにして。このままカットニスを前線に残すわ。国民には我々が主役だと知らせて」と指示した。
ペイラーは前線部隊に対し、「スノーが治安維持部隊をキャピトル中心部に置き、進攻ルートに罠を仕掛けてる。防御線を突破し、大統領官邸を制圧する」と説明した。カットニスとゲイルはジャクソン中尉から、2人が参加する部隊のミッチェルとリーグ姉妹、ホームズを紹介される。さらにフィニックも加わり、ボッグスは自身が隊長でジャクソンが副隊長を務めることを話す。彼は自分たちが実戦には参加しないこと、前線部隊を数日遅れで追うこと、首都侵攻の顔としてプロポを撮影するスター部隊であることを説明した。
友軍としてピータが送り込まれたため、ボッグスはゲイルに手錠を掛けさせた。司令部と連絡を取ったボッグスは、「彼を参加させて味方だと認識させろという指示だ」と部下たちに説明した。カットニスたちは休憩中、交代でピータを監視することにした。カットニスはボッグスと2人になり、コインの狙いを訊く。するとボッグスは、「彼女は従順じゃない君が嫌いなんだ。推測だが、戦争が終わって選挙になった時、君が脅威なんだ。だから殺す気だ」と話した。
スター部隊は詳細な地図が記録されているホロを頼りに、仕掛けられた罠を警戒しながらキャピトルの街を進む。ボッグスは地雷を踏んで重傷を負い、カットニスにホロを渡して指揮権を譲渡した。彼は「上を信じるな。必要ならピータも殺せ」と言い残し、息を引き取った。黒い液体を使った新たな罠が作動したため、スター部隊は慌てて逃走する。ピータがカットニスに襲い掛かったため、ミッチェルが止めに入った。しかしミッチェルはピータに突き飛ばされ、液体に飲まれて死亡した。
スター部隊は近くの建物に逃げ込むが、司令部とは交信できなくなっていた。カットニスはジャクソンからホロを渡すよう要求され、自分がボッグスから託されたことを話す。彼女は「コイン首相からスノー暗殺の特命を受けてる」と言うが、ジャクソンは銃を構えてホロを渡すよう脅す。割って入ったクレシダは「プルタークが暗殺を放映しろと言った」と告げ、ジャクソンは渋々ながらカットニスが新隊長になることを承諾した。
怪我を負ったリーグ姉と付き添うことにした妹を残し、スター部隊は向かいの建物に移動した。すると治安維持部隊はリーグ姉妹を殺害し、シーザーがテレビ放送で「カットニスと仲間たちを殺した」と報じた。ピータが「次は僕を殺せ。自制できない。凶暴になったら毒薬で死にたい」と言うと、ゲイルは「その時は俺が殺す」と口にした。スノーがテレビに出演して反乱軍を扱き下ろすと、電波ジャックしたコインが「カットニスは死んでも革命のシンボルです。我々は必ずパネムを解放します」と語った。
スター部隊はポラックスの案内で地下道を進み、スノーのいる大統領官邸を目指す。監視カメラに写るカットニスを見たスノーは、彼女が生きていると知って不敵な笑みを浮かべた。カットニスたちはミュットの集団に襲われ、必死で逃亡する。追い付かれたカットニスたちは懸命に戦い、何とか全滅させた。しかしミュットとの戦いで次々に仲間が犠牲となり、生き延びたのはカットニス、ピータ、ゲイル、ポラックス、クレシダの5人だけとなった…。

監督はフランシス・ローレンス、原作はスーザン・コリンズ、脚本はピーター・クレイグ&ダニー・ストロング、脚色はスーザン・コリンズ&製作はニーナ・ジェイコブソン&ジョン・キリク、共同製作はブライアン・アンクレス、製作総指揮はスーザン・コリンズ&ジャン・フォスター&ジョー・ドレイク&アリソン・シェアマー、製作協力はキャメロン・マコノミー、 撮影はジョー・ウィレムズ、美術はフィリップ・メッシーナ、編集はアラン・エドワード・ベル&マーク・ヨシカワ、衣装はカート・アンド・バート、視覚効果監修はチャールズ・ギブソン、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はジェニファー・ローレンス、ジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ウディー・ハレルソン、ドナルド・サザーランド、スタンリー・トゥッチ、エリザベス・バンクス、ジュリアン・ムーア、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジェフリー・ライト、ウィロウ・シールズ、サム・クラフリン、ジェナ・マローン、マハーシャラ・アリ、ナタリー・ドーマー、ウェス・チャサム、エルデン・ヘンソン、パティーナ・ミラー、エヴァン・ロス、ポーラ・マルコムソン、ユージニー・ボンデュラント、サリタ・チョウドリー、ステフ・ドーソン、メタ・ゴールディング他。


スーザン・コリンズのヤングアダルト小説を基にしたシリーズ第4作にして完結篇。
監督は2作目から引き続いてフランシス・ローレンスが担当。2部作の後篇なので、脚本は前作と同じくピーター・クレイグ&ダニー・ストロング。
カットニス役のジェニファー・ローレンス、ピータ役のジョシュ・ハッチャーソン、ゲイル役のリアム・ヘムズワース、ヘイミッチ役のウディー・ハレルソン、スノー役のドナルド・サザーランド、シーザー役のスタンリー・トゥッチ、エフィー役のエリザベス・バンクス、プリムローズ役のウィロウ・シールズ、母親役のポーラ・マルコムソンは、1作目からの出演者。
プルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマン、ビーティー役のジェフリー・ライト、フィニック役のサム・クラフリン、ジョアンナ役のジェナ・マローンは、2作目からの続投組。
コイン役のジュリアン・ムーア、ボッグス役のマハーシャラ・アリ、クレシダ役のナタリー・ドーマー、キャスター役のウェス・チャサム、ポラックス役のエルデン・ヘンソン、ペイラー役のパティーナ・ミラー、メッサッラ役のエヴァン・ロスらは、前作からの続投組。エノバリア役のメタ・ゴールディングは、第2作からの復帰。
新加入のキャストはティグリス役のユージニー・ボンデュラント、ホームズ役のオミッド・アブタヒなど。

ゲイルがナッツを陥落させるために民間人も殺害する作戦を展開しようとすると、カットニスは「人間のすること?最低限のルールは?」「誰を殺してもいいのね」などと厳しく批判する。
ヒロインの描き方としては、充分に理解できる。
「ハンガー・ゲームで大勢を殺したスノーと変わらないではないか」という論法で非難するのは、話の作り方としては悪くない。
だが、そうやって問題を提起しておきながら、ちゃんとした答えが用意されているとは言えないので、どうなのかなあと。

それと、「キャピトルへの協力者であっても、民間人は助けるべき」というカットニスの主張も分からんではないし、ゲイルの提案した作戦が非情なのは事実だけど、それでも何となく後者に賛同したくなってしまうのよね。
その理由は、カットニスが甘すぎるから。拳銃を持った男に駆け寄る行為なんて、すんげえ不用意だなあと。
男が拳銃を突き付けたまま話し掛けてくれたから説得交渉に入れたものの、すぐに顔面や首を撃たれていたら完全に終わりだろ。
立ち上がって生存者に呼び掛ける時も同様で、たまたま相手が防弾服を撃ったから助かったものの、脳天に命中していたら確実に死んでいたはずで。

洗脳されているから仕方がないんだろうけど、ピータが疎ましくて不愉快極まりないキャラになっているのは、かなり厳しいモノがある。
「カットニスのせいで故郷が攻撃された。あいつは怪物だ。殺せ」と喚くのは、それでカットニスへの同情心が湧くわけでもないから、一向に構わない(いやホントはカットニスへの同情心が湧くべきなんだけどね)。
だけど、ピータのせいで反乱軍に犠牲が出ているのは、かなりマズいでしょ。
それでピータが罪悪感を抱く様子は乏しく、「誰かを助けて命を落とす」という形で贖罪としてのケジメを付けるわけでもない。それどころか、彼は生き延びてカットニスと結婚し、子供まで設けて幸せになっちゃうのだ。

前述したように邪魔なだけの内輪揉めがあるが、カットニスとジャクソンが対立した時には「そんなことより政府軍との戦いを描けよ」と言いたくなった。
カットニスたちはプロポを撮影するスター部隊なので、キャピトルを進んでも全く治安維持部隊との戦闘が行われない。注意するのは、仕掛けられた罠だけだ。
ゲイルは出発する時に「第76回ハンガー・ゲームへようこそ」と冗談めかして言っているが、それなら普通にハンガー・ゲームを描けばいいわけで。
ハンガー・ゲームを描く話から「革命のための戦争」へ発展させておいて、カットニスと敵との戦闘を描かないってのは、どういうつもりなのかと。

スター部隊が地下道を進む時にはミュットというクリーチャーとの戦いがあるけど、そういうことじゃないのよ。それはシーザーが罠として仕掛けたモノの1つだし。
しかも銃火器や地雷じゃなくてクリーチャーなので、そこだけ世界観から逸脱しちゃってる印象も受けるし。
「なるべくカットニスには人殺しをさせたくない」という配慮があったのかもしれないよ。
だけど、その覚悟が無いのなら、反乱へと発展する物語とか、カットニスがスノー暗殺を狙っ前線へ行く展開とか、そんなのを用意しちゃダメでしょ。

スター部隊がキャピトルを進む中で、ジャクソンがホロを渡すようカットニスに要求し、拒否されると銃まで向けて脅すという展開がある。
だけど、「この期に及んで、なんで仲間割れしてるんだよ」と言いたくなる。もう物語も佳境に入っており、反乱軍は「スノー打倒」という目的に向けて一致団結すべきじゃないのかと。
しかも、そこで仲間割れしたカットニスとジャクソンが、和解するためのドラマも用意されていないのよ。「なんかギクシャクしました」ってのがフワッと残ったまま、ジャクソンは死んでしまうのだ。
そんな風に放り出してしまうぐらいなら、最初から中途半端な仲間割れなんか要らんよ。

しかし反乱軍には、さらに強く「要らない」と思わせる仲間割れが用意されている。
それは、「コインがカットニスを殺そうとしている」という要素だ。
ピータが送り込まれた時にボッグスがコインの狙いを説明するが、その要素は終盤になって明確な形で本筋に組み込まれる。
終盤、カットニスが全く戦いに参加しない内に、反乱軍が大統領官邸を制圧してしまう。ヒロインがカヤの外に置かれている時点で大いに問題があるが、それは置いておくとして、「スノーは降伏を考えていたのに、コインが爆弾を落とし、そこにいた子供たちを惨殺する(ブリムローズも含まれている)。そしてスノーに罪を着せて、暫定大統領に就任する」という展開になるのだ。
コインはスノーの後釜を狙っていただけであり、ハンガー・ゲームの再開さえ目論む悪人ってことが露呈するのだ。

前作でプルタークがコインの考えに異を唱えたり、ヘイミッチが批判的なコメントを発したりしていた。また、コインのリーダーとしての資質には、疑問を抱いてしまう部分もあった。
一方で、カットニスに異様な執着を持ち続けるスノーは、ラスボスとしてどうかと思う部分もあった。
しかし、だからと言って、「カットニスが倒すべき最後の敵」をスノーじゃなくてコインにしてしまうのは、絶対にダメでしょ。
「スノー打倒」に向けて、ここまで4本の映画を使ってきたのに、最後の最後になって、なんで「反乱軍の内輪揉め」にしているのかと。どう考えても、選んじゃいけない選択肢でしょ。

しかも、「スノー打倒じゃなくて反乱軍の内輪揉めで着地する」という形だけでもシオシオのパーなのに、「コインが目的を達成するためにプリムローズを惨殺する」というドイヒーすぎる悲劇まであるのよね。そんなの、誰が得をするんだよ。
そりゃあ戦争で多くの犠牲者は出ているだろうけど、終盤に入ってからヒロインの妹を惨殺するって、なんちゅうセンスだよ。そんな悪行をやらかしたせいで、すんげえモヤモヤした気持ちで終幕を迎える羽目になっちゃうじゃねえか。
そりゃあ、全面的なハッピーエンドの大団円なんて絶対に無い話だけど、せめてプリムローズぐらいは助けてあげようぜ。
ぶっちゃけ、ピータどころかカットニスを殺してもいいから、プリムローズは絶対に助けるべきだわ。

今さら言っても始まらないが、そもそも「ハンガー・ゲーム」というタイトルなんだから、生き残りゲームを描く中で全ての問題を解決するべきじゃないかと思うんだよね。
そこから反乱や革命というトコへ発展させた時点で、進むべき方向が違うんじゃないかと思うのよね。
「ハンガー・ゲームの勝者となったカットニスがスノーを殺害する」という形で、話を終わらせちゃえばいいんじゃないかと。
まあ、それだと思い切り『デス・レース2000年』と被っちゃうけどね。

(観賞日:2017年1月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会