『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』:2014、アメリカ

第13地区にある反乱軍の秘密基地で保護されたカットニスは、フィニックが「ピータとジョアンナを助けたかった。でも体が動かなかった。アニーも捕虜にされた。死ねば良かった」と呟くのを耳にした。退院を控えたカットニスの元へ第13地区のボッグス大佐が現れ、コイン首相が呼んでいることを伝えた。カットニスが「第13地区は全滅したかと」と言うと、ボッグスは「地上は爆撃で廃墟に。だが地下空間で生き延びて、軍を組織した」と説明した。
カットニスがボッグスの案内でコインのいる会議室へ入ると、プルタークとビーティーが同席していた。コインはカットニスを反乱の象徴である「マネシカケス」として歓迎し、「貴方が電磁場に矢を放った時、国民に火を付けた。7つもの地区で暴動が勃発し、住民が蜂起した。全地区を団結させたい」と述べた。ビーティーは「政府は地区間の通信を阻害していたが、私の技術でシステムを突破した。後はメッセージだ」と言い、プルタークは「マネシカケスは生きていて、政府を倒す戦いに参加すると訴える」と告げた。
プルタークが「プロパガンダ映像を作り、全国に流して革命を成功させたい」と語ると、カットニスはピータを置き去りにしたことを糾弾する。コインは「国民の声となるリーダーが必要よ」と訴えるが、カットニスは「それならピータよ」と声を荒らげた。彼女は協力を拒み、部屋を出て行った。プルタークはコインに、「第12地区を見せて、本当の敵が誰か、政府が何をしたか思い出させます」と言う。コインはショックが大きいのではないかと不安視するが、プルタークは「他に方法はありません」と告げた。
カットニスはゲイルと共に飛行機で第12地区へ行き、廃墟と化した町を見て衝撃を受けた。自宅へ戻った彼女は、愛猫と父の写真とハーブを持ち帰ることにした。スノー大統領は側近のエジェリアに、スピーチ原稿の修正を指示した。国営放送に出演した彼は、マネシカケスのシンブル使用を禁止し、所持も死刑の対象になることを通告した。秘密基地へ帰還したカットニスは、母とプリムローズに再会した。彼女は猫と写真とハーブを渡すが、母は「猫は飼えないの」と基地の規則が厳しいことを明かした。
夕食の時間、カットニスが食堂にいると、シーザーが司会を務める番組がテレビで放送される。シーザーは「記念大会で何が起きたのか、特別ゲストに真実を語ってもらおう」と言い、ピータを紹介した。ピータは「カットニスは反乱計画を知らなかった」と告げた上で、国民に停戦を呼び掛けた。基地にいる人々が「裏切り者」とピータを非難する中、ゲイルはカットニスに「君を守るため、取り引きしたのかもしれない」と述べた。
カットニスが深夜に悪夢で目を覚ますと、プリムローズが「話して。秘密は守るわ」と言う。カットニスが「私は政府を憎んでる。反乱軍の役にも立ちたい。でも戦争に勝っても、ピータは?」と語ると、プリムローズは「姉さんは反乱軍にとって重要な人よ。望みがあれば、頼めばいい。断れないわ」と言う。カットニスはコインと会い、「ピータとジョアンナとアニーを一刻も早く救出し、無条件で罪を赦す」という条件で協力すると持ち掛けた。コインは難色を示すが、プルタークが説得して承知させた。
プルタークはエフィーの元へ行き、カットニスの付き人を要請する。エフィーから「ヘイミッチは?」と問われた彼は、「施設で断酒の治療中だ」と教える。エフィーは「反乱軍への協力は私の専門外よ」と一度は断るが、結局は承諾した。彼女はカットニスに、死んだシナから預かったデザイン画を見せた。それはマネシカケスをイメージした衣装のデザイン画であり、エフィーは反乱軍のデザインチームが服を作っていることをカットニスに説明した。
カットニスは用意された衣装を着てスタジオに入り、プルタークの指示した台詞を喋る。しかし納得できる芝居ではなく、プルタークは顔をしかめる。治療を終えたヘイミッチはコインやプルタークたちに、「皆がカットニスの何に感動したか、思い出してほしい。自ら動いたことだ」と話す。ヘイミッチはカットニスに台本を用意せず、自由にさせるよう主張する。そのために彼は、カットニスを戦場へ送るべきだと語る。コインは反対するが、ヘイミッチは「自然な動きこそ人々の心に届く」と告げた。
ビーティーは「第8地区は先週の爆撃で軍事施設が少ない」と言い、カットニスは戦場へ出ることを志願した。彼女はビーティーが開発した新しい弓矢を受け取り、ゲイルと共に第8地区へ行くことにした。撮影クルーとして監督のクレシダ、助手のメッサッラ、カメラマンのカスターとポラックスが同行した。反乱軍のペイラー司令官が一行を出迎え、負傷者の見舞いを要請した。カットニスは野戦病院で大勢の負傷者を目撃し、顔を強張らせた。
カットニスはクレシダから「顔を見せてあげて」と促され、病室へと足を進めた。彼女が戦うことを口にすると、患者たちは一斉に三つ指のポーズを取った。スノーは側近のアントニウスから、カットニスが野戦病院の慰問へ赴いたことを知らされる。アントニウスが「まだ第8地区にいるはずです」とカットニスの殺害を提言すると、彼は「負傷者を殺せ。マネシカケスと関わればどうなるか、見せしめだ」と指示した。
キャピトル軍の爆撃を目撃したカットニスは、急いで病院へ戻った。崩壊した病院を見たカットニスは衝撃を受けていると、クレシダはカメラに向かって話すよう指示した。カットニスは政府への怒りを語り、国民に戦うよう訴え掛けた。このプロポは全地区に流され、強制労働を命じられていた人々はキャピトル軍に反旗を翻した。シーザーの番組には再びピータが出演し、「カットニスは反乱軍に利用されているんだ」と話す。彼はシーザーに促され、カットニスに向けて「停戦を反乱軍に伝えてくれ」と話し掛けた。
ゲイルが「俺なら拷問されても絶対に言わない。なぜ奴は故郷を破壊されたのに、政府の味方に?」とピータを非難すると、カットニスは「誰も第12地区の惨状は見ていないわ」と言う。彼女はゲイルと撮影クルーを伴い、第12地区で撮影することにした。ゲイルはクレシダに、第12地区で起きた出来事を語った。カットニスはポラックスに求められ、父から教わった歌を披露した。撮影した映像を、プルタークは全地区で放送しようとする。しかしキャピトルの防御システムは、まだ突破できていなかった。新たなプロポを見た国民はダムを襲撃し、スノーは、報復を指示した。ピータはシーザーの番組に出演し、「第13地区は明日の朝までに壊滅する」と通告した。政府軍の戦闘機が飛来したため、コインは基地の人々をシェルターに避難させた…。

監督はフランシス・ローレンス、原作はスーザン・コリンズ、脚本はピーター・クレイグ&ダニー・ストロング、脚色はスーザン・コリンズ&製作はニーナ・ジェイコブソン&ジョン・キリク、共同製作はブライアン・アンクレス、製作総指揮はスーザン・コリンズ&ジャン・フォスター&ジョー・ドレイク&アリソン・シェアマー、製作協力はキャメロン・マコノミー、 撮影はジョー・ウィレムズ、美術はフィリップ・メッシーナ、編集はアラン・エドワード・ベル&マーク・ヨシカワ、衣装はカート・アンド・バート、視覚効果監修はチャールズ・ギブソン、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はジェニファー・ローレンス、ジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ウディー・ハレルソン、ドナルド・サザーランド、スタンリー・トゥッチ、エリザベス・バンクス、ジュリアン・ムーア、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジェフリー・ライト、ウィロウ・シールズ、サム・クラフリン、ジェナ・マローン、マハーシャラ・アリ、ナタリー・ドーマー、ウェス・チャサム、エルデン・ヘンソン、パティーナ・ミラー、エヴァン・ロス、ポーラ・マルコムソン、サリタ・チョウドリー、ステフ・ドーソン、ロバート・ネッパー他。


スーザン・コリンズのヤングアダルト小説を基にしたシリーズ第3作。原作の完結編となる『ハンガー・ゲーム3 マネシカケスの少女』を2部作として映画化した前篇。
監督は前作に引き続き、フランシス・ローレンスが担当。
脚本は『ザ・タウン』のピーター・クレイグと『大統領の執事の涙』のダニー・ストロングによる共同。
原作者のスーザン・コリンズが脚色として参加している。

カットニス役のジェニファー・ローレンス、ピータ役のジョシュ・ハッチャーソン、ゲイル役のリアム・ヘムズワース、ヘイミッチ役のウディー・ハレルソン、スノー役のドナルド・サザーランド、シーザー役のスタンリー・トゥッチ、エフィー役のエリザベス・バンクス、プリムローズ役のウィロウ・シールズ、母親役のポーラ・マルコムソンは、1作目からの出演者。
プルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマン、ビーティー役のジェフリー・ライト、フィニック役のサム・クラフリン、ジョアンナ役のジェナ・マローンは、2作目からの続投組。
今回から加わったキャストは、コイン役のジュリアン・ムーア、ボッグス役のマハーシャラ・アリ、クレシダ役のナタリー・ドーマー、カスター役のウェス・チャサム、ポラックス役のエルデン・ヘンソン、ペイラー役のパティーナ・ミラー、メッサッラ役のエヴァン・ロスなど。

もうハンガー・ゲームは開催されないので、もはやタイトルとは無関係な内容になっている。
政府を倒さないと話が終わらないので、次の段階へ移るのは理解できる。ただ、それなら革命のための戦いに突入すればいいものを、それはシリーズ完結編となる次回に持ち越している。
なので本作品は、「完全なる繋ぎ役」に徹している。
革命バトルをラストまで取っておくにしても、この第3作を盛り上げるために何かしらのネタは用意しているだろうと思ったが、これが見事なぐらい何も無いのである。

ザックリ言っちゃうと、この第3作は「これから本格的に革命のための戦いが始まりますよ」ってのを匂わせるだけで時間を消費しようとしている内容だ。
だから当然っちゃあ当然だが、まあ退屈なこと。
その中でカットニスが色々と考えたりする様子は描かれているが、そこに繊細な心理ドラマとしての面白さなんて、これっぽっちも無いからね。ただ陰気でウジウジしているだけだからね。
まあ今までの2作も、すんげえ陰気だったけどさ。

結局のところカットニスって、「全てにおいてピータが最優先」という思考回路になっているんだよね。スケールの大きな話ではあるが、「愛する男のために」という一途な思いを中心に据えようとしているのだ。
それを好意的に受け取る人もいるんだろうけど、全面的には賛同しかねる。
いや、もちろん惚れた男を心配するのは当然だし、ずっと思い続けるのは構わないのよ。
ただ、「政府を打倒することより、まずはピータ」ってのが揺るがないのは、それを「強い愛」として好意的には受け取れないなあ。

もうカットニスは明確な形で、キャピトルに反旗を翻しているわけで。テメエで国民に火を付けるような行動を取っておきながら、「反乱のシンボルとして国民を団結させてほしい」と頼まれたら「それは嫌」ってのは、どうなのかと。
結局は承知するものの、「まずはピータありき」ってのは絶対条件なので、なんだかなあと。妹に相談はしているけど、ピータの問題が解決しなきゃ絶対に協力しなかったでしょ。
ホントなら、カットニスには「ピータは大切だけど、多くの国民を解放する革命の成功よりも、個人の感情や目的を優先すべきなのか」というトコでの苦悩や葛藤があるべきじゃないかと思うのよ。
だけど、それは全くと言っていいほど無いのよね。

反乱軍の首相としてアルマ・コインという女性キャラクターが登場するが、もちろん初顔なので「誰やねん」と言いたくなる。
なぜ彼女が反乱軍のリーダーという立場に位置し、大勢の人々が従っているのかがサッパリ分からない。
今までの2作では登場しておらず、誰かの台詞で言及することも無かったので、こっちからすると「ポッと出の女」でしかない。
なので、そんな奴が反乱軍を仕切っているのなら、そのカリスマ性で国民を団結させられるんじゃないかと言いたくなってしまうわ。

今回のカットニスは「プロパガンダ映像を撮影する」ってのが主な仕事なのだが、そこには当然のことながらゲームのサバイバルも反乱の戦いも無い。
だから、普通に見せているだけだと、アクションやサスペンスで映画を盛り上げることは出来ない。極端に言えば秘密基地の中だけでも事足りるような仕事なので、画的にも厳しくなる。
それではマズいってことなのか、ヘイミッチの提案によって戦場で撮影することになるが、まあ無理のある展開だこと。
そんなことをヘイミッチが言い出すのもガッカリだわ。強引な段取りを何とか消化するために、無理のある形でキャラを使っている印象が強いわ。

最初にピータがシーザーの番組へ出演した時、ゲイルは「カットニスを守るために取り引きしたのかも」と擁護するような発言をする。しかし2度目に出演した時には、「俺なら拷問されても絶対に言わない。今のあいつは保身だけだ」と糾弾する。
すげえ不自然に見えるぞ。
まだ「嫉妬心で批判した」ってことなら、格好は良くないが分かりやすい。でも、そういう感じは無いのよね。
なので、カットニスが言うように「自分を助けてくれた相手」であるピータを批判し、男を下げるようなことをさせるのは、どういうつもりでキャラを動かしているのかと。
っていうか、そもそも、ここの三角関係は、とっくに決着が付いているし。

基地の面々がシェルターへ避難するシーンでは、「猫を見つけに行ったプリムローズがいないので、カットニスが慌てて捜索する」という展開が用意されている。
「それ、ホントに要るかね?」と言いたくなるような展開だが、そういうトコにスリリングな要素を用意しないと、話を盛り上げるのが難しい内容になっちゃってるのよ。
実際、この映画で最も緊迫感が高まるのって、そのシーンなのよね。
でも、それが望ましい形だとは、到底思えないわけで。

終盤には「捕まっているピータ&ジョアンナ&アニーを救出する」というミッションが実行されるのだが、クライマックスとしての力は全く感じられない。
何しろ、その任務にカットニスは参加せず、ただ基地で待機しているだけなのだ。一応は「スノーに話し合いを要求し、気を逸らせようとする」という役目は請け負うが、すぐにバレちゃってるし。
そしてカットニスどころか観客も知らない内に、救出のミッションは終了してしまう。
とりあえず本作品だけで成立するようなクライマックスさえ用意しないんだから、「最終作への繋ぎ」としての位置付けが徹底しているってことなのね。

(観賞日:2017年1月26日)

 

*ポンコツ映画愛護協会