『ハンガー・ゲーム2』:2013、アメリカ

カットニスはゲイルと森へ狩りに出掛けるが、第1地区のマーヴェルを矢で殺す幻覚を見て動揺した。帰り道、「駅まで迎えに来る?」とカットニスが訊くと、ゲイルは「俺は辛いから」と言う。「雪解けまでに戻るわ」と彼女が告げると、ゲイルは「その間、奴と一緒だな」と口にした。「あれは芝居よ。生き残るためなの。ああでもしないと殺されていた」とカットニスが釈明すると、ゲイルは不意にキスをした。カットニスが驚くと、彼は「我慢できなかった」と述べた。
ゲイルは酔っ払っているヘイミッチの家へ行き、「今日からツアーよる撮影隊が来るわ」と告げて起こした。家にはピータの姿もあり、ヘイミッチは2人に「1時間後の本番までに馴染んでおけよ」と告げた。カットニスが帰宅すると、スノー大統領が来ていた。彼は「問題が起きてる。闘技場で君か毒の実を見せたことが発端だ。セネカが利口なら君を葬っていただろう。だが、君は生きてる。あの後、我々は君のシナリオに従うしかなかった」と語った。
スノーはカットニスに、「君は恋にのぼせた少女を見事に演じた。だが、騙されなかった地区の連中もいる。彼らは木の実のトリックを反逆とみなし、第12地区の少女が政府に歯向かっても無傷でいられるなら、自分たちも出来るはずだと反乱を考えた。革命に発展すれば、この国は崩壊する」と話す。カットニスが皮肉を口にすると、スノーは「そうなれば第12地区の住民は大勢が死亡し、君の町は第13地区のように核兵器で消滅する」と述べた。
スノーはカットニスに、「凱旋ツアーに出たら常に笑顔を見せ、死ぬほどピータを愛していることを国民に示すのだ。私を納得させろ。愛する者を救うために」と告げた。エフィーは助手のオクタヴィアとフラヴィウス、それにシナを連れてカットニスの家へやって来た。シーザーがホストを務めるテレビ番組の生中継も入る中、12日間で12の地区を巡る凱旋ツアーがスタートした。最初の地区へ向かう列車の中で、ピータはカットニスに「恋人を演じたからって君を縛る気は無い。ただ、カメラが回れば恋人、回らなければ無視ってのは変だ」と言い、友達になるために互いを深く知り合うことが必要だと説いた。
列車が第11地区に到着すると、エフィーはカットニスとピータに「死んだプレーヤーへの賛辞を忘れないで」と告げてスピーチの原稿を渡した。ステージに上がったピータは、大勢の観衆が見つめる中で原稿を無視したスピーチを始めた。彼はスレッシュとルーへの感謝を述べた後、賞金の1ヶ月分を毎年、生涯に渡って寄付すると宣言した。しかしヘイミッチは、そんなことは不可能だと知っていた。
カットニスは「スレッシュは私を殺そうと思えば出来たけど、助けてくれた。ルーは優しい子だったけど、若すぎた」とスピーチし、ルーを救えなかったことを詫びた。老人が三本指のポーズで右腕を掲げると、他の聴衆たちも続いた。すると警備兵たちは老人を捕まえ、その場で銃殺した。カットニスはヘイミッチに非難されると、「今のでスノーに誤解される。反乱を心配してた。芝居はバレてる。助けて。このツアーを乗り切りたい」と訴えた。
ヘイミッチはカットニスとピータに、「目を覚ませ。このツアーは永遠に続く。今後も教育係として毎年、テレビで恋の話をさせられる。お前たちはエフィーの原稿を微笑んで読めばいいんだ」と命じた。その後の地区では、カットニスもピータも原稿をそのまま読んだ。だが、それでも三本指のポーズを示したり、「本当のことを言って」と叫んだりする人々がいた。孫娘や友人たちがカットニスに憧れていることを知ったスノーは、強い警戒心を抱いた。
ヘイミッチはカットニスとピータに、「スノーは地区を鎮めたいからムカついてるはずだ。笑顔じゃなく棒読みだしな」と言う。そこでカットニスは「だったら結婚するのは?」と提案し、「永遠にさらし者なら、いずれはそうなる」と告げた。テレビ中継でピータは求婚し、それをカットニスが承諾するという芝居を演じた。凱旋ツアーの最後は、大統領宮殿でのパーティーだった。民衆は飢えに苦しんでいたが、会場には豪華な食事が並んでいた。しかもパーティー客は満腹になると吐き薬を使い、また食べるのだった。
エフィーはカットニスとピータに、セネカの後任であるゲームメイカーのプルターク・ヘヴンズビーを紹介した。プルタークはカットニスをダンスに誘い、自ら志願してゲームメイカーになったことを話した。「ゲームに意味を与えたい」と彼が言うと、カットニスは冷たい口調で「ゲームに意味なんか無い。あるのは恐怖だけよ」と告げる。するとプルタークは、「君に触発されたのかも」と口にした。スノーが会場に登場して挨拶し、カットニスとピータの婚約を祝福した。
スノーはプルタークを呼び、「今やカットニスは、反乱を起こそうとする連中によって希望の星だ。抹殺せねばならん」と述べた。そこでブルタークは、「正常な時に、正常な方法で対抗手段を講じればいい。あの子はシンボルだが、政府側だと示してイメージを壊せば後は民衆がやる」と語った。「どうする?」というスノーの問い掛けに、彼は「闇市を閉鎖し、家財を奪い、処刑を増やす。それをテレビで生中継し、恐怖を煽るんです」と説明した。「人は希望があると恐怖に屈しない。カットニスが希望を与えてる」とスノーが言うと、彼は「婚約の話題と処刑を交互に流せば、民衆はカットニスが政府側だと考え、喜んで殺すでしょう」と述べた。
第12地区に戻ったカットニスとゲイルと会い、森へ逃げようと持ち掛けた。彼女はツアー先で政府への反抗心を示す人々が多くいたことを明かし、「私が毒の実を食べて死んでいれば、みんなは無事に暮らせた」と言う。ゲイルは「無事だって?飢えて子供をゲームに送るのが無事か?君はチャンスを与えてるんだ。後は人々の勇気だけだ」と語るが、カットニスは「殺される前に逃げなきゃダメよ」と告げる。「地区に残る人たちは?君はリーダーだ」とゲイルが言うと、彼女は「そんな役割は嫌。人は助けられない」と尻込みした。
スレッド隊長の率いる軍隊が第12地区へ向かうのを見たゲイルは、カットニスに「好きにすればいい。俺は残る」と告げた。軍隊は闇市に火を放ち、禁制品を没収して燃やした。スレッドは老女を蹴り付け、鞭で打ち据えようとした。それを見たゲイルは、スレッドにタックルを浴びせた。スレッドはゲイルを広場へ連行し、鞭打ちの罰を与えた。カットニスがゲイルを救おうと立ちはだかると、スレッドは殴り付けてから射殺しようとした。慌ててヘイミッチが駆け付け、「貴方のためにも、やめた方がいい。勝者を殺して大統領が喜ぶとでも?」と告げた。スレッドは「次にやったら銃殺刑だ」と言い放ち、地区を後にした。
カットニスは妹のプリムローズに、「酷い生活」と告げる。するとプリムローズは「でもゲーム以来、希望が見えるようになった」と言う。カットニスが「私が行動すれば家族に跳ね返る」と話すと、彼女は「私もママも平気よ」と述べた。スノーは第12地区で起きた出来事の映像を確認し、プルタークに「あの娘のせいで、皆が無敵だと思い込んでいる」と語った。プルタークは「それでもゲームメイカーの知恵があれば勝てます」と自信たっぷりに告げた。
スノーは第75回ハンガー・ゲームについて、25年ごとの記念大会であることを改めて説明した。そして彼は民衆に対し、「三度目の記念大会は、最強の者でさえキャピトルには勝てないという戒めの大会だ。各地区に生存する歴代の勝者から1人ずつプレーヤーを選ぶ」と発表した。カットニスはヘイミッチの元へ行き、ピータを助けてほしいと頼んだ。ヘイミッチは承諾し、「奴が選ばれたら志願する。だが、俺が選ばれて奴が志願したら、どうしようもない」と告げた。
第12地区にいる女性の勝者はカットニスだけなので、彼女に選択の余地は無かった。エフィーが男性勝者のくじを引くとヘイミッチだったが、ピータが志願したので出場が決まった。エフィーは「記念大会は全てが違う。政府は金に糸目を付けず、トレーニング・センターも闘技場も新しく建築した」とカットニスたちに説明する。ヘイミッチはカットニスとピータに、「去年のゲームは忘れろ。あれはお遊びだ。今年の相手はベテランの殺し屋たちだ。誰かと同盟を組め。孤立すれば真っ先に標的にされる」と助言した。カットニスは「同盟なんて無意味よ」と反発するが、ヘイミッチは彼女を諭した。
ヘイミッチはカットニスとピータに、今回のプレーヤーを説明する。第1地区代表はカシミアとグロスの姉弟で、2連勝でスポンサーも多い。第2地区代表はブルータスとエノバリアで、エノバリアは尖った歯を使って相手の喉笛を噛み切る。第3地区代表のワイレスとビーティーは、頭脳明晰な技術オタクだ。カモフラージュの達人コンビもいるが、薬物依存症なので脅威ではないとヘイミッチは語った。14歳の最年少で優勝した第4地区のフィニックは、自惚れ屋だが賢くて強い。しかしアニーの代わりに志願した教育係のマグスが弱点であり、彼女を守るためなら危険を冒すだろうとヘイミッチは述べた。
お披露目の後、ヘイミッチはカットニスとピータに特別な友達として第11地区代表のシーダーとチャフを紹介した。エレベーターで移動する際、第7地区代表のジョアンナは服を脱いでカットニスたちの反応を観察した。トレーニングセンターに入ったカットニスとピータは、同盟を組むためのメンバー選考を始めた。ワイレスとビーティーに話し掛けたカットニスは、プルタークがいる場所の仕切りがガラスではなく電磁場バリアだと教えてもらった。マグスに声を掛けたカットニスは、弓の使い方を教えるので釣り針の作り方を教えてほしいと頼んだ。カットニスが卓越した弓の技術を披露すると、いつの間にかプレーヤーたちが集まっていた。
ヘイミッチはカットニスとピータに、半数のプレーヤーが同盟を組みたいと言って来たことを話した。特技評定が終わり、クラウディウスが司会を務める前夜祭のテレビ中継が始まった。ヘイミッチはカットニスとピータに、「勝者たちは怒っており、ゲームを中止にしたいと考えている。お前たちも同調しろ」と指示した。カットニスはスノーの命令で、ウェディングドレスを着用した。シナは彼女のために、炎と共にマネシカケスのようなドレスに変身する仕掛けを用意した。
クラウディウスから結婚式のキャンセルについて質問されたピータは、ゲームを中止にしようと考えて「カットニスに赤ん坊が出来た」と嘘をついた。しかしカットニスは、そんなことでゲームは中止にならないだろうと思っていた。実際、ヘイミッチは彼女らに、ゲームが続行されることを通達した。エフィーはチームの印として、それぞれにアクセサリーを贈った。カットニスは「闘技場に出たら、誰が本当の敵なのか思い出せ」というヘイミッチの言葉に送られ、ハンガー・ゲームの闘技場へ向かった…。

監督はフランシス・ローレンス、原作はスーザン・コリンズ、脚本はサイモン・ボーフォイ&マイケル・デブルイン、製作はニーナ・ジェイコブソン&ジョン・キリク、共同製作はアルドリッチ・ローリー・ポーター&ブライアン・アンクレス、製作総指揮はスーザン・コリンズ&ルイーズ・ロズナー=マイヤー&ジョー・ドレイク&アリソン・シェアマー、撮影はジョー・ウィレムズ、編集はアラン・エドワード・ベル、美術はフィリップ・メッシーナ、衣装はトリッシュ・サマーヴィル、視覚効果監修はジャネク・サーズ、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード、音楽監修はアレクサンドラ・パットサヴァス。
出演はジェニファー・ローレンス、ジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ウディー・ハレルソン、ドナルド・サザーランド、スタンリー・トゥッチ、エリザベス・バンクス、レニー・クラヴィッツ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジェフリー・ライト、トビー・ジョーンズ、ウィロウ・シールズ、サム・クラフリン、リン・コーエン、ジェナ・マローン、アマンダ・プラマー、アラン・リッチソン、ステファニー・リー・シュルント、メタ・ゴールディング、ブルーノ・ガン、E・ロジャー・ミッチェル、マリア・ハウエル、エレーナ・サンチェス、ジョン・カシーノ、パトリック・セント・エスプリット、ポーラ・マルコムソン、ブルース・バンディー、ネルソン・アスンシオ、エリカ・ビアマン、ステフ・ドーソン他。


スーザン・コリンズのヤングアダルト小説『ハンガー・ゲーム2 燃え広がる炎』を基にしたシリーズ作品。
カットニス役のジェニファー・ローレンス、ピータ役のジョシュ・ハッチャーソン、ゲイル役のリアム・ヘムズワース、ヘイミッチ役のウディー・ハレルソン、スノー役のドナルド・サザーランド、シーザー役のスタンリー・トゥッチ、エフィー役のエリザベス・バンクス、シナ役のレニー・クラヴィッツ、クラウディウス役のトビー・ジョーンズ、プリムローズ役のウィロウ・シールズといった面々は、前作からの続投。
今回からの登場は、プルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマン、ビーティー役のジェフリー・ライト、フィニック役のサム・クラフリン、マグス役のリン・コーエン、ジョアンナ役のジェナ・マローン、ワイレス役のアマンダ・プラマーなど。
監督は『アイ・アム・レジェンド』『恋人たちのパレード』のフランシス・ローレンス、脚本は『127時間』『砂漠でサーモン・フィッシング』のサイモン・ボーフォイと『リトル・ミス・サンシャイン』『トイ・ストーリー3』のマイケル・デブルイン。

あの仕上がりでも全米では爆発的なヒットを記録したので、当たり前っちゃあ当たり前なんだけど、前作で感じた不満や欠点は何一つとして改善されていない。
「トワイライト」シリーズが大ヒットしたけど酷評を浴び、こっちは大ヒットした上に評価も高いってんだから、アメリカ人のセンスは良く分からん。
どっちも似たようなモンでしょ。
「ヤングアダルト小説が原作」「男2人が女に惚れる三角関係」「3部作」「それが最重要なんだろうと思わせる設定や意匠が所詮は恋愛劇を盛り上げるための道具に過ぎない」「アクション・パートが始まるまでに中身の薄い話がダラダラと続く」「設定やルールが都合良く変更される」「登場人物は多いけど、その大半は使いこなせずに薄っぺらい状態」など、共通点は多いぞ。

前作の「恋愛物語を演出して観客の興味を誘えば暴動が治まる」ってことでカットニスとピータの恋愛劇を作って行こうとする展開には、かなりの強引さを感じた。
今回も引き続き、「カットニスとピータが恋人の芝居を続ける中で、次第に本物の恋心が芽生えて行く」という話を作るために、強引な手を使っている。
わざわざスノーにカットニスを訪問させて、「毒の実の一件がトリックだと分かったら反乱が起きるので、それを回避するために恋人の芝居を続けろ」と脅しを掛けさせている。
ご丁寧にも、そこには「愛する者を救うためにもカットニスは芝居を続けざるを得ない」という事情まで用意してある。

「カットニスとピータが本物の恋人なら反乱は起きず、芝居だったら反乱が起きる」という論理は相当に無理があるような気がするが、困ったことに、それは本シリーズを進めて行く上で重要なポイントなんだよな。ボンクラなスノーが勝手にそう思い込んでいるわけではなくて、ホントに「カットニスとピータが本物の恋人じゃなかったら反乱を起こす」という考えを持つ多くの国民がいるのだ。
もうさ、そんなことで蜂起できるぐらいなら、さっさと反乱を起こしちゃえよ。
実際、カットニスとピータが原稿通りのスピーチをしても、やはり三本指のポーズを取る者もいれば、「本当のことを言って」と訴える者もいる。反乱の火種は、あちこちに転がっているのだ。
もはや政府による統制なんて全く取れていないわけで、「独裁政権の崩壊は近い」と思えてしまうんだよな。
まあ実際に近いわけだが、それが早い段階からハッキリと見えちゃうってのは、マズいんじゃないのか。

前作でも感じたことだが、ハンガー・ゲームは国民のガス抜きとして、これっぽっちも機能していない。それに気付かず、未だに「ガス抜きのために云々」なんて言ってるんだから、スノーはかなりのアホだ。
しかも彼はバカみたいなゲームばかりに躍起になっている上、2人の子分しか引き連れずにカットニスの家をわざわざ訪問して脅しを掛ける。
この国の大統領は、よっぽど暇なのか。
いや、時間的に暇だとしても、子分2人でカットニスの家を行くのは危険すぎるだろ。アンタだって反乱を起こそうとする不満分子の存在は分かっているだろうに、襲われる危険は考えなかったのか。

ハンガー・ゲームが国民を統制するための道具として効果的に機能しているとは思えないし、なぜ今までクーデターが起きていないのかサッパリ分からない。
そりゃあ描かれていないトコで色々な統制や締め付けがあるのかもしれないよ。
だけど、映画を見ている限り、スノーも手下たちもボンクラ揃いにしか見えないし。
あと、凱旋ツアーも国民のガス抜きとして開催されているらしいんだけど、やっぱりガス抜きになっているように見えないんだよな。

三本指ポーズの老人が銃殺されても、それがきっかけで反乱が勃発することは無い。
国民の洗脳教育が徹底されているわけでもないのに、国民の不満は溜まりまくっているのに、なかなか反乱は勃発しない。
スノーと子分たちはボンクラばかりで隙だらけなのに、なかなか反乱は勃発しない。
国民は武力を完全に取り上げられているわけでもなく、それどころか「ゲームのため」という名目なら戦士を育てることも可能なのに、なかなか反乱は勃発しない。

老人たちが三本指のポーズを取るのは、どういう意味だかサッパリ分からない。
前作で何か説明があったのに私が忘却してしまったのかと思ったりもしたのだが、そうではない。「原作では説明されているが、映画では端折ってある」ということらしい。
そこに限らず、この映画は必要なはずの説明を色々と省略している。
だから原作を読んでいない人だと、何が何やら良く分からない箇所が幾つかある。

エレベーターでジョアンナが急に服を脱ぐのは、何がしたいんだかサッパリ分からない。
特技評定の際、カットニスが人形を吊り上げているのは何の特技になるのかサッパリ分からない。
その人形の胴体に「セネカ」と書かれているのも、どういうことかサッパリ分からない。
どうやら、「観客の皆さんは原作を読んでいるはずだから、細かいことは説明しなくてもいいでしょ。省略している箇所は脳内補完して下さいね」ってことなんだろう。

前作では、ハンガー・ゲームのルールが途中でコロコロと変更されていた。
また今回も政府側は「記念大会だから歴代の勝者を集める」と唐突にルールを変更し、おまけに「年齢や健康状態は考慮しない」と言い出す。
もはやゲームとしてマトモに成立させようという気なんて全く無い。
そりゃあハンガー・ゲームが政府に取って手段に過ぎないということは分かってるけど、それにしても陳腐だよなあ。

ヘイミッチは「前回はお遊び。今回の相手はベテランの殺し屋たち」と告げ、前回より遥かに厳しい大会になることを示唆しているが、実際はそうでもない。
っていうか、そもそも「ベテランの殺し屋たち」と言ってるけど、歴代の勝者はゲームが終わった後も戦闘を続けているわけじゃないし。
教育係としてゲームへの関与は続いているだろうけど、実戦経験を積み重ねているわけではない。
しかも、たぶん今までもゲームのルールはコロコロと変わっているはずだから、経験値が役に立たないこともあるだろうし。

ハンガー・ゲーム参加者の紹介が行われるのは、映画開始から55分ほど経過した辺り。それもヘイミッチが映像を見せてサラッと説明するだけ。
おまけに、そこで説明される設定は、ほとんど意味が無い。大半のプレーヤーは、単なる数合わせに過ぎない。それは前作と一緒だ。
で、プレーヤーのお披露目が、映画開始から1時間ほど経過した辺り。ってことは、まだゲームは始まらないってことだ。
前作で世界観や主要なキャラクター、ゲームの基本的ルールなどの説明は全て終わっているから、今回は早い段階でゲームに突入することが可能なはずなのに、やっぱりダラダラと開始時間を引き延ばしている。
結局、ゲームが開始されるのは、1時間半ほど経過してからだ。

ハンガー・ゲームは、常に1人しか生き残れないはず。
なのに、なぜか今回のプレーヤーは全て地区ごとに「ずっとコンビを組んで来た」という感じのキャラクター設定になっている。
カシミアとグロスの姉弟という設定も都合が良すぎるとは思うが、ワイレスとビーティーにしても別々でゲームに参加して優勝したはずなのに、なぜか2人とも頭脳明晰な技術オタクで、ずっとコンビだったかのようだ。
他の地区代表も、今回が初めてのコンビのはずなのに、フィニックとマグス以外は「ずっと組んでいました」って感じの関係に見える。

ゲーム前夜のテレビ中継で、ヘイミッチはカットニスに「プレーヤーたちは怒っている。ゲームを中止させたいんだ」と言う。
実際、舞台に出たプレーヤーたちはゲームに対する不満を言葉にしており、ジョアンナなんかはハッキリとした形で政府を非難している。
あれだけスノーが恐怖によって人民を制圧し、ちょっとでも反抗的な連中は次々に処刑しているのに、それでも全く堂々と非難する連中が後を絶たないんだから、もうスノー政権って実質的には崩壊してるでしょ。
完全に「詰み」の状態でしょ。

まあ実際、3部作のラストでは革命が起きて政権が打倒されるわけだから、そろそろ崩壊直前の状態ってのが見えるのは、当然っちゃあ当然なのかもしれないよ。
ただし、そうなってくると、「カットニスがいなくても平気じゃねえか」と思ってしまうのよ。
なんか、まるで「カットニスのおかげで多くの国民が希望を抱き、反乱を起こそうと動き出した」みたいになってるんだけど、ただ単にカットニスって革命の動きに巻き込まれてるだけじゃないかと。
いや、別に巻き込まれる形で革命に参加するヒロインでも、それはそれで別にいいのよ。
ただ、まるでジャンヌ・ダルクのような扱いになっているのは、ちょっと違うんじゃないかと思うわけよ。

ゲーム前夜のテレビ中継では、プレーヤー全員が手を繋いで一致団結をアピールしている。これから殺し合いを始める雰囲気は、ちっとも伝わって来ない。
前作でも「仲間同士が殺し合わないといけない」という状況設定は全く活用されていなかったが、今回はさらに悪化しており、ほぼ単なるサバイバル・ゲームに近い。
だったら最初から「デス・レース」的なルール設定にしておけばいいのよ。
仲間同士が殺し合わざるを得ないはずのルールを用意しておきながら、やってることがサバイバル・ゲームってことになると、そのルールは全く無意味になっちゃうでしょ。

今回は最初からカットニス&ピータが他のチームと同盟を組んでいるので、ますます「他のチームと戦う」という状況が少なくなっている。
スタート直後に申し訳程度の争いを描いた後は、「同盟メンバーと一緒に行動する」という状態が続く。前作と同様、カットニスは誰も殺さない。
そんで政権側も、プレーヤーを襲うための仕掛けを幾つも用意している。そして知らない内に、数名のプレーヤーが命を落としている。
それって、最初からプレーヤー同士に殺し合いをさせるつもりが無いってことだろ。
そんな仕掛けがあるなら、プレーヤー同士に殺し合いを要求するルールの意味が無いでしょ。

で、そもそものルール設定なんて完全に忘れた頃になって、カシミアとグロスが襲って来る展開があるけど、それも「プレーヤー同士の戦い」っていうより、「あまり良く知らない敵が襲ってきた」という印象になっちゃうのよね。
あとさ、そこで殺しに来るのなら、前夜のテレビ中継で全員が手を繋いで一致団結を示したのは何だったんだよ。
完全ネタバレだけど、ヘイミッチは反乱のための計画を密かに進め、プレーヤーたちに説明してあるのよ。だったら、なぜ全員を誘わないのか。
もし誘ったのに断ったとしたら、その感覚が理解できないし。これが「実はスノーの手下」ってことならともかく、そうじゃないんだから。

そもそも、既に「本当の敵は政府」ということは明らかであり、「スノー政権vsカットニスたち」という対決の構図もハッキリと見えているので、そんな中で「カットニスたちがハンガー・ゲームに参加する」という話を描かれても、乗って行けないんだよな。
だってさ、ぶっちゃけ、ゲームの内容とか結果とか、どうでもいいでしょ。
どうせカットニスとピータが生き残ることは明白なんだし。
これが例えば、「ゲームに参加する中で、カットニスたちが反乱のための計画を密かに進める」とか、そういうことでもあれば話は別だけどさ。
いや、実は密かにヘイミッチが計画を進めているんだけど、それはラストまで観客には明かされないので、こっちは何の意味も無いゲームを観賞させられるハメになっちゃうのよ。

あとさ、最後になってプルタークも革命グループのメンバーだと判明するけど、それにしてはゲームメイカーとして明らかにカットニスを殺そうとする仕掛けを幾つも用意してたよね。
そのせいで仲間のプレーヤーが何人か死んでいるし、幾らスノーの目を誤魔化すためとは言え、それはメチャクチャだろ。
それにしても、こんなヘッポコな映画が大ヒットするんだから、なんだかんだ言ってもアメリカは平和なんだと思う。
そして、この映画がそれほどヒットしなかったことを考えると、なんだかんだ言っても日本は健全なんだと思う。

(観賞日:2015年6月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会