『ハンガー・ゲーム』:2012、アメリカ

独裁国家のパネムでは、反逆防止協定が締結されていた。12の地区は反乱を起こした償いとして、12歳から18歳までの男女1名ずつを選出し、プレイヤーとして差し出す。プレイヤーはキャピトルに移され、闘技場で殺し合いを行う。生き残った1名が勝利者となる。これが1年に1度のイベント、ハンガー・ゲームである。3年前からゲームマスターを務めているセネカ・クレーンはシーザー・フリッカーマンのトーク番組に出演し、ハンガー・ゲームの意義を語った。
第12地区に住むプリムローズ・エヴァディーンは12歳になったため、今年の第74回ハンガー・ゲームではプレイヤーに選ばれる可能性が出て来た。不安になるプリムローズに、16歳の姉カットニスは「まだ抽選ボックスに入れられる紙は1枚だけだから大丈夫」と声を掛けた。年齢が上がると紙の枚数が増えて行き、政府の援助を受けている場合も枚数がプラスされる。カットニスは立入禁止区域の森へ赴き、弓で狩りをする。そこへ親友のゲイルが来て、カットニスに話し掛けた。ゲイルは42枚も紙が溜まっていた。
抽選会の司会者であるエフィー・トリンケットと治安維持軍が、第12地区にやって来た。若者たちが会場に集められ、抽選が行われた。女子代表としてプリムローズが選ばれるが、カットニスが志願して身代わりとなった。男子代表に選ばれたのはカットニスの同級生であるピータ・メラークだった。カットニスはピータに対して冷たい態度を取り、一言も話そうとしなかった。列車でキャピトルへ向かう途中、カットニスとピータは教育係のヘイミッチ・アバナシーと会った。ヘイミッチは過去の優勝者だが、今はすっかり酒浸りとなっていた。ピータから勝つためのコツを訊かれた彼は、「観客に気に入られて、スポンサーになってもらうことだ」と告げた。
キャピトルに到着したカットニスとピータは、スタイリストのシナと顔を合わせた。シナはお披露目のパレードで2人に注目を集めるため、人工の炎が放出される衣装を用意した。ゲームが開始される前の4日間、プレイヤーたちは訓練を受けることになっている。ゲームでは戦闘だけでなくサバイバルの能力も必要とされる。第2地区代表のケイトーは、ゲームに勝つための訓練を受けたプロフェッショナルだ。各地のプレイヤーが集まる中で、カットニスは第11地区から来た12歳のルーという少女に好感を抱いた
プレイヤーたちはスポンサーを得るため、それぞれの特技をアピールするための時間が与えられる。弓の技術を披露したカットニスは、12点満点で11点というトップの得点を叩き出した。次にプレイヤーたちは、観客の前に出て1人ずつ司会者と話す時間を与えられた。順番が来てステージに出たピータは、カットニスに片思いしていると話して観客の興味を誘った。ステージから戻って来たピータにカットニスは激怒するが、ヘイミッチはスポンサーを得るために恋愛という要素を利用するよう説いた。
大勢の観客が観戦する中で、いよいよハンガー・ゲームが開始された。プレイヤーたちは一ヶ所に置かれている物資を手に入れようとして群がり、いきなり激しい殺し合いが勃発した。カットニスは第2地区代表のクローヴにナイフで襲われるが、リュックを手に入れて森へ逃げ込んだ。カットニスは中身を確認し、木の上に登った。第2地区のケイトーとクローヴ、第1地区のグリマーとマーヴェルは同盟を組んで行動し、ピータもグループに加わっていた。ただしケイトーは、ピータを利用しようと考えているだけだった。
カットニスが闘技場の端へ移動すると、セネカは火炎攻撃で中央部に戻した。火傷を負って川に落ちたカットニスは、ケイトーのグループに発見された。カットニスが木の上に避難すると、一味は追い掛けて来た。ケイトーたちがカットニスを殺したくて焦れていると、ピータが「どうせ下りて来るんだから、待てばいい」と持ち掛けた。ケイトーのグループは木の下で火を焚いて眠り込んだ。ヘイミッチは薬をカットニスに差し入れた。その薬を塗ると、火傷はすぐに完治した。
翌朝、カットニスは近くの木にルーが登っているのを見つけた。ルーの助言を受けたカットニスは、改良されたスズメバチの巣を落としてケイトーのグループを攻撃した。ケイトーたちはパニックになって逃げだすが、カットニスもハチに刺されてしまった。幻覚を見た彼女は、意識を失った。目を覚ましたカットニスは、ルーの手当てを受けた。カットニスはルーから情報を聞き出し、ケイトーたちが一ヶ所に物資を集めていることを知った。
ルーがケイトーたちを引き付けている間に、カットニスは物資の場所へ赴いた。地雷が仕掛けられていると気付いたカットニスは、それを起動させて物資を爆発した。カットニスはルーの元へ戻るが、彼女はクローヴに殺された。ルーの死を見た第11地区の人々は、怒りに燃えて暴動を起こした。想定外のトラブルが発生して焦るセネカに、ヘイミッチは「カットニスとピータの恋物語を演出して人々の興味を引き付ければいい」と提案した…。

監督はゲイリー・ロス、原作はスーザン・コリンズ、脚本はゲイリー・ロス&スーザン・コリンズ&ビリー・レイ、製作はニーナ・ジェイコブソン&ジョン・キリク、共同製作はアルドリッチ・ラオリ・ポーター&マーティン・コーエン&ルイス・フィリップス&ブライアン・アンクレス&ダイアナ・アルヴァレス、製作総指揮はロビン・ビッセル&スーザン・コリンズ&ルイーズ・ロズナー=マイヤー、共同製作総指揮はシャンタル・フェガリ、撮影はトム・スターン、編集はスティーヴン・ミリオン&ジュリエット・ウェルフラン、美術はフィリップ・メッシーナ、衣装はジュディアナ・マコフスキー、視覚効果監修はシーナ・ダッガル、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード、音楽製作総指揮はT=ボーン・バーネット。
出演はジェニファー・ローレンス、ジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ウディー・ハレルソン、エリザベス・バンクス、レニー・クラヴィッツ、スタンリー・トゥッチ、ドナルド・サザーランド、ウェス・ベントリー、トビー・ジョーンズ、アレクサンダー・ルドウィグ、イザベル・ファーマン、アマンドラ・ステンバーグ、ウィロウ・シールズ、ポーラ・マルコムソン、レヴェン・ランビン、ジャック・クエイド、ジャクリーン・エマーソン、ダヨ・オケニイェ、カレン・ケンドリック、ラターシャ・ローズ、ローダ・グリフィス他。


スーザン・コリンズによる同名のヤングアダルト小説を基にした作品。
監督は『カラー・オブ・ハート』『シービスケット』のゲイリー・ロス。
カットニスをジェニファー・ローレンス、ピータをジョシュ・ハッチャーソン、ゲイルをリアム・ヘムズワース、ヘイミッチをウディー・ハレルソン、エフィーをエリザベス・バンクス、シナをレニー・クラヴィッツ、シーザーをスタンリー・トゥッチ、スノーをドナルド・サザーランド、セネカをウェス・ベントリー、ケイトーをアレクサンダー・ルドウィグ、クローヴをイザベル・ファーマン、ルーをアマンドラ・ステンバーグが演じている。

この映画を見て、「若者たちが殺し合いを強要される」というプロットから『バトルロワイヤル』を連想する人もいるだろう。
原作小説が発表された時点で、『バトルロワイヤル』との類似性がアメリカでも指摘されている。
確かにプロットとしては似ている部分もあるが、それよりも個人的には『リアル鬼ごっこ』との類似性を感じたなあ。
それは、リアリティー皆無な未来世界の雰囲気とか、適当なルール設定とか、粗さの目立つシナリオとか、そういう部分でね。

ハンガー・ゲームについて、スノーは「ただ委縮させるだけなら24人の若者を集めて処刑すればいい。勝者を出すことで小さな希望を与えている」と語るのだが、そこに12の地区の人々が希望を感じているとは到底思えない。
優勝者は褒美が貰えるけど、優勝者を出した地区が恩恵を受けるわけではないんだし。
むしろ、自分の身内が選ばれて死ぬかもしれないってことで、委縮してると思うよ。
少なくとも抽選会を見た限り、第12地区の人々は何の希望も抱いておらず、明らかに委縮している。

っていうか、それで独裁体制を維持し続けているってのも、ちょっと無理があるように感じるけどね。
反乱の償いとして何年にも渡って生贄を捧げることを余儀なくされ、多くの若者たちが見世物ににされて殺されるんだから、怒りを感じて再び反乱を起こそうと考える連中が出て来てもおかしくないんじゃないか。
ルーが死んだ時に第11地区の人々が暴動を起こしているけど、「今さらかよ」と思ってしまう。
これまでの大会でも同地区の若者が殺されたことは何度もあったはずで、その時に暴動が起きなかったのは、なぜなのかと。

ハンガー・ゲームのプレイヤーは抽選会で無作為に選ばれるというルールだが、妹が選ばれた時にカットニスが身代わりとして志願すると、それは認められる。
そりゃあ、志願者なんて滅多にいないだろうし、ショーとしては志願者が出た方が盛り上がるだろう。
ただ、事前に「志願者がいれば抽選の結果は無効」という説明が無かったので、「もう序盤からルールを外れちゃうのかよ」と感じてしまう。
志願者が出たらプレイヤーの変更が認められるってことになると、抽選会の意味が弱くなっちゃうし。

厳しい本人確認が行われているから、それは無理だと分かっているんだけど、例えば「プリムローズが抽選で当たってしまうが、まだ主催者サイドが本人確認を済ませていない内に、何かしらの方法でカットニスが当選者に成り済ます」という展開にでも出来なかったのかと思ってしまう。
あと、カットニスは第12地区から出た初めての志願者らしいんだけど、これまでに70回以上も開催されて来て、身内のためとか、あるいは褒美のためとか、何かしらの理由で志願するような若者は1人もいなかったのね。
第1地区と第2地区からは訓練を積んだプロが出て来るわけで、志願者が何の問題も無く参加できるのなら、「貧困から抜け出したい」「巨額の報酬が欲しい」ということで志願する奴ってのは、もっと出て来てもいいんじゃないかと。
っていうか、プロとして鍛えることは許されているんだよね。だったら、大勢の人間を戦闘のプロとして訓練して、反乱を起こせばいいんじゃないのかと思うんだけど。

ハンガー・ゲームは下卑た見世物として開催されているイベントだから、観客を熱狂させるためにルールを変更するってのは、ある程度は理解できる。
でも、それなら「次回からルールを変更する」ってことでもいいでしょ。
ゲームの途中で安易にルールを変更したら、むしろ観客の気持ちを萎えさせたり、怒りを買ったりする可能性もあるんじゃないかと思ってしまう。
富裕層による賭けも行われているはずだが、途中でルールを変えたら賭けが成立しなくなるし。
それと、そもそもルール設定がボンヤリしているんだよな。

ゲームの説明もそうなんだけど、世界観の設定自体もボンヤリしている。
どうやら富裕層と貧民層に区別されているようだけど、そこの比較が弱い。カットニスの住んでいる場所は貧民ばかりで、彼女の家族も生活が厳しいという設定のようだが、あまり伝わって来ない。富裕層の生活ぶりが描かれていないから、そこの格差もイマイチ伝わって来ない。
そういう貧富の差や、カットニスの置かれている状況を丁寧に描くためには、それなりの時間が必要だ。この映画は142分もあるので、さらに長くするってのは賢明ではない。
ただし、そもそも無駄に感じる部分が多くて、それを削った上で、世界観やカットニスの環境描写に時間を割いたとしても、2時間以内には充分に収めることが出来たはずだ。

無駄だと感じるのは、カットニスとピータがキャピトルに到着してから、ハンガー・ゲームが始まるまでの時間。
そこではプレイヤーがトレーニングを積んだり、観客にアピールしたりする様子が描かれるのだが、それが効果的な形で後の展開に繋がっているとは思えない。
訓練シーンに関しては、「たった4日程度の訓練で会得できるスキルなんて、たかが知れてるだろ」と思うし、若者の誰かが選出されることは事前に分かっているんだから、それぞれの地区で若者たちに必修科目として訓練されておけばいいでしょ。
もしくは、何の訓練も無い状態でゲームに参加させるってことでも全く問題は無いし。

その訓練シーンは、「参加プレイヤーを紹介する」という目的に使うのであれば、まだ時間を割くのは分からないでもない。
しかし、そこでキャラ紹介されているのは、ルーとケイトーの2人ぐらいだ。他の連中は、名前もキャラ設定も全く分からない。
そしてルーとケイトーの2人だけを紹介すれば目的が果たされるのであれば、訓練シーンなど要らない。プレイヤーたちが一堂に会するシーンを用意して、そこで紹介すれば済む。
あるいは、ゲーム開始後にキャラを紹介しても構わないし。

観客にアピールするシーンも、あまり面白味があるとは思えない。ただダラダラと無駄に時間を使っているように感じる。
そこで観客にアピールすることによってスポンサーを獲得する、という目的があるのだが、そこで観客に気に入られたり高得点を叩き出したりしているカットニスが、それによって何の特典を得たのかも良く分からないし。
ゲーム中に物資が届けられるけど、持って来るのはヘイミッチ。「どれぐらいの人数の観客が気に入って、どれだけの規模のスポンサーが付いたから、これだけの物資が届いた」ってのは良く分からんし。
カットニスと他のプレイヤーで、スポンサーや物資の差が描かれているわけでもないからね。

選ばれた若者たちは、これから殺し合いをしなきゃいけないというのに、そこに切迫感や緊張感が全く感じられない。
まだカットニスは緊張している様子も見せているが、ピータはキャピトルに到着して呑気に興奮している。トークショーに出演する時も、余裕の態度で冗談を飛ばして軽快に喋っている。
そりゃあ、「観客に気に入ってもらえるように本心を隠して演じる必要がある」ってのは分かるよ。
だけど、プロとして鍛えられた奴は別にして、まだティーンズの連中が、これから死ぬかもしれないという状況で、そんなに明るく振る舞えるもんかね。もっと顔が強張ったり、上手く話せなかったりするものじゃないかと。

参加しているプレイヤーたちには、「たぶん命を落とすことになる」という絶望感、「人を殺さなきゃいけない」という恐怖、そういった
感情が全く見えて来ない。
逃げ出そうとする者もおらず、怖くて泣き出してしまうような者もおらず、みんな前向きな態度でレクチャーを受けている。
ハンガー・ゲームは何年も前から開催されているんだから、「殺し合いをリアルに感じることが出来ない」ということは無いはずだ。見物している富裕層がショーとして楽しんでいるのはともかく、プレイヤーたちまでゲーム感覚に浸食されている。
いざゲームが始まっても、「ようやく現実を認識して恐怖に襲われる」ということも無いしね。

ようやくゲームが開始された時点で、もう映画の半分ほどが経過している。なげえよ。
しかも、みんな同じ場所からスタートして、そこに置いてある物資の奪い合いをするので、いきなりプレイヤーの半数が死んでしまう。
それって、ゲームとして面白いかね。
あと、ゲームが開始されると、みんな何の迷いも無く普通に他の若者たちを攻撃して殺害するんだよね。まるで人殺しに慣れているかのような行動には、ものすごく違和感があるぞ。人を殺して楽しそうな奴らまでいる。
そうなると、「ゲームを観戦している支配者階級」と「強制的にゲームに参加させられて見世物にされる被支配者階級」という図式がボンヤリしてしまう。
参加している連中がノリノリで殺し合いをやっているのであれば、何の問題も無いでしょ。

ゲームが始まる前のレクチャーで、「主な死因は怪我や病気で、感染症や脱水症状の危険もある」と説明されているのだが、いざゲームが始まると、病気になる奴もいないし、食料や水不足で困る奴もいない。
っていうか、カットニスの視点で物語が進行するので、彼女が病気になったり食料や水に困ったりしてくれないと、そういう状況は描かれないのだが、彼女はサバイバルの能力が高いらしく、そういう方面での苦労は全く無い。
しかもハチに刺されたり怪我をしたりしても、すげえ効果のある薬を手に入れて、すぐに治っちゃうし。
そのせいで、サバイバルの重要性ってのは全く伝わらない。

カットニスがフィールドの端へ移動すると、セネカは「それだと他のプレイヤーと離れすぎるから」ってことで火炎攻撃を仕掛けて中央部へ戻す。
そんなことしなきゃいけないのなら、最初からフィールドを狭くしておけよ。そこで主催者サイドがプレイの移動に介入したら、ゲームがアンフェアになっちゃうでしょうに。
しかも、そこでカットニスに火傷を負わせているし。下手すりゃ死んでる可能性だってあるわけで、主催者サイドがプレイヤーを死なせてしまうかもしれない現象を起こしてどうすんだよ。
終盤に入ると数頭の猛獣を放ってカットニスたちを襲わせているけど、それもまたゲームへの過剰な介入だし。

プレイヤーは同じ地区から男女が1人ずつ選ばれているので、「同じ地区の仲間も殺さなきゃいけない」というところで苦悩や葛藤、悲劇といったドラマが生じるのかと思ったら、そういうのは全く用意されていない。第1地区と第2地区の連中は、いずれ殺し合わなければいけない関係なのに、普通に仲良くチームを組んでいる。ルーは戦いの相手であるカットニスに対して、警戒心ゼロで懐いている。
カットニスとピータにも、その手のドラマは無い。
ピータはケイトーのグループに入っているが、「彼らがカットニスを殺そうとしたので命賭けで守る」とか、そんなことも無い。それどころか、ケイトーたちがカットニスを殺そうとしている時に、ボーッと見ているだけだ。
ケイトーたちがバカだったおかげでカットニスは助かっているけど、下手すりゃ殺されている可能性だってあったわけで、そんな奴らとグルになっている時点でアウト。

で、「仲間同士が殺し合わないといけない」という状況が全く発生しない間に、セネカが「同じ地区の2人が生き残っていたら、2人とも勝者」とルール変更しちゃう。また安易に、しかもヘイミッチの提案を受けてルール変更するのかよ。
しかも、その後も「やっぱり勝者は1人にする」とルール変更し、「じゃあ2人で心中するから」とカットニスとピータが言い出すと、「それは困るから、やっぱり2人とも勝者」と、またまたルール変更。
グダグダじゃねえか。
大体さ、「恋愛物語を演出して観客の興味を誘えば暴動が治まる」とヘイミッチが持ち掛けてセネカがルール変更しているんだけど、そんなことで暴動が治まるわけねえだろ。

ケイトーたちはカットニスはを木の上に追い詰めるが、ピータに「待てばいいじゃん」と言われると、火を焚いて呑気に待機する。
それだけでも阿呆だが、そのまま眠り込んでしまう。
プロとして訓練されている連中のはずなのに、どんだけ危機感が欠如しているのか。
一方のカットニスも、木の上からケイトーたちを弓で狙おうとはしない。
この女、弓の名手という特技が設定されているのに、それを戦闘の中で活用することは一度も無いのだ。

カットニスがゲーム中に弓を使って何かを射るのは、リンゴを落として地雷を爆破し、ケイトーたちの物資を破壊する時だけ。
それは止まっている的だし、相手は人間じゃない。
クローヴの急襲を受けた時、咄嗟に弓を使おうとはしているが、でも命中させることは出来ていない。クローヴを殺すのは別のプレイヤーだ。
「若者たちの殺し合い」というゲームに参加している以上、カットニスにも「止む無き殺人」をさせなきゃ意味が無いだろうに、「ヒロインだから残酷なことはさせられない」ってことなのか。

終盤、ケイトーがピータを捕まえて絞殺しようとした時、ようやくカットニスは人に矢を的中させる。
ただし、ケイトーを殺すのではなく、手に当てただけ。それでバランスを崩したケイトーは、猛獣の群れに落下する。
猛獣たちに襲われているケイトーにカットニスは矢を放っているけど、それは「エサにされる前に葬ってやる」という意味での射撃であって、彼女が撃たなくてもケイトーは死んでいた。
それに、カットニスの矢が当たってケイトーが絶命する様子は、画面に写し出されていないしね。
だけど、「ヒロインが他の参加者を殺す」という描写から逃げるぐらいなら、最初から「ヒロインが殺し合いゲームに参加する」という話なんて作るべきではないよ。

(観賞日:2013年12月25日)


2012年度 HIHOはくさいアワード:3位

 

*ポンコツ映画愛護協会