『ハウス・オブ・ザ・デッド』:2003、アメリカ&ドイツ&カナダ

グレッグと友人のサイモン、グレッグの恋人シンシア、サイモンに惚れているカルマ、サイモンが片思いしているアリシアという若者たちが、パーティーが開かれるサン・ホワン島へ行くために船着き場へ集まった。しかし予定の時刻を過ぎていたため、船に乗り遅れた。既に島ではパーティーが始まっており、大勢の若者たちが音楽に合わせて踊り狂っていた。アリシアと別れたばかりのルディーも会場に来ていたが、妙な胸騒ぎがして楽しめなかった。
サイモンは船着き場にいた船員のサリッシュに声を掛け、乗せて欲しいと頼んだ。サリッシュは荒っぽい口調で追い払おうとするが、船長のカークはサイモンに金額の交渉を持ち掛けた。目的地がサン・ホワン島と知ると、カークは「死を意味する島だ」と説明して行かないように忠告する。しかしサイモンが1000ドルの報酬を約束すると、カークは承諾した。そこへ沿岸警備隊のキャスパーが臨検に来ると、早く島へ行きたいサイモンはカークに金を渡す。そこでカークは臨検を無視し、船を出発させた。
キャスパーはカークに気付かれないよう、距離を保って後を追うことにした。一方、島ではマットと恋人のジョアンナが浜辺で楽しんでいた。ジョアンナが海で泳ぐのを眺めていたマットは、いつの間にか眠り込んだ。ジョアンナが海から上がると、マットは姿を消していた。森へ捜しに出向いたジョアンナは、不気味な廃屋を見つけて中に入った。そこにマットはいたが、ゾンビの腕に腹を突き破られた。悲鳴を上げたジョアンナも、ゾンビの群れに襲われた。
カークの船は島に着岸し、キャスパーは反対側から上陸する。カークはサイモンたちを降ろした後、船に積んである密輸品を島に隠すようサリッシュに指示した。嵐の到来を感じたサリッシュに、カークはサイモンたちの帰りを待たずに船を出すことを話す。サイモンたちは夜になってパーティー会場に辿り着くが、そこには誰もいなかった。アリシアは「何かあったのかも」と考えるが、他の面々は能天気だった。アリシアが「捜しに行くわ」と言うと、グレッグとシンシアは「ここで朝まで楽しんでる」と告げた。サイモンとカルマはアリシアほど深刻に考えていなかったが、彼女と行動を共にすることにした。
密輸品を森へ運んでいたサリッシュは、襲撃を受けて悲鳴を上げた。グレッグが小便に行っている間に、シンシアはゾンビに襲われた。サイモンたちは明かりの付いた建物を発見し、中に入った。そこにはルディーと仲間のリバティー、ヒューが隠れており、サイモンたちに録画した映像を見せた。そこにはゾンビの群れがパーティー会場を襲う様子が写っており、ヒューは「ロメロの映画が現実になった」と口にした。島から早く脱出すべきだという意見でまとまった一行は、グレッグとシンシアの元へ行くことにした。
パーティー会場に戻ったルディーたちは、倒れている簡易トイレを発見した。塞がれているドアを開けるとグレッグが飛び出し、「何かがぶつかって、ひっくり返った」と説明した。直後、シンシアが現れ、ヒューの首に噛み付いて殺害する。他の面々にも襲い掛かろうとしたシンシアだが、駆け付けたキャスパーが弾丸を浴びせて始末した。キャスパーは本部と連絡を取ろうとするが無線が通じず、ルディーは携帯も通じないことを彼女に告げた。
カークの船には、海を泳いだゾンビたちが次々に上がって来た。カークは拳銃を発砲し、ゾンビを仕留めて行く。キャスパーは若者たちを先導し、森を歩いてカークの船へ向かおうとする。橋を渡っているとゾンビたちが襲って来るが、キャスパーが発砲した。一行は走って入り江へ向かうが、岸に付けてあったゴムボートが消えていた。サイモンは海に飛び込んで船へ向かおうとするが、船のにいたゾンビの群れが襲い掛かる。慌ててサイモンは方向転換し、キャスパーは桟橋からゾンビに発砲した。
サイモンがゾンビに捕まると、リバティーが助けようとして海に入った。どこからかカークが現れ、ゾンビに向かって発砲した。陸にもゾンビが現れ、一行に襲い掛かった。カークはゾンビに腕を噛まれるが、弾丸を浴びせて始末した。倒れたゾンビを蹴ったサイモンは、謎の液体を噴射されて顔に浴びた。キャスパーは「無線で助けを呼ぶ」と言い、グレッグに拳銃を渡して巡視船への同行を強要した。
アリシアは「あいつらはゾンビよ。サリッシュが何か知ってたみたいね」と口にする。カークは「言い伝えだ」と前置きし、「何百年も前に国を追放されたスペイン人神父のカスティロが、護送船の船員を皆殺しにした。この島の住人を奴隷にして、上陸する者を殺害した。今も生き続けているという噂もある」と語る。ただし彼は、「実際は、人払いのために密輸犯が考えた策略に過ぎない」と述べた。
巡視船へ向かっていたキャスパーとグレッグは、ゾンビの群れに襲われた。キャスパーは発砲して撃退を図るが、必死に逃亡したグレッグが命を落とした。一行は現在の場所に留まっていては危険だと考え、キャスパーたちが戻ってから先程の建物に隠れようと話し合った。サイモンが「武器も食料も無い」と漏らすと、カークは「充分にある」と告げた。カークは若者たちを引き連れ、密輸品の隠し場所へ赴く。そこへキャスパーが戻って「船が壊されて助手が消えてたわ」と告げ、グレッグがゾンビにやられたことを語った。
カークが一行の前で密輸品の木箱を開けると、大量の銃火器と剣が入っていた。武装した一行が建物へ向かおうとすると、ゾンビの群れが襲い掛かって来た。一行は銃を発砲し、手榴弾を投げる。リバティーがゾンビに襲われるが、助けを求められたルディーは突っ立っているだけだった。キャスパーはゾンビ化した部下のマクガイヴァーズと遭遇し、すぐさま射殺した。建物のドアが閉まっていたため、ルディーは窓から入り込んだ。キャスパーも後に続こうとするが、ゾンビに襲われて死亡した。カークは脚に重傷を負うが、他の面々は無事に建物へ逃げ込んだ。カークは若者たちに対し、自分を心配するよりも役立ちそうな物を探して身を守るよう指示した…。

監督はウーヴェ・ボル、原案はマーク・アルトマン&ダン・ベイツ、脚本はデイヴ・パーカー&マーク・アルトマン、製作はウーヴェ・ボル&ウォルフガング・ヘロルド&ショーン・ウィリアムソン、製作協力はマックス・ワンコ&フィリップ・セルカーク&ジョナサン・ショア、製作総指揮はマーク・A・アルトマン&ダン・ベイツ&マーク・ゴットウォルド&ダニエル・クレツキー、共同製作総指揮はマイケル・ロッシュ、製作協力はダン・セイルズ、撮影はマティアス・ニューマン、編集はデヴィッド・リチャードソン、美術はティンク、衣装はロレイン・カーソン、音楽はラインハルト・ベッサー&ペーター・リース。
出演はジョナサン・チェリー、タイロン・レイツォ、クリント・ハワード、ユルゲン・プロホノフ、オナ・グラウアー、エリー・コーネル、ウィル・サンダーソン、エヌーカ・オークマ、キーラ・クラヴェル、ソーニャ・サロマ、マイケル・エクランド、デヴィッド・パルフィー、スティーヴ・バイヤーズ、エリカ・パーカー、ブリギット・ステイン、ジェイ・ブラゾー、アダム・ヘリントン、コリン・ローレンス、ベン・デリック、エリザベス・ローゼン他。


セガのアーケード用ガンシューティングゲーム『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』を基にした作品。
ルディーをジョナサン・チェリー、サイモンをタイロン・レイツォ、サリッシュをクリント・ハワード、カークをユルゲン・プロホノフ、アリシアをオナ・グラウアー、キャスパーをエリー・コーネル、グレッグをウィル・サンダーソン、カルマをエヌーカ・オークマ、リバティーをキーラ・クラヴェル、シンシアをソーニャ・サロマ、ヒューをマイケル・エクランド、カスティロをデヴィッド・パルフィーが演じている。

監督を務めたのは、多くのミュージック・ビデオを手掛けてきたドイツ出身のウーヴェ・ボル。
この映画で原作ゲームのファンから酷評を浴びたが、懲りずに『アローン・イン・ザ・ダーク』『ブラッドレイン』『デス・リベンジ』『POSTAL』といったゲームを原作とする映画を手掛け、ことごとくラジー賞にノミネートされるという快挙を成し遂げることになる(2009年以降はラジー賞からも相手にされなくなった)。
ただし本作品はともかく、それ以降はウーヴェ・ボルに監督を任せたゲーム会社の方に問題があると思うけど。

原作はガンシューティングゲームなので、ストーリーはあって無いようなものだ。だから映画化の際には、ほぼキャラクター設定と世界観だけという状態からストーリーを構築する必要がある。
本作品の場合、キャラ設定や世界観も、ほぼオリジナルに近い。「ゾンビが敵」「マッド・サイエンティストがゾンビを作り出した」いう要素が共通している以外、ほとんど別物と解釈してもいいだろう。
だったらゲームとは別物として作る上での覚悟を持っているのかと思いきや、途中で何度か原作ゲームの映像を挿入するという意味不明な演出が待ち受けている。それは映画を楽しもうと思っている観客にとっては邪魔なだけだし、ゲームのファンからしても「そんな中途半端な御機嫌取りは要らん」という気持ちになると思うぞ。
っていうか、そんなのでゲームのファンは喜ばねえよ。むしろ、この映画の最も大きな欠点はそれだ。

ひょっとするとゲームのファンに対しての演出ではなく、セガの重役たちに対する御機嫌取りなのかもしれない。
そういうゲーム映像を挿入することで、「私は決してゲームを無視しているわけじゃありません。それどころかゲームをリスペクトしています」という言い訳のつもりなのかもしれない。
パーティー会場に「SEGA」の文字があるのも、そんなドイヒーなプロダクト・プレイスメントは久々に見たわ。
それはSEGAサイドが要求したとしても、ウーヴェ・ボルが御機嫌取りでやったとしても、どっちにしてもすんげえカッコ悪いわ。
『ウェインズ・ワールド』みたいに笑いとしてやっているならともかく、そうじゃないんだから。

冒頭、ルディーによるナレーションが入り、これから船に乗る面々のキャラ紹介が行われる。グレッグが大学時代の野球仲間だとか、サイモンが見た目はいいけど中身が足りない奴だとか、シンシアがグレッグの恋人だとか、そういう簡単な説明がある。
序盤でキャラ紹介をしておくのは悪いことじゃないけど、そうやって全て簡単にナレーションで片付けてしまうのは淡白な印象が否めない。しかもグレッグが大学の野球仲間とか言われても、その時点ではナレーションを誰が担当しているのか分からないからキャラ紹介としては手落ちに思うし。
「それよりも、そうやって喋っているお前は誰なんだよ」と言いたくなるのよ。すぐに登場するならともかく、一行が島に到着しないと出て来ないし。
そう考えると、そんな奴がナレーション担当ってのはどうかと思うし。

で、みんなを紹介した後で「パーティーを諦めていたら、まだ生きていたはずだ」というナレーションが入り、ここでサイモンたちの全滅が確定してしまう。
そりゃあ、この手の映画で出てくる若者たちってのは、ほぼ殺されるために登場するようなモンではあるけど、それにしても最初の段階で死亡宣告しちゃうのかよ。
しかも、この死亡予告は何の捻りも無く、ホントにルディー以外は死んじゃうんだぜ。

「遊んでいたおバカなカップルが餌食になる」というスラッシャー映画でありがちなパターンが使用され、最初の犠牲者が出る。
その時点で、既に上手くない演出をやらかしている。
何が問題かというと、ジョアンナが泳いでいると海中から大量の泡がブクブクと出て、彼女が不安を抱いたような様子を見せるってこと。
だったら、そっち側に恐怖の対象を置くべきなのに、既にマットが標的となっており、その流れで廃屋に入ったジョアンナがゾンビの攻撃を受けるってことだ。
そうなると、「海に何かがいた」ということで煽った不安が無意味なモノと化してしまうのだ。

「シンシアがゾンビ化してヒューを殺す。そしてキャスパーの弾丸を浴びて殺される」という展開があるのだが、そこでは「仲間がゾンビになった」とか「仲間が死んだ」というショッキングな出来事が目の前で起きているにも変わらず、一行はそれほど動揺した様子も見せず、さっさと退散する。
仲間が死んだことを悲しむとか、恋人がゾンビになって殺されたことを受け止めきれずにパニック状態に陥るとか、そういうリアクションは皆無。森を歩き始めてから、ようやくアリシアが「あのシンシアが」と泣いているけど、その程度。
どうやら、アリシア以外はマトモに動かす気が無いらしい。
だからシンシアの恋人であるグレッグは、特にこれといった反応を見せない。

キャスパーは初めてゾンビを見たはずなのに、ものすごく冷静に対応している。船に上がって来るゾンビの群れと遭遇したカークも全く動揺せず、無表情のままで拳銃を発砲する。
なぜ冷静に対応できるのか、それは謎。
「そこにゾンビがいることは既に知っていたから」ということならともかく、そうではない。
っていうか、むしろ「最初からゾンビの存在を知っている」というキャラを配置して、そいつが冷静な射撃で若者グループを助ける形にすれば良かったんじゃないかと思うんだけど。

この映画に登場するゾンビはジョージ・A・ロメロの定めた法則を外れており、俊敏に走り回る。
そこは別にいいんだけど、ルディーたちが武装した途端にゾンビの動きが鈍くなるってのはダメだろ。
一方、ルディーたちは「カークの密輸品が大量の銃火器と剣だった」という御都合主義で武器を手に入れると、特に戦闘訓練を受けているわけでもないのに、最初から軽々と銃を使いこなす。
使いこなすどころのレベルではなく、戦闘のスペシャリストであるかのような射撃の技術を見せ付ける。

そりゃあ原作がガンシューティングだったことを考えれば、映画版でもゾンビを撃つシーンが見せ場になるってのは分かるよ。
ただ、トーシロの若者グループが、初めて銃を持ったはずなのに見事すぎる射撃能力を発揮するってのは、あまりにも無理があるでしょうに。そういうガンシューティングを見せ場として用意したかったのなら、なんで最初から「射撃の能力が高い」というキャラ設定の連中を配置しておかなかったのかと。
そこで急にバカ度数の高い展開を用意したからって、それで「おバカ映画としては秀逸の出来栄え」ってことになるわけでもないぞ。
っていうか、おバカ映画を狙っているわけでもなさそうなのが困りモノなんだけど。

ガンアクションが始まると、出来損ないの『マトリックス』のように、カメラがグルッとキャラを回り込むスロー映像が使われる。それも1回だけでなく、何度も使われる。
その他にも『マトリックス』もどきの映像表現があるが、それはアクションシーンの迫力やスピード感などに全く繋がっておらず、ただ安っぽさを感じさせるだけ。
アクションがすんげえ軽薄で、魅力に欠ける。
ここではゲーム映像も頻繁に挿入されるが、これまたシーンをツギハギにして流れを悪くしているだけ。

それまで恐怖の対象だったゾンビは、ルディーたちが武装すると単なる雑魚キャラへと成り下がってしまう。
さすがに雑魚キャラのままで済ませるのはマズいという判断なのか、なぜか途中で武器を捨てて格闘アクションに切り替えたリバティーが殺されたり、それまで無双状態だったキャスパーが窓から建物に入ろうとした時に殺されたり、カークが重傷を負ったりするが、人間サイドの数を減らそうとしてバランス調整に失敗しているとしか思えない。
ガンシューティングのシーンで大半のエナジーを使い切ってしまったのか、建物に逃げ込むと一気にテンポが落ち、そこに来て急に恋愛劇を描いてダラダラと時間を費やす。
その後、終盤になって今度は剣や斧を使ったアクションシーンがあり、また『マトリックス』もどきの映像表現が入ったりするが、面白味は無い。
ルディーの本名がルドルフ・キュリアンであることが最後に判明し、そこでゲームの設定に繋げようという意識は感じられるが(ゲーム版ではキュリアンという博士が重要な役回りを担う)、「だから何だよ」って感じ。

(観賞日:2014年9月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会