『100万回のウィンク』:1998、アメリカ

バーガーショップで働くサリーは、タバコ工場で働く中年男ヘンリーと付き合っていた。ヘンリーには妻と彼女の連れ子がいたが、サリーはそれを聞かされずに彼と付き合い始めた。その事実を知った時、サリーは既にヘンリーの子供を妊娠していた。
ヘンリーはサリーのバーガーショップに立ち寄って帰宅しようとするが、彼の車の前に突如、軍用ヘリコプターが出現する。それはヘンリーの妻ベアトリスの指示を受けた彼女の連れ子、アンガスとドリアンの仕業だった。空軍州兵の2人は空砲を発射し、心臓の悪かったヘンリーはショックを受けて心臓発作で死亡する。
だが、アンガスとドリアンが継父を驚かせる作戦を実行していた時、ヘリの無線はバーガーショップの無線と混信していた。犯行に気付かれたのではないかと考えたアンガスは、偵察のために弟のドリアンをバーガーショップで働かせることにする。
嫌々ながらもバーガーショップで働き始めたドリアンは、やがてサリーに惹かれていく。ドリアンはヘンリーの葬儀を遠くから眺めるサリーの姿を目撃し、彼女が継父の浮気相手だったことに気付く。だが、それでもサリーへの気持ちは変わらない。そんな中、ベアトリスとアンガスはサリーの存在に気付き、彼女を殺害しようと企む…。

監督はディーン・パリソット、脚本はヴィンス・ギリガン、製作はマーク・ジョンソン&バリー・レヴィンソン&ローレンス・カスダン&チャールズ・ニューワース、製作総指揮はロミ・ラサリー、撮影はジャージー・ジーリンスキー、編集はニコラス・C・スミス、美術はバリー・ロビソン、衣装はジル・オハネソン、音楽はレイチェル・ポートマン。
主演はドリュー・バリモア、共演はキャサリン・オハラ、ルーク・ウィルソン、ジェイク・ビジー、シェリー・デュヴァル、ラニー・フラハーティ、ダリル・ミッチェル、キム・ロビラード、クリス・エリス、ブルー・デッカート、マーク・ウォルターズ、トミー・シェイン・スタイナー、テレサ・メリット、ジル・パーカー=ジョーンズ、モーガナ・ショウ、ロバート・グラハム、ジーク・ミルズ他。


TVシリーズ『Xファイル』で多くのシナリオを担当したヴィンス・ギリガンが脚本を書いた作品。サリーをドリュー・バリモア、ベアトリスをキャサリン・オハラ、ドリアンをルーク・ウィルソン、アンガスをジェイク・ビジー、サリーの母をシェリー・デュヴァルが演じている。
邦題は『100万回のウィンク』だが、ウィンクは100万回どころか1回も出てこないし、物語には全く関係が無い。邦題からはロマンティック・コメディーを想像したのだが、そして一応はロマンティック・コメディーらしいのだが、どうにも中途半端な感じが否めない。

もう最初に軍用ヘリが登場する時点で話にギクシャクしたモノを感じ取ってしまったのだが、その展開だけでも無理があるのに、おまけにヘリとバーガーショップの無線が混信するというんだから、かなり強引でメチャクチャな展開である。
それでも、軍用ヘリを持ち出して男を驚かせるようなダイナミックなウソが前編に渡って散りばめられているのならば、ハチャメチャ・コメディーとしての面白味も生まれただろう。しかし、軍用ヘリが登場する部分だけが完全に浮いてしまっている。

ベアトリスのキャラクターは、笑えるクレイジー・ママだったら良かったんだけど、ホトンに薄気味悪いサイコさんになっているから、彼女から笑いが生まれることは無い。アンガスにしても笑えるキャラではなく、完全にイッちゃってるキャラがマジに描かれる。ベアトリスと2人の息子の絡みが結構多いだけに、ここで笑いが生まれないのはキツイ。
ベアトリスとアンガスがサリーを殺そうとする流れにも、笑いは全く入っておらず、普通のサスペンスになっている。狂った母子関係をマジなテイストで見せているので、ロマンスの雰囲気を壊している上に、ギスギスした匂いを送り込んでしまう。

ではサリーとドリアンが惹かれ合うようになっていく下りはどうなのかと言うと、ここも笑いに乏しく、ごくノーマルに恋愛劇が綴られる。で、ほとんど捨てゴマのような部分で笑いを入れようとしているような向きは見られるが、量的にも少ないし、冴えも無い。
終盤になって軍用ヘリが再登場するが、「そこに金を掛けてシナリオ代をケチったのか」と思ってしまう。その終盤はベアトリスと2人の息子による親子ドラマで構成され、完全にサリーの存在は脇に回される。どいつが主役なんだか分かりゃしない。

 

*ポンコツ映画愛護協会