『ハリウッドランド』:2006、アメリカ
1959年6月16日、ロサンゼルス。子供たちの大人気のTVドラマ『スーパーマンの冒険』で主演を務めていた俳優のジョージ・リーヴスが、自宅で遺体となって発見された。当時、邸宅にいたのは婚約者のレオノア・レモン、宿泊客のロバート・コンドン、友人のキャロル・ヴァン・ロンケルとビル・ブリスだ。遺体を発見したのはブリスで、検視官は自殺と判断していた。ジャック・パターソン刑事の事情聴取を受けたレオノアは、ジョージが暗くて自殺しそうだったと証言した。
私立探偵のルイス・シモは事務所を引き払い、モーテルで助手のキット・ホリデイと過ごしていた。依頼人のチェスター・シンクレアは部屋を訪ね、妻の浮気調査を依頼した。既にルイスは調査を終えて、怪しい点は無いと報告していた。しかしチェスターは納得せずに調査の続行を要請し、ルイスは仕方なく前金を受け取って承諾した。モーテルを出た彼は、別居している妻のローリーを訪ねた。ローリーは息子のエヴァンと暮らし、ラスという恋人と付き合っていた。
エヴァンはジョージの自殺を報道で知り、ショックを受けていた。ルイスは息子を学校まで車で送り届け、ダイナーに立ち寄った。リック探偵社のデルを見つけたルイスは、「リックが断るクズ仕事は無いか」と問い掛けた。「仕事を回せよ。俺に貸しがあるだろ」とルイスが言うと、デルはジョージの母親であるヘレン・ベッソロが「息子は自殺じゃない」と主張して探偵社に依頼を持ち込んだことを教えた。ルイスはヘレンが宿泊するホテルへ赴き、舌先三寸で依頼を取り付けた。
ルイスは遺体安置所で所員に金を掴ませ、ジョージの遺体と遺留品を見せてもらった。遺体には青アザがあり、腕時計の裏には 「貴方に夢中 T.M.」という文字が刻まれていた。かつてジョージは仕事を得るため、俳優仲間のナチヴィダト・ヴァシオと共に多くの映画関係者が通うレストランへ赴いたことがあった。彼はリタ・ヘイワースを見つけ、記者が撮影する写真に写り込んだ。するとリタと一緒にいたトニー・マニックスという女性が、ジョージに声を掛けた。ジョージは『風と共に去りぬ』で初めてギャラを貰ったことを彼女に語り、親密な関係になった。
ルイスは時計店の店員を騙し、ジョージが持っていた腕時計の購入者がトニーだと聞き出した。ジョージはトニーとセックスした翌朝の新聞で、彼女がMGMの重役を務めるエディー・マニックスの妻だと知った。トニーはエディーに日本人の愛人がいることを話し、「貴方の望みを叶えてあげる」と告げた。ルイスがモーテルに戻ると、シンクレアが来ていた。彼は相変わらず妻が浮気したと決め付けており、ルイスの言葉を全く聞き入れようとしなかった。
裁判所でジョージの遺言状が開示され、全財産をトニーが相続すると聞かされたレオノアはショックを受けた。ルイスは彼女に話を聞こうとするが、まるで相手にされなかった。タイムズ紙の記者を見つけたルイスは「ジョージは婚約者じゃなく、トニー・マニックスに全財産を残した」と語り、自殺じゃないと主張して新聞で取り上げるよう持ち掛けた。ジョージはトニーに呼ばれ、エディーと愛人のヨシダとの会食に参加した。彼はエディーの質問を受け、ワーナー・ブラザーズとの契約が切れていることを語った。
トニーは投資の名目でエディーに家を購入してもらい、ジョージにプレゼントした。ジョージが役を欲しがると、彼女は『スーパーマンの冒険』のオーディションを用意した。面接に赴いたジョージは、最初から自分の起用が決まっている出来レースだと知らされた。子供向けの作品なのでジョージは出演を嫌がるが、エージェントのアート・ワイズマンに説得されて渋々ながらも引き受けた。ルイスはローリーに呼び出されて家へ出向き、エヴァンがスーパーマンの衣装をソファーの上で燃やしたことを知らされた。ルイスが説教すると、エヴァンは反抗した。ルイスはカッとなってエヴァンを怒鳴り付け、ローリーに幻滅された。
ローリーにも怒りをぶつけたルイスは、新聞の記事を読んだと告げられる。「またあんな手を使って」と非難された彼は、「それで金を稼いで送ってる」と声を荒らげた。ジョージは『スーパーマンの冒険』の撮影に入るが、気持ちは乗っていなかった。トニーはジョージに、ロイス役のフィリスがレズビアンだと教えた。ルイスはキットの家へ行き、一緒にいた男との関係を咎めた。彼はキットとセックスし、「父はワーナーの門衛だった。俺は終戦後に仕事が無く、父と同じ職場に入った。会社でストライキが発生し、組合を締め出すために門を守って乱闘になった」などと過去を詳しく語った。
ルイスはジョージの邸宅にヘレンを連れて行く時、記者を集めて取材させた。RKOスタジオのジェームズ・エンゲルマンが来てお悔みを口にすると、ヘレンは「息子は命を奪われたのよ」と告げた。ルイスは同席したパターソンに対し、現場の疑問点をぶつけた。エディーは広報責任者のハワード・ストリックリングから、現場にエンゲルマンを派遣したことを聞かされた。彼はルイスについて、「リック探偵社で2年働いていたが、スーザン・ハンフリーズのネタを雑誌に売ってクビになった」という情報を伝えた。
ルイスはキャロルの元へ行き、リーヴス邸の床にあった2つの弾痕について質問した。キャロルは酔った勢いで自分がレオノアに撃つよう頼んだのだと答えるが、ルイスは納得できなかった。警察への通報が死から55分後だったことをルイスが「普通じゃない」と指摘すると、キャロルは「普通はパーティーで自殺しない。何が普通なの?」と反論した。ルイスはレオノアがジョージを誤って射殺したと推理し、深夜のリーヴス邸に忍び込んだ。するとレオノアが寝室に侵入しており、ハネムーン資金の旅行小切手を手に入れるためだと語った。金のために殺したのかとルイスが訊くと、彼女は「ジョージは酷いギャラだった」と述べた。
新聞に「スーパーマンの再検視を」と主張する記事が大きく掲載され、ルイスはヘレンに「これでロス市警は慌てる。捜査を再開せざるを得ない」とマスコミを煽るための資金提供を求めた。ジョージはトニーに、番組にケロッグがスポンサーとして付いたことを話した。全国放送が始まると、番組は高視聴率を取ってジョージは人気者になった。自信を付けた彼は映画『地上より永遠に』のオーディションに臨み、スターク役を勝ち取るための助力をトニーに頼み込んだ。
キットはルイスに、ジョージが2ヶ月前に交通事故で死に掛けていたこと、若い女に走った彼に嫉妬したトニーがエンジンオイルを抜いたことを教えた。ルイスからシンクレア夫人に盗撮を気付かれ、「彼は7ヶ月も前から無職よ。あの人が何をしてるのかと調べて」と怒りをぶつけられた。ルイスは真剣に取り合わず、「2人に問題があるなら神父にでも相談してくれ」と面倒そうに告げた。ルイスは素性を詐称してトニーに会おうとするが、ストリックリングに気付かれて追い払われた。
ルイスはジョージの葬儀でトニーへの接触を試みるが、来ていなかった。彼はアートから話を聞こうとするが、全く相手にされなかった。ストリックリングは彼に、「君の過去を知ってる。また失敗すると命取りになるぞ」と告げる。彼はMGMで仕事をしないかと持ち掛け、ルイスが「なぜ俺に仕事を?」と尋ねると「嘘でも事実でも会社に傷が付く」と説明した。ルイスは記者たちに声を掛け、ジョージの車のエンジンオイルが抜かれていた事件について話す。ルイスは「彼なら知ってる。話を聞け」と、ストリックリングを指差した。
ジョージは『地上より永遠に』のオーディションに合格し、特別試写会に出席した。彼が画面に登場すると、客席からはスーパーマンに重ねて茶化すような発言が上がった。ルイスは暗闇で暴行を受け、「これ以上は関わるな」と警告された。ルイスは犯人がデルと気付き、見つけ出して拳銃を突き付けた。「お前も薬物依存の女優のネタで金を受け取ったが、俺は黙ってた。相棒だったからだ」と激怒すると、デルは「リックが俺に命令した」と釈明した…。監督はアレン・コールター、脚本はポール・バーンバウム、製作はグレン・ウィリアムソン、製作総指揮はジェイク・マイヤーズ&J・マイルズ・デイル&ジョー・ピチラロ、撮影はジョナサン・フリーマン、美術はレスリー・マクドナルド、編集はマイケル・バーレンバウム、衣装はジュリー・ワイズ、音楽はマーセロ・ザーヴォス、音楽監修はダン・リーバースタイン。
出演はエイドリアン・ブロディー、ダイアン・レイン、ベン・アフレック、ボブ・ホスキンス、ロイス・スミス、ロビン・タニー、ラリー・セダー、ジェフリー・デマン、カロリン・ダヴァーナス、ブラッド・ウィリアム・ヘンケ、ダッシュ・ミホク、モリー・パーカー、キャスリーン・ロバートソン、ジョー・スパーノ、ギャレス・ウィリアムズ、マイケネ・ローズ、ザック・ミルズ、ディエゴ・フエンテス、デンドリー・テイラー、ロリー・エイヤーズ、ジョセフ・アダム、スヴェン・ヴァン・デ・ヴェン、ロバート・B・ケネディー、エリック・ワインサル、スティーヴ・アダム、ブレンダン・ウォール他。
TVシリーズ『スーパーマンの冒険』で主演を務めたジョージ・リーヴスの不審死を巡るサスペンス。
TVシリーズ『SEX AND THE CITY』『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』のアレン・コールターが、映画初監督を務めている。
TV映画『ハロウィーンタウン』シリーズのポール・バーンバウムが脚本を手掛けている。
ルイスをエイドリアン・ブロディー、トニーをダイアン・レイン、ジョージをベン・アフレック、エディーをボブ・ホスキンス、ヘレンをロイス・スミス、レオノアをロビン・タニー、シンクレアをラリー・セダー、アートをジェフリー・デマン、キットをカロリン・ダヴァーナス、ラスをブラッド・ウィリアム・ヘンケ、パターソンをダッシュ・ミホク、ローリーをモリー・パーカー、キャロルをキャスリーン・ロバートソンが演じている。劇中で描かれているように、警察はジョージ・リーヴスの死を自殺と判断したが、誰かに殺されたという説もある。
ただ、有名人が死んだ時、ほんのちょっとでも不審点があると陰謀だの他殺だのという説を誰かが唱え出して、それが噂として広まるのは良くあることだ。
例えばマリリン・モンローなんかでも、「自殺じゃなくて政府によって暗殺されたのだ」みたいな陰謀説は未だに根強く残っている。
そして、それを妄信している人もいるわけで。この手の題材を映画化する時に難しいのは、「真相は藪の中」になってしまうということだ。
わざわざ映画化するからには、「やっぱり警察の言う通り自殺でした」という結論に着地させることは出来ない。そんなことをしたら、「何のために映画化したんだよ」とそっぽを向かれる可能性が濃厚だ。
その一方、眉唾の他殺説を「これが真実だ」と堂々と断定するのも、これまた難しい。
そんなことをしたら、どっかから抗議が来るかもしれないし、下手すりゃ訴えられるかもしれない。
そんなリスクを負う意味は無いだろう。それと、他殺だと断定する場合、「犯人は誰なのか」「どうやってジョージを殺し、自殺に偽装したのか」「犯行動機は何なのか」など、ミステリー小説の如くに「解答編」としての詳しい答えを用意する必要がある。しかも、破綻しない形でね。
それを上手くやれたら、秀作に仕上がるかもしれない。
ただ、そんな優れた出来栄えの映画を、無知で無学な私は1本も知らない。
そして本作品も御多分に漏れず、酷く曖昧で煮え切らない形で物語を終わらせている。生前のジョージを描く回想シーンが、何度も用意されている。その回想は、「ルイスが調査した結果として判明した情報」を描く形で挿入されるわけではない。
なのでルイスの現在パートとジョージの過去パートが、ただ交互に配置されるだけの構成になっている。
ルイスが主人公である現在のハートは、彼がジョージの件を調査する姿を描くだけではない。「シンクレアからの依頼」「キットとの関係と自身の過去」「妻や息子との関係」など、他の要素も盛り込まれている。
だが、その大半は「別に無くても良くないか」と思わせる要素になっている。
メインとなる「ジョージの死の真相を探る」という筋と上手く絡み合っておらず、ただ無意味にゴチャゴチャさせているだけにしか思えないのだ。ネタバレになるが、粗筋で書いた展開の後には「シンクレアが夫人を惨殺して逮捕される」という事件が発生する。
だけど、どうでも良くないかね、その事件。ジョージの死に関する調査と、何の関係も無いでしょ。なぜジョージの事件に集中しないのかと。
別にさ、メインのストーリーがあっても、脇に他のストーリーを置く映画なんて幾らだってあるよ。ただ、そういうのはメインの物語に上手く絡んでいたり、絡まないにしても全体としては上手く調和していたりすればOKなのよ。
じゃあ本作品はどうなのかというと、シンプルに無関係で不要なだけのサブストーリーになっているのよ。結局、最後まで「ルイスの調査活動によって明らかになった内容」としてジョージの回想パートが挟まれることは無い。「ジョージの伝記映画」のような形での描写だ。なので、そこからジョージの死に直結する因果関係は全く見えて来ない。
たまにルイスが「事件の真相はこうじゃないか」と推理する短いシーンはあるが、それはザックリいうと「ただの妄想」である。
前半では「レオノアが誤射した」と推理しているが、あっさりとそれを捨てて、後半に入ると「エディーが始末した」という推理に変更している。
だが、どっちも証拠や重要な証言を手に入れた上での推理ではないし、そこから推理を裏付ける確証を見つけ出すわけでもない。ルイスが「犯人はエディー」と決め付けるのは、手荒な方法で調査を妨害したり、警察に圧力を掛けたりしたからだ。
しかしエディーの立場を考えると、ルイスを厄介に感じて排除したがるのは何の不思議も無いのだ。
何しろルイスは、嘘をついてトニーに近付こうとするような奴だからね。
エディーはトニーが大事だから、憔悴している彼女にルイスなど近付けたくない。それに会社の社長としても、ルイスが騒ぎ立てると会社のイメージが悪化して業績にも影響が出るわけで。終盤の描写からは、「エディーが犯人という可能性が濃厚」と観客に思わせようとする意図が見える。
しかし前述したように、エディーを犯人とするための証拠は無い。「エディーが調査を止めようとするのは怪しい」というだけで、「だからエディーが殺した」と決め付けていると言ってもいいような状態だ。
なのでザックリ言うと、「アレン・コールターとポール・バーンバウムの妄想に過ぎない」という印象になっている。
陰謀説みたいなモノを信じさせたいのなら、もう少し信じたくなる情報を揃えないと厳しいよ。
終盤に描かれるエディーの言動にしても、全ては妄想に基づく創作なんだから。(観賞日:2025年5月11日)