『ヒルズ・ハブ・アイズ2』:2007、アメリカ

フリークスのパパ・ハデスは監禁した女性の産んだ胎児が健康ではないのを確認し、彼女を即座に惨殺した。2年前、16区と呼ばれる砂漠の軍事地域で、旅行中の家族が失踪した。翌日未明には、その半数が惨殺された。続く数週間、陸軍は一帯の掃討作戦を敢行した。最近になって極秘に監視装置の設置が命令され、その設置作業が開始された。1950年代に閉鎖された炭坑内の施設で、ハンという男が赤外線監視システムの設置作業に取り組んでいた。ボスであるウィルソン博士は施設に入らず、テントでモニターを見ながらハンに指示を出していた。ウィルソンの見ていたモニターの接続が切れてしまい、ハンは炭坑内の調査に赴いた。既に設置しておいたボックスの接続が切れており、ハンは「ネズミの仕業だ」とウィルソンに報告した。
レディング大佐がテントに現れ、フォスター博士の場所をウィルソンに問い掛けた。ウィルソンは彼が山頂で作業していることを教える。フォスターは無線でテントに連絡するが、いつの間にかウイルソンは姿を消していた。フォスターはハンに連絡するが、彼は何者かに惨殺されていた。移動しようとしたフォスターの前に、怪物のハンセルが現れた。彼が「逃げろ」と叫んだ直後、フォスターは背後から現れた怪物のスタッバーに斧で殺された。フォスターを捜索していたレディングも、ハデスに襲われた。
新兵のナポレオン、アンバー、クランク、デルマー、ミッシー、スピッター、ミッキー、ストンプは実戦方式の訓練に挑むが、ミスを繰り返した。指導教官であるミルストーン軍曹は「民間人17名とお前たちが死んだ」と厳しく叱責し、それぞれに注意事項を説明した。彼らはライフル射撃場へ向かう途中、立ち入り禁止となっている16区で作業中の科学者に機材を届けることになった。もちろん、既にフォスターやレディングたちが殺されていること、そこに怪物がいることなど、彼らは全く知らなかった。
一行は16区のテントに到着するが、そこには誰もいなかった。一行が周辺を調べると、壊れた衛星電話が見つかった。無線に「ウィルソン、ハン、いるか」という声が入ったので、ミルストーンは「どこにいる?」と呼び掛けた。しかし雑音が多く、「助けてくれ」という声で通信が切れてしまった。山頂に鏡の反射する光が見えたので、ミルストーンは「無線の男だ。救助するぞ」と告げた。装備を整えて準備するよう彼が指示すると、ナポレオンは「基地に連絡もせずに行くんですか」と反発した。ミルストーンは彼に、「ライフルを担いで片脚で立ち、仮設トイレが盗まれないように警護しろ」と命じた。
一行が出発しようとすると、ミルストーンはアンバーに「お前は残れ。無線で交信を試みろ」と指示した。アンバーはユマ基地へ連絡を取ろうとするが、何度呼び掛けても応答は無かった。残る面々が山頂へ向かっていると、急に地面が陥没してミッキーが落下した。すぐにミルストーンたちが引っ張り上げたため、ミッキーは深い穴に落ちずに済んだ。しかし、ミッキーが足を痛めたため、ミルストーンはテントへ戻るよう命じた。
ナポレオンがトイレに入ると、便器から手が突き出した。彼は絶叫してトイレから飛び出し、アンバーを呼んだ。アンバーが便器を覗くと、怪我を負ったウィルソンが顔を出して「助けてくれ」と告げた。ナポレオンとアンバーが引っ張り出すと、ウィルソンは震えながら「奴らはここに居る」と呟いて絶命した。「浅い傷なのに」とアンバーが言うと、ナポレオンは「感染症だ。糞便は病原菌の塊だ。時間を掛けて殺したのさ」と語った。
ナポレオンはミルストーンに連絡を入れようとするが、通じなかった。何者かにトラックを燃やされ、置いてあったライフルを奪われた。アンバーは「合流しよう」と言うが、ナポレオンは反対する。アンバーが説得してもナポレオンは応じず、連絡を取り続ける。1人で仲間の元へ向かおうとしたアンバーは、スタッバーに襲われた。そこへミッキーが駆け付けて発砲すると、スタッバーは穴の中へ逃げ込んだ。スタッバーはミッキーの足を掴み、その穴へ引きずり込んで殺害した。
ミルストーンたちは山頂へ到着し、国防総省の身分証を頭に埋め込まれたフォスターの惨殺死体を発見した。ミルストーンはスピッターにアンバーへの通信を指示するが、混信していて繋がらなかった。ミッシーはテントへ戻るべきだと主張するが、ミルストーンは「大丈夫だ。ミッキーとナポレオンがいる」と告げる。フォスターの無線機に通信が入るが、雑音だらけで相手が何を言っているのか分からなかった。ミルストーンは兵士たちに、「怪我人を救助し、殺人犯は見つけ出す」と述べた。
周辺の捜索を開始した兵士たちは、レッチの襲撃を受けた。混乱したスピッターは、逃げるレッチを撃とうとしてミルストーンに銃弾を浴びせてしまった。ナポレオンとアンバーが合流する中、ミルストーンは死亡した。責任を感じたスピッターは、死体を抱えて崖を下りる役目を申し出た。しかしロープが切断され、スピッターは転落死した。他のロープを奪われたため、残る一行は崖を下りることが出来なくなってしまった。
ナポレオンたちは険しい細道を移動するが、行き止まりになっていた。物音を聞いた彼らが警戒しながら様子を見に行くと、深手を負ったレディングの姿があった。彼は一行に、「イラクの敵よりも、あいつらの方が恐ろしい。連中は炭坑で生きている。軍は抹殺に失敗した」と告げた。崖を下りる方法について訊くと、レディングは「炭坑を通ればいい。ただし命は無いぞ。しかし子孫繁栄のため、女は生け捕りにされる」と語った。他の方法を尋ねると、彼は「これさ」と拳銃で自分の頭を撃ち抜いた。
一行はアンバーとミッシーを囮に使い、怪物を誘い出すことにした。一行は姿を現したスタッバーを始末するが、カメレオンという別の怪物がミッシーを連れ去った。一行はカメレオンを追って炭坑を進もうとするが、ストンプは「殺されるぞ」と反対した。彼はデルマーに、「俺とお前なら身軽だからロープ無しでも崖を下りられる」と言う。「急いで下りて応援隊を連れて来る。他の奴らは待ってろ」と彼は話すが、デルマーが別行動すべきではないと主張したため、一人で炭坑を去った。
ナポレオンたちは炭坑を進み、ミッシーの携帯電話が落ちているのを発見した。ストンプはロープを切断したらしき穴を見つけ、一行に呼び掛けた。しかし一行は奥へ進んだ後で、ストンプはレッチに腕を切られて転落死した。炭坑の中では地面の崩落が起き、ナポレオンとアンバーが下の通路へ落ちた。カメレオンはミッシーを強姦しようとするが、ハデスに奪われた。アンバーはカメレオンに襲撃されるが、ナポレオンが撃退した。2人はグラバーという怪物に襲われるが、ハンセルに救われる…。

監督はマーティン・ワイズ、キャラクター創作はウェス・クレイヴン、脚本はウェス・クレイヴン&ジョナサン・クレイヴン、製作はウェス・クレイヴン&マリアンヌ・マッダレーナ&ピーター・ロック、共同製作はティナ・アンダーソン&ジョナサン・クレイヴン&コーディー・ツヴァイク、製作総指揮はジョナサン・デビン、撮影はサム・マッカーディー、編集はカーク・M・モーリ&スー・ブレイニー、美術はキース・ウィルソン、衣装はジャニー・ブライアント、特殊メイクアップ効果はグレゴリー・ニコテロ&ハワード・バーガー、視覚効果監修はジェイミソン・ゴーイ、音楽はトレヴァー・モリス、音楽監修はデヴィッド・フランコ。
出演はマイケル・マクミリアン、ジェシカ・ストループ、ジェイコブ・ヴァルガス、フレックス・アレクサンダー、リー・トンプソン・ヤング、ダニエラ・アロンソ、エリック・エデルスタイン、ルシャッド・ストリク、ベン・クロウリー、マイケル・ベイリー・スミス、デレク・ミアーズ、デヴィッド・レイノルズ、ジェフ・コーバー、ジェイ・アコヴォーン、フィリップ・パヴェル、アーチー・カオ、タイレル・ケムロ、ジェイソン・オットル、ギャスパー・ザボ、セシル・ブレッシア、ジョセフ・ベデレム、ファーティハ・クアティリ、ジェレミー・ゴーイ他。


『サランドラ』をリメイクした2006の映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』の続編。
監督は前作のアレクサンドル・アジャから、ミュージック・フィルムやコマーシャルの世界で活動しているドイツ人のマーティン・ワイズに交代。マーティン・ワイズは2作目の長編作品で、初のハリウッド映画。
『サランドラ』を撮ったウェス・クレイヴンが今回は製作だけでなく、息子と共に脚本も手掛けている。
ナポレオンをマイケル・マクミリアン、アンバーをジェシカ・ストループ、クランクをジェイコブ・ヴァルガス、軍曹をフレックス・アレクサンダー、デルマーをリー・トンプソン・ヤング、ミッシーをダニエラ・アロンソが演じている。

決して有名キャストではないこともあって、序盤で新兵グループの誰が誰なのかを見分けること、名前と顔を一致させることが容易ではない。
登場した時点で申し訳程度にキャラクター紹介があるが、その特徴を示された奴が誰なのかが分かりにくいという状態になっている。
しかし、ようするに『13日の金曜日』シリーズと同様、ほとんどのキャラは怪物に殺されるためだけに登場したようなモノなので、個性とか特徴なんてどうだっていいと言えなくもない。
そして親切なことに、怪物に襲われる奴は、その直前に個人としての存在をアピールするような手順が用意されている。

例えば、陥没した穴に落ちそうになったミッキーはテントへ戻るよう言われるが、ここで初めて彼の顔と名前が一致する。
そもそも、名前が出たこと自体、そこが初めてのはず。そして、そうやって「こいつはミッキーですよ」と示した直後、彼が怪物に襲われるシーンが用意されるのだ。
山頂を目指す一行がレッチに襲われるシーンでは、スピッターがミルストーンを誤射することで個人としての存在をアピールする。会話の中で「スピッター」と何度か呼ばれるので、顔と名前も一致する。
そして、その直後には「スピッターが死体を抱えて崖を下りようとするが、ロープが切断されて転落死する」という展開が用意されている。
そんな風に、ちゃんと死ぬ前にはキャラ紹介をやっている。

非戦主義者で臆病者のナポレオンと金髪女性のアンバーに関しては、テントに到着した時点で別行動を指示されるから、その時点で個人としてハッキリと認識することが可能になる。
そして、そういう動かし方になっているキャラは、「ってことは、こいつらは少なくとも終盤まで生き残る重要な連中なんだろう」ってことが推測できる。
それはキャラの動かし方だけじゃなくて、容姿も含めての推測だ。
そして、その「あまりにも浅くて陳腐かなあ」とさえ思ってしまった予想は、的中してしまう。

粗筋では怪物の名称も表記しているが、実際に観賞して区別できなかったとしても、決して頭が悪いわけじゃない。
まず、劇中で一度も出て来ないから名前が分からないのは当たり前で、問題は「見た目で区別が付くのか」ってことだ。見た目は全く異なる容貌になっており、だったら簡単じゃないかと思うかもしれないが、そうでもないんだよな。
最初にアンバーを襲ったのと、囮作戦で誘い出されたのが同じ奴ってのは、アンバーの「同じ奴よ」という台詞で伝わる。ただし、「スピッターの誤射を誘ったのは別の奴」「スピッターの誤射を誘ったのと、ミッシーを拉致するのも別の奴」「スピッターの誤射を誘ったのと、ストンプを殺すのは同じ奴」「炭坑でカメレオンを始末したナポレオンたちの前に現れるのは、そこが初登場の奴」など、どのシーンの怪物が同一なのかを全て見分けのは、そこまで簡単な作業じゃないと思うんだよな。
まあ、そもそも怪物の見分けが付いたところで、だから何なのかって話だけどね。こっちは兵士たちにも増して、「誰が誰であろうと一向に構わない」という連中だから。

前作でフリークスに襲われたのは、一般人の家族だった。何の訓練も受けていない素人ファミリーだったが、それでも数名がフリークスを倒して生き延びた。
今回、フリークスの住む場所へ足を踏み入れるのは軍人だ。
素人でもフリークスを倒して生き残ることが出来たのなら、軍人なら間違いなく大丈夫だろうと思ってしまう。
しかし実際はボンクラ揃いなので、素人と同じぐらい苦戦を強いられている。

軍人なのに戦闘能力が低いことについては、「新兵で実戦経験が無い連中だから」という言い訳を用意している。
だから、一応の説明は付いているってことになる。
だけどね、「今回の犠牲となるグループは軍人にしよう」→「でも素人家族が生き延びたんだから、彼らより戦闘能力のある軍人だと余裕で勝てちゃうんじゃないか」→「だったら実戦経験が無くてボンクラ揃いの新兵にしておこう」ということで弱体化させるのは、考え方として間違っていると思うのよ。
前作に登場したカーター家より強くしちゃいけないのは最初から分かり切っているんだから、なぜ「軍隊」という設定にしちゃうのかと。そこを最初から外すべきでしょ。

仮に百万歩譲って、「軍隊がフリークスと戦う」という図式を受け入れたとしよう。でも、そういう図式にするのなら、「こっちサイドが兵士たち」という設定に合わせて、フリークスも強化する必要がある。
単純に数を増やすってのも1つの案だろう。
ただし、その場合は2人や3人というレベルではなく、軍人たちより圧倒的に多い人数で物量作戦を展開するぐらいのことをやらないと厳しいだろう。
また、数ではなく戦闘能力を向上させるという方法もある。

で、この映画がフリークスにどういう能力を与えたのかというと、それは知力だ。兵士が目を離した隙にライフルやロープを奪ったり、穴からロープを切断したりと、「知恵を使って兵士たちを追い込む」という方法を取っている。
しかし、そのアプローチには、まるで賛同できない。せっかく「核実験の影響で見た目がグロテスクに変貌した」という設定を用意しておきながら、なぜ「頭がキレる」という部分に優位性を持たせちゃうかなあ。
どうせフリークスを完全に「恐ろしい怪物」として扱っているんだから、もっと「人間では有り得ない怪物ならではの能力」をアピールすべきじゃないのかと。
いっそのこと、腕が4本生えているとか、下半身が金属と合体して強化されているとか、そのぐらいバカバカしい変貌を遂げていてもいいぐらいなのに、そういうトコは変におとなしいんだよな。
「そんな変貌は有り得ない」とか言い出したら、この映画の根幹から崩れちゃうんだし、そこは開き直ってデタラメにやっても一向に構わないと思うんだよな。

「レッチの出現に狼狽したスピッターの誤射でミルストーンが死亡する」とか、「ロープが切断されてスピッターが転落死する」とか、「ダイナマイトを発見したクランクが誤爆する」とか、そういう展開を用意するのは、ホントに愚かしい行為だ。
そういう形で兵士を退場させたら、「怪物に惨殺される」というシーンが失われるわけで。
この映画ってザックリ言っちゃうと「ケレン味溢れる殺戮劇を見せる」というゴア描写の部分が命なのよ。
それなのに、それを潰してどうすんのかと。

そういう意味では、「グラバーに撃たれて怪我を負ったデルマーが、しばらく移動した後で死ぬ」ってのも愚かしい殺害方法と言える。
もっと言っちゃうと、そもそもグラバーが発砲してデルマーを殺そうとしている時点で愚かしいよ。
せっかくフリークスを敵にしているのに、なんで普通の人間でも出来るような方法で兵士を攻撃するのかと。
もっと「いかにも怪物でござい」という方法を取ろうぜ。そして、残虐な方法で兵士を殺そうぜ。
それをやらないのなら、テメエらの存在価値なんて無いんだぞ。

(観賞日:2015年6月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会