『ハイランダー/最終戦士』:2000、アメリカ

今から10年前のニューヨーク。不死の民コナー・マクラウドはパリからダンカン・マクラウドを呼んだが、急に「用事が出来た」と告げて立ち去った。その直後、古美術店へ向かったコナーは、目の前で養女レイチェルを爆破テロによって殺害された。そして現在、コナーは不死の民がゲームから身を守るための場所「サンクチュアリ」で特殊な装置に横たわって眠っている。
コナーは1555年、スコットランドのグレンコーでの出来事を思い出す。コナーは自分を追放した村人たちが母カイオリンを殺そうとしていることを知り、妻ヘザーを残して村へ戻る。コナーはカイオリンと再会するが、そこへレイニー神父や彼が息子のように接するジェイコブ・ケルたちが現れた。ジェイコブを親友と思っていたコナーは、強いショックを受けた。コナーは牢獄に監禁され、目の前でカイオリンを火あぶりにされた。怒りに燃えたコナーは牢獄を破り、レイニーやジェイコブたちを殺害した。
サンクチュアリに、不死の民となったジェイコブが現れた、彼は手下のジン・ケー、カルロス、ウィンストン、クラッカー・ボブ、マニーを率いてサンクチュアリを襲撃した。ジェイコブは剣を使ってサンクチュアリに眠る不死の民の首を次々に斬り、その知識とパワーを吸収する「クイックニング」を行った。
ダンカンは謎の女性からの電話を受け、「コナーを心配するなら最悪の状況を考えるべきだ」と告げられる。ダンカンは五千歳の不死の民メソスに会いに行き、助言を求めた。メソスはダンカンに、サンクチュアリが襲われたことを告げた。ダンカンは1712年、アイルランドのキルデアで、コナーと共に盗賊を退治してケイトという女性を助けた。1631年のイタリアのラヴェンナではコナーと剣術の稽古に励み、不死の民も首を斬り落とされれば死ぬこと、不死の民が同族を殺すことで強くなることを聞かされた。
廃墟となったコナーの古美術店に出向いたダンカンは、そこでキルデア時代の妻ケイトと再会した。ケイトは、何も知らない自分を刺して不死の民にしたダンカンに恨みを抱き、今はフェイスと名を変えてジェイコブの手下となっていた。ケイトはジン・ケーやカルロスたちを呼び寄せ、ダンカンを襲わせた。
ダンカンはウォッチャーに捕まり、サンクチュアリで眠らされる。ウォッチャーはジェイコブが圧倒的な力を得たことに危惧を抱き、サンクチュアリを守るためにダンカンを拘束したのだ。ダンカンは友人であるウォッチャーのジム・ドーソンとメソスに助け出され、埋葬されているというコナーの遺体を確かめるため教会の墓地へ向かう。
墓地に足を踏み入れたダンカンは、生きていたコナーに出会う。コナーはダンカンに、関わった者が必ず殺されるため、ゲームを避けようとサンクチュアリに入ったことを語った。しかしジェイコブはコナーを殺さず、解放していた。ジェイコブはフェイスを伴い、墓地に姿を現した。ジェイコブはコナーに対し、「これからも貴様の愛する者への復讐を続ける」と言って姿を消した。
ジェイコブはさらに強いパワーを手に入れるため、部下のジン・ケーたちの首を全て斬り落としてクイックニングを行った。一方、コナーはジェイコブを倒すため、ダンカンと剣を交えようと決意した。自分がゲームに敗北して首を落とされることによってダンカンに能力を吸収させ、ジェイコブに対抗するパワーを与えようと考えたのだ…。

監督はダグラス・アーニオコスキー、キャラクター創作はグレゴリー・ワイデン、原案はエリック・バーント&ジリアン・ホーヴァス&ウィリアム・パンザー、脚本はジョエル・ソワソン、製作はピーター・デイヴィス&ウィリアム・パンザー、共同製作はパトリック・ピーチ、製作協力はロベルト・ベルナッチ、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&ケイリー・グラナット、共同製作総指揮はH・ダニエル・グロス&ベス・アン・カラブロ、撮影はダグ・ミルサム、編集はクリストファー・ブルンデン&マイケル・N・ニュー&ロバート・A・フェレッティー&トレイシー・グランジャー&ロッド・ディーン&ドナルド・J・パオネッサ、美術はジョナサン・カールソン、衣装はウェンディー・パートリッジ、マーシャル・アーツ・コレオグラファーはドニー・イェン、音楽はスティーヴン・グラジアーノ。
出演はエイドリアン・ポール、クリストファー・ランバート、ブルース・ペイン、リサ・バービュシア、ドニー・イェン、エッジ、ジム・バーンズ、ピーター・ウィングフィールド、デイモン・ダッシュ、ビーティー・エドニー、シーラ・ギッシュ、オリス・アーユエロ、イアン・ポール・キャシディー、ドナルド・ダグラス、ジューン・ワトソン、ポール・ビッグリー、トーマス・ロッキアー、チャーミアン・メイ、ダグラス・アーニオコスキー、ミーニア・トルスカ、ダニエル・パーカー他。


“ハイランダー”シリーズの第4作。
ダグラス・アーニオコスキーは長く助監督を務めてきた人で、これが初監督。
シリーズ4作目ではあるが、3作目との繋がりは薄い。2作目と3作目を無かったことにして、1作目の『悪魔の戦士』&映画から派生して作られたTVシリーズ『暗黒の戦士/ハイランダー』を強引に組み合わせた設定にして、その続編として作っている感じだろうか。

コナー役のクリストファー・ランバートは、4作連続での出演。ダンカン役のエイドリアン・ポール、ドーソン役のジム・バーンズ、メソス役のピーター・ウィングフィールドは、TVシリーズのレギュラー陣。ヘザー役のビーティー・エドニーとレイチェル役のシーラ・ギッシュは、『悪魔の戦士』からの復帰組。
他に、ジェイコブをブルース・ペイン、ケイト(フェイスを)リサ・バービュシア、ジン・ケーをドニー・イェン、カルロスをデイモン・ダッシュ、ウィンストンをオリス・アーユエロ、ボブをイアン・ポール・キャシディーが演じている。1712年キルデアの盗賊の1人として、プロレスラーのエッジが特別出演している。

ともかく、TVシリーズを見ていなければ、内容を理解するのは非常に困難だろうと思われる。ドーソンがウォッチャーであることや、そのウォッチャーとは何かということ(不死の民1名に対して1名のウォッチャーが付くのがルール)、メソスの人物像、サンクチュアリという場所の意味などに関する説明が全く無い。
ではTVシリーズの視聴者に向けた作品なのかと思いきや、どうやらTVシリーズの設定を無視したかのような展開もあったりするようだ。例えば結婚暦が無いはずのダンカンがケイトと結婚したことになっていたり、メソスが別人のようになっていたり。
どうしたいんだよ。
監督と脚本家がTVシリーズを充分に理解していなかったってことなのか。
実は新しいTVシリーズの企画がボツになったので、それを映画に持って行ったという裏事情があったようだが、突貫工事で作ったということなのか。

どうやら不死の民は不死であっても不老ではないようで(ということでもないんだが)、クリストファー・ランバートは1作目からすると当然のことながら随分と年を取ってしまった。
元から動きの鋭さが売りになるような俳優ではなかったが、ますますモッサリした動きになったようだ。エイドリアン・ポールと比べると、明らかに動きの鋭さが違う。
ただ、ランバートとポールって、年齢では2つしか違わないんだけどね(ランバートが1957年生まれ、ポールが1959年生まれ)。

そのランバートより遥かにキレのある剣術アクションを見せるエイドリアン・ポールでさえ、ドニー・イェンには全く太刀打ち出来ない。
コナーとジェイコブが1対1で戦う墓地での剣術シーンなんて、本来ならば中盤の大きな見せ場になるべきなんだろうが、それより前にドニーのアクションシーンを見せているもんだから、もうユルいのなんのって。
設定上ではジン・ケーよりダンカンが強くなければ困るので、2人が1対1で戦うシーンでは、ドニー・イェンがエイドリアン・ポールに合わせて動きを遅くしたり、カットを細かく割ったりしているようだ。
ドニー・イェンは脇役の1人に過ぎないので仕方が無いのだが、彼のアクション俳優としての技量が充分に発揮されているとは言い難い。

何度も回想シーンが出てくるのだが、それが現在の物語に影響を与えることは皆無に等しい。ただでさえ把握が難しい内容を、さらにややこしくしているだけ。
一言で言えば五里霧中な映画で、何が何やらワケが分からない。
ミステリアスな雰囲気に包まれているということではなく、話が支離滅裂でグチャグチャのバラバラってことだ。シナリオを書いたメンツは、自分でどういうストーリーを書いたのか分かっているのかと、それさえ疑いたくなるぐらいだ。

回想シーンを全て削除して、善玉と悪玉の対立関係を使ったシンプルな筋書きにして、もっとアクションシーンを増やした方が、この映画よりは遥かにマシになったような気がする。
ただ、そうなると、ますますクリストファー・ランバートのダメっぷりが目立つことになる恐れはある。
だったら、ランバートには1作目のショーン・コネリーみたいな扱いになってもらうか。

まあしかし、2作目まででラッセル・マルケイ監督が抜けた時点で、このシリーズは実質的には終わっていると思うんだけどね。
マルケイのコケ脅しチャンバラあってこその『ハイランダー』でしょ、やっぱり。
この作品は、マルケイ監督の「話がデタラメで整合性を考えない」という部分だけ踏襲しているんだよな。
そっちを受け継いでどうすんのよ。


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪のリメイク・続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会