『ハイランダー3/超戦士大決戦』:1994、カナダ&フランス&イギリス

ハイランダーのコナー・マクラウドは師匠のラミレスと妻のヘザーを失い、スコットランドを去って世界をさまよった。16世紀の日本を訪れた彼は、ニリの山にある妖術師ナカノの洞窟へ赴いた。ナカノは彼に、「危機が迫っているぞ。別の不死の民が来る。最も邪悪な不死の民だ。日ごとに強くなっている。不死の民の首をはね、じきに最強の者となるだろう。奴が勝てば、この世は永遠に呪われる。名前はケイン」と語った。
ケインは手下2人を引き連れて麓の村を訪れ、「ニリの山はどこだ?」と村長に質問した。村長が「魔法使い、ナカノの力が欲しいのか」と言うと、ケインは手下たちに「こいつは俺を舐めてるぞ」と言い、村を焼いた。一方、ナカノは自分がラミレスと同じ不死の民であることをコナーに明かし、「お前に知識を授けよう」と告げる。ナカノはコナーに剣術を教え、「剣よりも、まず魂で戦うのだ」と説いた。コナーはナカノから「私の首をはねて力を得るのだ」と指示され、「嫌です」と刀を捨てた。「幻の術は要らんのか」と問われた彼は、「要りません」と答えた。
ケインと手下たちは洞窟へ辿り着き、深夜に襲撃を掛けようとする。ナカノは気配を察知し、コナーに逃げるよう告げた。コナーは困惑しながらも、ナカノに礼を述べて立ち去る。ケインがナカノの前に現れて殴り付けると、隠れていたコナーは背後から襲い掛かった。だが、ケインは見抜いており、コナーの腹を剣で突き刺した。ナカノは刀を抜いてケインに立ち向かい、コナーを逃がした。ケインはナカノの幻術を見破り、彼の首をはねた。ナカノは最後の力で洞窟を崩壊させ、ケインと手下たちは地底深くに埋められた。
1994年。考古学者のアレックス・ジョンソンは日本を訪れ、タカムラ博士と合流した。会社側が工事の再開を望んでいることを知らされたアレックスは、「発掘が優先よ」と告げる。ニリ山の近くにある日本の某企業は、トンネル工事を進めていた。アレックスはナカノの伝説を信じていたが、タカムラは賛同しなかった。トンネルの奥でケインと手下たちが復活し、警備員を始末して外へ出た。ケインは手下の1人にコナーの捜索を命じ、もう1人を殺して力を得た。
コナーは養子のジョンとモロッコの砂漠で馬を走らせている時、雲が無いのに雷が発生する不吉な現象を目撃した。ケインの復活を悟った彼は友人のジャックにジョンを預け、ニューヨークへ戻ることにした。アレックスは手下の遺体を調べ、1500年代の鎧を着用していることを知って驚いた。彼女はサンプルを採取し、詳しく調べることにした。ニューヨークに戻ったコナーは、強盗団に包囲される。彼は拳銃で撃たれ、病院に担ぎ込まれた。
コナーは立ち上がって去ろうとするが、異常者だと決め付けた医師に鎮静剤を注射された。コナーは精神病棟に運ばれ、手足をベッドに縛られた。アレックスはタカムラから、洞窟で発見した4百年前の生地を見せられる。それは日本の生地ではなく、スコットランドのタータン・チェックだった。目を覚ましたコナーは、ケインの手下が迫っていることに気付いた。彼は自分が皇帝だと思い込んでいる患者に合わせて芝居を打ち、拘束を解いてもらった。
病院から脱走を図ったコナーは、手下に見つかった。コナーは襲って来る手下の首を斬り、その場を後にした。殺害現場に入ったジョン・ステン警部補は、かつて同じ手口の殺人があったことを覚えていた。彼は犯人が古美術商のラッセル・ナッシュ、つまりコナーだと確信し、張り込みを開始した。テレビを付けたコナーは日本で取材を受けるアレックスを見て、かつて愛したサラと瓜二つなので驚いた。コナーはフランス革命時代、友人であるフレネットの家でサラと出会った。サラはフレネットの姪で、イギリスから来ていた。
バーに立ち寄ったケインも、テレビでアレックスが話す様子を見ていた。アレックスは洞窟に刻まれていた文字が「残るのはただ一人」と解読するが、どういう意味なのかは分からなかった。アメリカにいる友人のトミーから「君が興味を持つかと思って」とメモされた首なし死体に関する新聞記事が送られて来たため、アレックスはニューヨークへ戻ることにした。セックス・ショップを覗いたケインは、売春の元締めから「本物の女を抱いてみないか?」と誘われる。売春婦の部屋に通されたケインは、ニヤニヤしながら抱き付いた。
アレックスはニューヨークの古代史博物館でトミーと合流し、タータンチェックがマクラウド家の分家の紋様だと突き止めた。アレックスはコナーがナカノと会う目的で日本を訪れたのではないかという仮説を立てたが、トミーは「何の証拠も無い」と告げる。アレックスは「分家の子孫で古美術商の男がいる」とラッセル・ナッシュの資料を見せ、会って話を聞こうと考える。彼女が1人で作業をしていると、ケインが現れた。不審を抱いたアレックスが電話で警備を呼ぼうとすると、ケインが制止した。彼はアレックスがコナーについて調べていると知り、「俺が見つけてやる」と告げて立ち去った。
アレックスはコナーを張り込み、車で出掛ける彼を尾行した。コナーは日本宗教会館を訪れ、サラとの思い出を回想した。彼はサラと愛し合う関係になったが、友人のピエールからフランス革命が勃発したことを知らされる。コナーはイギリスへ帰るようサラに告げ、パリへ戻ったのだった。会館を出たコナーはアレックスに声を掛けられ、8年前まで古美術商をやっていたコナー・マクラウドを知らないかと問われる。コナーが「知らない」と冷たく告げて去ろうとしていると、ケインが襲い掛かった。コナーは剣を構えて戦うが、腹を刺される。しかし彼は剣を破壊されながらも反撃し、ケインを一時退却に追い込んだ。
コナーはアレックスに「見たことは全て忘れろ」と告げ、その場から逃亡した。ステンはアレックスを捕まえ、「かつて鑑識課のブレンダが、ラッセル・ナッシュの行動や剣に興味を持った。7年前に奴の車で事故に遭って即死したが、奴は無傷だった」と語る。アレックスは何も見なかったと証言するが、ステンは「奴は危険な男だ。関わらない方がいい」と警告した。帰宅したコナーは、サラのことを思い出す。国王への反逆罪で収監された彼は、死ねない苦しみから解放されるため処刑されようと決めていた。しかしピエールは革命にコナーが必要だと考え、密かに入れ替わって処刑された。コナーは生きて牢を出たが、既にサラは別の男と結婚して子供も設けていた…。

監督はアンディー・モラハン、キャラクター創作はグレゴリー・ワイデン、原案はウィリアム・パンツァー&ブラッド・マーマン、脚本はポール・オウル、製作はクロード・レジェ、製作総指揮はガイ・コリンズ&チャールズ・L・スマイリー、撮影はスティーヴン・チヴァーズ、美術はジル・エアード&ベン・モラハン、編集はイヴ・ラングロワ、衣装はジャッキー・ブディン&マリオ・ダヴィニョン、視覚デザイン・コンサルタントはウルフ・クローガー、視覚効果監修はブライアン・ジョンソン、音楽はJ・ピーター・ロビンソン。
出演はクリストファー・ランバート、マリオ・ヴァン・ピーブルズ、デボラ・アンガー、マコ、ラウル・トルヒーリョ、マーティン・ニューフィールド、ジャン=ピエール・ペルッセ、フレデリック・Y・オキムラ、ダニエル・ドー、ガブリエル・カコン、ルイ・ベルティニャク、ミハエル・ジェイストン、ハン・ゼンフー、アキラ・イノウエ、ダーシー・ローリー、ジョルジュ・ヴィテツァキス、デヴィッド・フランシス、リサ・ヴィテッロ、マット・ホランド、リシャール・ジュトラ、リズ・マクレー、エミディオ・ミケッティー、アンドレ・オウマンスキー他。


前作から3年ぶりとなるシリーズ第3作。公開当時は完結編という触れ込みだったが、後に第4作が製作された。
監督は1作目と2作目を撮ったラッセル・マルケイから、ジョージ・マイケルやガンズ・アンド・ローゼスなどのMVを手掛けてきたアンディー・モラハンに交代。彼も脚本のポール・オウルも、これが映画デビュー作。
ショーン・コネリーが登場しないため、レギュラー出演者はコナー役のクリストファー・ランバートだけになった。
ケインをマリオ・ヴァン・ピーブルズ、アレックスをデボラ・アンガー、ナカノをマコ、ケインの手下1をラウル・トルヒーリョ、ステンをマーティン・ニューフィールドが演じている。

クリストファー・ランバートはラッセル・マルケイが自分の望むバカ満開なチャンバラ映画を存分に描いた第2作『ハイランダー2 甦る戦士』が、大いに不満だったらしい。
そこで「自分のイメージする『ハイランダー』を作りたい」という思いを抱き、本作品に臨んだそうだ。
ってなわけで、1作目と2作目の間に起きた出来事を描くことによって、2作目の内容を実質的には「無かったこと」にしてある。
ステンが「7年前に鑑識課のブレンダが云々」と話すシーンがあるが、それは第1作『ハイランダー/悪魔の戦士』の内容である。

序盤、ケインは日本の村を訪れ、英語で「ニリの山はどこだ?」と村長に訊く。
なぜか意味が通じたようで、「どうして知りたいのだ?」と村長は質問する。こっちはバリバリの日本人のはずなのに、なぜか日本語が拙い。
ただし、それはアメリカ訛りの日本語ってことじゃなくて、芝居が大根ってことだ。ちなみに、ナカノはコナーと英語で話している。
一方、後で登場するタカムラは純潔の日本人設定なのに、「コニチワ」「ドーモアリガト」とモロにアメリカ訛りの日本語を喋っている。

村長の質問を受けたケインは、今度は日本語で「良く聞け。ニリの山はどこだ?」と告げる。だが、カタコトの日本語なので、「ヨキケ、ニリノー、ヤマハー、ドッコダー」ってな感じで聞こえる。
で、村長が「魔法使い、ナカノの力が欲しいのか」と告げると、ケインは「こいつは俺を舐めてるぞ。村を焼け」と手下たちに命じる。
いやいや、村長は質問しただけでしょうが。それで村を焼き打ちにするって、どんだけ短気なんだよ。
っていうか、なぜかアンタも日本語が分かるのかよ。

ケインは村を焼くことで脅しを掛け、村長からニリの山の場所を聞き出そうとするのかと思ったら、そうじゃないのよね。なぜか村を焼き打ちにしたら、満足そうに去ってしまう。
いやいや、テメエの目的は村を焼くことじゃないだろうに。
で、ケインは普通にニリの山へ辿り着いちゃってるし。
村の焼き討ちと村人の惨殺によって彼の残忍さをアピールしておこうという狙いは分かるけど、ただのボンクラな行動にしか見えないぞ。

あと、ケインの一味は3人しかいないし、そんなに圧倒的な強さを見せ付けるわけでもないので、村人が本気で戦えば勝てるんじゃないかと思ってしまう。
手下が2人しかいない時点でショボいと思うけど、そこは別にケインだけでもいいのよ。圧倒的な力を見せ付けるのであればね。
でも、モッチャリしたソード・アクションしか披露できていないのよね。
だったら特殊視覚効果でも使って「特殊な力」を演出しても良さそうなモンなのに、そこは愚直に「何の細工も施さないソード・アクション」にしちゃってるのよね。
これが勝新太郎の居合いみたいなキレとスピードでもあればともかく、そうじゃないのでね。

ナカノはコナーに剣術を教えるけど、既にコナーが充分すぎるほどの技術を教えたはずなのよね。そして鍛錬を積んだコナーは、不死の民で最強だったクルカンを退治しているのよね。
なので、今さら剣術の修行シーンを描かれても、「わさわざ鍛え直す意味があんのかね」と言いたくなる。
ナカノの修行が意外性に富んでいたり、剣の技術から全く離れた稽古だったりするなら、まだ分からんでもないのよ。でも、普通に木刀で戦ったり、頭に乗せた果物を割らせたりしているだけなのよね。
その程度の修行を今さ積んだところで、コナーが剣士として一皮剥けるようには思うんぞ。

ナカノはコナーに「私が戦う番だ」と言って逃がしたのに、ケインが来た時には無抵抗で殴られる。
残っていたコナーが襲われると刀を抜いているけど、だったら最初から戦えよ。なんで無意味なダメージを負ってから戦うんだよ。
で、彼は分身の術で3体になるんだけど、一撃も与えない内に、あっさりとケインに斬られている。分身したら、すぐに襲い掛かればいいものを、なぜか待機して向こうが攻めて来るのを待っちゃうからだ。
ちなみにケインに本物がバレた理由は、そいつだけが顔に汗をかいていたから。
いやバカバカしすぎるわ。ケインは「お前の幻術を寄越せ」と言っているけど、その程度で簡単にバレちゃうような幻術なら要らないだろ。

コナーはケインの復活を悟ると、彼を捜しに行こうと決める。
だけど待っていたって、向こうから捜しに来てくれるでしょ。もう残っているハイランダーはコナーだけだから、他の奴が犠牲になる危険も無いはずだ。
だからジョンを誰かに預けるのはいいとして、わざわざ捜しに行かなくても、戦う準備を整えて待っていればいいんじゃないか。
少なくとも、なぜ「ケインを捜す」という目的でニューヨークへ行くのかはサッパリ分からんよ。

アレックスが日本にいるシーンは、まるで必要性を感じない。彼女が企業の工事を止めようとする行動なんて全く無い内に、ケインは復活しちゃうし。
で、その復活をアレックスは知らないし、ナカノの伝説について調べるわけでもない。手下の鎧は見つけているけど、それが必要不可欠な手順ってことは絶対に無い。
アレックスはトミーから首なし死体に関する新聞記事が送られて来るとニューヨークへ戻るが、ずっとニューヨークにいる設定にしてもいい。例えばアレックスを「ニューヨークでナカノの伝説について研究している考古学者」という設定にして、アメリカでコナーと出会う形を取っても、何の支障も無い。
っていうか、なぜ彼女は首なし死体の事件を知るとニューヨークへ戻るのか、良く分からんぞ。考古学とは何の関係も無いはずでしょうに。

ケインはニューヨークの街を歩いている時、トランプのイカサマ賭博をやっている男たちと遭遇する。3枚の中でどれがハートのエースか当てる賭博を持ち掛けられ、3枚ともハートのエースに変えて金を貰う。「俺の金を返せ」と男の1人が凄み、ケインが振り返ると、いつの間にか男のサングラスを掛けている。
それでビビッった男たちは黙って立ち去るのだが、ケインには「何やってんの?」と言いたくなる。
そんなことで無駄にパワーを使って、何の意味があんのかと。
イカサマの男たちはビビっているけど、こっちからするとバカバカしいだけだよ。

既にケインは村を焼き打ちにしたりナカノを殺したりしているんだから、今さら「トランプの絵柄を変える」とか「相手が気付かない内にサングラスを盗む」とか、そんなチンケな能力を見せられても、脅威でも何でもない。
セックス・ショップに興味を抱くとか、売春婦にニヤニヤするとか、そういうのも全く要らんわ。
なんで妙にコミカルなテイストなんて持ち込んでいるんだよ。
そういうノリを持ち込むにしても、その役割をケインに担当させちゃダメだろ。

コナーがサラのことを回想するシーンが何度も挿入されるが、これが邪魔でしょうがない。コナーがサラと出会うシーンや肉体関係を持つシーンが描かれているんだけど、何の必要性も感じない。
「アレックスがサラと瓜二つ」ってことで、そこに結び付けようとしているのは分かるのよ。だけど肝心の「コナーとアレックスの恋愛劇」が全く膨らまないから、サラに関する回想シーンも無意味じゃないのかと言いたくなるのよ。
そもそもコナーとアレックスが出会うのが映画開始から50分ぐらい経過した辺りだから、そこから恋愛劇を描こうとしても遅すぎるし。
で、遅れ馳せながら2人の距離を縮めるドラマを描き始めているけど、そこに意識が集中するせいで、物語を盛り上げていくべきタイミングでテンポがノロくなってモタモタしちゃうし。

もちろんコナーとアレックスの恋愛劇を描くだけで終わらせるわけにもいかないので、ケインを動かす必要がある。
ただ、こいつが何をするかというと、「ジャックを欺いてジョンをニューヨークへ送らせ、人質にとってコナーを誘い出す」という行動を取るのよね。とても最強の戦士として思えないような、ものすごくセコい手口を使うのだ。
そこに限らず、ケインってやること成すこと全てがチンピラ同然なのよね。コナーの前に立ちはだかる強敵としての説得力が、これっぽっちも感じられない。
そんな奴との最終決戦がクライマックスに用意されているので、もちろん盛り上がりに欠ける。
それよりも、なぜか無駄に濃厚なコナーとアレックスの濡れ場の方が、ある意味ではピークになっちゃってるぞ。

(観賞日:2017年2月2日)


第17回スティンカーズ最悪映画賞(1994年)

ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会