『ヒート』:1995、アメリカ

ロサンゼルス。冷徹な犯罪者ニール・マッコーリーは、クリスやチェリト、ウェイングローといった仲間を率いて、多額の有価証券を積んだ装甲輸送車を襲撃した。ウェイングローが警備員の1人を射殺したため、ニールは他の警備員も口封じとして始末した。LA市警のヴィンセント・ハナは、捜査の陣頭指揮に当たった。
ニールが奪った債券は、悪徳金融業者ヴァン・ザントのものだった。ニールは仲間のネイトから、債券を持ち主に買い戻させるよう進言を受けた。ニール達は厄介者のウェイングローを始末しようとするが、逃げられてしまう。ずっと独り身を貫いてきたニールだったが、グラフィック・デザイナーのイーディと出会い、気持ちに変化が生じる。
ニールは同業者のセザールから銀行強盗の襲撃計画を買おうと考え、その資金捻出のためにザントとの債券取引に臨むが失敗に終わる。ヴィンセントはクリスとチェリトが犯行グループの一員だと突き止め、家や車に盗聴器を仕掛けた。ヴィンセントは一味が貴金属貯蔵倉庫を襲撃する計画を知って張り込むが、それを察知したニール達は作業を中止して立ち去った。
ニールはヴィンセント達を誘い出し、刑事の顔を全てチェックした。ニュージーランドへイーディと共に移住しようと決めたニールは、最後の仕事として銀行を襲撃する。しかし駆け付けたヴィンセント達と銃撃戦となり、チェリトが死亡、クリスは重傷を負う。

ニールは運転手役のトレホが裏切って警察に密告したのではないかと疑い、彼の家へ向かう。しかしトレホは虫の息で、ウェイングローに妻アンナを誘拐されたために仕方なく裏切ったこと、その背後でザントが糸を引いていることを告げた…。

監督&脚本はマイケル・マン、製作はマイケル・マン&アート・リンソン、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&ピーター・ジャン・
ブルージ、撮影はダンテ・スピノッティー、編集はドヴ・ホーニッグ&パスクァーレ・ブバ&ウィリアム・ゴールデンバーグ&トム・
ロルフ、美術はニール・スピサック、衣装はデボラ・L・スコット、音楽はエリオット・ゴールデンサル。
主演はアル・パチーノ&ロバート・デ・ニーロ、共演はヴァル・キルマー、ジョン・ヴォイト、トム・サイズモア、ダイアン・ヴェノーラ、
エイミー・ブレネマン、デニス・ヘイスバート、アシュレイ・ジャッド、ミケルティ・ウィリアムソン、ウェス・ステュディー、テッド・
レヴィン、ウィリアム・フィクトナー、ナタリー・ポートマン、トム・ヌーナン、ケヴィン・ゲイジ、ハンク・アザリア、スーザン・
トレイラー、キム・ストーントン他。


マイケル・マンが脚本&監督を務めたテレビ映画『メイド・イン・L.A.』をセルフリメイクした作品。
ヴィンセントをアル・パチーノ、ニールをロバート・デ・ニーロ、クリスをヴァル・キルマー、ネイトをジョン・ヴォイト、チェリトをトム・サイズモア、ヴィンセントの妻をダイアン・ヴェノーラ、イーディをエイミー・ブレネマンが演じている。
他に、ヴィンセント一味のブリーダンをデニス・ヘイスバート、クリスの妻ジャスティンをアシュレイ・ジャッド、その連れ子ローレンをナタリー・ポートマンが演じている。また、表記したキャスト以外にも、ダニー・トレホ、ヘンリー・ロリンズ、トーン・ロック、ジェレミー・ピヴェン、ザンダー・バークレイなどの面々が出演している。

アル・パチーノとロバート・デ・ニーロの初共演が何よりのセールスポイントだが、それ以外の配役も豪華である。しかし、この映画は有名俳優をたくさん登場させただけで面白い作品にはなるとは限らないことを証明してしまった。
とにかく、やたらと長いのが困りもの。内容が詰まった長さではなく、中身がスカスカでダラダラしているだけなのだ。

なんせニールとヴィンセントが、最後までお互いに遠いポジションに位置しているので、それぞれの人間ドラマを描いても、まるで別の2つの作品をパッチワークで繋げたような違和感があるのだ。
しかもその人間ドラマは、2人の対決を盛り上げる役目を果たしていない。
深みの無い人間ドラマを延々と見せられても、退屈なだけだ。

ヴィンセントとニールの、息詰まる知能戦が行われるというわけでもない。ニールが追い詰められて行く緊迫感があるわけでもない。物語の構成が上手くないってことだろう。
あと、どうでもいいけど(いや良くないけど)、ニールの行動って一流のプロにしてはショボい気がするんだが。銀行襲撃のやり方なんて、完全に三流の手口に見えるし。

前述したようにアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの初共演が売りの映画だが、2人が同じ画面に登場する箇所は限りなくゼロに近い。
仮にスケジュールの問題などで本当の共演が無理だったとしても、合成技術を使えば幾らでも同じ画面にハメ込むことは可能だろう。
つまり、同じフレームに2人が登場しないのは、何らかの意図があったとしか考えられない。
だが、その意図は不明だ。
映画の評価を、さらに下げるためだろうか。
んなアホな。

タイトルの『ヒート』は大正解かもしれない。
映画を見た人が、「これほど長い時間を無駄に使わせやがって」とヒートするという意味で。
ともかく、半分の時間で充分だろう、この映画は。

 

*ポンコツ映画愛護協会