『ホーンテッドマンション』:2003、アメリカ

19世紀のニューオーリンズ。グレイシー家の大豪邸では舞踏会が行われていた。だが、彼が愛する女性エリザベスが手紙を残し、服毒自殺 してしまう。悲しみに暮れたグレイシーは、首を吊って彼女の後を追った。現在、その古びた豪邸の門の前に、自転車に乗った少年が 現れた。突然、豪邸から得体の知れない巨大な幻影が出現し、少年は慌てて逃げ出す。少年が自転車のカゴに乗せていたチラシが、門の前 に散らばった。それは、不動産屋業者ジム・エヴァンスと妻サラの写真が掲載されたチラシだった。
ジムは仕事中心の日々を送っており、サラとの結婚記念日の約束にも遅れて帰宅する。サラの機嫌を取るため、ジムは週末に休みを取って 家族旅行に行こうと提案する。そんな時、サラがある男性から電話を受けた。屋敷を売りたいので、サラ1人だけで来て欲しいという。 断ろうとしたサラだが、ジムは「旅行の前に少し立ち寄るだけ」と彼女を説き伏せ、客の依頼を承諾する。
ジムはサラとクールな娘メーガン、怖がりの息子マイケルを車に乗せ、豪邸へ赴いた。門の前で呼んでも返事が無かったため、ジムは自分 で開けて中に入った。ドアをノックするが、誰も出て来ない。急に雷雨が振り出したため、エヴァンス一家は豪邸に入った。すると、執事 のラムズリーが奥から現れた。サラに電話を掛けたのは彼だ。サラが1人ではないことに少なからず不服を抱いた様子のラムズリーだった が、一家を主人であるグレイシーのいる晩餐の席に案内する。
豪雨で道が塞がれたため、エヴァンス一家はグレイシーの勧めで豪邸に宿泊することになった。ジムはラムズリーの案内で書斎へ行き、 隠し部屋を発見する。中に入ったジムは出られなくなり、別の出口を探す。マイケルが古いオルゴールの蓋を開けると、中から輝く人魂が 飛び出してきた。人魂はフワフワと空中を移動していき、マイケルとメーガンは後を付いていく。
ジムを探していたサラはラムズリーに会い、書斎に行くよう告げられる。しかし書斎にいたのはジムではなく、グレイシーだった。サラ から家を売る理由を問われ、グレイシーは豪邸で起きた悲しい出来事を語り始める。マイケルとメーガンは人魂を追ってエレベーターに 乗り、上の階へ行く。隠し部屋を抜け出したジムは、屋敷の中を移動していく。
屋根裏部屋に辿り着いたマイケルとメーガンは、そこでサラそっくりの肖像画を発見する。そこに使用人エズラと女中のエマが現われ、 それがエリザベスだと告げる。そこへラムズリーが来たため、エズラとエマは慌てて子供たちを隠す。ラムズリーは「1人で来いと言った のに、なぜ逆らう。旦那様の計画に邪魔が入ることは許されない」と語る。
ジムは声のする部屋に入るが、その主は水晶玉の中に浮かぶ女性占い師の顔だった。その占い師マダム・リオッタは、探しているのは誰か と尋ねる。「探しているのは出口」とジムが答えると、「内側を見よ。この家には悪霊がいる。お前の命を狙っている。悪しき魂が墓より やって来る」と告げる。さらに彼女は、「輝く光に付き従え。家に帰るにはそれしか無い。家族の命が懸かっている。呪いを解かねば 逃げることは出来ない。助かりたいのなら彼女の無念を晴らせ」と語る。
部屋から逃げ出したジムはマイケルとメーガンを発見し、すぐに屋敷を立ち去ろうという。そこへエズラとエマが現われ、マイケルたちは 2人が幽霊だと説明する。ジムが水晶玉のことを口にすると、そこへ行こうとエマが言い出す。相手にしないジムだが、「ママが大変なの」 とマイケルに言われて態度が変わる。マイケルとメーガンは、ジムをエリザベスの肖像画の所へ連れて行く。
ジムは子供たちとエズラ、エマの5人でリオッタの部屋に戻り、詳しい事情を知る。身分違いの恋人エリザベスが自害したため後を追った グレイシーは、今も幽霊となって屋敷を彷徨っていた。そして彼がサラを呼んだのは、彼女が恋人エリザベスだと思っているからだ。 リオッタによると、エリザベスが屋敷に戻ったのは確かであり、ここにも来たと言う。
リオッタはジムたちに、真実を知って呪いを解くためには鍵が必要だと説明する。古い樫の大木の下の墓から地下深くに戻ると、鍵が 隠されている黒い棺があるという。エズラとエマは御者となって幽霊馬車を走らせ、ジムと子供たちを屋敷の外へ連れ出す。馬車を降りた ジムたちは歌う胸像4体に遭遇した後、納棺堂を発見する。中に入ったジムとメーガンは鍵を発見し、棺から蘇ったゾンビの大群に 襲われながらも何とか脱出した。
リオッタの元に戻ったジムたちは、トランクを見つけるよう告げる。鍵を使ってトランクを開けたジムは、水晶玉に言われて中を探り、ある 手紙を発見する。それは、エリザベスがグレイシーと結婚する意思を記したものだった。彼女は自殺したのではなかったのだ。そこへ ラムズリーが現われ、彼がエリザベスの手紙を摩り替えたことが判明する。
ラムズリーはエズラとエマを消し、屋敷を守るためにエリザベスとの駆け落ちを防いだのだと説明する。さらに彼は、呪いから介抱される ためにグレイシーとサラの結婚式を執り行うことを告げる。ラムズリーはマイケルとメーガンをトランクに閉じ込め、ジムを屋敷の外へ 放り出す。サラと子供達を助けるため中へ戻ろうとするジムだが、屋敷は堅く閉じられてビクともしない。
グレイシーはサラにエリザベスとして「早く思い出して」と語り掛けるが、その反応に「本当に彼女なのか」と不安を覚える。ラムズリー は「いずれ思い出します」とグレイシーをなだめ、結婚式の準備をするよう勧める。ラムズリーはサラの元へ行き、子供たちを人質にして いることを明かす。脅迫を受けたサラは、仕方なく結婚式に出席することを決める…。

監督はロブ・ミンコフ、脚本はデヴィッド・バレンバウム、製作はドン・ハーン& アンドリュー・ガン、製作総指揮はバリー・ベルナルディー&ロブ・ミンコフ、撮影はレミ・アデファラシン、編集はプリシラ・ネッド・ フレンドリー、美術はジョン・マイアー、衣装はモナ・メイ、特殊メイクアップ効果はリック・ベイカー、 視覚効果監修はジェイ・レッド、音楽はマーク・マンシーナ。
主演はエディー・マーフィー、共演はテレンス・スタンプ、ナサニエル・パーカー、マーシャ・トマソン、ジェニファー・ティリー、 ウォーレス・ショーン、ディナ・ウォーターズ、マーク・ジョン・ジェフリーズ、アリー・デイヴィス、 ジム・ドゥーハン、レイチェル・ハリス、スティーヴ・ハイトナー、ヘザー・ジャーゲンセン他。


ディズニーランドの人気アトラクション映画化企画の第3弾(第1弾は『カントリー・ベアーズ』、第2弾は『パイレーツ・オブ・ カリビアン/呪われた海賊たち』)。
ジムをエディー・マーフィー、ラムズリーをテレンス・スタンプ、グレイシーをナサニエル・ パーカー、サラをマーシャ・トマソン、リオッタをジェニファー・ティリー、エズラをウォーレス・ショーン、エマをディナ・ ウォーターズ、マイケルをマーク・ジョン・ジェフリーズ、ミーガンをアリー・デイヴィスが演じている。

導入の部分で、不自然な点が幾つかある。
明らかにジムだけが仕事をしていてサラは専業主婦っぽいのに、共同で不動産業を営んでいる設定になっており、チラシには2人の写真が掲載されている。
あんな人里離れてポツンと建っている古びた豪邸に、チラシ配りの少年が行くというのも不自然だ。
「ラムズリーがエリザベスに瓜二つなサラの存在を知る」という筋書きのために、無理を通しているのだ。
ただし、そこの不自然さは、あえて受け入れようと思う。
どうせ「ある家族がお化け屋敷に入ってあれやこれや」というアトラクション映画であり、ストーリーなんて二の次、三の次になっているのだから。
だからアトラクションに到着するまでのシーンなんてどうでも良くて、重要なのはアトラクションの中身がどれほど面白いか、どれほど充実しているかだ。

エヴァンス一家が訪れた豪邸で待ち受けているのは、怖がらせるモノと言うよりは、楽しませるモノに近い。
隠し扉や絵の裏の扉、空飛ぶ椅子など、からくり屋敷といった様相もある。
墓へ行くまでのシーンで「登場人物が恐怖する」というのは、ジムが鏡に写った自分の醜い変貌を見る場面ぐらいじゃないだろうか。
廊下の像が凝視していることには、全く気付いていないし。

納棺堂に入ると、ようやくゾンビ軍団という「お化け屋敷としてのアトラクション」が登場する。
しかし、それなりに怖がってはいるものの、ジムは悲鳴を上げて逃げ出すわけではなく、ゾンビと戦ったりもしている。
行動として「屋敷から逃げ出す」「幽霊から逃げ出す」というのではなく「ミッションを遂行する」というモノになっている。
舞台は屋敷だが、アドベンチャー映画のノリに近い。
ホラー映画としての「恐怖でパニくったり悲鳴を上げたり」というリアクションは、非常に少ない。
その数少ないリアクションを担当するのはジムだが、観客の感情を煽る役目は果たしていない(そもそも、エディーってリアクション芸人じゃないんだよな)。
メーガンとマイケルに至っては、悲鳴を上げる場面は見当たらない。
何しろ、早い段階で「ここは幽霊がいる屋敷」としてスンナリと受け入れてしまうのだ。

メーガンはクールな性格が提示されていたが、「屋敷で不可思議な体験をしたり幽霊に出会ったりすると臆病な一面を見せてキャーキャー と騒ぎまくる」といったこともなく、相変わらずクールに対応する。
怖がりという設定のはずのマイケルでさえ、幽霊の群れを見つけても「僕、死んだ人が見える」と『シックス・センス』のネタをつぶやく だけ。怖がることはあっても、リアクションはおとなしい。
アトラクション参加者が怖がるリアクションをそれほど見せない一方で、エディー・マーフィーがコメディーの方向で悪ノリしたり幽霊と 軽妙な掛け合いをしたりすることも無い。
空気を読まない余計なお喋りも、アトラクションが始まると控え目になっている。
まあ、既にエディー・マーフィー自身が「爆発性の無いコメディアン」になっちゃってるしねえ。

そもそもエディー・マーフィー主演だし、しかもディズニー作品だから、純然たる恐怖映画になっていなくても不満は無い。
コメディー・ホラー映画になるんだろうと予想していたので、それは構わない。
ただ、コメディー・ホラーとしては、もっとエディーをドタバタさせて、もっとジェット・コースター・ムーヴィーとして作って欲しかった。
怖がらせるための「間」は要らないはずなのに、全体的にマッタリしすぎだ。
ディズニーだから「子供向け」ということを意識しているのかもしれないが、そうだとすればマイケルとメーガンをもっと活躍させるべき で、しかしながら、そこはジムが優先になっている。
何に付けても中途半端なのだ。

終盤、ジムが車で屋敷へ突っ込む場面で、助手席に置いた水晶玉にシートベルトを締めているという絵があるが、そういう遊び心をもっと見せれば良かったのに。
正直、面白いのって、それぐらいだよ。
もっとジムとリオッタの掛け合いを中心に据えて、そこを膨らませれば良かったかもね。
リック・ベイカーはテレンス・スタンプをボリス・カーロフに変身させたりして頑張ってるけどね。

 

*ポンコツ映画愛護協会