『ハリーとヘンダスン一家』:1987、アメリカ

ジョージ・ヘンダスンは妻のナンシー、娘のセーラ、息子のアーニーとキャンプに出掛け、川の近くにテントを設営した。彼はアーニーを連れて森へ狩りに出掛け、ウサギを仕留めた。ジョージとアーニーは興奮した様子でテントに戻るが、女性陣は「食べないわよ」と呆れた様子を見せた。ジョージは家族を車に乗せて自宅へ向かう途中、飛び出してきた大きな動物を誤ってはねてしまった。慌ててブレーキを踏んだジョージはナンシーに促され、車を降りて動物の様子を確かめに行く。
ジョージがライフルを構えて動物に歩み寄ると、アーニーは「撃っちゃえ」と叫んだ。「もう死んでるよ」と彼に言って動物の手を調べたジョージは、驚いて家族を呼び寄せた。ジョージは熊だと思っていたが、それはビッグフットだったのだ。ジョージは「これは大発見だ。博物館が欲しがるだろう」と告げ、車の屋根に積んで家まで運ぶことにした。ナンシーが「これで絶滅したとしたら、どうするの」と言うと、ジョージは「これで儲かるかもしれないな」と口にした。
死んでいなかったビッグフットが動き出したので、ヘンダスン一家は悲鳴を上げた。ジョージが急ブレーキを掛けると、ビッグフットは車から滑り落ちた。ジョージはライフルを構えて近付き、ビッグフットの脈が停止していることを確認した。一家は再びビッグフットを車の屋根に乗せ、自宅へ向かった。同じ頃、ハンターのジャック・ラフルールはビッグフットの足跡を発見し、落ちていた毛の匂いを嗅いで行方を追った。
その夜、就寝していたジョージは大きな物音で目を覚まし、ガレージへ行く。するとビッグフットは姿を消しており、家の方で物音がした。ジョージが慌てて家へ戻ると、ビッグフットは冷蔵庫を開けてミルクを飲んでいた。ビッグフットは咆哮し、ジョージが椅子を掴んで武器にしようとすると軽く叩き落とした。ビッグフットに詰め寄られたジョージの叫び声で、家族が目を覚ましてキッチンへやって来た。セーラはスプレーを噴射してビッグフットを引き付け、ジョージは「今の内に外へ出ろ」と指示した。
セーラは貯金をはたいて買った誕生日用のコサージュを食べられたため、腹を立ててビッグフットに怒鳴り散らす。するとビッグフットが困った様子で絶叫したため、一家は慌てて家の外へ出た。4人が窓から様子を見ていると、ビッグフットはナンシーの観葉植物も食べた。鹿の頭部の剥製を見つけたビッグフットは、壁を破壊した。ビッグフットが階段を潰しながら2階へ向かうと、ジョージは憤慨した。彼は梯子で2階へ上がり、射殺しようとする。しかしビッグフットの寂しげな表情を見た彼は、引き金を引くことが出来なかった。
ビッグフットは庭に飛び降りて、ミンクのストールを土に埋める。さらに彼は、鹿の剥製も持ち出して埋める。ジョージは隙を見て警察に電話を掛け、ビッグフットが家で暴れていると告げる。しかしマンシーニ巡査は全く信じず、軽く笑って応対した。隣人のアイリーン・モフィットが預けておいた愛犬を返しに来たので、一家は慌てる。アーニーは「地下室へ行こう」とビッグフットの手を取り、ジョージとナンシーは慌ててカーテンを閉めた。
ジョージたちはビッグフットを地下室へ隠れさせ、玄関のドアを開けた。アイリーンが異臭に気付くと、ジョージたちは適当に取り繕った。ビッグフットが地下室で暴れて腕を突き出すが、ジョージたちは何とか誤魔化してアイリーンを帰らせた。ジョージは仕事を休み、子供たちも学校を休ませることにした。ビッグフットが地下室から出て来ると、犬が駆け寄った。ナンシーがペットだと説明して犬を優しく撫でると、ビッグフットも真似をした。
ビッグフットが怪我をしていると気付いたナンシーは、薬を塗って応急手当てを施した。今後の対応について、ジョージは「家で飼おう。間違いなく金になる。いい暮らしが出来る」とナンシーに持ち掛けた。ジャックはビッグフット研究者のウォレス・ライトウッド博士を訪ね、手に入れた毛を見せて買い取りを求めた。しかしウォレスはビッグフットの毛であることを信じず、「今までお前を信じて来たが、もう目が覚めた」と言う。ジャックは腹を立て、「今に分かるさ」と捨て台詞を吐いて去った。
冷凍庫の食品が全て溶けてしまったので、ナンシーとセーラは買い物に出た。2人が帰宅すると、ジョージは「見せたい物がある」と言う。彼はアーニーも含めた3人をリビングに呼び、ビッグフットに角砂糖を見せて「座れ」の指示に従う芸を覚えさせたことを披露する。しかしビッグフットが思い切り着地したため、ソファーもテーブルも椅子も壊れてしまった。ナンシーは激怒し、ジョージに「このままじゃ家がメチャクチャになる。私たちの生活に彼は合わないのよ」と告げる。
ビッグフットはテレビのコメディードラマを見ながら大笑いするが、ブルーチーズは嫌いなので壁に投げ付けた。ジョージはナンシーに、「分かった。森に返そう。だが簡単じゃないだろう。ここが気に入ってる」と話す。夜、ジョージはビッグフットをハンバーガーをおびき寄せ、車に乗せる。別れを寂しがったアーニーが泣き出したので、ジョージは「ママが正しいんだよ。こうするしかないんだ」と説得する。その時、ジョージは初めてビッグフットのことを「ハリー」という名前で呼んだ。
その間にハリーが姿を消してしまったので、ジョージは車で町へ捜索に向かうが発見できなかった。ハリーは就寝していた中年夫婦の家に上がり込み、冷蔵庫を漁る。物音に気付いた妻は拳銃を握って台所へ行き、ハリーを見て気絶した。翌朝、テレビ番組を見ていたジョージとナンシーは、女性がビッグフットを目撃した出来事が新聞で報じられていることを知った。女性の証言は誰にも信用されていなかったが、ジョージは「調べなきゃ」と言う。ナンシーは「そんなことより仕事に行って」と告げ、彼を送り出した。
ジャックは車両管理局へ行き、嘘をついてジョージの住所を調べてもらう。彼は森林警備隊を詐称してヘンダスン家を訪ね、ナンシーに国道で死んだ動物のことを質問した。ナンシーは「何か動物をはねましたが、逃げたので分かりません」と言い、ジャックを追い返した。ジャックは銃砲店へ行き、店員がジョージとは知らずに狩猟用の銃弾を購入した。ジョージが働いているのは、父であるシニアの店だった。シニアはジョージに、「あいつは森に何か出たと聞けば、すぐに駆け付けるハンターだ」と教えた。
昼休みに図書館へ赴いたジョージは、ビッグフットに関する本を何冊も借りた。帰宅して本を読んだジョージは、ジャックの写真が載っているのを見つけた。ナンシーは昼間に来た男だと気付き、ジャックが嘘をついていたと悟る。次の日、ジョージは車を走らせ、ウォレスが営むビッグフット資料館へ行く。館長がウォレスとは知らず、ジョージは伝言を頼む。家族としてビッグフットと一緒に暮らせる可能性についてジョージが口にすると、ウォレスは「不可能だよ。所詮はケダモノだ」と告げた。
その夜、ハリーは民家の敷地に侵入し、目撃した住人が悲鳴を上げたので逃げ出した。この事件が報じられても、ビッグフットの存在を信じる住人は少なかった。ジョージは父から、「ビッグフットの凶暴な絵を描き、出現したという場所に印を付けて店を捜索本部にする」と言われる。「そんなことしたら、みんなが銃を持って捜し回るんじゃないかな」とジョージが意見すると、シニアは「構わないだろう。どうせいないんだから」と軽く告げた。
銃砲店には大勢の住民が押し寄せて、銃と弾丸を購入した。苛立つジョージだが、1人の男性客が「あいつが家の近くに現れたんだ」と言うので住所を聞いた。彼は仕事を放り出し、現場へ向かった。すると大勢のマスコミと警官たちが集まり、目撃者から話を聞いていた。目撃者がビッグフットの凶暴性を強調したので、ジョージは「あいつは菜食だぞ。彼から見れば、アンタが恐ろしかったんだ」と抗議する。マスコミから次々に質問を投げ掛けられたジョージは、慌てて走り去った。夜の町で警官隊がビッグフット包囲網を敷く中、ジョージは必死でハリーを捜索する。ジャックはゴミ収集車に隠れていたハリーと遭遇し、叩き付けられて失神した。銃声を聞いたジョージは現場へ駆け付け、ハリーを発見した。彼はハリーを乗せたままゴミ収集車を運転し、警官隊から逃亡する…。

監督はウィリアム・ディア、脚本はウィリアム・ディア&ウィリアム・E・マーティン&エズラ・D・ラパポート、製作はウィリアム・ディア&リチャード・ヴェイン、撮影はアレン・ダヴィオー、美術はジェームズ・ビッセル、編集はドン・キャンバーン、「ハリー」デザインはリック・ベイカー、音楽はブルース・ブロートン。
出演はジョン・リスゴー、メリンダ・ディロン、ドン・アメチー、ケヴィン・ピーター・ホール、レイニー・カザン、デヴィッド・スーシェ、マーガレット・ラングリック、ジョシュア・ルドイ、M・エメット・ウォルシュ、ジョン・F・ブルーム、ビル・オンティヴェロス、デヴィッド・リチャード、ジャクリーン・モスコウ、ローラ・ケニー、リチャード・E・アーノルド、ショーン・モーガン、ニック・フリン、デヴィッド・マッキンタイア、ペギー・プラット、オーレン・アンダーソン、ウィリアム・ディアー、ローリー・オブライエン、マイケル・ロギンス、ジェームズ・キング、ナサニエル・エリス他。


スティーヴン・スピルバーグが設立したアンブリン・エンターテインメントが製作した映画。
『タイムライダー』のウィリアム・ディアが監督&共同脚本を務めている。
ジョージをジョン・リスゴー、ナンシーをメリンダ・ディロン、ウォレスをドン・アメチー、アイリーンをレイニー・カザン、ジャックをデヴィッド・スーシェ、セーラをマーガレット・ラングリック、アーニーをジョシュア・ルドイ、シニアをM・エメット・ウォルシュ、フィートをジョン・F・ブルームが演じている。
ハリーのスーツアクターを務めたのは、プレデターも担当したケヴィン・ピーター・ホール。

序盤、ヘンダスン一家はビッグフットを殺したと思い込み、車の屋根に積んで自宅へ運ぼうとする。でも途中で動き出したのでブレーキを掛けるが、今度こそ死んでいたので再び車に積んで運ぶ。
この手順、まるで無駄なだけだよね。
「死んでいたと思ったら動き出した」という展開を描くのなら、その時点で「実は生きていた」ってことで話を進めるべきでしょ。
「動き出したけど、車から滑り落ちたら、また死んだ」という描写には、何の意味も無いでしょ。

っていうかさ、一度じゃなくて二度もビッグフットを殺しておいて、それに対する罪悪感が皆無に等しいってのは、大いに引っ掛かるぞ。
一応はナンシーが「これで絶滅したら」と気にしているけど、それぐらいだ。
ジョージが「ビッグフットを使えば稼げるかも」と銭勘定に走るのは、「ファミリーの父親」としては分かりやすいキャラ設定なので、まだ余裕で許容範囲だ。セーラがビッグフットへの嫌悪感を示しているのも、まだ分かる。
でもアーニーが「撃っちゃえ」などと好戦的な態度バリバリなのは、設定としてどうなのかと。

ファミリー映画における家族の最年少キャラってのは大抵の場合、「新しく出会った未知の生物に最初から友好的な態度を示し、周囲から守ろうとする」という設定だと相場が決まっている。
ベタと言えばベタなのかもしれないけど、それが正解だから大抵の映画で採用されているのだ。
そこを変に捻って異なる設定にしても、メリットがまるで見えない。
よっぽど上手くやればキャラの魅力や物語の面白さに貢献するのかもしれないけど、この映画だと単なる失敗に終わっている。

生きていたビッグフットはジョージを見て咆哮したり、冷蔵庫を倒したりするような奴なので、それを見た上で「最初から有効的な態度を見せる」ってのは、ちょっと難しいだろう。
っていうか、それでも「優しく話し掛けて友達になろうとする」という動かし方をしたら、もはやキテレツな奴でしかないわな。
まあアーニーを「風変わりな少年」として描いても、それはそれで問題なく成立するけどね。
ただ、ビッグフットを荒っぽい暴れん坊キャラとして登場させたのなら、最初から友好的な態度を取らなくても別に構わない。でも、車でひいたビッグフットを見て「撃ち殺せ」と父親に求めるのは、やり過ぎでしょ。

アーニーはビッグフットを撃ち殺すよう要求していたのに、生きているのを知ると「生きていて良かったね」とジョージに言う。どういう感覚なのか、サッパリ分からない。
ジョージが「あんなケダモノ」と言うと「ケダモノなんかじゃないよ」とも言うけど、それも違和感が強い。こいつのキャラ設定は、どうなっているのか。
「ビッグフットに親愛の情を示す少年」という設定にしてあるのなら、なぜ最初に「撃っちゃえ」などと言わせたのか。
導入部の好戦的な態度さえ無ければ、まるで問題は無かったはずなのに。 好奇心旺盛な少年ということにでもしておけば良かったのよ。

ビッグフットが屋内で暴れると、ヘンダスン一家は怯えて逃げ回る。しかしアイリーンが訪ねて来るシーンでは、ジョージがビッグフットと近距離で動きを制しようとするし、アーニーは手を取って地下室へ連れて行く。
いつの間にか、すっかりビッグフットに慣れて、まるで怖がらなくなっているのだ。
さっきまで咆哮したり暴れたりするビッグフットを怖がって逃げ回っていたのに、その変貌ぶりは何なのかと。
そこは「最初は怯える、ビッグフットが自分たちに危害を加えるつもりはないと悟り、警戒心を解いて接するようになる」という手順を完全にスッ飛ばしているのよ。

今後の対応について一家で相談する時、ジョージは「家で飼おう。間違いなく金になる。いい暮らしが出来る」と言う。
だけど、そんな風に金儲けのことばかり考えるキャラとして彼を動かす時間帯は、とっくに終了しているはずでしょ。
ビッグフットを射殺しようとした時、寂しげな表情を見た彼は引き金を引かなかった。その時点で、もう「ビッグフットは金儲けの道具」という意識は消え去っていなきゃダメなのよ。
「死んでいようが生きていようが、どっちにしろ金儲けの道具」としてビッグフットを見るキャラにしておくのなら、そこまでのジョージの動かし方を間違えていると言わざるを得ない。

ジョージはテレビ番組に出演してビッグフットで金儲けするために、芸まで教え込む。だが、そうまでしておいて、ナンシーに諭されると簡単に「分かった。森に返そう」と言い出す。
どういう思考回路をしているのか、まるで理解できないよ。
本気でビッグフットを使った金儲けを目論んでいたのなら、あっさりと諦めて森へ返すなんてことは絶対に言い出さないでしょ。
ここも「金儲け主義者が考えを改めて森へ返そうとする」という経緯の描写を、雑にスッ飛ばしているのよ。

っていうかさ、これってホントなら「一家はビッグフットと一緒に暮らすが、マスコミなり政府なりが嗅ぎ付けたので、見世物にされたり実験材料にされたりすることを避けるため、森へ返すことにした」みたいな展開を用意すべきじゃないかと。
前半の内に「森へ返そうとする」ってのは、構成として淡白になりすぎちゃってないか。
それだと、一家とビッグフットの交流が短くて薄すぎるでしょ。
しかも森へ返すと決めた時に初めて「ハリー」という名前が付くって、タイミングがあまりにも遅すぎるし。

ビッグフットは前半の内にヘンダスン一家の前から姿を消し、再会しないまま話が進んでいく。だから「ジョージがハリーのことを気にしながら生活する」という様子と、「ハリーが町の中で色んなトコに出没して人々を驚かせる」という様子が、並行して描かれるわけだ。
だけど、それだと「ハリーとヘンダスン一家が交流し、どんどん絆が深まっていく」という様子は描けないわけで。
「既にハリーへの強い愛着を覚えており、彼を心配している」という状況から「ハリーが姿を消した」という展開に移行するなら、それは構わないのよ。
だけど、まだハリーと出会って間もない状態だったわけで、その段階で失踪させるのは早いでしょ。

ビッグフットが最初から元気一杯なんだけど、これはどうなのかねえ。
これが「怪我を負っていて回復まで時間が掛かる」ってことなら、それまでは一家が面倒を見なきゃいけなくなるわけで。それなら、元気になるまでの時間を使って、一家とビッグフットの交流を描くことが出来る。
そして元気一杯じゃなければ、怪力による破壊活動も少しは抑制できる。でも基本的には怪力なので、「アーニーはいつまでも一緒に暮らしたいと考えるが、ビッグフットの怪力による破壊を見たジョージやナンシーは無理だと感じる」ということも表現できる。
そんな一家とビッグフットの生活と並行して、ジャックがビッグフットを捜索する様子を描けばいい。
そして、「ジャックがビッグフットの居場所を突き止めて捕獲しようとするので、一家は森へ逃がすことに」という流れにでもすれば良かったんじゃないかと。

(観賞日:2019年11月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会