『ハッピー フィート2 踊るペンギンレスキュー隊』:2011、オーストラリア

エンペラー帝国では、皇帝ペンギンの群れが楽しく歌い踊っていた。グローリアは素晴らしい歌声を響かせ、マンブルは得意のタップを披露した。みんなが一緒になって踊る中、マンブルとグローリアの息子であるエリックだけは参加していなかった。マンブルがエリックに声を掛けると、エリックの親友であるアティカスとボーは、「エリックは踊る意味が分からない」と教えた。とにかく踊ってみるようマンブルから促されたエリックは、体を動かしてみた。しかし上手く踊れずに転倒し、群れに笑われた。
マンブルははエリックを励まそうとするが、言葉の選択を誤って逆に落ち込ませてしまった。エリックは氷の穴に閉じ篭もってしまい、出て来ようとしなかった。一方、アデリーペンギンのラモンも皇帝ペンギンの群れから馬鹿にされ、アデリー帝国へ変えることにした。マンブルが再び穴を覗くと、エリックはアティカスとボーを連れて姿を消していた。マンブルは家出してラモンに付いて行ったのだと確信し、後を追うことにした。
エンペラー帝国から遠く離れた氷の大陸で、氷山の決壊が発生した。それに伴い、オキアミの群れが一斉に動き出した。しかしウィルは自分がオンリーワンでありたいと考え、群れを離れることにした。「いつか世界の外に辿り着ける」と言う彼に、友達のビルは同行した。ラモンは海に飛び込もうとするが、その勇気が出なかった。そこにエリックたちが現れ、アデリーランドへ連れて行ってほしいと頼んだ。ラモンは彼らに、自分を海へ突き落すよう指示した。
ウィルとビルが群れから離れて泳いでいると、向こうから魚の群れがやって来た。ウィルとビルは、海に落とされたラモンの口内に入った。ラモンがウィルたちを吐き出した直後、そこにサメが迫って来た。慌てて海から飛び出したラモンは、エリックたちに向かって「俺を連れて行け」と告げた。ウィルとビルはオキアミの群れがサメに食べられるのを見て、自分たちが肉食生物のエサなのだと悟った。
ラモンがエリックたちを連れてアデリーランドへ戻ると、空を飛ぶことの出来るマイティー・スヴェンというペンギンが仲間たちを魅了していた。嫉妬心を抱いたラモンがスヴェンの話を邪魔すると、ラブレイスの指示を受けた仲間たちが彼を取り押さえた。スヴェンは家が無くなったこと、自分が空飛ぶペンギンの唯一の生き残りであること、疲れ果てて倒れているところを人間に救われたことを話した。
ラブレイスは群れに向かって、重油まみれで動けなくなっていた時、人間のタンカーに救助されたことを語った。そのタンカーで飼われていたのがスヴェンだった。しかし船員たちがチキンを食べている様子を目にしたスヴェンは、慌てて逃げ出した。スヴェンを師匠として崇拝するようになっていたラブレイスも、後を追った。スヴェンがアデリーランドに辿り着いた途端、足元の氷が割れて緑の大地が出現した。それをスヴェンのパワーだと感じたアデリーペンギンたちは、すっかり彼の信奉者になったのだった。
マンブルは足跡を辿ってアデリーランドへ赴き、エリックを見つけた。エリックに呼び掛けた彼は、群れに取り押さえられた。ラモンはカルメンというメスのペンギンに恋心を抱くが、冷たく無視された。エリックは空を飛べるスヴェンに魅了され、マンブルから「一緒に帰ろう」と促されても嫌がった。スヴェンの説得を受けたエリックは、「僕もいつか飛べる?」と尋ねた。スヴェンに「望みがあれば、ひたすら願え。ひたすら願えば、それは叶う」と言われ、エリックは感銘を受けた。
マンブルはエンペラー帝国へ戻る途中、「嫌なことがあっても、すぐ逃げ出すのは良くない」とエリックを穏やかに諭す。だが、エリックは軽く受け流した。マンブルたちは何かがどこかに激突した衝撃を感じるが、それが氷山の衝突とは気付かなかった。来た時には無かった地形が生じていたので、マンブルは迂回しようとする。しかしエリックたちが勝手に足を踏み入れたので、マンブルもそちらのルートを行くことにした。
マンブルたちが細い道を渡ろうとすると、ゾウアザラシのブライアンが向こうから来ていた。マンブルは下がって欲しいと頼むが、拒絶されてしまう。その時、道が崩れてしまい、ブライアンは氷の裂け目に転落してしまった。ブライアンはマンブルに、連れていた2人の子供を母親の元へ届けて欲しいと頼む。マンブルはブライアンを助けるため、海に潜った。しかし氷の壁が厚く、ブライアンを助け出すことが出来ない。そこで彼はヒョウアザラシを挑発して追い掛けさせ、壁に激突させた。壁が割れて、ブライアンは脱出に成功した。彼はマンブルに礼を述べ、「借りは返す。いつでも、どこでも」と告げた。
マンブルたちがエンペラー帝国に戻ると、四方を氷の壁に囲まれていた。氷山の倒壊と衝突の影響を受けて、地形が大きく変化したのだ。そのため、マンブルたちはエンペラー帝国に戻れず、仲間たちは外へ出ることが出来なくなっていた。マンブルがアデリーペンギンたちに助けを求めようと考えると、ボーが「近道を知ってる」と自分だけでアデリーランドに行こうとする。マンブルは制止するが、ボーの母親であるミス・ヴァイオラが「全開で行け」と促した。
マンブルはエリックとアティカスを引き連れ、仲間たちのために魚を獲りに行く。長老のノアは調査隊を組織して出口を見つけようとするが、周囲は全て氷に塞がれていた。エリックは戻る途中で転倒し、魚の上に乗ったまま滑走してしまう。マンブルが慌てて「飛び降りろ」と指示する中、滑った勢いで弾んだエリックが羽をバタバタすると、一瞬だけ宙に浮いた。エリックは「飛んだんだよ」と興奮するが、マンブルは冷静に「ペンギンは空を飛べない」と教えた。
エリックが「でもスヴェンは飛んだよ」と反論すると、マンブルは「スヴェンがどんな種類か知らないが、皇帝ペンギンは飛べない」と言う。エリックは「みんなが飛べるようになったら、抜け出せるでしょ」と語り、「望みがあれば、ひたすら願え。ひたすら願えば、それは叶う」というスヴェンの言葉を口にした。マンブルは「夢みたいなことを言うなよ。みんな出られないんだ。無駄な希望は、かえって迷惑なんだよ」と述べた。
マンブルとエリックが大きな声で言い合っているので、皇帝ペンギンの群れに聞こえていた。群れが不安に包まれて騒然となったので、グローリアはマンブルに呼び掛けて魚を獲りに行くよう指示した。彼女はエリックを落ち着かせるため、歌を歌った。マンブルが獲った魚を運んでいると、トウゾクカモメのスクーアたちが襲い掛かった。トウゾクカモメはエンペラー帝国へ向かい、皇帝ペンギンの群れを襲撃する。だが、そこへボーがアデリーペンギンたちを連れて戻ったので、トウゾクカモメはひとまず退却した。
スヴェンの指示を受け、アデリーペンギンたちは魚を獲ってエンペラー帝国へ運んだ。海の向こうからタンカーが来たのを見つけたアデリーペンギンたちは、スヴェンに「エイリアン(人間)に手伝うよう頼んでほしい」と言う。人間を怖がっているスヴェンは「舌を痛めて上手く話せない」と嘘をつき、その場を離れた。ラブレイスは踊りで危機を伝え、人間たちを呼び寄せた。エンペラー帝国へ赴いた人間たちは、氷を削って出口を作り始めた。しかし猛吹雪に見舞われたため、避難せざるを得なかった。海が凍り付いて人間たちの再訪は不可能になり、アデリーペンギンたちも飢え死にを避けるために故郷へ帰ろうとする。スヴェンはエリックたちから「飛び方を教えて。そうすれば、みんな脱出できる」と頼まれ、自分がペンギンではなく鳥だと打ち明けた…。

監督はジョージ・ミラー、共同監督はデヴィッド・ピアーズ&ゲイリー・エック、脚本はジョージ・ミラー&ゲイリー・エック&ウォーレン・コールマン&ポール・リヴィングストン、製作はダグ・ミッチェル&ジョージ・ミラー&ビル・ミラー、共同製作はマーティン・ウッド、製作総指揮はクリス・デファリア&フィリップ・ハーンショウ&グレアム・バーク&ブルース・バーマン、アニメーション監督はロブ・コールマン、編集はクリスチャン・ガザル、劇作家はマーガレット・シクセル、美術はデヴィッド・ネルソン、cinematographer-cameraはデヴィッド・ピアーズ、振付はウェイド・ロブソン&デイン・ペリー&ケイト・ウォーマルド、マンブルのダンス&振付はセヴィアン・グローヴァー、音楽はジョン・パウエル。
声の出演はイライジャ・ウッド、ロビン・ウィリアムズ、ハンク・アザリア、アリシア・ムーア(ピンク)、ブラッド・ピット、マット・デイモン、リチャード・カーター、コモン、ソフィア・ベルガラ、マグダ・ズバンスキー、ヒューゴ・ウィーヴィング、アンソニー・ラパーリア、カルロス・アラズラキ、ロンバルド・ボイアー、ジェフ・ガルシア、ジョニー・サンチェス三世、ベンジャミン・“リル=ピーナット”・フローレスJr.、エイヴァ・エイカーズ、メイブ・キャンベル、リー・ぺりー、ダニー・マン他。


2006年の映画『ハッピー フィート』の続編。
マンブルの声を担当するイライジャ・ウッド、ラモン&ラヴレイスのロビン・ウィリアムズ、ミス・ヴァイオラのマグダ・ズバンスキー、ノアのヒューゴ・ウィーヴィング、アルファ・スクーアのアンソニー・ラパーリアといった面々は、前作からの続投。
グローリアの声は前作で担当したブリタニー・マーフィーが死去したため、ピンクに交代している。シーモアの声優も、前作のファット・ジョーからコモンに交代。
他に、スヴェンの声をハンク・アザリア、ウィルをブラッド・ピット、ビルをマット・デイモン、ブライアンをリチャード・カーター、カルメンをソフィア・ベルガラが担当している。

エリックが家出をする前に、彼がエンペラー帝国で疎外感や居場所の無さを感じている、あるいは劣等感に苛まれているというアピールが充分ではない。
冒頭にミュージカル・シーンがあって、そこでマンブルから踊るように促されたエリックが上手く踊れずに落ち込み、その直後に家出するのだが、それだとタイミングとして早いと感じる。あと1つか2つぐらい、エリックがバカにされるとか、失敗するとか、そういう描写が欲しい。
上手く踊れないという1つのシーンだけで家出に繋げていくのであれば、その後にエリックが「どうして僕は上手く踊れないんだろう」と自問自答するとか、アティカスとボーに「なぜペンギンは踊れなきゃいけないんだろうか」と問い掛けて会話を交わすとか、そういう描写を入れることで、せめて彼の感情を表現しておくべきだ。
エリックが穴に入って沈み込んでいる様子だけでは、表現が足りない。

エリックが穴に入って塞ぎ込むシーンの後、エンペラー帝国から離れた場所で氷山の決壊が発生し、鳥の群れが飛び立ったりオキアミの群れが一斉に泳ぎ出したりする様子が描かれる。
そこは話の流れを妨げていると感じるが、後の展開を考えると「南極の氷が溶け始めている」ということを描写しておく必要はあるし、場面転換のための捨てゴマ的なモノだと捉えれば、まだ受け入れることは出来る。
ただし、いなくなったエリックを心配してマンブルが捜索に出た後、次はエリックたちの様子を描くのがスムーズな進行なのに、ウィルとビルの様子を描くというのは上手くない。
その後もウィル&ビルが何度も登場するが、ものすごく邪魔だ。

エリックの家出には、アティカスとボーも同行している。
「友達が一人ぼっちじゃ可哀想だから」とか、「エリックに共感したから」とか、そういう気持ちで同行しているのかと思いきや、「スリルと冒険を求めてアデリーランドへ付いて行く」と言っている。
しかも、そんなアティカスたちに引きずられたのか、エリックまで楽しそうなのだ。
「エンペラー帝国には居場所が無い、あそこでは劣等生だ」ということで、そこから抜け出したいという気持ちで家出したのかと思ったら、違うのかよ。ただ冒険したかっただけなのかよ。

マンブルはアデリーランドから帰る途中、エリックに「嫌なことがあっても、すぐ逃げ出すのは良くないよ。まず自分で何とか出来ないか頑張ってみないと。それに、みんな違っていいんだ。自分に出来ることを見つけるのも仕事だよ。踊ったり飛んだりじゃなくても、その何かはお前だけのものだ」と話す。
エリックは聞き流しているが、それは物語のテーマに繋がる重要な言葉だ。
しかし、そのテーマ自体を、この映画が上手く表現できているとは思えない。

前作では「皇帝ペンギンは歌う種族であり、踊るなんて有り得ない」という設定が最初にあった。
そんな中で上手く歌えない代わりにタップが得意なマンブルが誕生する。彼は上手く歌えないせいで周囲から除け者にされるが、やがて「ダンスこそが自分を表現する形だ」と確信するようになる。最初は彼を白い目で見ていた仲間たちも、やがて受け入れるようになった。
そこには、本作品でマンブルが息子に語った「みんな違っていいんだ。自分に出来ることを見つけるのも仕事だ」というテーマの表現があった。

ところが、今回の皇帝ペンギンは、「皇帝ペンギンは踊るのが当たり前の種族であり、踊らないなんて有り得ない」という状態になっている。そして踊ることに疑問を抱くエリックは異端者扱いされ、踊りが下手で嘲笑される。
歌が踊りに替わっただけで、すっかり元の状態に戻ってしまっているのだ。
前作で最終的にはマンブルを受け入れた時と同じノアが相変わらず長老を務めているのに、なぜ「自分たちと違うからと言って、笑い者にしてはいけない」と注意しないのか。
冒頭で全員が一緒になって踊るのは、ミュージカル映画だから、そりゃあ仕方が無い。そこで「みんなが同じである必要は無いから」ってことでバラバラに踊ったり、踊らない奴が大勢いたりしたら、それはそれでミュージカル映画としての質が落ちてしまうからね。
だから全員が同じ振付で踊るのはいいにしても、踊らないエリックから「なぜ踊るのか」と問われたマンブルが「踊ってみた時に分かるんだよ。ほら、やってごらん」と促すのは、ちょっと違うんじゃないかと。

マンブルは「誰も笑わないから」と言ってるけど、エリックが踊って転倒すると、みんな笑っている(まあ、そりゃ笑うわな)。
つまり、マンブルは踊りたくない息子に踊りを無理強いして、みんなの前で恥をかかせたってことになるのだ。
自分が上手く歌えず、そのせいで笑い者になった子供時代を忘れたのか。
後になって「嫌なことがあっても、すぐ逃げ出すのは良くないよ。まず自分で何とか出来ないか頑張ってみないと」と言うけど、それは分かるよ。
だけど、逃げ出したくなるような状況に追いやったのはアンタだからね。
「みんな違っていいんだ。自分に出来ることを見つけるのも仕事だよ」と言うけど、踊りを嫌がっていたエリックに群れの前で踊らせて笑い者にしたのはアンタだからね。

マンブルとエリックの言い争いを群れが聞いてザワザワし始めた時、グローリアはマンブルを遠ざけ、エリックを落ち着かせるために歌い始める。
だけど、そこはミュージカル・シーンに入るタイミングとしても違和感があるし、「愛が繋ぐよ、光の道」という歌詞の内容も状況に全く合っていない。
その辺りで歌っておかないと次のミュージカル・シーンまでに随分と間隔が開いてしまうという問題はあるんだけど、正直に言って「歌ってる場合じゃねえだろ」と感じるし。

マンブルはアデリーランドから変える途中にブライアンを救出するが、そういうエピソードは本来なら、「エリックが父親の勇気や行動力に感動したり、それで父親を見直したりする」という意味合いで使うべきだろう。
しかし、そもそもエリックはマンブルに勇気や行動力が無いなんて思っていない。それに、マンブルに幻滅したり反発したりもしていない。
だから、マンブルがブライアンを救出する様子をエリックが目撃していることの意味が、ものすごく弱くなっている。
そこで「凄いや」と父親の行動に興奮した後で言い争いになっているというのも、構成として上手くないし。

っていうか、そもそも「エリックが父親の勇気や行動力に感動する」というエピソードを入れるタイミングとしては、かなり早いんだよね。
だから、仮にそういう意味合いで使われていたとしても、「そういうのは後半でやるべきエピソードじゃないのか」とは感じただろう。
そういう諸々を考えた場合、マンブルがブライアンを救助するエピソードは、彼がアデリーランドへ向かう途中で入れた方が、まだマシじゃないかなと思う。エリックが目撃している意味が無いんだから、見ていない場所で活躍させた方がいいかなと。
で、かなり後になってブライアンが助っ人に駆け付け、そこで初めてエリックが父親の行動を知って見直す、という展開にでもすればいいわけだ。

エリックは空飛ぶペンギンのスヴェンと出会い、強い憧れを抱く。
だったら「エリックも真似をして空を飛ぼうとする」というところで物語を作って行けばいいものを、「マンブルが地形の変化で閉じ込められた仲間たちを救おうとする」という話に移っていく。
それは、ピントがボヤけていると感じる。そもそも、「エリックとマンブル、どっちを主役にするのか」という時点でボヤケているし。
「スヴェンに憧れたエリックは空を飛ぼうとするが、ペンギンが空を飛べないと分かっているマンブルが諌め、それにエリックが反発してギクシャクしてしまう。だが、何かの出来事でマンブルが活躍し、エリックが父親を見直して仲直り」という親子の絆のドラマにでもしておけばいいものを、また前作に引き続いて環境問題を持ち込み、そっち方面で話を膨らませている。
これが失敗にしか思えない。

「ペンギンも空を飛べる」というのを「望めば願いは叶う」と拡大解釈し、「だから氷の壁からも脱出できる」という話にしているのだが、その論法でシナリオを作ったことにより、空飛ぶペンギンの存在意義が弱くなっている。
空飛ぶペンギンを登場させるのであれば、その「ペンギンが空を飛ぶ」という部分を使って物語を作るべきだ。
「氷の壁に閉じ込められた仲間たちをマンブルが助けようとする」という話にするのなら、逆に空飛ぶペンギンなんて登場させない方がいい。

マンブルはブライアンの元へ行き、群れを引き連れて手伝いに来て欲しいと頼む。しかし仲間のウェインと口喧嘩の最中だったブライアンは、マンブルを威嚇して追い払おうとする。だが、エリックが歌うと、ブライアンはゾウアザラシたちの気持ちが変化して協力に向かう。
どうやらエリックにとっての「自分に出来ること」は歌うことだった、という形で着地させたいらしい。
だけど、そもそも皇帝ペンギンって前作で「歌う種族」と定義されていたわけだから、歌うのは当たり前のことでしょ。
それって「エリックにしか出来ないこと」ではない。それまでエリックに歌う機会が訪れていなかったことの方が不自然だし。

このシリーズでは、ダンスや音楽を「仲間の危機を救う道具」「問題を解決に導く道具」として位置付けている。
ただ、そういう使い方をしたいのであれば、そこに無理が生じないようなシナリオを用意すべきだ。そこを雑に考えちゃってるから、すげえ不自然なことになっている。
ラブレイスがタンカーに向かって踊り出すと、それを見つけた船員がアンプにギターを繋いで演奏するって、なんだよ、そりゃ。
しかも、そのラブレイスの踊りで船員たちはペンギンの危機を悟り、救助に駆け付けるのだ。
それは無理がありすぎるだろ。そもそも、そんな風に人間のキャラが積極的に物語へ介入してくること自体にも違和感が強いし。それは世界観を壊していると感じる。

それよりも無理を感じるシーンが、終盤に待ち受けている。
スヴェンがペンギンではなく鳥だと打ち明け、「頑張っても空は飛べない。だから脱出できない」と考えた皇帝ペンギンの群れが絶望感に襲われる中で、マンブルが唐突にタップを踏み始める。
「みんな、これを試してみて」と促すと、周囲のペンギンたちもタップを踏む。
いやいや、なんでだよ。
それで氷の壁を壊そうってことなんだけど、それはダンスの本来の使い道じゃないし。
壁を壊すのが目的なら、タップじゃなくてもいいわけだからね。

(観賞日:2013年12月29日)

 

*ポンコツ映画愛護協会