『ハロウィン6/最後の戦い』:1995、アメリカ

臨月を迎えたジェイミーはスミスズ・グローヴ診療所の地下室へ連行され、子供を産み落とした。そこへ男が現れ、産まれたばかりの男児を連れ去った。ジェイミーに同情した助産婦のメアリーは、赤ん坊を密かに奪還した。そしてジェィミーに赤ん坊を引き渡して地下室から連れ出し、逃げるよう促した。ジェイミーと別れたメアリーは、マイケルに殺された。マイケルに追われたジェイミーは、療養所を脱出してトラックを見つけた。外にいたトラック運転手がマイケルに殺される中、ジェイミーはトラックを発進させた。
同じ夜、ダニー・ストロード少年はナイフを持った男に「殺してやる」と脅される悪夢を見て目を覚ました。母親のカーラが駆け付け、ダニーを抱き締めて落ち着かせた。カーラは自分の寝室に戻り、ラジオを聴く。DJのバリーはハロウィンの特別番組を放送し、マイケル・マイヤーズをテーマに取り上げてリスナーからの電話を受けている。窓の外に目をやったカーラは、向かいの家に下宿しているトミー・ドイル青年が見張っているのに気付いてカーテンを閉めた。
トミーはバリーの番組に電話で出演し、8歳の時にマイケルを見たことを話す。トミーは「マイケルの仕事は終わっていない。すぐに戻ってくる。だけど、今度は僕がいる」と述べた。一方、精神科医を引退したルーミスの元を、スミスズ・グローヴ診療所の院長である旧友のテレンス・ウィンが訪ねて来た。ウィンは診療所への復帰を持ち掛けるが、ルーミスは「もう仕事は終わりだ」と断った。
バス停留所に辿り着いたジェイミーは緊急センターに電話しようとするが、回線が混雑していて繋がらなかった。停留所ではラジオ番組が放送されており、バリーが電話番号を口にしていた。ジェイミーは番組に電話出演し、「マイケルが来るわ。助けて、ルーミス博士」と呼び掛けた。バリーは頭の変な女が掛けて来たと思い込むが、ルーミスとトミーの受け止め方は違った。マイケルが停留所に現れたので、ジェイミーはトラックで逃げ出す。マイケルは車で追跡し、ジェイミーを納屋に追い詰めて惨殺した。死の間際、ジェイミーは「赤ん坊は渡さないわ」と口にした。マイケルはトラックに戻るが、そこに赤ん坊の姿は無かった。
翌朝、売りに出されているストロード邸には、近所の子供たちがマイケルの立て看板を飾る悪戯を仕掛けていた。カーラの父であるジョンは激しい苛立ちを示し、立て看板を壊した。ジョンはローリーの義父メイソンの弟だった。ストロード家にはジョンと妻のデブラ、2人の娘であるカーラと弟のティム、カーラの息子であるダニーの5人が暮らしていた。シングルマザーで5年ぶりに実家へ戻って来たカーラに対して、ジョンは冷淡な態度を取った。暴力的なジョンがカーラを殴ると、ダニーは彼にナイフを向けた。
大学生のカーラは、ティムの恋人であるベスの車に乗せてもらう。トミーのことを尋ねると、ベスは「子供の時に何かあったらしいけど、害は無いわ」と告げた。下宿の大家であるブランケンシップ夫人は、かなり耳が遠いらしい。一方、ルーミスはウィンと共に療養所を訪れ、マイケルの検査記録や資料を確認しようとした。するとウィンの秘書であるドーンは、ジェイミーの死体がハドンフィールドで発見されたという連絡があったことを話した。
トミーは昨夜のラジオ番組の録音テープをチェックし、ジェイミーがバス停留所から電話を掛けたのだと見抜いた。バス停留所を調べた彼は血痕を発見し、それを辿ってトイレへ行く。するとトイレのボックスにはジェイミーの赤ん坊が入れられていた。トミーは腹部にルーン文字の刻まれた赤ん坊をバス停留所から連れ出した。一方、ルーミスはウィンと共に、ジェイミーの死体が発見された現場へ赴いた。納屋に刻まれたルーン文字を目にしたルーミスは、マイケルが戻った来たことを確信した。
大学で試験用のノートを落としたカーラは、その中にダニーが悪夢の内容を描いた絵が混ざっているのに気付いた。それは「Thorn(棘)」と書かれた黒い塊と、刺されて血を流す家族4人の絵だった。トミーは病院を訪れ、「赤ん坊が病気だ。医者を呼んでくれ」と看護婦に頼んだ。ルーミスを見つけたトミーは声を掛け、「マイケルが帰って来た」と言う。ルーミスが「ジェイミーが最後の血縁だ」と言うと、トミーは「ローリーを養女にした家族の親戚が、マイケルの生家に住んでいます」と指摘した。看護婦の連絡で警備員がやって来たので、トミーは「今夜9時に大学のパーティーで」とルーミスに告げ、病院から逃げ出す。トミーは赤ん坊を下宿に連れ帰ってスティーヴンと名付け、「僕が守ってやる」と告げた。
デブラが一人で家にいるとルーミスが現れ、「貴方の家族を助けたい」と告げてマイケルのことを詳しく語った。ルーミスが去った後、デブラはジョンの仕事場に電話を掛けてルーミスから聞いたことを話す。しかしジョンは相手にせず、荒っぽく電話を切った。デブラは家を出る支度をするが、マイケルによって惨殺された。カーラが帰宅すると、ダニーの部屋には彼とトミーの姿があった。トミーは通りでダニーと出会い、家に上がったのだ。カーラが「母はどこ?」と訊くと、トミーは「来た時にはいなかった」と答えた。
トミーはカーラとダニーを下宿へ連れて行き、そこで身を隠すよう勧める。トミーは「窓から自分の家を観察するんだ。奴が来る」とカーラに告げた。ダニーは窓の外にマイケルの姿を目撃するが、瞬きしている間に姿は消えていた。トミーはカーラに、ルーン文字が儀式や魔術に用いられたことを説明する。「Thorn」は病気をもたらす悪魔の象徴と考えられ、ケルト人は恐れていた。ケルトの伝説では呪いから逃れるため、子供の血をサミーンの夜に捧げたという。サミーンの夜とは、今で言うハロウィンのことだ。納屋やスティーヴンの腹部に刻まれていたのは、その「Thorn」を意味するルーン文字だった。
トミーはカーラに、「赤ん坊を狙っている人間は、最後の生贄を求めている」と話す。彼は「絶対に家へは戻らないように」と釘を刺し、ルーミスと会うために外出する。大学のパーティーにはバリーが現れ、番組の生中継が始まった。帰宅したジョンは、マイケルに殺された。ベスはラジオ番組に出演し、「もうブギーマンなんて恐れる必要が無い」と強気に言い放つ。ティムがマイケルの生家に住んでいることを知ったバリーは、中継先の移動を決定した。
車に戻って電話を掛けたバリーは、マイケルに殺害された。トミーやルーミスたちは、バリーの死体を発見した。そんな騒ぎを知らないまま、ティムはベスを伴って家に戻っていた。ティムはシャワーを浴びている最中、マイケルに惨殺された。カーラが電話を掛けると、ベッドでティムを待っているベスが出た。トミー望遠レンズ付きカメラで部屋の様子を監察したカーラは、ティムを連れて早く逃げるよう指示する。だが、マイケルがベスの背後に出現し、彼女を惨殺した…。

監督はジョー・チャペル、脚本はダニエル・ファランズ、製作はポール・フリーマン、製作協力はマレク・アッカド、製作総指揮はムスタファ・アッカド、撮影はビリー・ディクソン、編集はランドルフ・K・ブリッカー、美術はブライアン・ライマン、衣装はアン・グレイ・ランバート、音楽はアラン・ハワース、テーマ曲はジョン・カーペンター。
主演はドナルド・プレザンス、共演はポール・スティーヴン・ラッド、マリアンヌ・ヘイガン、ミッチェル・ライアン、キム・ダービー、ブラッドフォード・イングリッシュ、キース・ボガート、マライア・オブライエン、レオ・ゲッター、J・C・ブランディー、デヴィン・ガードナー、スーザン・スウィフト、ジャニス・ニックレム、アラン・エチェヴェリア、ヒルダー・リューリクス、シェリ・ヒックス、トム・プロクター、ブライアン・モリス、リー・ジュー・チュー、ラクエル・アンダーソン、クリスティン・サマーズ、エリス・ドナルソン、A・マイケル・ラーナー他。


シリーズ第6作。
監督のジョー・チャペルは、これが1993年の『Thieves Quartet』に続く2本目の作品。
ルーミス役のドナルド・プレザンスはマイケル・マイヤーズの登場しない第3作を除き、1作目から出演している唯一のキャスト。しかし本作品の公開前に心不全で死去したため、これがシリーズ最後の出演となった。
他に、トミーをポール・スティーヴン・ラッド、カーラをマリアンヌ・ヘイガン、ウィンをミッチェル・ライアン、デブラをキム・ダービー、ジョンをブラッドフォード・イングリッシュ、ティムをキース・ボガート、べスをマライア・オブライエン、バリーをレオ・ゲッターが演じている。
トミーとウィンは1作目に登場していたキャラクターだが、その時とは俳優が違う。また、ジェイミーは4作目と5作目に登場していたキャラクターだが、ここも演者が異なる。

前作でジェイミーは「マイケルを感知する」という特殊能力を発揮していたが、今回はダニーが同じような超能力を披露する。
その時点で「そんなの要らない」と言いたくなるが、もっとヒドいのは、その能力が何の意味も持っていないってことだ。
その特殊能力によってマイケルの居場所を突き止めることが出来るとか、マイケルを追い詰めることが出来るとか、そういうことは全く無い。
ダニーが特殊能力を持っていなかったとしても、物語の展開には全く影響が無い。

「大学へ行くために家を出たティムに背後から近づく影があり、不安を煽るSEが流れるが、近付いたのはベス」とか、「デブラが何者かの気配を感じて不安を抱きながら室内を歩いていると、背後からルーミスがいきなり現れる」とか、そういう肩透かしの演出がチラホラとあるのだが、要らんなあ。
せめて「肩透かしと思ったら次の瞬間に本物のマイケルが出現」ということなら有りだけど、肩透かしだけで次に進んでいくのは無いわ。
ホラー映画では珍しくない演出だけど、それがプラスに作用している部分なんて皆無なのでね。

ここまで第4作から3本を使って「ジェイミーが狙われる」という物語を進めて来たわけだが、第7作『ハロウィンH20』が作られると、この3作は完全に「無かったこと」にされてしまう。
4作目の序盤に「ローリーは夫と共に事故死した」と説明されているのだが、そのローリーを「実は名前を変えて生きていた」ということで登場させるのだ。
そして、それに伴い、ジェイミーの存在は「そんな奴は最初からいなかった」ということになっている。
いわゆる「黒歴史」にされてしまうという、不憫な3作品なのであった。

そもそも、ジェイミーは『ハロウィンH20』で存在を抹消されてしまわなくても、本作品の時点で既に可哀想なヒロインである。
第4作のラストでは頭がイカれて育ての母をナイフで刺し、殺人未遂で小児クリニックに入っている第5作ではルーミスにマイケルをおびき寄せるエサとして利用される。
で、今回はカルト教団に6年間も拉致され、孕まされ、ようやく逃げ出したと思ったらマイケルに殺されてしまう。
もうさ、ここまで第4作から頑張って来たんだから、せめて殺されずに済ませてやれよ。

あまりにも可哀想なジェイミーを拉致したカルト教団のリーダーは、前作にもチラッと登場している。
前作のラストでは「謎の男が警察署を襲撃して保安官たちを全滅させ、マイケルを脱走させる」というシーンが描かれ、投げっ放しの状態で終わっていた。
その男が実はカルト教団のリーダーだったという答えを用意するのが、今回の第6作である。
そして、その男ってのが1作目でマイケルを預かっていたスミスズ・グローヴ療養所のウィン院長だったという設定だ。

1作目の登場人物であるウィンとトミーを登場させ、物語に深く関与させるってのは、悪くない方向性だと思う。
少なくとも、マイケルと何の関係も無い若者たちばかりが襲われた前作に比べれば、遥かに評価できる。
ただ、それなら、せめて「トミーがスティーヴを守ろうと奮闘し、マイケルが彼らの命を狙う」というところで物語を進めて行けばいいものを、ジョン・ストロードの一家を登場させて、そこをマイケルの標的に定めてしまう。

ジョンはローリーの義父の弟だから、ローリーとの血縁関係は無い。ジョンの家族が、ローリーの一家と親しくしていたわけでもない。
つまり、マイケルとの関係性は、トミーよりも薄いぐらいなのだ。
そんな相手を標的に据えても、それは無差別殺人と化していた前作や前々作と大して変わらんぞ。
「マイケルの生家に住んでいるので命を狙われる」という要因も考えられないことは無いけど、そもそも「なんでマイケルの生家に平然と暮らしているのか」ってのが引っ掛かるし。
ジョン以外は知らなかったらしいんだけど、それはそれで無理を感じるぞ。ベスが知ってるのにティムが知らないとか、どういうことだよ。

かなり無理があるとは言え、前作のラストシーンに対する答えは用意している本作品だ。
しかし物語として上手く繋げることが出来ているのか、整合性が取れているのかというと、そこは失敗している。
矛盾点は序盤から既に発生していて、「マイケルが邪教集団の手で蘇った」という設定がおかしい。
前作のラスト、マイケルは保安官に捕まっただけであり、ガス爆発に巻き込まれたわけでもなければ銃弾を食らったわけでもないのだ。だから復活も何も、最初からピンピンしているはずだ。
むしろ、「無事に脱出したはずなのに、この6年間は何をしていたのか」と言いたくなるぞ。

そもそも、根本的なトコロにツッコミを入れちゃうと、「邪教集団って何だよ」ってことなんだよな。
そういオカルト風味を中途半端に持ち込んだことは、陳腐な印象にしか繋がっていない。
「得体の知れない奴」だったからこそ怖かったマイケル・マイヤーズが、シリーズが続く中でどんどん人間味が出て来たりしてダメ殺人鬼に成り下がって行ったのだが、6作目に来て新機軸を狙ったのかオカルト風味を導入したことで、さらに作品の質を下げている。
1995年って、オカルトのブームが起きていたわけでもないよな。
いや、起きていたとしても、「じゃあ仕方が無い」とはならないけどさ。

百歩譲ってオカルト風味を受け入れるにしても、だったらディティールを丁寧に設定して、邪教集団の部分に厚みを持たせるべきだろう。
ところが、その部分が薄いんだよな。トミーがルーン文字について説明するシーンはあるけど、邪教集団については何の説明も無いし。
「邪教集団らしき連中」が登場するのも、冒頭シーン以降は、終盤まで待たないといけない。存在感がすんげえ薄いのよ。
「別に邪教集団じゃなくても成立するんじゃないか。そいつらが登場しなくても成立するんじゃないか」と思ってしまうぞ。

(観賞日:2014年3月4日)


第20回スティンカーズ最悪映画賞(1997年)

ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会