『ハロウィン5/ブギーマン逆襲』:1989、アメリカ

ジェイミーとレイチェルを襲ったマイケル・マイヤーズは、保安官のベンと州警察の一斉射撃を浴びて坑道に落ちた。州警察は坑道に爆薬を投げ込むが、既にマイケルは側溝を這って脱出していた。急流を下った彼は、川岸の小屋に辿り着いた。小屋で隠遁生活を送っていた男は、意識を失って倒れたマイケルを発見した。その1年後、ハロウィンの前夜。ハドンフィールドの小児クリニックでは、ジェイミーがレイチェルの母ダーリーンを襲った時の悪夢を見てうなされていた。彼女は事件以来、口が利けなくなっていた。
駆け付けた看護婦に抱き締められたジェイミーは、マイケルの復活を感知して黒板に「あの男が来る」と書いた。彼女が察知した通り、復活したマイケルは小屋の男を殺害した。発作を起こしたジェイミーはオペ室に運ばれ、マックス・ハート医師は気管切開を施そうとする。そこへルーミスが現れ、「その必要は無い」と鋭く告げた。翌日、ジェイミーの病室へルーミスが行くと、レイチェルが付き添っていた。そこへレイチェルの親友ティナが犬のマックスを連れて現れ、ジェイミーを喜ばせた。その時、投石によって病室の窓が割られた。投げ込まれた紙をルーミスが開くと、「魔性の子は死ね」と書かれていた。
レイチェルはマックスを連れて帰宅した時、その様子を物陰からマイケルが見つめていた。小児クリニックで絵画教室に参加していたジェイミーは、マックスの危機を察知して絵を描く。それを見たルーミスはレイチェルに電話を掛け、マックスの様子を見に行くよう指示した。裏口が開いてマックスがいなくなっているのに気付いたレイチェルに、ルーミスは急いで外へ逃げるよう促した。通報を受けた保安官補のニックとファラーが室内を調べるが異常は無く、マックスも元気に戻って来た。
ルーミスはジェイミーに、「感じたことを書いてくれ」と紙を渡す。しかしジェイミーは泣き出すだけで、何も書こうとしなかった。一方、家に戻ったレイチェルは、クローゼットに潜んでいたマイケルの襲撃を受けて死亡した。それを察知したジェイミーは、激しい発作を起こした。ルーミスはベンの元へ行き、マイケルがハドンフィールドに戻って来たことを訴える。そこへ墓地で事件が発生したとの知らせが入り、ルーミスとベンは現場へ向かった。
ティナはハロウィン・パーティーを開くため、カルザース邸を訪れる。鍵を使って中に入ると、友人のサマンサもやって来た。レイチェルの姿は見当たらなかったが、2人は彼女が両親の別荘へ出掛けたのだと思い込んだ。ティナの恋人のマイクが車で現れたので、2人は同乗した。ジェイミーはクリニックに出現したマイケルを目撃し、慌てて逃げ出す。ボイラー室に隠れていたところへ、パッシー看護婦たちが連れ戻しに来た。
病室へ戻されたジェイミーは、ルーミスから「マイケルを捜し出すんだ。協力してくれ。どこにいるか知ってるだろ」と詰め寄られる。ルーミスは「墓地から9歳の女の子の死体を掘り出した奴がいる。あいつの仕業だ。君は彼に操られてるんだぞ」と声を荒らげるが、何も情報を得ることは出来なかった。彼は拳銃を携帯して廃屋となっているマイヤーズ家を訪れ、マイケルを捜索する。しかしマイケルは生家におらず、ティナ、サマンサ、マイクが食料品店で働くスピッツと合流している様子を物陰から観察していた。マイケルはマイクが一人になったところで背後から忍び寄り、彼を惨殺した。
クリニックではハロウィン・パーティーの準備が整い、ジェイミーは友人のビリーからお守りとして腕輪をプレゼントされた。マイケルはマイクの車を運転し、自宅に戻って着替えたティナの元へ行く。ティナはマイクがマスクを被っていると思い込み、その車に乗り込んだ。マイケルが車を暴走させるので、ティナはガソリンスタンドで停めるよう要求した。パーティーに参加していたジェイミーは、発作を起こした。ルーミスはジェイミーに、ティナの居場所を尋ねた。彼はビリーの助けを借り、ティナがガソリンスタンドにいることを聞き出した。通報を受けて数台のパトカーが急行し、車を降りていたティナを保護した。マイケルは車と共に姿を消していた。
ティナがクリニックへ行くと、ジェイミーは声を出せるようになっていた。ジェイミーは「ブギーマンと一緒にいたのよ」と教えるが、ティナは全く信じなかった。彼女がマイクの元へ行こうとするので、ルーミスはニックとファラーに見張りを指示した。ティナはニックとファラーに、タワー・ファームまで送ってもらう。ジェイミーはティナを助けるため、クリニックを抜け出した。ビリーは彼女を追い、ティナがタワー・ファームへ行ったことを教えた。
タワー・ファームの邸宅では若者たちのパーティーが開かれており、ティナやサマンサ、スピッツが参加していた。スピッツがマスクを被ってブキーマンに扮し、ティナとサマンサが襲われた芝居をして外へ飛び出し、車で待機してニックとファラーを騙して大笑いした。3人は納屋に入り、ティナは子猫を見つけて追い掛ける。2人を邪魔しないように、ティナは納屋を出た。サマンサとスピッツは納屋でセックスを始めるが、そこにマイケルが現れて2人を惨殺した。
納屋から出て来たマスクの男を見たニックとファラーは、それがスピッツだと思い込んだ。マイケルが歩み寄っても呑気にしていた2人は、無抵抗で殺害された。納屋へサマンサとスピッツの様子を見に戻ったティナは、2人の死体を発見して悲鳴を上げる。助けを求めてパトカーに駆け寄ったティナは、ニックとファラーの死体を目にした。マイケルは車でティナをひき殺そうとするが、そこへジェイミーがビリーと共に駆け付け、「こっちよ」と呼び掛ける。マイケルは標的を変更し、ジェイミーを車で追い回す…。

監督はドミニク・オテニン=ジラール、脚本はマイケル・ジェイコブス&ドミニク・オテニン=ジラール&シェム・ビターマン、製作はラムジー・トーマス、製作総指揮はムスタファ・アッカド、撮影はロバート・ドレイパー、編集はチャールズ・テトーニ、美術はブレントン・スウィフト、編集はジェリー・ブレイディー、衣装はサイモン・トゥーク、音楽はアラン・ハワース、テーマ曲はジョン・カーペンター。
主演はドナルド・プレザンス、共演はダニエル・ハリス、ウェンディー・カプラン、エリー・コーネル、ボー・スター、ジェフリー・ランドマン、タマラ・グリン、ジョナサン・チャピン、マシュー・ウォーカー、ベッツィー・カルヴァーリョ、トロイ・エヴァンス、フランク・コモ、デヴィッド・アーシン、ドナルド・L・シャンクス、マックス・ロビンソン、ハーパー・ロイズマン、カレン・オルストン、フェントン・クイン、スタントン・デイヴィス、ジャック・ノース、ジェイ・バーナード、フランク・カニッグ、ドンレ・サンプソン他。


シリーズ第5作。
監督はデビュー作である1985年のスイス映画『After Darkness』がベルリン国際映画祭の金熊賞にノミネートされたドミニク・オテニン=ジラールで、これが劇場映画は2本目。
前作からはルーミス役のドナルド・プレザンス、ジェイミー役のダニエル・ハリス、レイチェル役のエリー・コーネル、ベン役のボー・スター、ダーリーン役のカレン・オールストンが続投している。
他に、ティナをウェンディー・カプラン、ビリーをジェフリー・ランドマン、サマンサをタマラ・グリン、マイクをジョナサン・チャピン、スピッツをマシュー・ウォーカーが演じている。

今回の冒頭では、マイケルが銃撃を浴びた前作のシーンが使われている。そこから、「坑道に落ちたマイケルがどうなったか」ということを描いて行くというのが本作品の導入部だ。
一方、ジェイミーは自分が引き起こした事件のショックで口が利けなくなっている。それが物語において重要な意味を持つわけではないし、途中であっさりと声を取り戻す。
ただ、それよりも問題なのは「マイケルを感知する能力を会得した」という部分で、それは明らかに要らない設定だなあ。マイナスに作用している部分しか無いぞ。
超能力少女を主人公に据えた『13日の金曜日PART7 新しい恐怖』の悪い影響でも受けたのか。

前作の終盤、マイケルは銃弾を浴びて坑道に落ち、道化師の格好でマスクを被ったジェイミーがナイフを振りかざしてダーリーンを刺すするというのが最後のシーンだった。
そこで続編ではブギーマンの世代交代が行われるのかと思いきや、やはり「マイケル・マイヤーズじゃないと『ハロウィン』シリーズは成立しない」ってことなのか、またまたマイケルが復活する。
まあねえ、9歳の幼女が連続殺人鬼になったら、話の中身が大幅に変わるわな。
それはそれで面白そうだけど。

ただ、マイケル・マイヤーズを復活させるにしても、「じゃあジェイミーの扱いはどうするのか」という問題は残る。
さすがにダーリーンを刺した事実を無かったことには出来ないだろう。
っていうか、たぶん4作目の時点では「刺殺した」という設定だったんじゃないかと思うが、「刺したけどダーリーンは死んでいない」ってことにしている。で、そこは「ダーリーンを刺して小児クリニックに入院している」という設定にしてある。
でも、「ショックで狂気に取り憑かれてしまった(?)」という言い訳があるにせよ、養母を殺そうとした奴がヒロインってのは、ちょっと難しいモノがあるんじゃないかねえ。

あと、ルーミスが「なぜ奴を庇うんだ」とジェイミーに詰め寄ったりするんだけど、彼女がマイケルをどうしたいのか、そこがボンヤリしているんだよな。
マックスが襲われそうになった時は絵を描いて危機を訴えているんだけど、じゃあ「マイケルを止めてほしい、退治してほしい」という気持ちがあるのかというと、そこが微妙なんだよな。
言葉が話せないにしても、感じたことを文字や絵で描くことは出来るのに、前半はルーミスに協力する様子が無いし。もしもルーミスが言うように「マイケルを庇っている」ということなら、そんなヒロインには全く同情心が沸かないし。
だから、そこは前半から明確に「マイケルを恐れ、助けを求めている」という形にした方がいいと思う。
そこをボンヤリさせたまま話を進めても、何もいいことなんて無いんだから。

さて、マイケル・マイヤーズの方だが、こちらは「銃弾を浴びて坑道に落ちたけど、川を流れて山の老人に救われた」ということで再登場する。
「両目を撃ち抜かれて爆死したはずなのに、何事も無かったかのように復活する」という形だった3作目に比べれば、まだ復活の手口はマシな方かな。
もはや「何発も銃弾を浴びたのに生きている」という部分に関しては、ツッコミを入れる箇所ではない。マイケル・マイヤーズは完全に非人間と化しているのでね。
「化け物だから撃たれても平気」ということなので、仕方が無いのである。

そもそもマイケル・マイヤーズってのは1作目と2作目で妹のローリーの命を狙っていて、4作目ではローリーの娘であるジェイミーを殺そうとした。
その前には姉のジュディスを殺していて、ようするに彼の標的は血縁者だ。
邪魔する奴、標的を守ろうとする奴、標的の周囲にいる奴は餌食になることもあるが、それは「血縁者を殺す」という目的を果たすための副次的行動だ。そいつらを殺すのが目的というわけではない。
ところが、前作でマイケルは、何の関係も無い面々を何人も殺害し、ただの無差別殺人鬼に成り下がった。

今回、軌道修正で元に戻すのかと思ったが、無差別殺人鬼のままになっている。ティナたちはジェイミーを守ろうとしているわけでもないし、血縁者でもないのに、マイケルは彼女たちの命を狙う。
荒っぽい殺し方も含めて、前作からそうなんだけど、すっかりジェイソン・ヴォーヒーズのバッタモンと化している。
今回なんて、その標的がレイチェル、サマンサ、マイキー、スピッツ、ティナと来たもんだ(保安官補たちも殺されるけど、ほぼオマケみたいなモンだ)。
アホな若い男女ばかりを標的にするって、もはや完全に『13日の金曜日』シリーズじゃねえか(サマンサとスピッツなんて、パーティーの最中に納屋でセックスをおっ始めたところを襲われるんだから、モロに『13日の金曜日』シリーズだよな)。
舞台はクリスタル・レイクじゃねえんだぞ。

レイチェルを早い段階で殺してしまい、マイケルに追い回される役回りはティナに受け渡されているのだが、これは賢明なアイデアとは思えない。
レイチェルの場合はジェイミーと乳姉妹であり、一緒に暮らしていた間柄だった。しかしティナとジェイミーの関係は、かなり薄い。ティナはレイチェルの親友ではあっても、ジェイミーとの接点は乏しい。
一応、序盤でジェイミーとティナが仲良くしているらしき様子は描かれているけど、前作からの続投じゃないし。
そんな人間が「マイケルに襲われるメインのヒロイン」の役回りを受け持つのは、物語の作り方として、上手い方法とは思えないぞ。
ティナがマイケルと関わりのある女性であれば、話は別だけど。

大体さ、ティナってマイケルと一緒にいたことに全く気付かず、ジェイミーやルーミスが危険を訴えても無視してパーティーへ出掛けるし、スピッツ&サマンサと相談して「マイケルに襲われる」という芝居をして保安官補たちを騙して大笑いするし、何の危機感も無いのよね。
そんでアンポンタンな行動を取るので、「さっさと殺されてくれ」と思っちゃうキャラなんだよな。
あと、終盤のシーンでは身を犠牲にしてジェイミーを助けるんだけど、「なんで?」と思っちゃう。
そこまでティナとジェイミーとの関係って強くないでしょ。それに、そこまでの行動からすると、むしろジェイミーを放置して逃げようとする方が合ってるぐらいだし。

ルーミスはすっかり「執念のブギーマン・ハンター」と化しており、「マイケルを始末するためなら何でもやる」という感じだ。
なんと今回の彼は、マイケルをおびき出すためにジェイミーをエサとして利用するのである。幼いジェイミーを守ろうとするんじゃなくて、下手すりゃ巻き添えを食らって殺されるかもしれないのに、まさに「手段を選ばず」だね。
あと、2作目で自爆したはずのルーミスは4作目で復活し、その時点でマイケルに負けず劣らずの「不死身の怪物」と化しているのだが、今回もマイケルに刺されて「力尽きて倒れる」という展開があるけど6作目では普通に再登場する。
ただ、ルーミスは不死身でもドナルド・プレザンスは不死身じゃなかったので、彼の死去に伴って7作目以降は登場しない。

終盤、マイケルはルーミスによって捕獲され、警察署に留置される。しかし、前半にバスでハドンフィールドへ来ていた謎の男が忘れた頃になって再登場し、警察署を襲撃する。そしてベンたちを殺害し、マイケルを脱出させる。
ホラー映画だと「死んだはずの殺人鬼が動く」とか、その程度の「引き」を用意することは良くある。ただ、「謎の男が警察署を襲って保安官たちを全滅させ、殺人鬼を脱出させる」ってのは、それとは全く別次元。
「ラストになって急に風呂敷を広げ、散らかしたまま終わらせた」という印象しか受けない。
最初から続編の製作が決まっていて「前後編」みたいな企画だったのならともかく、この投げっ放しのオチを解決するのは、6年後の第6作を待たなきゃならないんだぜ。6作目が作られなかったら、完全に投げっ放しのままで終わってるんだぜ。
ドイヒーだろ。

(観賞日:2014年3月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会