『ハロウィン4/ブギーマン復活』:1988、アメリカ

1988年10月30日。リッジモント療養所に収容されていたマイケル・マイヤーズが、スミスズ・グローヴ療養所へ移送されることになった。マイケルは10年前から意識不明の状態だが、地下病棟で厳重に隔離されていた。院長のルーミスは病院を空けることが多く、ホフマン副院長が現場を取り仕切っている。マイケルの転院を決めたのも、彼の独断だった。救急車でマイケルを移送するスミスズ・グローヴの所員2名は、故郷に彼の姪が住んでいることを話した。それを聞いたマイケルは、体を起こして2人を殺害した。
ハドンフィールドに住む7歳のジェイミー・ロイドは、不安で眠れない日々を過ごしていた。11ヶ月前に両親を亡くしたジェイミーは、カルザース家で暮らしていた。彼女の母であるローリーは、かつてカルザース家の娘であるレイチェルのベビーシッターだった。そういう繋がりから、レイチェルの両親であるリチャードとダーリーンがジェイミーを引き取ったのだ。雷鳴の轟く夜、マイケルはラバーマスクを被ってジェイミーの部屋に現れ、ナイフを構えた。ジェィミーの悲鳴を聞いてリチャードとダーリーンが駆け付けると、マイケルの姿は無かった。そのため、2人はジェイミーが悪い夢を見たのだと解釈した。
翌日、ハロウィン。ジェイミーの面倒を見てもらう予定だったスーザンが足を挫いて来られなくなったため、ダーリーンはレイチェルに子守りを指示する。夫妻は外出する予定が入っているからだ。レイチェルは恋人のブレイディーとデートすることになっていたため、「私も無理よ」と嫌がる。それを聞いたジェイミーが「私がいなければ良かったのね」とヘソを曲げたので、レイチェルは誤って「デートは延期するわ。今夜は貴方と一緒にお菓子を貰いに回りましょう」と機嫌を取った。
一方、ルーミスは療養所に現れ、勝手にマイケルを移送したホフマンを激しく非難した。するとホフマンは反発し、「奴は連邦政府の囚人だ。法律に従ったまでだ」と主張した。そこへ電話が入り、マイケルを移送していた救急車の転落事故があったことが知らされた。すぐにルーミスは、ホフマンを連れて現場へ向かった。遺体を捜索する州警察官に、ルーミスは「奴の遺体は見つからんよ。奴の仕業だ。もう逃走した」と告げた。
ハドンフィールドへ向かったルーミスは、給油に立ち寄ったガソリンスタンドの店員2名が惨殺されているのを発見した。マイケルを発見したルーミスは「ハドンフィールドの平和を乱すな」と告げ、拳銃を発砲する。しかしマイケルはルーミスの車を炎上させ、トラックに乗り込んでガソリンスタンドから逃走した。一方、ジェイミーはマイケルの姪ということで、同級生たちからイジメを受けていた。涙を流して学校を出た彼女は、親友のリンジーと連れ立って迎えに来たレイチェルの車に乗り込んだ。
ジェイミーがハロウィンの衣装を欲しがったので、レイチェルはブレイディーが働くドラッグ・ストアに赴いた。レイチェルが彼と話している間に、ジェイミーは仮装グッズのコーナーへ行く。レイチェルがデートの延期を告げると、途端にブレイディーは不機嫌になった。ジェイミーはマイケルが目の前に現れたので、悲鳴を上げる。しかしレイチェルが駆け付けると、ジェイミーしかいなかった。レイチェルはジェイミーがマスクを見て怖くなったのだと解釈した。
歩いてハドンフィールドへ向かっていたルーミスは、通り掛かったセイヤー牧師の車に同乗させてもらう。カルザース家ではリチャードとダーリーンが外出し、ジェイミーとレイチェルの2人だけになった。ジェイミーは仮装し、レイチェルと一緒に出掛ける。その間にマイケルはカルザース邸へ侵入し、ジェイミーの写真を見つけた。同じ頃、ルーミスは保安官事務所を訪れ、旧知のブラケット保安官に会おうとする。しかしブラケットは退職しており、ベン・ミーカーが新しい保安官として赴任していた。
ルーミスはミーカーに、マイケルが脱走して町へ戻っていること、ジェイミーの命を狙っていることを教える。ミーカーは信じないが、「既に6人が殺されている」とルーミスが声を荒らげたので、州警察に問い合わせようとする。電話回線が切れていると部下に言われたミーカーは、すぐにルーミスを連れてジェイミーの保護に向かう。一方、ジェイミーに付き合って近所の家を回っていたレイチェルは、ブレイディーがベンの娘ケリーを連れ込んでいるのを目撃してショックを受けた。
ベンはルーミスの進言を受けてテレビ局に連絡を入れ、アナウンサーに商店の閉鎖を呼び掛けてもらう。バーを営むアールは事情説明を求めるために電話を掛けようとするが、回線が切られていて通じなかった。気になったアールは仲間たちを引き連れ、保安官事務所へ行くことにした。ルーミスとベンがカルザース邸に到着すると、玄関のドアが開いていた。飼い犬が殺されているのを目にしたルーミスは、「奴はここへ来たぞ」とベンに告げた。ベンは部下のローガンを家に残し、ルーミスと共にジェイミーを捜しに行く。
マイケルは発電所へ乗り込んで所員を殺害し、停電を引き起こす。ジェイミーを見失って捜していたレイチェルは、誰かに追われている気配を感じて逃げ出す。レイチェルがジェイミーを見つけ出したところへルーミスとベンが駆け付け、パトカーに乗るよう促した。車に乗り込もうとしたルーミスは、マイケルがじっと見つめているのに気付いた。しかし振り返ると、もう1人のマイケルがいた。ルーミスとベンが動揺していると、ラバーマスクを外した若者たちが笑いながら走り去った。
ルーミスたちが保安官事務所へ戻ると屋内は荒らされており、署員が全滅していた。アールと仲間たちが乗り込んできて事情説明を要求したので、ルーミスが「マイケル・マイヤーズが戻って来た」と話す。息子を殺されているアールは、「警察に任せろ」というベンに反発して「今度は俺のやり方でやる」と告げて立ち去った。ベンに「余計な事を言うからだ」と抗議されたルーミスは、「警察はいないのも同然だ。彼らに頼るしか無い」と主張した。
カルザース邸に残っていたローガンはベンの指示を受け、彼の家へ向かう。そのパトカーにマイケルが乗っていることに、ローガンは全く気付かなかった。彼と入れ違いで、リチャードとダーリーンが戻って来た。アールたちはマイケルを目撃し、一斉に発砲して銃殺する。だが、それは同じマスクを被った町の若者だった。ベンの自宅ではケリーがブレイディーとセックスを始めようとしていたが、父の車が到着した音に気付き、慌てて服を着た。
ベンは家に入ると、ジェイミーとレイチェルを2階へ行かせた。そしてブレイディーに散弾銃を渡し、「屋根裏へ行って、外から入れないよう窓に釘を打て」と命じた。ベンは無線を使い、州警察に連絡して支援を要請した。しかしルーミスは「州警察でも奴には勝てない」と考え、マイケルが向かうと推測してカルザース邸へ行ってみることにした。アールたちが誤って若者を撃ったという報告を受けたベンは、彼らを止めに向かう。マイケルはミーカー邸に侵入し、ローガンとケリーを立て続けに殺害する…。

監督はドワイト・H・リトル、原案はダーニ・リプシウス&ラリー・ラトナー&ベンジャミン・ラフナー&アラン・B・マッケルロイ、脚本はアラン・B・マッケルロイ、製作はポール・フリーマン、製作協力はM・サヌーシ、製作総指揮はムスタファ・アッカド、撮影はピーター・ライオンズ・コリスター、編集はカーティス・クレイトン、美術監督はロジャー・S・クランダル、衣装はロザリー・ウォレス、音楽はアラン・ハワース、テーマ音楽はジョン・カーペンター。
主演はドナルド・プレザンス、共演はエリー・コーネル、ダニエル・ハリス、マイケル・パタキ、ボー・スター、キャスリーン・キンモント、サッシャ・ジェンソン、ジーン・ロス、カーメン・フィルピ、レイモンド・オコナー、ジョージ・P・ウィルバー、ジェフ・オルソン、カレン・オールストン、ナンシー・ボーゲニクト、デヴィッド・ジェンセン、ランド・ケネディー、ドン・グローヴァー、ロバート・コンダー、リチャード・ジュークス、ジョーダン・ブラッドリー、リッチー・カンバ、ステファニー・ディーズ、レスリー・L・ローランド他。


シリーズ第4作。
監督は『地獄のエージェント/緊急指令“究極兵器を追え!”』『KGB闇の戦士』のドワイト・H・リトル。脚本のアラン・B・マッケルロイは、これがデビュー作。
1作目と2作目でルーミスを演じていたドナルド・プレザンスが、同じ役でシリーズに復帰している。
他に、レイチェルをエリー・コーネル、ジェイミーをダニエル・ハリス、ホフマンをマイケル・パタキ、ベンをボー・スター、ケリーをキャスリーン・キンモント、ブレイディーをサッシャ・ジェンソンが演じている。
なお、ブレイディーと一緒にドラッグ・ストアで働いているトミーという若者がいるが、彼は1作目でローリーが子守りをしていた少年の成長した姿という設定だ(劇中でそのことに言及するシーンは無い)。

邦題が示している通り、今回はブギーマンが復活する。
シリーズ2作目でマイケル・マイヤーズが死亡し、3作目は全く無関係の話だった。だが、酷評を浴びて興行的にも失敗に終わったため、製作サイドはマイケル・マイヤーズを再登場させてシリーズを仕切り直すことにしたのだ。
3作目をマイケル・マイヤーズと無関係の話にしたジョン・カーペンターが危惧していた通り、それはマンネリ化を生むことに繋がっている。
しかしマイケル・マイヤーズと無関係の作品をシリーズ続編として公開するよりは、まだマシだろう。

1作目と2作目でマイケル・マイヤーズが命を狙ったのは妹のローリーで、彼女は大学生だった。しかし今回は、7歳の幼女だ。
そこまで相手の年齢が下がると、追い掛け回すマイケルが大人気ないっていうか(殺人鬼に対して「大人気ない」ってのも変な話だが)、ちょっとペドファイルが入っているような印象になるんだよな。
やっぱり、狙う相手は高校生以上にしておいた方がいいんじゃないかなあ。
そりゃあマイケル・マイヤーズのキャラクター設定からして「血縁者の命を狙う」という部分は守るべきだと思うんだけど、そこは何とかならなかったのか。標的を親戚にするとか。

大体さ、病院の職員はともかく、ガソリンスタンドの店員を殺している時点で設定がおかしくなってるし。
彼らは血縁者でもないし、「逃げるため」とか「邪魔をするから排除する」とか、そういう「殺すべき理由」も無いんだから。
発電所の所員や保安官事務所の面々を殺害するのも同様だ。
なんで無差別殺人鬼に成り下がってんだよ。

「今回はブギーマンが復活する」と書いたが、シリーズ2作目でマイケル・マイヤーズはガス爆発によって死亡している。
だから「死んだ奴が蘇る」ということにしなきゃいけないわけだ。
でも、あそこまでハッキリとした形で爆発に巻き込まれているので、そいつを復活させるとなると、『魁!!男塾』のようにバカバカしい形になるのは避けられない。
王大人は出て来ないけど、ローリーによって両目を撃ち抜かれ、ガス爆発で焼け死んだはずのマイケルが、何事も無かったかのように復活するってのは、まあバカバカしいわな。

そもそも1作目でのラストでルーミスの発砲を浴びたのに平然と姿を消し、2作目で何事も無かったかのように登場しているので、その時点で化け物の確定ランプは付いていたと言ってもいいのだが、今回の復活劇で、それを再確認される。
ジェイソン・ヴォーヒーズも「死んだはずなのに復活」ってことを何度も繰り返しているが、マイケルも彼と同じく非人間の連続殺人鬼ってことだ。
ただ、マイケルだけじゃなく、同じ場所で爆死したはずのルーミスも死んでいないのよね。火傷は負っているけど、普通に生き延びているんだよな。
んなアホな。あの状況で生き延びたのかよ。
マイケル・マイヤーズをモンスター扱いするなら、ルーミスも相当の化け物だぞ。

マイケル・マイヤーズはガス爆発の影響があったのか、キャラクター造形が別人と化している。
1作目の彼は、瞬間移動の能力を持っているかのように神出鬼没であり、何の感情も持たないように殺人を遂行する無機質なマシーンのようだった。
しかし今回のマイケルは、随分と荒々しくて乱暴な奴に変貌している。標的の殺し方も、怪力を誇示するような方法が目立つ。
どうやらジェイソン・ヴォーヒーズの影響を受けてしまったようだ。
『13日の金曜日』シリーズに近付いても、いいことなんて何も無いのに。

一応、マイケル・マイヤーズも「神出鬼没」という特徴だけは忘れていない。
「どこから入ったのか全く分からないけどジェイミーの部屋に出現し、ジェイミーが悲鳴を上げて隠れている間にカルザース家の面々には見つからずに姿を消す」とか、「ガソリンスタンドでルーミスの目の前に現れたのに、発砲を受けると瞬時に姿を消しており、次の瞬間にはトラックで飛び出してくる」とか、「ドラッグ・ストアでジェイミーの前に登場するけど、悲鳴を上げた彼女が鏡を割ると消えている」とか、そういう人間離れした瞬間移動を見せている。
ただ、ちょっと気になるのが、マイケルがガソリンスタンドに登場した後、ドラッグストアを経てカルザース邸へ侵入し、ジェイミーの写真を手にするという行動だ。
救急車から脱走した後、彼はジェイミーの部屋に現れて彼女を襲っている。だったら、その後でハドンフィールドを出てガソリンスタンドヘ行き、そこで店員を襲ってから再び町に戻ってドラッグ・ストアに出現するというのは、筋が通っていない行動にしか見えない。
わざわざ町を出る必要性なんて何も無いはずだ。

そうなると、「ジェイミーが雷鳴の夜に見たマイケルは幻覚だった」と解釈するのが整合性の取れる答えになる。
だけど、そこだけ幻覚にしちゃうのは、それはそれで腑に落ちないんだよな。
もしも本当にそこだけは幻覚という設定なら、もっと明確に「幻覚」と提示すべきだし、出来ればジェイミーが以前から幻覚を見ていることにしておいた方がいい。
そして、その後にマイケルが現れた時も、他の面々は目撃していないのでジェイミーが「また幻覚なのかも?」と悩む展開にでもすればいいんじゃないかな。

ストーリー展開は、かなりテキパキと進んでいく。予兆とか、序奏とか、そういうところで時間を使おうとはしていない。
冒頭でマイケルが移送されることになり、救急車の中で彼が復活する。カットが切り替わると眠れないジェイミーが登場し、雷鳴が轟いて観客の不安を煽る。窓の外には救急車が停まっており、すぐにマイケルが現れてジェイミーを襲撃する。
「しばらく平穏な状態を用意してジェイミーと彼女の周辺を描写し、そこから恐怖へ向かう」という構成は取らない。
ある意味、ものすごく潔いとも言える。
どうせマイケルが登場することも、彼が身内を狙うことも、1作目と2作目を見ている人には分かり切っているのでね。

ジェイミーとレイチェルをパトカーに乗せた直後、近くの庭からじっと見つめているマイケルをルーミスが発見するシーンは、緊張感が高まって、なかなか良い感じだった。
しかし逆方向にもマイケルが出現し、ちょっと奇妙な感じになってしまう。
ただし、その答えによっては面白くなる可能性もあるんじゃないかと思っていたら、「若者たちのイタズラでした」というオチ。
そこに来て、その肩透かしは要らんわ。要らないどころか、邪魔だわ。そこまでに肩透かしなんて一度も無かったのに、すげえ不愉快だ。
走り去るパトカーを眺めているマイケルの姿を写しても、もう遅い。まるでリカバリーできないわ。

その後、ベンやルーミスがジェイミーを保護して家のドアや窓を封鎖し、張り詰めた空気が漂う中で、レイチェルがブレイディーを横取りしたケリーに怒りをぶつけるという行動を取るのも萎えるわ。
そんなことやってる場合じゃねえだろ。
そもそも、ブレイディーがケリーと浮気する展開自体が要らないのよ。
そんなの、「マイケルがジェイミーの命を狙う」という展開に何の関係も無いし、何の影響も与えないことだからね。ただの邪魔な要素でしかない。

終盤、マイケルはベンや州警察の発砲を浴びて倒れ、坑道に落ちる。
ラストシーンで「穴の中からマイケルの腕が伸びる」とか、そういう形で「実は死んでいない」という続編への流れを作るのが、ホラー映画では定番の手口だ。しかし本作品では、「道化師の格好でマスクを被ったジェイミーがナイフを振りかざしてダーリーンを刺す」という展開を最後に持って来る。
で、だったら「これで主役が交代し、次回はジェイミーが連続殺人鬼になる話なのか」と思いきや、またマイケルが登場する。
そしてジェイミーは再び命を狙われ、6作目では「カルト教団に6年間も監禁されて孕まされた」という設定で登場し、あっさりとマイケルに殺されてしまう。
おまけに7作目では、存在しなかったことにされてしまう。
色んな意味で可哀想なヒロインである。

なんだかんだと文句ばかり書いて来たけど、3作目と立て続けに観賞すると、「まあ3作目よりはマシだな」と、かなり甘い査定になってしまう。反動ってのは恐ろしいね。この映画よりも遥かに恐ろしいよ。
そうか、ということは、この映画はそんなに怖くないってことだね。
って、実は改めて確認しなくても、最初からそんなに怖くないってことは分かっていたんだけどさ。
ただ、そんなに怖くないどころか、かなりシオシオのパーな出来栄えなんだけど、「それでも3作目よりはマシ」ってことよ。

(観賞日:2014年3月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会