『ハロウィンIII』:1982、アメリカ

北カリフォルニア、10月23日、土曜日。ラバーマスクを上着のポケットに突っ込んだハリー・グリムブリッジがスーツ姿の連中に追われ、夜の町を必死に逃げ回っていた。ハリーは襲って来た一人を車に挟ませ、その場から逃走した。1時間後、ガソリンスタンドの店員がテレビを見ていると、シルヴァー・シャムロック社が発売しているハロウィン用のラバーマスクのコマーシャルが流れた。ハリーが持っているのも、そのマスクだった。その直後、ハリーが息も絶え絶えでガソリンスタンドに現れ、「奴らが来る」と告げて倒れ込んだ。店員はハリーを車に乗せ、病院へ向かった。
医者のダニエル・チャリスは離婚したリンダの家を訪れ、子供たちにプレゼントを渡す。それはシルヴァー・シャムロック社のハロウィン用マスクだが、既に同じ物をママから貰っていたので子供たちは喜ばなかった。ダニエルは緊急の呼び出しを受け、病院へ赴く。運ばれていたのはハリーで、病院のテレビでシルヴァー・シャムロック社のCMが流れているのに気付くと「奴らに殺される。皆殺しだ」と口にした。ダニエルが薬を投与し、スタッフが病室を立ち去った後、スーツ姿の男が侵入してハリーを殺害した。気付いた婦長が悲鳴を上げると、男は静かに立ち去った。ダニエルが慌てて後を追い掛けると、男は車内で自分にガソリンを浴びて火を放ち、爆死した。
24日、日曜日。ハリーの娘エリーが病院を訪れ、遺体を確認した。保安官は彼女に、「犯人は自殺した。たぶん薬物中毒だ」と告げた。27日、水曜日。ダニエルは友人である鑑識助手のテディーに、犯人の調査を依頼した。29日、金曜日。ダニエルがバーで飲んでいると、エリーがやって来た。父の死について調べているエリーに、ダニエルは「あの夜、彼はハロウィンのマスクを決して手放さなかった。彼は殺されると言って、その通りになった」と語った。
エリーはダニエルを連れて、ハリーが営んでいたオモチャ屋へ赴いた。エリーは父の予定表を見せ、工場のあるサンタミラの町から帰る途中で何かがあったに違いないという推測を語った。ダニエルはエリーに同行し、車でサンタミラへ向かった。かつては酪農の町だったサンタミラは、戦後になってシルヴァー・シャムロック社が設立された。現在は創立者の血を引くアイルランド人のコナル・コクランが社長を務めており、町の名士として君臨している。
住民たちの排他的な視線を浴びながら車を走らせたダニエルは、業者に成り済ますことをエリーに提案した。ダニエルとエリーは夫婦を装い、ラファティーという男が営む町のモーテルに部屋を取った。隙を見て宿泊者名簿を調べたダニエルは、10月20日にハリーが宿泊していることを知った。モーテルにはバディーとベティーのカプファー夫妻が息子を伴って現れ、ダニエルは彼らと知り合った。バディーはオモチャ屋の経営者で、ハロウィン用マスクの仕入れに来たのだった。
その夜、酒を買ってモーテルへ戻ろうと歩いていたダニエルは、古くからの町に住んでいる浮浪者と遭遇した。彼はコクランを嫌っており、「工員は外から連れて来た。気を付けろよ。奴らは見張ってるぞ。工場の変な噂を聞いた。今年こそ工場を燃やして終わりにしてやる」と話した。住処に戻った浮浪者は、スーツ姿の男たちに取り囲まれた。男たちは無表情のまま、怪力で浮浪者の首を引き抜いた。
部屋を出たエリーは、ハロウィン用マスクの仕入れに来たマージという女性と知り合った。彼女もバディーと同様に、オモチャの小売店を営んでいた。彼女はエリーに「商品の質が落ちてる」と言い、マスクから取れた会社の商標を見せた。部屋に戻ったマージは商標の裏にあるチップを引き抜こうとするが、そこから発射された光線を浴びて苦悶した。マージの顔面は崩壊し、口から虫が這い出した。
騒ぎが気になったダニエルが部屋を出ると、マージがシルヴァー・シャムロック社の車に乗せられようとしていた。ダニエルが「医者だ。診察しよう」と言っても、社員たちは無視して車を出発させた。そこへコクランが現れて、「ちょっとした事故だ。治療は大丈夫。工場には最新の医療設備が整っている」と告げた。立ち去ろうとするコクランに、部下の一人が「ミス・ファイヤー」と静かに告げた。
30日、土曜日。ダニエルはテディーと電話で話し、病院の犯人が自害した車からは骨や歯の破片が発見されなかったことを聞かされた。ダニエルは彼女に、コナル・コクランについて調べるよう頼んだ。彼はエリーと一緒にシルヴァー・シャムロック社を訪れるが、これといった手掛かりは得られない。そこへカプファー夫妻が息子を連れて現れ、ダニエルとエリーは誘われて一緒に工場見学をすることにした。バディーがマスク製造の最終工程室に興味を示すと、コクランは「検査に揮発性薬品を使うので危険です」と告げた。
工場の敷地内を見回したダニエルは、病院の犯人に酷似した男たちが見張りに立っていることに気付いた。工場を去ろうとしたエリーは、ハリーの車が倉庫に置いてあるのを目にした。彼女は駆け寄ろうとするが、スーツの男たちに無言で制止された。その夜、スーツの男たちはモーテルに現れ、エリーを拉致して連行した。逃げ出したダニエルは警察に連絡しようとするが、電話を掛けても「お掛け直し下さい」という電話交換手のアナウンスが聞こえるだけだった。
ダニエルはエリーを救出するため、シルヴァー・シャムロック社に忍び込んだ。ある部屋に入ると老婆が編み物をしていたので、ダニエルは「どこにいる?」と詰め寄る。しかし体を揺らすと、それはロボットだった。そこにスーツ姿の男が現れ、ダニエルに襲い掛かった。ダニエルが殴り付けても、男は微動だにしなかった。ダニエルが必死で殴ると、拳は男の腹部を突き破る。拳を抜くと、男の腹部からは内臓ではなくチューブが飛び出した。スーツ姿の男たちは、コクランの生み出したアンドロイドだったのだ…。

脚本&監督はトミー・リー・ウォーレス、製作はデブラ・ヒル&ジョン・カーペンター、製作協力はバリー・ベルナルディー、製作総指揮はアーウィン・ヤブランス&ジョセフ・ウルフ、撮影はディーン・カンディー、編集はミリー・ムーア、美術はピーター・ジェイミソン、特殊メイクアップはトム・バーマン、音楽はジョン・カーペンター&アラン・ハワース。
出演はトム・アトキンス、ステイシー・ネルキン、ダン・オハーリヒー、マイケル・カリー、ラルフ・ストレイト、ジャディーン・バーボー、ブラッドリー・シャクター、ガーン・スティーヴンス、ナンシー・キーズ、ジョン・テリー、アル・ベリー、ウェンディー・ウェズバーグ、エセックス・スミス、メイディー・ノーマン、ジョン・マクブライド、ロイド・カトレット、パディー・エドワーズ、ノーマン・メリル、パトリック・パンクハースト、ディック・ウォーロック他。


シリーズ第3作。
『ハロウィン』や『ザ・フォッグ』でプロダクション・デザインと編集を担当していたトミー・リー・ウォーレスが、監督&脚本家としてデビューしている。
ダニエルをトム・アトキンス、エリーをステイシー・ネルキン、コクランをダン・オハーリヒー、ラファティーをマイケル・カリー、バディーをラルフ・ストレイト、ベティーをジャディーン・バーボー、幼い頃のバディーをブラッドリー・シャクター、マージをガーン・スティーヴンス、リンダをナンシー・キーズが演じている。
アンクレジットだが、町で夜間の外出を禁じるのアナウンスの声と、電話交換手の声を担当しているのは、1作目と2作目でヒロインのローリーを演じていたジェイミー・リー・カーティスだ。
また、バーでダニエルが見ているテレビでは、1作目の映像がチラッと写る。

当初はジョー・ダンテが監督を務める予定で、企画が進められていた。
『宇宙からの侵略生物』『火星人地球大襲撃』の脚本家で「クォーターマス教授」シリーズの生みの親である脚本家&小説家のナイジェル・ニールが、そのためにシナリオを執筆した。
しかし、監督交代に伴ってジョー・カーペンターとトミー・リー・ウォーレスが手を加え、大幅に内容が変更されたことに腹を立てたナイジェル・ニールは、脚本家のクレジットから自分の名前を外させた。

この映画が前2作と大きく異なるポイントは、観客から酷評されて興行的に失敗した理由と、ほぼイコールで繋がっていると言ってもいいだろう。
そのポイントは、「マイケル・マイヤーズが登場しない」ってことだ。
『ハロウィン』と『ブギーマン』(『ハロウィンII』)は、ラバーマスクを被った殺人鬼のマイケル・マイヤーズが殺人を繰り返す内容だった。
しかし今回は、マイケル・マイヤーズが登場しない。
それどころか、前2作とは全く関係の無い話なのである。

前作でマイケル・マイヤーズは死んでいるので、登場しないのは当然っちゃあ当然だ。
しかしシリーズを続行するなら、「実は生きていた」ということで復活させるのが普通だろう。
そりゃあ、そんなに安易に彼を復活させるのはお世辞にも褒められたものではないが、そもそもシリーズを続ける時点でダメなことをやらかしているんだから。
ルーミス医師がマイケルを退治したのなら、そこでシリーズも終結させるってのが潔い終り方ってモンだろう。

ジョン・カーペンターとしては、「マイケル・マイヤーズが殺しを繰り返す話を続けていてもマンネリ化してジリ貧になるのは目に見えているから、ハロウィンに起きる様々な物語を描くシリーズに路線変更しよう」という考えだったらしい。
そもそも彼は1作目を撮る前からマイケル・マイヤーズが登場しない物語の構想もあって、それを2作目にしたいという意向もあったようだ。
しかしマイケル・マイヤーズが登場する内容で続編まで作っておいて、3作目から急に「今までとは無関係な話です」と言われても、それを受け入れることの出来る寛容な(もしくは鈍感な)観客なんて、そんなに多くないだろう。
マイケル・マイヤーズの登場する第2作が公開された時点で、「彼の全く関与しない別の物語に路線変更する」というプランは消去すべきだったのよ。

そりゃあジョン・カーペンターの予想した通り、マイケル・マイヤーズが復活した4作目以降はマンネリ化して残念なことになっているけど、それはシリーズを続けるのなら仕方が無い。
どうしても「ハロウィンを舞台にした別の物語を作る」という構想を実現したかったのなら、それは『ハロウィン』シリーズと別に作るしか手は無いのよ。
繰り返しになるけど、マイケル・マイヤーズが登場する第2作を作った時点で、もはや「シリーズを続けたらマンネリ化する」ってのは避けられない運命なのよ。
マンネリ化を回避したいのなら、シリーズを打ち切るしか方法は無いのよ。

「前2作との関連が無い」という部分を度外視し、そこを切り離して観賞したとしても、やっぱり冴えない仕上がりであることは確かだ。
ダニエルとエリーが知り合ったばかりなのにモーテルでキスして深い関係になっちゃうとか、流れなんて完全に無視したベッドシーンがチョロッと入るとか、ダニエルがテディーとも仲良くしている雰囲気が匂って来るとか、無駄にダニエルの女関係を充実させる。
その一方で、肝心の本筋はスカスカのグダグダだ。

「コクランの手下たちは全てアンドロイドでした」という展開には、「前2作と無関係の物語を作るにしても、アンドロイドはねえわ」と脱力感に見舞われる。
その後、コクランが最終工程室にストーンヘンジを持ち込んでいること、特別な力を持つストーンヘンジを削ってマスクの商標を作っていることが明らかにされる。
ホラーかと思ったらSFの要素が入って来て、そこにオカルトが入って来て、それが上手くまとまらず、バラバラのままにされている。

コクランの説明によれば、ケルト族にとってのハロウィンは霊魂を現世に呼び戻す儀式で、そのために子供を生贄に捧げようというのが彼の計画だ。
シルバー・シャムロック社は大量のCMを流しているが、それと連動してマスクの商標が作動すると、被っている子供が死ぬ仕掛けになっているらしい。
実験室に入れられたカプファー家の息子はCMの呼び掛けに応じてマスクを被り、顔が崩れて倒れ込み、マスクの中からゴキブりや虫が這い出して来る。
ただ、一緒にいた両親も死んでいるんだよな。原理がサッパリ分からん。

それに、マージは商標を調べようとして、そこから発射された光線を浴びて顔が崩れている。また、逃げ出したダニエルが地下研究室でCMを流して大量の商標を撒くと火花が散り、部屋にいたアンドロイドたちは死ぬ。
人間だけじゃなくアンドロイドにも効果があるのかよ。
さらに、CMが流れている数台のモニターにパワーが溜まったのか光を放ち、大爆発が起きる。
もうメチャクチャだ。
それとさ、そのストーンヘンジのパワーとアンドロイドって、まるで無関係じゃねえか。古い儀式を復活させて子供たちを生贄に捧げようとする企みがあるのなら、それだけに集中しろよ。
アンドロイドは明らかに余計だし、統一感ゼロだろ。

(観賞日:2014年2月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会