『ハロウィン』:2018、アメリカ&イギリス

ジャーナリストのアーロン・コーリーとデイナ・ヘインズは、精神病の犯罪者が収容されているスミスズ・グローヴ療養所を訪れた。2人の目的は、40年前から監禁されているマイケル・マイヤーズにインタビューすることだ。医師のサルテインは、マイケルを別の施設へ移すと決定した州当局の方針を残念がった。サルテインはルーミス医師の教え子で、ずっとマイケルを研究してきたのだ。マイケルは一言も言葉を発しない状態が続いているが、サルテインは「喋ろうとしないだけだ」とアーロンたちに説明した。
マイケルは療養所の中庭に立っており、周囲には数名の囚人もいた。サルテインはアーロンたちに、一定の距離を保って近付くよう指示した。アーロンはマイケルに、事件が起きた夜のことを尋ねる。マイケルが背中を向けたまま沈黙を貫くと、アーロンは検事局の友人から借りて来たゴム製マスクを鞄から取り出した。「分かるんだろ?何か言えよ。これは君の一部だ」とアーロンは呼び掛けるが、マイケルは何も反応しなかった。
療養所を去ったアーロンとデイナは、人里離れた場所で静かに暮らすローリー・ストロードを訪ねることにした。敷地には柵が張られており、「面会お断り。私有地に付き立ち入り禁止」と書かれていた。近くの木には防犯カメラが設置してあり、ローリーはインターホンを押したアーロンたちの姿を確認していた。デイナが3千ドルの報酬を提示すると、ローリーは柵を開けた。ローリーは2人を家に入れるが、決して歓迎していなかった。
ローリーは結婚に2度失敗し、娘のカレンや孫のアリソンとの関係は上手く行っていない。彼女は娘が12歳の時に母親不適格とみなされ、親権は回復できていなかった。アーロンはマイケルに会ったが無反応だったことを話し、彼と会うよう勧めた。しかしローリーは拒否し、ギャラを受け取って2人を追い出した。カレンはレイ・ネルソンという男と結婚し、アリソンと3人で暮らしていた。アリソンはレイに恋人のキャメロンを悪く言われ、不快感を露骨に示した。
アリソンは今夜の会食にローリーを誘ってほしいと、カレンに頼んでいた。カレンはアリソンから彼女の返答を訊かれ、「誘ったけど、来られそうにないって。広場恐怖症だから、認知行動療法が必要なの」と告げた。しかしアリソンは嘘だと見抜き、親友のヴィッキーと彼女の恋人のデイヴに「お婆ちゃんを誘ってない。自分で確かめたから知ってるわ。私を近付けたくないのよ。毎年、ハロウィンの季節になると、ウチの家族はおかしくなる」と言う。
高校に着いたアリソンは、キャメロンや彼の親友のオスカーと会った。ローリーが学校に来たので、アリソンは休み時間に彼女と会った。ローリーは取材のギャラをアリソンに差し出し、「やりたいことに使いなさい。遠くへ行きなさい」と告げた。アリソンが「何のために備えを固めて隠れてるの?それが最優先で、家族を犠牲にした」と言うと、彼女は「育て方のせいで娘に憎まれても、あの子が恐怖に対処しているのなら、それでいい」と述べた。
帰宅したローリーは射撃練習を積み、銃を手入れした。マイケルかせ移送される時、サルテインは護送車に同乗した。ローリーは車で張り込み、護送車が出るのを確認した。カレン、アリソン、レイはレストランへ出掛け、キャメロンと4人で夕食を取った。そこへローリーが現れてワインを飲むと、すぐにカレンは批判した。ローリーは泣き出し、「彼を見た。殺してやりたかった」と漏らす。カレンが厳しい態度で「過去と決別するって言ったでしょ」と告げると、彼女は「無理よ」と店を飛び出した。
アリソンは後を追い、ローリーの肩を優しく抱いた。車で去るローリーを見送ったカレンは、アリソンに幼少期の体験を語る。ローリーはカレンが8歳の頃に射撃を覚えさせ、戦いを学ばせた。12歳で社会福祉局に保護され、神経症を克服するために今まで努力してきたことをカレンはアリソンに話した。同じ頃、少年のケヴィンは父親の運転する車に乗り、森へ狩りに向かっていた。護送車が道を外れて停止し、数名の囚人が外に出ているのを見た父親は、慌ててブレーキを踏んだ。
父親は警察に電話するようケヴィンに指示し、護送車の様子を見に行く。警察に連絡したケヴィンは、車を出て父を捜しに行く。すると瀕死の警官が倒れており、「逃げろ」と告げた。ライフルを構えて護送車に入ったケヴィンは誤ってサルテインを撃ち、慌てて逃げ出した。車に戻ってエンジンを掛けた彼は、マイケルに殺された。保安官助手のホーキンスは事故発生の連絡を受け、現場に急行した。彼は警官とケヴィンの父親の死体を発見し、警戒しながら銃を構えて護送車に足を踏み入れた。するとサルテインが重傷を負って倒れており、「彼は逃げたのか」と問い掛けた。
翌日、ハドンフィールドを訪れたアーロンとデイナは、ジュディス・マイヤーズの墓へ行く。2人はボイスレコーダーを回し、マイケルがジュディスを殺した時のことを語った。意識不明のサルテインの収容された病院にホーキンスがいると、保安官のバーカーがやって来た。彼は逃げた囚人の行方を掴んだものの、何があったか分からないと告げる。ホーキンスは護送車に乗せられていた囚人のファイルを彼に見せ、マイケル・マイヤーズが含まれていることを教えた。しかしバーカーはマイケルの名を聞いても、深刻に捉えなかった。
アーロンとデイナは取材の途中、ガソリンスタンドに立ち寄った。デイナがトイレの個室に入っていると、マイケルが現れた。一方、給油を終えたアーロンは、従業員が2人とも殺されているのを発見した。マイケルはデイナが入っている個室の上から、殺した従業員の歯を落とした。デイナはマイケルに捕まりそうになり、大声で助けを呼ぶ。そこへアーロンが駆け付けるが、マイケルに2人とも殺された。マイケルは車のトランクを開け、ゴム製マスクを被った。
翌朝、護送車の事故をニュースで知ったローリーは警戒心を強め、地下室の隠し扉を開けた。カレンとレイが帰宅すると、ローリーが勝手に上り込んでいた。彼女は防犯システムの甘さを指摘し、「アリソンを連れて逃げるわよ」と告げる。しかしカレンは全く相手にせず、彼女を追い払った。ガソリンスタンドの殺人現場を見たホーキンスは、マイケルの仕業だと確信した。マイケルが最初の連続殺人を犯した40年前のハロウィンの夜、彼は現場に最初に駆け付けていた。野次馬の中にローリーの姿を見つけた後、彼はバーカーに「やるべきことは1つ。奴を捕まえる」と宣言した。
その夜、多くの子供たちがハロウィンの仮装で出歩いており、マイケルは全く怪しまれずに行動していた。マイケルは作業小屋で金槌を手に入れ、近くの民家に侵入して女性を撲殺した。彼はキッチンにあった包丁を掴み、外へ出た。マイケルは別の家に上がり込み、女性を殺害した。一方、アリソンはキャメロンと仮装し、学校で開かれたパーティーに参加していた。ジュリアンという男児の子守を頼まれたヴィッキーは参加できず、アリソンに電話を掛けて会話を交わす。アリソンはローリーからの着信に気付くが、無視してヴィッキーと喋り続けた。ヴィッキーは電話を切り、ジュリアンを寝室へ連れて行って眠らせた。
アリソンは酔っ払ったキャメロンが同級生のキムとキスしている現場を目撃し、ショックを受けて会場を出た。キャメロンが追い掛けて釈明するが、アリソンは許さなかった。アリソンの携帯が鳴ると、キャメロンが取り上げた。アリソンは彼に幻滅し、その場を去った。ヴイッキーはデイヴを呼び、ソファーで関係を持とうとする。しかし2階から物音がしたので、彼女はデイヴに見て来るよう頼む。するとジュリアンが階段を駆け下りて来て、「ドアの近くに誰か立ってた。ブギーマンが家の中にいる」と訴えた。
ヴィッキーは軽く笑い飛ばし、寝室を見に行く。そして誰もいないことを確かめ、ジュリアンを寝かし付けようとする。しかしマイケルはクローゼットに隠れており、ヴィッキーに襲い掛かる。ヴィッキーはジュリアンを逃がし、マイケルに殺された。ホーキンスが駆け付けると、家の中にデイヴとヴィッキーの遺体があった。ローリーも家に到着し、2階の窓から見ているマイケルを発見した。ローリーは発砲するが命中せず、マイケルは部屋を出て階段を下りる。ホーキンスはマイケルに気付いて追い掛けるが、見失ってしまった。
ローリーとホーキンスが再会した後、回復したサルテインが現場にやって来た。サルテインはホーキンスとバーカーに、「看守と運転手がマイケルに襲われ、護送車が事故を起こした。彼は覚醒しており、捕まるまで殺し続けるだろう」と語った。バーカーはホーキンスに、サルテインを捜査に同行させるよう命じた。サルテインはホーキンスに、「彼が殺人からどんな喜びを得ているのか知りたい。傷付けてはならない」と告げた。
ローリーは警官たちを伴ってカレンの家へ赴き、事情を説明して「アリソンが危険よ」と告げた。ようやく事態の深刻さを理解したカレンは、慌ててアリソンに知らせようとする。しかしアリソンは携帯を持っていないので、連絡が取れなかった。その頃、アリソンはオスカーと夜道を歩きながら、キャメロンへの不満を吐露していた。しかしオスカーが急にキスしたので腹を立て、彼を突き放して立ち去った。取り残されたオスカーは、マイケルに襲われる…。

監督はデヴィッド・ゴードン・グリーン、キャラクター原案はジョン・カーペンター&デブラ・ヒル、脚本はジェフ・フラッドリー&ダニー・マクブライド&デヴィッド・ゴードン・グリーン、製作はマレク・アッカド&ジェイソン・ブラム&ビル・ブロック、製作総指揮はザンネ・ディヴァイン&デヴィッド・スウェイツ&ジョン・カーペンター&ジェイミー・リー・カーティス&ジャネット・ヴォルターノ&クーパー・サミュエルソン&ダニー・マクブライド&デヴィッド・ゴードン・グリーン&ライアン・フライマン、共同製作はショーン・ゴウリー&リック・A・オーサコ&ライアン・タレク&アッティラ・サリー・ユセル、製作協力はスコット・クラッカム&ローラ・アルトマン、撮影はマイケル・シモンズ、美術はリチャード・A・ライト、編集はティム・アルヴァーソン、衣装はエミリー・ガンショア、メイクアップ効果デザイナーはクリストファー・ネルソン、音楽はジョン・カーペンター&コディー・カーペンター&ダニエル・デイヴィス。
出演はジェイミー・リー・カーティス、ジュディー・グリア、アンディー・マティチャック、ウィル・パットン、ハルク・ビルギナー、ヴァージニア・ガードナー、ジェファーソン・ホール、トビー・ハス、ディラン・アーノルド、リアン・リース、マイルス・ロビンス、オマー・ドーシー、ジェームス・ジュード・コートニー、ニック・キャッスル、ドリュー・シールド、シセブレイル・ナンタンブ、マイケル・ハリティー、ウィリアム・マシュー・アンダーソン、ディーヴァ・タイラー、ブレイン・グレゴリー、ヴィンス・マティス、ペドロ・ロペス、チャーリー・ベントン、クリストファー・ネルソン他。


1978年の映画『ハロウィン』の40年後を描く作品。
監督は『ピンチ・シッター』『選挙の勝ち方教えます』のデヴィッド・ゴードン・グリーン。
脚本はTVドラマ『バイス・プリンシパルズ』のジェフ・フラッドリー、『ロード・オブ・クエスト ドラゴンとユニコーンの剣』のダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督による共同。
ローリーをジェイミー・リー・カーティス、カレンをジュディー・グリア、アリソンをアンディー・マティチャック、ホーキンスをウィル・パットン、サルテインをハルク・ビルギナー、ヴィッキーをヴァージニア・ガードナー、アーロンをジェファーソン・ホール、レイをトビー・ハス、キャメロンをディラン・アーノルド、デイナをリアン・リース、デイヴをマイルス・ロビンス、バーカーをオマー・ドーシーが演じている。

この映画について批評する前に、これまでの『ハロウィン』シリーズの流れを整理しておこう。
ジョン・カーペンター監督の出世作である1作目が1978年に公開された後、シリーズとして『ハロウィン・レザレクション』まで全8作が作られた。第2作ではローリーがマイケルの妹どあることが明らかになり、4作目から6作目まではローリーの遺児であるジェイミーが登場した。
第7作では「実は生きていた」ということでローリーが再登場し、息子のジョンがマイケルに狙われた。第8作でも引き続いてローリーが登場したが、序盤でマイケルに殺害された。
ちなみに第7作の時点で、第4作から第6作までは完全に「無かったこと」にしていた。
その後、2007年にはロブ・ゾンビが1作目をリメイクし、その続編も作られたが、こちらは2本で打ち止めとなっている。

さて、今回の作品は、ジョン・カーペンター監督が撮った『ハロウィン』の純然たる続編だ。
そして、なんと2作目から8作目の内容を全て「無かったこと」にしている。
ジェイミー・リー・カーティスが出演していた第7作と第8作も無視するんだから、かなり思い切った切り捨てっぷりだ。
どうやら製作サイドは、「ちゃんとした繋がりを持たせるのが難しい」と考えて2作目以降を無視したようだ。
そのため、今まで積み上げてきた設定は全て白紙に戻されている。

2作目以降を無かったことにしているので、ローリーの子供であるジェイミーとジョンの存在は無視されている。
ただし、2度の離婚歴があることに触れているので、「離婚相手との間にジェイミーやジョンがいる」という可能性は残されていると言えなくもない。
それよりも大きいのは、マイケルとローリーの血縁関係を否定していることだ。
2作目以降のマイケルは「血縁者を狙う殺人鬼」というキャラクターになっていたが、そこが大きく変化しているのだ。

変化しているというか、ようするに1作目の「どういう狙いで動いているのか全く分からない殺人鬼」の状態に戻したわけだね。
「その方が得体が知れなくて怖い」という風に、製作サイドは考えたらしい。
その考え方が絶対にダメだとは思わないけど、マイケル・マイヤーズの場合は「血縁者と邪魔する奴を殺す」ってのがアイデンティティーみたいになっていたわけで。
途中であっさりと破綻したけど、そこは踏襲した方が良かったんじゃないかなあ。そっちの方が、怖くなったように思うんだけどなあ。

まず、ローリーがアーロンたちを家に簡単に招き入れた時点で「ああ、これはダメな映画だな」と感じさせられる。
彼女は柵を作って立ち入り禁止の看板を出し、外部の人間との接触を徹底して避けている。玄関は厳重に施錠し、強い警戒心を持って生活している様子が見える。
そんな彼女が、3千ドルのギャラを提示されただけで記者を招き入れるってのは、あまりにも不用意だし理解し難い行為だ。
どうしてもアーロンたちがローリーに接触する手順を用意したいのなら、それを全否定はしない。
ただ、「ローリーが取材をOKして家に入れる」という展開については全面的に否定する。そこは他の方法を考えるべきだよ。

ローリーの家に入ったアーロンとデイナは、まず「事件を再考証したい」と言う。
でも具体的に、この2人が事件について何を知りたいと思っているのか、どういう切り口で事件を取り扱おうとしているのか、それがサッパリ分からない。
そこは最初の時点で、「2人の事件に対するスタンス」ってのを明確にしておいた方が絶対に得策だ。
それが仮に「間違った仮説に基づいた取材」であっても、それは一向に構わない。っていうか、むしろ間違った仮説に基づいて取材している設定の方が、何かと都合がいいぐらいだ。

アーロンは「ブギーマンは実在するんですか」と尋ねるが、この質問はワケが分からない。
マイケル・マイヤーズのことを「ブギーマン」と呼ぶわけで、だから「テメエたちが会ったばかりの男がブギーマンだよ」とツッコミを入れたくなる。
彼は「連続殺人犯のマイケル・マイヤーズは信じますけど、ブギーマンは無理です」と言うが、「ちょっと何言ってんのか分からない」と返したくなる。
この時点で、「アーロンたちのキャラ造形が定まっておらず、ボンヤリしまくっている」と強く感じる。

デイナは「貴方が狙われた理由が知りたい」と言うが、これは質問として納得できる。しかし、すぐさまアーロンが「結婚は二度失敗。娘さんやお孫さんとも上手く行っていない」と話すので、「それって今回の取材に関係あんのか」と言いたくなる。
それに対してローリーが「マイケル・マイヤーズは5人も殺した。でも人間だから理解すべきだって?私は無力な人間」と言うが、まるで会話が成立していない。
その後、デイナが「お嬢さんが当局に保護された時の話をしましょうか。お子さんが12歳の時、貴方は母親不適格とみなされた。親権は回復できたんですか」と言い出すが、これも「取材と何の関係が?」とツッコミたくなる。
ここの会話シーンで「ローリーの近況」を観客に説明しようとしているんだろうけど、その目的のために台詞や会話がデタラメ放題になっちゃってんのよ。

ケヴィンと父親が車で狩りに向かっていると、護送車が道を外れて停まっている。つまり、「マイケルが護送車で行動を起こした」というシーンを省略しているわけだ。
それが恐怖演出として効果的かと問われたら、答えはノーだと断言できる。そこでマイケルの「ブギーマンとしての動き」を見せた方がいいでしょ。
で、そこでの殺人を描いていないので、観客の前でマイケルに殺される最初の犠牲者はケヴィンってことになる。彼は14歳の設定なので、マイケルの標的としては幼すぎるんじゃないかと感じてしまう。
あと、「車のドアに頭を何度もぶつける」という殺害方法なんだけど、すんげえヌルい描写なのよね。

それと、ここで「ケヴィンが誤ってサルテインを撃つ」というシーンがあるけど、これは何のために持ち込んだ展開なのか分からないよ。
ここは「マイケルの恐怖を描く」ということだけに集中すべきポイントでしょうに。
「サルテインを負傷させて動きを止めておかないと、何かと都合が悪い。でもマイケルが襲ったとすれば間違いなく殺害するから、誤射による怪我という設定にしておこう」ってことだったりするんだろうなあ、たぶん。
でも、ものすごく不細工な処理だよなあ。

不細工な処理ってのは、「ジュディスの墓の前で、アーロンとデイナがレコーダーに向かって語る」というシーンでも同様のことが言える。
2人はマイケルがジュディスを殺した出来事について説明するんだけど、そんなの墓の前でレコーダーに向かって話す必要が無いでしょ。
いや「墓の前か否か」ってのが問題なのではなく、それをレコーダーに向かって話す必要性が無いのよ。
そんなことをする理由は1つで、「観客に説明するため」なのよ。そのために、2人に不自然な行動を取らせているのだ。
でも、そんなのは会話の中で触れるとか、幾らでも処理できる方法があるだろ。

マイケルがケヴィンを撲殺するシーンのヌルさは、「相手が14歳だから、あまり残酷な方法は使わなかった」ということかと思っていた。
しかしアーロンやデイナなど、以降の殺人シーンも全てヌルい。残酷描写に対する意識は、ものすごく低い。
直接的な残酷描写に頼らない分、代わりに何で怖がらせようとしているのかというと、そこのアイデアが見当たらない。
ジワジワと忍び寄る恐怖も、充分に表現できているとは言い難い。

あと、無意味で萎えるだけの肩透かし的な描写が、やたらと多いのも気になるぞ。
例えば、ヴィッキーとデイヴが殺されるシーン。
まず、誰かが包丁を洗っている様子が写し出されるが、それはヴィッキー。クローゼットのマイケル姿を現す前にはデイヴが移動してガレージへ行ったりする様子が写し出されるが、そっちが襲われるわけではない。
あと、デイヴが包丁を握るシーンはあるが、彼が殺される描写を描かないのも淡白になっているだけでプラスの効果は皆無だぞ。

サルテインが「彼が殺人からどんな喜びを得ているのか知りたい」と言うなど、マイケル・マイヤーズに魅了されている匂いがプンプンと漂っていたので嫌な予感はしたのだが、それが残念ながら最悪の形で的中してしまう。
終盤、ホーキンスがマイケルを殺そうとした時、サルテインは妨害するだけでなく、なんとホーキンスを始末するのだ。
でも、マイケル・マイヤーズが怖さを充分にアピールしているとは到底言えない状況で、それよりもサルテインのイカれ殺人鬼っぷりを見せ付けてどうすんのよ。

ローリーはマイケルの襲来に向けて準備しているが、「タフに戦うお婆ちゃん」というわけでもない。彼女は精神的に不安定になっており、マイケルの護送を見て絶叫したり、会食の場でオロオロと泣き出したりする。
実際に命を狙われる経験をしていれば、そんな風になってしまうのも分からなくはない。ただ、映画のキャラクターとして考えた場合、「クールに備えるタフな老女」という造形にしておいた方が絶対に魅力的だ。
それによって「マイケルの恐ろしさ」が減退するという可能性はあるが、それは見せ方次第だろう。
それに、ローリーの扱いに関わらず、そもそもマイケルの恐ろしさが著しく不足しているわけでね。

(観賞日:2020年11月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会