『ハロウィン II』:2009、アメリカ

マイケル・マイヤーズはスミスズ・グローヴ・サナトリウムに収監されていた少年時代、白い馬の出て来る夢を見た。その夢には、白い服を着た幽霊のような母のデボラも登場し、白馬と共に白い廊下を歩いてマイケルを迎えに来た。面会に訪れたデボラに、マイケルは夢のことを話した。「帰りたい」と漏らすマイケルに、デボラは「私も連れて帰りたい。白馬を見て私を思い出して」と告げ、持参した白馬の置物をプレゼントした。
15年後、マイケル・マイヤーズは連続殺人鬼となり、彼が兄だと知らない妹のローリーを狙った。銃を持って歩く傷だらけのローリーを見つけたリー・ブラケット保安官は、彼女に声を掛けた。ローリーは泣きながら、「男の人を殺した」と口にした。ローリーはヒステリー状態で病院へ移送され、メイプル医師が処置を施した。重傷を負ったサム・ルーミスとアニー・ブラケットも、病院へ移送された。
検死官のフックスとスコットは、マイケルの死体を救急車で運ぶ。だが、道路の真ん中にいた牛に激突し、フックスは即死した。重傷を負ったスコットは、意識を取り戻したマイケルに殺害された。病室で目を覚ましたローリーは、昏睡状態のアニーがいる部屋へ行き、涙を流して謝罪した。そこへ看護婦のダニエルズが来て、自分の病室に戻るよう告げた。そのダニエルズがマイケルに惨殺され、必死で逃げたローリーは夜警のバディーに助けを求めた。
マイケルはバディーを惨殺し、ローリーを追い詰めた。ローリーは悲鳴を上げるが、それは2年後の10月29日に彼女が見ていた夢だった。現在、ローリーはブラケットとアニー父娘の家で同居させてもらっている。ローリーは今も事件の悪夢に悩まされており、薬を常用している。また、彼女は精神科医のバーバラ・コリアーの元に通ってセラピーも受けている。バーバラは「死体が発見されていないから、貴方の頭の中でマイケルが生きている。それを何とかしないと問題は解決しない」と彼女に告げる。
ローリーはアニーとの関係を問われ、「良くないわ。彼女の顔にある傷跡を見る度に責任を感じて、それが怒りの感情になってしまう」と吐露した。壁に飾られているロールシャッハが気になったローリーに、バーバラは「この絵で貴方の潜在意識が分かるのよ」と教えた。バーバラから「何が見える?」と問われたローリーは、「白馬?」と口にした。セラピーの後、ローリーは叔父のミートが営む喫茶店「Java Hole」へ行く。彼女は友人のマヤ・ロックウェルやハーリー・デヴィッドと共に、その店で働いているのだ。
ルーミスはマイケルに関する著書がベストセラーとなり、2作目の出版会見をホテルで大々的に開く。彼はマネージャーのナンシー・マクドナルドに対し、傲慢な態度を取った。会見を始めたルーミスはジョークを交えて饒舌に話していたが、記者から「本当にマイケルが死んだと思いますか」という質問が飛ぶと不機嫌になり、「ここでハッキリ言っておくが、マイケル・マイヤーズは死んだ。能無しのお前らに改めて言うが、奴は死んだんだ」と怒鳴った。
マイケル・マイヤーズは死んでいなかった。古い納屋に足を踏み入れたマイケルは、純白のドレスを着たデボラの幻影に会う。デボラはマイケルに、「もうすぐハロウィンよ。準備しないと。今年こそ、みんなを我が家に」と告げる。少年時代の自分に戻ったマイケルは、「約束するよ」と答えた。納屋を出て歩いていたマイケルは、農夫のシャーマンとフロイドに農地荒らしの犯人と間違われ、暴行を受けた。シャーマンの娘ジャズリーンは倒れたマイケルに謝罪し、車へ戻る。マイケルは立ち上がり、3人を惨殺した。
マイケルがシャーマンの飼い犬を殺して食べ始めると、ブラケット家でピザを食べていたローリーは急に吐き気を催した。ベッドで眠りに就いたローリーは、少年時代のマイケルが「ブーを見つけたんだ。また家族に戻れる?」とデボラに尋ね、「まだよ」と言われる夢を見た。マイケルとデボラが眺めている相手は、台に寝かされているローリーだった。強烈な衝撃を受け、ローリーは目を覚ました。
10月30日。ルーミスは本の宣伝のため、かつてマイアーズ一家が暮らしていた家でテレビ取材を受けることにした。ナンシーは反対するが、ルーミスは「これは商売だ。君の意見など関係ない」と一蹴した。一方、ローリーは少年時代のマイケルのように仮面を被り、アニーを惨殺する幻覚を見た。バーバラのクリニックを訪れたローリーは、激しく取り乱す。バーバラが落ち着くよう諭すと、ローリーは「起きている時、発作に襲われた」と告げて薬の処方を求めた。バーバラに断られた彼女は、罵声を浴びせた。
帰宅して酒を飲んでいたローリーは、アニーに対して攻撃的な態度を取った。ストリップクラブを営むルーは、自分が取材を受けたテレビ番組をストリッパーのミスティーに見せて自慢する。ルーに反感を抱く用心棒のハワードは、ゴミ出しを命じられて怒りを抑える。店の外に出たハワードは、突っ立っているマイケルを目撃した。ヒッピーだと思い込んで追い払おうとしたハワードは、マイケルに殺された。マイケルは店に足を踏み入れ、ルーとミスティーを次々に殺害した。
10月31日。ルーミスの著書を読んだブラケットは、自宅に電話を掛けてローリーと話そうとする。受話器を取ったアニーからローリーが出掛けていることを聞かされた彼は、「すぐに話したいんだ。捜してくれ」と告げた。ルーミスがサイン会を開いていると、娘のリンダをマイケルに殺されたカイルという男が現れて怒りをぶつけ、拳銃を構えた。弾は入っていなかったが、彼は警官たちに取り押さえられた。ルーミスは車の中で、「あれも良い宣伝になる」とナンシーに告げた。
ルーミスの著書を読んだローリーは自分がマイケルの妹だと知り、激しいショックを受けた。彼女は荷物をまとめ、ブラケット家を出た。アニーから電話を受けたブラケットは事情を知り、保安官代理のニールに「私の家へ行って娘を見張ってくれ」と頼んだ。ローリーはマヤとハーリーの暮らす家を訪れ、泣きながら自分の出生を打ち明けた。泥酔したローリーは、「パーティーへ出掛けよう」と持ち掛けた。マヤとハーリーは反対するが、「大騒ぎしたいのよ」と言われて付き合うことにした。
パーティーに参加したローリーたちは、バンドの演奏で盛り上がる。ハーリーは狼男の仮装をした男に誘われ、彼のワゴン車へ行く。だが、小便をするため車を出た男も、帰りを待っていたハーリーも、マイケルに殺された。酔っ払ったローリーの前には、デボラと少年時代のマイケルが現れた。デボラは「家に帰るのよ」とローリーに呼び掛け、マイケルに「連れて行くの?」と問われて「もうすぐよ」と告げた。マイケルはブラケット家に現れてニールを殺し、アニーを襲った…。

脚本&監督はロブ・ゾンビ、製作はマレク・アッカド&アンディー・グールド&ロブ・ゾンビ、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&マシュー・スタイン&アンディ・ラ・マーカ、撮影はブランドン・トロスト、編集はグレン・ガーランド&ジョエル・T・パッシュビー、美術はギャレス・ストーヴァー、衣装はメアリー・マクロード、特殊メイクアップ効果はウェイン・トス、音楽はタイラー・ベイツ、テーマ曲はジョン・カーペンター。
出演はマルコム・マクダウェル、タイラー・メイン、シェリ・ムーン・ゾンビ、ブラッド・ドゥーリフ、スカウト・テイラー=コンプトン、ダニエル・ハリス、ブレア・グラント、ハワード・ヘッセマン、アンジェラ・トリンバー、メアリー・バードソング、ダニエル・ローバック、ビル・ファガーパッケ、リチャード・ブレイク、デイトン・キャリー、マーゴット・キダー、リチャード・リール、マーク・クリストファー・ローレンス、ジェフ・ダニエル・フィリップス、チェイス・ヴァネク、ミーガン・フェイ他。


2007年に公開されたリメイク版『ハロウィン』の続編。
オリジナル版には『ブギーマン』という続編があるが、そのリメイクではない。
脚本&監督は前作に引き続いてロブ・ゾンビ。
ルーミス役のマルコム・マクダウェル、マイケル役のタイラー・メイン、デボラ役のシェリ・ムーン・ゾンビ、ブラケット役のブラッド・ドゥーリフ、ローリー役のスカウト・テイラー=コンプトン、アニー役のダニエル・ハリス、ルー役のダニエル・ローバックは前作からの続投。マヤをブレア・グラント、ミートをハワード・ヘッセマン、ハーリーをアンジェラ・トリンバー、ナンシーをメアリー・バードソングが演じている。
バーバラ役で『悪魔の棲む家』のマーゴット・キダー、メイプル役で『悪魔のいけにえ2』キャロライン・ウィリアムズが出演している。

今回のサム・ルーミスは、ナンシーに偉そうな態度で文句ばかり言って色々と要求し、「マイケルには私が父親代わりだった」と得意げに会見で語る。
真剣な質問を受けてもジョークを交えるという不謹慎な態度を取り、15人の犠牲者が出ていることに関しても「個人的な責任は無い」と言い切る。マイケルを利用して有名になり、調子に乗って高慢で身勝手な態度を取る。
本を売るためには何だってやる、心の腐り切った守銭奴になっている。
繰り返しになるが、何もオリジナル版と全て同じことをやれとは言わない。
ただ、ルーミスという男を、人の不幸を食い物にするような見下げ果てた男に変貌させてしまうのは、あまりにもオリジナル版へのリスペクトが無さすぎやしないか。
ドナルド・プレザンスも草葉の陰で泣いてるぞ。

冒頭、夢に出て来る白馬が潜在的な意識における「混乱や破壊を招く怒りなどの本能・純真・体を動かす衝動を象徴する存在」であることがテロップで説明される。
少年時代のマイケルが白馬の夢を見ていたこと、デボラが置物をプレゼントしたことが示される。
そこまで丁寧にネタを振っているぐらいだから、この作品において「白馬」は重要なキーワードとなるのかと思ったら、その後は白い服のデボラばかりが幻影として登場し、白馬はちっとも出て来ないのであった。
どういうつもりだよ。

タイトルが出た後、前作のラストからの続きが描かれる。
ブラケットに発見された傷だらけのローリーがパニック状態のまま病院へ担ぎ込まれ、マイケルの死体が救急車で移送される。で、マイケルが意識を取り戻してローリーの元へ行くのだが、ここでローリーが悲鳴を上げて目を覚ます。
つまり、「それは夢でした」ということなのだが、その肩透かしは要らんわ。
それと、救急車が牛に激突して事故を起こし、フックスが即死するってのは、描写として半端でしょ。そこはマイケルが2人とも殺す形にしておけよ。

あと、そこを夢オチにすることで、「どこまでが夢なのか」という疑問が生じるんだよな。
救急車の出来事も夢だとすると、「マイケルが純白のドレスを着た母&白馬の幻影を見る」という描写は整合性が取れなくなる。
それはマイケルの幻影じゃなきゃ成立しないはずだから、「それもローリーの夢」ってことだとマズい。
しかし、実際に救急車の事故が発生しているとすると、今度は「その事件が放置されたまま月日が経過し、死体が発見されていないのにマイケルが死んだことになっている」という部分で整合性が取れなくなる。

「それは全て夢でした」と明かされた時点で、映画開始から約25分が経過している。
その時間の使い方は、まるで賛同できないぞ。
いや、「今でもローリーがマイケルの幻影に悩まされている」という入り方をするのは、そんなに悪いことじゃないと思うのよ。
で、それを表現するために「悪夢を見て目を覚ます」という形を取るのも、決して間違った方法ではない。
ただ、幾ら何でも夢のシーンが長すぎるし、前述したように整合性が取れなくなっちゃってるので、やっぱりマズいわ。

夢から覚めて現在の様子が写し出されると、悪夢に悩むローリーが「あのクソ女、神様みたいに私を裁く」とバーバラの悪口を喚き散らし、それに対してアニーが「私に何と言ってほしいの?」と声を荒らげて「慰めてほしいの?」と鼻で笑う。
「どうでもいいんでしょ」とローリーが反発すると、アニーが「ええ、そうね」と言い返す。すんげえ仲が悪い。
いやいや、その描写は違和感たっぷりだわ。
そういう描写を入れることによって、どちらの好感度も下がってしまうし、何のメリットも無いでしょ。

バーバラのクリニックでロールシャッハ・テストを受けたローリーは、「白馬」と答える。ってことは、彼女の潜在意識にも白馬があるということになる。
そうなると、前述した「彼女の夢の中で、マイケルが白馬の幻影を見る」という描写も、整合性が取れると言えなくも無い。
ただ、まだデボラの幻影に関しては無理が残る。
っていうか、根本的な問題として、「ローリーが何度も幻覚を見る」の要素が邪魔だと感じるのよ。

幻覚を盛り込むことで幻想的な雰囲気は出るけど、それってホントに『ハロウィン』で必要なことなのかと。
そのせいで肝心の「マイケル・マイヤーズが殺人を繰り返す」という部分の恐怖がすっかり薄まっている。
しかも、ローリーが怒りの衝動を抱えており、自分が殺人鬼になる幻覚まで見る展開を入れることによって、「彼女がヤバいことになってしまうのでは」というところに恐怖のポイントが置かれてしまう。ますます恐怖の対象からマイケルが外れる。
「ローリーがマイケルと精神的に繋がっている」という描写は旧シリーズ第5作『ハロウィン5/ブギーマン逆襲』のジェイミーを連想させるし、ローリーがマイケルの魂を引き継いでイカレるというのはシリーズ第4作『ハロウィン4/ブギーマン復活』のジェイミーを連想させるが、駄作のダメな要素を真似してどうすんのかと。

あまりにもローリーの幻影が重視されているせいで、「もはやマイケル・マイヤーズが出て来なくても成立するんじゃねえか」とさえ感じてしまう。
「マイケルの幻影に悩まされ、怒りの衝動を抱えていたローリーが、マイケルのような殺人鬼に変貌してしまう」という物語として作った方が、まとまりは出る。
ただし、マイケルの出て来ない『ハロウィン』シリーズなんて、ベタな言い方をするならばクリープを入れないコーヒーみたいなモンだから、そんなの誰にも歓迎されないだろうけど。
実際、旧シリーズの第3作『ハロウィンIII』がそれでコケたわけだし。

前作でロブ・ゾンビは全体の3分の1ほどの時間を使い、マイケル・マイヤーズの少年時代を描写した。
最初からマイケルが殺人衝動の強い少年として登場したために、「ごく普通の少年だったマイケルが殺人鬼に変貌していく過程や理由」は描かれなかった。
前半の物語が後半の展開に上手く繋がっておらず、バッサリとカットしても大きな影響はないという状態になっていた。
だから、その改変が効果的だったとは言えないが、ともかくロブ・ゾンビがマイケルを「怪物」ではなく「人間」として描こうとしたことは確かだ。

ただ、そもそもマイケル・マイヤーズに人間性を持たせようとしていること自体が、アプローチとして間違っているのではないかと私は感じた。
オリジナル版『ハロウィン』(1作目限定ね)のマイケル・マイヤーズは、「無言で感情が見えず、得体の知れない男」というところに殺人鬼としての魅力があったのだ。
もちろんオリジナル版の全てを模倣しろとは言わないが(だったらリメイクする意味なんて無いんだし)、そこは踏襲すべき箇所だったんじゃないかと。
しかしロブ・ゾンビは前作のアプローチが正しかったと思っているようで、今回もマイケル・マイヤーズを「怪物」から「人間」に作り変える作業を積極的に行っている。

マイケルは母親の幻影に「ハロウィンの準備をしないと」と言われ、少年時代の心で「みんなを集める」と約束する。その後も、マイケルが登場する度に、その傍らにはデボラと少年時代のマイケルが寄り添っている。そしてデボラがマイケルに語り掛け、彼を行動させる。
それはロブ・ゾンビがマイケルを「人間」として描こうとしていることが最も顕著に表れている部分だが、要らないなあ、そういうの。
「母親の言葉に背中を押されて行動する」って、『サイコ』じゃねえんだから。
マイケルを「人間」にするってのを全面的に否定しようとは思わないけど、「母親が大好きで、母親の幻影に動かされている」というマザコンのキャラにすることで人間性を見せようってのは、そりゃアプローチとして違うんじゃないかと。
しかも、マイケルよりデボラの方が存在感がデカくなってるぞ。
まさかロブ・ゾンビ監督、テメエの奥さんを目立たせるために、そんな形にしたんじゃないだろうな。

デボラの幻影が言うことを信じるなら、マイケルの狙いは「ローリーを連れて来ること」にあるはずだ。
「連れて来る」だと「じゃあ殺す必要は無いよね」ってことになるから、そこは「既に死んだデボラの元へ連れて行く。つまり殺すという意味」と解釈しておこう。
で、しかしローリーしか狙わないってことだと犠牲者が出ないので、マイケルが他の連中も殺すように仕向けないといけない。
だが、この映画、そこの工夫が不足している。
農夫たちに関しては「マイケルを攻撃したから報復を受けた」ってことで理解できるが、ハーリーと男を殺す理由はサッパリ分からん。
ハーリーはマイケルの身内じゃないし、ローリーと間違えて殺したわけでもないし、マイケルの行動を妨害したわけでもないし、ローリーを守ろうとしたわけでもないんだから。

(観賞日:2014年4月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会