『フロム・ダスク・ティル・ドーン3』:1999、アメリカ

作家のアンブローズ・ビアスがメキシコの田舎町に来ると、公開処刑が執行されるところだった。絞首刑の準備が進み、見物人が集まって来た。メアリー・ニューリーは険しい表情を浮かべ、神父である夫のジョンに「絞首刑なんて見たくないわ。まだ出発できないの?」と告げた。ビアスは酒場の主人にパンチョ・ビリャの居場所を尋ね、「宝物を持って来た」と話す。そんな彼の様子を、1人の少年が見ていた。ビアスはパンチョ・ビリャの元へ行くために馬車へ向かい、近くにいたジョンと挨拶を交わした。
強盗のジョニー・マドリッドが兵隊に連行され、処刑台に乗せられた。処刑人が処刑台に上がり、反抗的な態度を取るジョニーの背中を鞭で何度も打ち付けた。見物人の中に娘のエスメラルダを見つけた彼は、「何をしてる?帰れ」と怒鳴った。「見たいの」とエスメラルダが拒否すると、処刑人は彼女を処刑台に引っ張り出して鞭で打つ。絞首刑が執行されようとした時、あの少年がライフルでロープを射抜いた。ジョニーは処刑台から逃走し、襲って来る連中を倒して手首の拘束を解いた。
兵士たちが激しく銃撃する中、少年はジョニーに拳銃を投げ渡す。ジョニーは兵隊に反撃し、少年は馬を逃がして加勢した。ジョニーはエスメラルダを馬に乗せ、町から脱出した。処刑人が銃撃していると、部下が「娘さんですよ」と制止する。処刑人は「逃がすなら殺した方がいい」と言い、馬を取って来るよう命じた。一方、ビアスとニューリー夫婦を乗せた馬車は、ティエラ・ネグラの町へ向かっていた。ニューリー夫妻はティエラ・ネグラで学校を開こうとしていた。
ビアスが聖書を「嘘ばかりが記された書物だ」と酷評するので、メアリーは腹を立てた。彼女からティエラ・ネグラへ行く目的を問われたビアスは、「パンチョ・ビリャと会う。高価な宝物を渡すのが私の使命だ」と述べた。ジョニーは自分を裏切った仲間のホアキンがいる洞窟へ行き、「見殺しか?」と責めるように尋ねた。ホアキンは慌てて、「チャトの命令で。あいつは自分が新しいボスだって」と釈明した。チャトが川に行っているというので、ジョニーは「呼べ」と命じた。
ホアキンがチャトを呼びに行った後、ジョニーはエスメラルダに「助けてくれる親類はいないのか?母親は?」と質問する。エスメラルダは彼に、親類はおらず、母親は死んでいること、父から「お前は母親を殺して生まれて来た」と言われたことを話す。ジョニーは彼女に「ティエラ・ネグラに知り合いがいる。そいつの所で働け」と述べた。チャトが仲間を連れて現れ、拳銃を抜こうとした。ジョニーは発砲し、チャトを始末した。仲間たちはジョニーの帰還を歓迎した。
ジョニーの仲間たちは、隠れていた少年を見つけた。ジョニーの前に連行されて来た少年は、「アンタの弟子にしてくれ」と申し入れた。「ガキに構っている暇は無い、消え失せろ」とジョニーが告げると、少年は「アンタみたいな伝説の無法者になりたいんだ」と口にした。ジョニーが何かに気付いて帽子を取ると、少年ではなく女だった。ジョニーが仲間たちに「殺せ」と命じると、そのリースという女は拳銃を構えて「仲間にしてくれ。迷惑は掛けない」と告げた。
リースはジョニーたちに、ビアスが「パンチョ・ビリャに宝物を届ける」と話していたことを教えた。ジョニーは「嘘なら殺すぞ」と彼女を脅したうえで、ビアスの乗った馬車を襲撃することにした。ビアスはメアリーが莫大な遺産を相続したと知り、ジョンが金目当てで結婚したのだろうと皮肉っぽく指摘した。ジョニーの率いる盗賊は馬車を襲撃し、御者を射殺した。ビアスは馬車に乗り移ったホキアンを銃撃しようとするが、ジョンとメアリーに邪魔された。
ジョニーは宝物が金塊だと確信して馬車を調べるが、そんな物はどこにも無かった。ビアスはジョニーに「宝物はどこだ?」と問われ、「私自身さ。ビリャに仕えて革命を起こす」と答えた。金塊が無いと知ったジョニーは、その場から引き上げた。ビアスはジョンを殴り、「見てるだけで何もしない腰抜けが」と罵った。するとジョンは激昂し、ビアスを殴り返した。ビアスとニューリー夫妻は砂漠に辿り着き、馬車を捨てて徒歩で移動した。
ジョニーは伝説の無法者になる夢を嬉々として語るリースを連れて、墓地へ赴いた。彼は「人を怖がらせることが必要だ。そのためには、まず自分が恐怖を知ることだ」と言い、十字架に乗って首を吊るよう要求した。エスメラルダが「やめて」と反対しても、ジョニーは無視した。ジョニーは怖がるリースを罵倒し、嘲笑った。ジョニーがリースを宙吊りにすると、エスメラルダは馬で走り去った。ジョニーは仲間たちに「追い掛けろ」と命じるが、「女のことは知らねえ。俺たちはティエラ・ネグラへ行く」と告げられた。
ビアスたちは砂漠の真ん中で寂れた酒場を見つけ、中に入った。誰もいないように見えたが、炎が沸き立ったことに驚いて振り向くと、カウンターにはバーテンのレーザー・チャーリーがいた。ニューリー夫妻は宿泊させてくれるよう頼み、ビアスは酒を注文した。ジョニーはエスメラルダに追い付き、唇を重ねてきた彼女を連れてティエラ・ネグラへ向かった。酒場には宿の女将であるクイクスラが現れ、ニューリー夫妻に「部屋へ案内するわ」と告げた。
処刑人と部下たちは墓地に到着し、まだ生きていたリースを助けた。処刑人は「お前のせいで奴に逃げられたんだぞ」と彼女を睨み付け、部下たちに「連れて行け」と命じた。夜になり、酒場は大勢の客や楽隊や女たちで騒がしくなっていた。エズラという行商人はビアスの隣に座り、酒を注文した。彼はチャーリーに「金は無い」と悪びれずに言い、「代わりになる物がある」と商品のブラシを見せた。「そんな物は要らない」とチャーリーに冷たく言われるエズラを見ていたビアスは、「私が一杯おごろう」と告げた。
クイクスラがニューリー夫妻を案内した宿泊施設では、娼婦たちが商売に励んでいた。クイクスラは夫妻を部屋に連れて行き、夕食の準備が出来たら知らせるわ」と告げて立ち去った。ジョンははメアリーにキスをして肉体関係を求めるが、拒否されて不満そうな態度を示す。結婚して1週間が経過したが、まだメアリーはジョンに体を許していなかった。部屋にコウモリが現れたので、メアリーは悲鳴を上げ、ジョンが追い払った。
ジョンはメアリーから「水を貰って来て」と頼まれ、部屋を出た。彼が娼婦のいる部屋を覗いていると、クイクスラが声を掛けた。ジョンは彼女に誘惑され、近くの部屋に入って肉体関係を持った。娼婦たちを呼んで盛り上がっていたのは、ホアキンたちだった。兵隊が酒場に来る中、ビアスとエズラはテーブル席に移動して会話を交わしていた。いい気分で酒場に戻って来たジョンは、チャーリーに酒を注文した。ジョニーはエスメラルダを連れて、酒場に到着した。
ジョニーは「馬が心配だからを見て来る」と言い、先に入るようエスメラルダに告げた。エスメラルダが酒場に入ると、クイクスラが背中の傷を見て「誰の仕業?」と問い掛けた。エスメラルダが「父親が」と告げると、クイクスラは背中の血を舐めた。クイクスラが自分の名前を知っていたので、エスメラルダは驚いた。ジョニーが馬小屋へ行くと、馬子が馬の肉を食らっていた。馬子が襲い掛かって来たので、ジョニーは拳銃を発砲した。
いつの間にか転寝していたメアリーは目を覚まし、ジョンを捜しに行こうとする。しかし廊下でホアキンと遭遇し、捕まってしまった。酒場に入ったジョニーはビアスに気付き、エスメラルダがどこに行ったのか尋ねた。強盗の1人が酒場に来たので、ジョンはチャーリーから渡された棍棒で殴り掛かった。ジョニーはクイクスラの部屋にいるエスメラルダの元へ行き、「行くぞ」と告げる。エスメラルダは拒むが、ジョニーは強引に連れて行こうとする。クイクスラが立ちはだかると、ジョニーは彼女を撃った。
ジョンが盗賊を殴り続けていると、ホアキンがメアリーを連れて酒場に現れた。「奥さんを殺すぞ」とホアキンが脅すと、ジョンは盗賊を刺殺した。彼はナイフを構え、「次はお前だ」とホアキンに言い放った。ホアキンが飛び掛かり、ジョンと激しい争いを始めた。店内に落ちた死人の血を、チャーリーや女たちが舐めた。ジョニーがエスメラルダを連れて酒場へ戻って来たところへ、処刑人が兵隊を率いて現れた。処刑人とジョニーが撃ち合う中で、店に大きな異変が起きる…。

監督はP・J・ペッシェ、原案はアルヴァロ・ロドリゲス&ロバート・ロドリゲス、脚本はアルヴァロ・ロドリゲス、製作はジャンニ・ヌナリ&マイアー・テパー&マイケル・S・マーフィー、製作総指揮はローレンス・ベンダー&ロバート・ロドリゲス&クエンティン・タランティーノ、共同製作はエリザベス・アヴェラン&ポール・ラレー、撮影はマイク・ボンヴィレイン、編集はフェリペ・フェルナンデス・デル・パソ、衣装はローリー・カニンガム、特殊メイクアップ効果はロバート・カーツマン&グレゴリー・ニコテロ&ハワード・バーガー、音楽はネイサン・バー。
出演はマルコ・レオナルディー、マイケル・パークス、ソニア・ブラガ、テムエラ・モリソン、レベッカ・ゲイハート、アラ・セリ、レニー・ロフティン、オーランド・ジョーンズ、ダニー・トレホ、ジョルダーナ・スパイロ、ケヴィン・スミス、テレンス・ブリジェット、ミッキー・ジャコマッツィー、アイヴァン・D・ルーカス、トム・バート、グレアム・ウィアー、カルロス・ヴィレラ、リチャード・トムソン、ランス・カディッシュ、ピエール・ニースリング、ダニー・キーオ、ルイス・キッス他。


『フロム・ダスク・ティル・ドーン』シリーズの第3作。
ジョニーをマルコ・レオナルディー、クイクスラをソニア・ブラガ、処刑人をテムエラ・モリソン、メアリーを レベッカ・ゲイハート、エスメラルダをアラ・セリ、ジョンをレニー・ロフティン、エズラをオーランド・ジョーンズ、リースを ジョルダーナ・スパイロが演じている。
前作と同様に、本国のアメリカ合衆国では劇場公開されず、ビデオ作品としてリリースされている。
ポンコツ映画愛護協会では基本的にビデオ作品は取り上げないのだが、この作品は「駄作100選」にノミネートされているため、特例として扱うことにする。

1作目でテキサス・レンジャーのアール・マッグロウを演じていたマイケル・パークスが、アンブローズ・ビアス役で登場する。
ホアキン役のケヴィン・スミスは前作に引き続いての登場だが、配役が異なる(ちなみに映画監督のケヴィン・スミスじゃないよ)。
3作全てに出演しているのはダニー・トレホだけ。
彼は1作目で「レーザー・チャーリー」、2作目で「レーザー・エディー」という名前のバーテンを演じており、今回は「レーザー・チャーリー」に戻っている。

ビアスは『悪魔の辞典』で有名な作家だが、1913年に革命で混乱状態にあったメキシコへ入国し、パンチョ・ビリャ軍に加わって戦地取材を行っている。しかし、その後に旧友宛ての手紙を残し、消息を絶った。
そんなビアスがパンチョ・ビリャ軍に加わる直前の出来事として、この物語は作られている。
この映画における彼のポジションが実在の人物であるアンブローズ・ビアスになっている必要性があるのかと問われると、それは全く無い。
ただ、著名人を登場させることで、観客を引き付けやすくするという効果はあるだろう。

今回は前2作と異なり、時代設定が1913年になっている。
似たようなパターンでしか物語を構築できないシリーズ作品で、舞台となる場所や時代を変更してマンネリズムを少しでも解消しようというのは、容易に思い付くが、そう悪くもないアイデアだ。
ただし、この映画はホントに「ただ時代を変えただけ」で思考が停止しており、中身はほとんど1作目のリメイクと化している。
それはダメでしょ。

2作目の批評でも書いたのだが、そもそも続編を作るという時点で無謀だ。
1作目は「途中まではクライム・サスペンス、酒場に入ったら吸血鬼が登場するアクション・ホラー。前半と後半でガラリと話が変わる」というアイデアのみで勝負している映画であり、続編ではその「途中で吸血鬼が現れて襲い掛かってくる」ということが最初から分かっているので、そこにサプライズ効果が期待できないのだ。
で、サプライズ効果が期待できないにも関わらず、この映画は1作目で同じことをやっているわけで、果たして何がやりたかったのかと言いたくなる。
繰り返しになるけど、途中で急にテイストが変化して吸血鬼が登場しても、「いや、最初から知ってたし」ってことになるでしょうに。
しかも、こっちは吸血鬼が登場することが分かっているので、そこまでの物語が「急な変化が訪れるまでの長いネタ振り」に過ぎないことも知っている。
それが分かった上で見せられる物語は、ただ長くて退屈なだけだ。

「吸血鬼が登場するまでのネタ振り」ということを抜きにしても、単純にマカロニ・ウエスタンとして面白く仕上がっていれば、それはそれでOKだと思うのよ。だけど1作目と同様に、退屈な話がダラダラと続くだけ。
前述した「急展開」という仕掛けを活かすために、マカロニ・ウエスタンとしては凡庸でケレン味も茶目っ気も無い中身にしてあるのかもしれない。
でも、何度も書くけど、どんな展開が待ち受けているかは分かっているだけに、そこが凡庸だとホントに「なんにも見所が無い」ということになってしまうのだ。
ビアスが幻覚に落ちるシーンは何度かあるけど、それが面白いわけでもなく、「だから何なのか」って感じだし。

そのビアスは「パンチョ・ビリャと会い、彼に宝物を渡す」と話している。
わざわざ2度も同じことをセリフで示しているぐらいだし、宝物の中身をメアリーが気にすると「それを明かしてしまったら、貴方を口封じに殺さなくてはいけなくなる」とまで言っているんだから、「その宝物は何なのか」ってことに興味を持たせようとしていることは明白だ。
で、その狙いに乗っかって、そこに関心を抱きながら映画を見ていると、「その宝物はビアス自身のことだった」という答えが待ち受けている。
なんだ、そりゃ。
そういうのを俗に、「肩透かし」と呼ぶ。

ビアスには隠している秘密があって、それを宝物と称しているってことなら理解できるのよ。
例えば、誰かの極秘情報や弱みを握っているとか、宝のありかを知っているとか、体に宝の地図の刺青があるとか、まあ何でもいいけど、そういうことじゃないのよ。
ホントに「ビアスという優れた人物が宝物」という意味なのだ。
アホかと。心底からアホかと。
「いかにもビアスらしい大きなホラだね」と余裕で受け入れるほどの寛容さは、ワシには無いわ。

酒場が登場しても、すぐに吸血鬼が登場するわけではない。主要キャストの全員が酒場に集結するのを待たなければいけない。
処刑人やリースたちが酒場に到着して準備は整い、開始から1時間3分後、ようやく吸血鬼たちが目覚める。
その時点で、もう作品の約3分の2が経過している。1作目よりも、「急変が生じるまでの話」が占める割合が増えている。
前述したように、吸血鬼が現れるまでの物語は、ただのネタ振りでしかない。
で、ただのネタ振りに作品の約3分の2を費やすんだから、贅沢だよね。いや、ホント、贅沢だ。
でも作品としての仕上がりは、とっても安っぽい。

あとさ、「似たようなパターンでしか物語を構築できないシリーズ作品」と書いたけど、この作品って、そうじゃないんだよね。
「夕暮れから夜明けまでの時間帯に吸血鬼が襲って来る」という部分を踏襲すればいいだけなんだから、パターンを大きく変更することは充分に可能なのよ。
それをやらずに1作目を真似たようなシナリオに仕上げているのは、ただの手抜きと思われても仕方が無いでしょ。

(観賞日:2013年12月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会