『フロム・ダスク・ティル・ドーン2』:1999、アメリカ

真夜中まで残業していた弁護士のバリーとパムが、ビルのりエレベーターに乗り込んだ。しかし明かりが消えて、エレベーターが途中で停止してしまう。バリーが調べようとエレベーターの天井を開けると、点検係の死体が降って来た。バリーがエレベーターシャフトの上を懐中電灯で照らすと、コウモリの群れが襲い掛かって来た。バリーは惨殺され、悲鳴を上げたパムも襲撃を受けた。コウモリがワイヤーを噛み千切ったため、エレベーターは1階まで落下した。ドアが開き、コウモリの群れが飛び出した。
バックはマーシーという女と情事に及んでいたが、中断してテレビを見る。するとニュース番組が放送されており、銀行強盗のルーサーが護送中に脱走したことが報じられていた。ルーサーの元仲間であるバックは、「すげえ、まんまと警察を出し抜きやがった」と笑った。ニュース番組では、かつてバックを銀行強盗で捕まえたローソン保安官が取材を受け、「奴を必ず捕まえる」と息巻いていた。
ローソンはマッグロウ保安官補を連れてバックの家に押し掛け、ルーサーの居場所を尋ねる。「足を洗ってからは、連絡は無い」とバックは言うが、ローソンは「奴は必ず連絡して来る。そのと気を我々は待つ。覚えとけ」と告げて立ち去った。ルーサーはバックに電話を掛け、「メキシコの例の銀行を狙う。やるなら早い方がいい。麻薬絡みの金がある。仲間を集めろ。明日の夜、国境のモーテルで落ち合おう。エル・コヨーテというモーテルだ」と話した。
バックは昔の仲間であるCW、ヘスス、レイ・ボブに声を掛け、銀行強盗への参加を持ち掛ける。レイを能無しだと見下しているヘススは不快感を示すが、結局は仲間に入った。4人はヘススの用意した車に乗り込み、国境を目指す。モーテルに到着した4人は、ルーペという色っぽい女を見掛ける。みんなが目を奪われるが、特にヘススは彼女への強い欲情を見せた。一方、メキシコにいたルーサーは車で夜道を走っていたが、コウモリに激突する。彼は車を停め、ボンネットから飛び出したコウモリを射殺した。
車が故障して動かなくなったため、ルーサーは仕方なく歩き出した。彼はティティー・ツイスターという酒場を見つけ、足を踏み入れた。ルーサーはバーテンのレーザー・エディーに声を掛け、タクシーを呼びたいと告げた。するとエディーは、「この店にタクシーを呼べる可能性はゼロだ」と述べた。コウモリがぶつかって車が故障してしまったことをルーサーが話すと、彼は「あと30分で仕事は終わりだ。乗っていくか」と持ち掛けた。ルーサーはモーテル電話を掛け、これから向かうことをバックに告げた。
ルーサーはエディーの車に同乗し、モーテルへ向かう。その途中でルーサーが「君の悪いコウモリだった。射殺してやった」と話すと、エディーは険しい表情に変わり、車のスピードを上げた。彼はルーサーの車がある場所へ行き、「すぐ終わる。来な」と告げた。彼がルーサーの車に歩み寄ると、コウモリの死体は消えていた。エディーは「ヴィクター」と言いながら、ルーサーに背を向けて歩いて行く。暗闇の中から重傷を負ったヴィクターという男が現れ、エディーに「助かりそうにない」と告げた。
ルーサーが「早く病院に連れて行かないと」と告げると、エディーはヴィクターに「こいつか」と確認する。ヴィクターは「こいつだ。仇を討ってくれ」と言い、腹に撃ち込まれた弾丸を取り出した。それはルーサーがコウモリに撃ち込んだ弾丸だった。ヴィクターが倒れ込み、エディーは吸血鬼に変貌して吠えた。ルーサーは銃を乱射し、エディーを始末して立ち去ろうとする。しかしエディーもヴィクターも、死んでいなかった。ヴィクターは車で逃げようとしたルーサーを襲い、首に噛み付いた。
モーテルでは、4人がテレビでポルノ映画を見ながら、会話を交わしていた。CWが「一度だけならチョイ役で出演したことがある」と話すと、ヘススはカルロスという友人のことを語り出した。妹がポルノ映画に出ているのを知ったカルロスは、ショットガンを手にして撮影現場に乗り込んだ。完全にブチ切れたカルロスは、監督、カメラマン、男優、ドーナツの配達に来た男を次々に射殺した。
話し終えたヘススは苛立ちを示し、「散歩に行ってくる」と告げて部屋を出た。レイはバックとCWに、「賭けてもいいけど、あいつ、さっきの女の部屋に行くんだぜ」と告げた。それは的中しており、ヘススはルーペの部屋で彼女とセックスした。一戦交えたヘススがベッドで眠り込んでいる間に、ルーペはシャワーを浴びる。そこにコウモリが侵入し、彼女を惨殺した。目を覚ましたヘススは、浴室から床に広がる血の染みに気付く。浴室のドアを開けようとすると、ルーサーが出て来た。
ルーサーが「ちょっと味見に寄ったんだ」と笑うので、ヘススは浴室を覗き込む。浴室が血まみれなのを見た彼が「ふざけんな」と語気を強めると、ルーサーは牙を剥いて襲い掛かった。聖書の表紙にある十字架を見た彼が怯んだので、その隙にヘススは浴室へ逃げ込んでドアを閉めた。しかしルーペが吸血鬼として復活し、ヘススに襲い掛かった。ヘススは彼女を始末して窓から外へ飛び出すが、そこにルーサーが現れて噛み付いた。その様子を目撃した客室係は慌てて警察に電話を掛けるが、ルーサーに噛み付かれた。
ルーサーはヘススを連れてバックたちの部屋へ行き、銀行強盗の計画を説明する。彼が「決行は今夜だ」と言い出したので、バックは「いつも周到に準備するのがお前のやり方だったはず」と違和感を口にする。「俺のやり方に従ってもらう。嫌なら帰ってくれ」と彼が言うので、バックは「なぜそんなに急ぐんだ?」と尋ねる。ルーサーは「フロントの女に顔を見られたんだ。俺のことを知ってるみたいだった」と話した。結局、全員がルーサーに乗ることを決め、モーテルを後にした。
バックたちがの夜中の銀行に到着すると、ルーサーはヘススに「荷物を下ろしたら車を正面に回しておけ。俺がドアを開ける」と告げた。ルーサーはバックたちから離れるとコウモリに変身し、排気ダクトを使って銀行に侵入した。彼は警備員を殺害して鍵を奪い、銀行のドアを開けた。警備員の死体を目にしたバックが「なぜ殺した?」と訊くと、ルーサーは「やられるところだった」と告げた。バックはレイに「奴は変わったな」と囁いた。
ルーサーはCWを連れて、金庫室に入った。金庫のハンドルが十字だったので、ルーサーは上着を被せて見えないようにした。金庫の扉を開けようとしたCWは、邪魔になった上着をハンドルから取り去る。牙を剥いて正体を知られたルーサーは、CWに襲い掛かった。バックはパトカーが迫っているのを目撃し、金庫室へ行って「早く逃げよう」とルーサーたちに告げる。しかしCWは「うるさい」と怒鳴り、ルーサーは「逃げたいなら勝手にしろ」と冷徹な笑みを浮かべた。
バックはレイに「一緒に逃げるぞ」と告げ、ヘススにも声を掛ける。しかしヘススが留まることを選んだので、バックはレイと2人で銀行の外に出た。しかしパトカーに挟み撃ちにされたので、慌てて銀行に舞い戻った。警官隊が銀行を包囲し、ローソンも駆け付けた。バックは電話を掛けて来たローソンに取り引きを持ち掛けるが、ヘススが妨害した。彼は怪力でバックを投げ飛ばし、電話線を切った。署長の指令を受けたSWAT隊員2名は、催涙弾を投げ込んで突入しようとするが、ルーサーに始末された…。

監督はスコット・スピーゲル、原案はスコット・スピーゲル&ボアズ・イェーキン、脚本はスコット・スピーゲル&デュエイン・ウィテカー、製作はジャンニ・ヌナリ&マイアー・テパー&マイケル・マーフィー、製作総指揮はローレンス・ベンダー&ロバート・ロドリゲス&クエンティン・タランティーノ、共同製作はエリザベス・アヴェラン&ポール・レイリー、撮影はフィリップ・リー、編集はボブ・ムロウスキー、美術はフェリペ・フェルナンデス・デル・パソ、衣装はローリー・カニンガム、特殊メイクアップ効果はロバート・カーツマン&グレゴリー・ニコテロ&ハワード・バーガー、音楽はジョセフ・スタンリー・ウィリアムズ。
出演はロバート・パトリック、ボー・ホプキンス、デュエイン・ウィテカー、ミューズ・ワトソン、ブレット・ハレルソン、レイモンド・クルツ、ティファニー=アンバー・ティーセン、ダニー・トレホ、ステイシー・ボージャス、ジェームズ・パークス、マリア・チェカ、ジョー・ヴァージ、ブルース・キャンベル、ジェームズ・ライアン、ララ・バイ、テリー・ノートン、ショーン・アーノルズ、ケヴィン・スミス、スコット・スピーゲル、トロイ・ニーマンス、リアーヌ・コイラー、スコット・ロジャース、ラノン・プリッジ、エディー・フィオラ他。


1996年の映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の続編。
北米では劇場公開されず、ビデオ作品としてリリースされている。
ポンコツ映画愛護協会では基本的にビデオ作品は取り上げないのだが、この作品は「駄作100選」にノミネートされているため、特例として扱うことにする。

原題のサブタイトルは「Texas Blood Money」なのだが、舞台はメキシコであり、ちっとも「テキサスの血塗られた現金」じゃない。
前作に続いて登場するのはダニー・トレホのみで、前作に引き続いてバーテンなのだが、役名が「レーザー・チャーリー」から「レーザー・エディー」に変わっている。前作でチャーリーは死んでいるはずなので、たぶん別のキャラってことなんだろう。
バックをロバート・パトリック、ローソンをボー・ホプキンス、ルーサーをデュエイン・ウィテカー、CWをミューズ・ワトソン、レイをブレット・ハレルソン、ヘススをレイモンド・クルツ、パムをティファニー=アンバー・ティーセン、マーシーをステイシー・ボージャス、マッグローをジェームズ・パークス、ルーペをマリア・チェカ、ヴィクターをジョー・ヴァージ、バリーをブルース・キャンベルが演じている。
監督は『処刑!血のしたたり』のスコット・スピーゲル。

今回のキャスティングには1つ、遊びが盛り込まれている。
それはモーテルの殺人現場に来たローソンが「彼には深い心の傷がある。父親をゲッコー兄弟に殺された」とマッグロウについて話すシーンに関係している。
ゲッコー兄弟ってのは1作目の主人公で、冒頭シーンで彼らに殺されたテキサス・レンジャーはアール・マッグロウだ。そのアールの息子が、マッグロウ保安官補という設定というわけだ。
そして、ただキャラとしての設定だけではなく、アール役のマイケル・パークスとマッグロウ役のジェームズ・パークスが実の親子なのだ。

前作より大幅に予算は削減されているし、公開規模が小さくなるというレベルじゃなくてビデオスルーになっているんだから、出演者の顔触れで見劣りがしてしまうのは仕方がない。
とは言っても、前作だってそんなに豪華な配役ではなかったし、そもそも意図的にB級のテイストを狙って作られた映画だった。
だから、スケール感とか、舞台装置とか、そういう部分で製作費の大幅削減の影響を強く感じることは無い(まあ全く感じないと言えば嘘になるが)。

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の続編を作ろうという時点で、そもそも、無謀だと言える。
何しろ前作は、「途中まではクライム・サスペンス、酒場に入ったら吸血鬼が登場するアクション・ホラー。前半と後半でガラリと話が変わる」という、そのアイデアのみで勝負している映画だったからだ。
続編を作るとなれば、もう観客は吸血鬼が出て来ることを分かっている。
だから、仮に前作と同様の「途中でガラリと話が変わる」という仕掛けをやったとしても、何のサプライズも与えることが出来ないのだ。

「どうせ吸血鬼が出て来ることは分かっているんだし」ってことで開き直ったのか、それとも1作目とは異なる仕掛けのアイデアが何も思い付かなかったのか、この続編では冒頭からコウモリを登場させ、開始から25分ほどで吸血鬼を登場させて、分かりやすいアクション・ホラーに仕上げている。
前作は、いかにもクエンティン・タランティーノ&ロバート・ロドリゲスらしいと感じさせる、捻じ曲がった感覚に満ちた内容だったが、今回は良くも悪くもマトモな話になっている。
で、マトモな話になったのであれば、それはプラス査定に繋がるべきだと思うかもしれないが、この作品に関しては、そうとも言えない。
前作の捻じ曲がった感覚が決して高評価だったわけではないが、しかし作品のキーポイントであったことは確かだ。前述した仕掛けこそが、映画の肝になっていた。
ところが、そういう仕掛けのワン・アイデアを用意せず、シンプルな構成の分かりやすい物語にしたことで、単純に「凡庸なアクション・ホラー」という仕上がりになってしまっている。

例えば、エディーがルーサーに「車で送って行こう」と持ち掛けた時点で、もうエディーが吸血鬼なのも、ルーサーが噛み付かれて吸血鬼になるのも分かる。
ヘススがルーペの部屋でセックスしている時点で、そこへルーサーが乗り込んで2人とも吸血鬼にすることも分かる。
そのように、大まかなストーリー展開は簡単に読める。
前作の仕掛けとは異なるアイデアを用意していないだけでなく、物語として捻りを加えることもしていないので、そうなるのは当然っちゃあ当然だ。

シンプルなストーリー展開でも、面白ければ何の問題も無い。
だが、ホラーとしてのベタベタな展開をチープにやっているだけなので、ハッキリ言って、つまらない。
スコット・スピーゲルも物語の方で引き付けるのは厳しいと感じていたのか、映像演出の部分で何とかしようと試みているんじゃないかという意識は感じられる。
ただ、それだけで観客の心を掴むことが出来るほど凝った映像があるのかというと、それは無い。

シンプルなアクション・ホラーで、物語に面白味が無いのであれば、後はアクションシーンに期待するしかない。
ところが残念ながら、そのアクションシーンにも引き付ける力が足りない。物語と同様に、そこも凡庸でつまらないのだ。
それに、前作では大量の吸血鬼が登場したが、今回は4人しかいない。クライマックスのアクションで、単純に量の部分で前作よりグッと落ちる。
だからって「量より質」の面白さがあるわけではないし。

「主人公vs吸血鬼」の戦いが前作よりショボくなってしまう分、「吸血鬼vs警官隊」というところで大勢の警官を登場させ、そこで前作に匹敵する見せ場を作ろうという意識があったのかもしれない。
つまり、前作の「人間は少数、吸血鬼は大勢」という図式とは完全に逆の数的関係で、変化を付けようってことだ。
まあ前作と同じことをやっているだけでは意味が無いので、変化を付けようってことなら、その意識は理解できる。ただし、じゃあ面白くなっているのかというと、それはまた別の話だ。
っていうか、面白くないなあ。
そもそも、ルーサーたちは大半の警官を銃火器で始末するので、そこでは吸血鬼である意味が薄いし。

あと、「なぜ吸血鬼になったルーサーたちが銀行強盗をやらかそうとするのか」という疑問はある。
それは吸血鬼としての目的じゃなくて、ルーサーたちが最初から抱いていた目的でしょ。吸血鬼に変貌しても、そこは変わらないのか。
全てが終わった後、ローソンがバックに「なぜヴァンパイアが銀行の金を狙うんだ?」と尋ねているが、それはワシも訊きたいよ。
バックは「さあな。ヴァンパイアも金が必要なんだろ」と答えているけど、腑に落ちる答えではない。
まあ、そんなことを気にすることさえ、無意味にも思えるけどさ。

(観賞日:2013年11月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会