『フリーダムランド』:2006、アメリカ

1999年5月、ニュージャージー州デンプシー。刑事のロレンゾ・カウンシルは相棒のボイルと共に、ラフィークという黒人少年を捜索していた。彼らは黒人ばかりが暮らすアームストロング団地を訪ね、ロングウェイ牧師と挨拶を交わす。彼はフェリシア・ウィリアムズから夫のビリーが暴力を振るうので話してほしいと頼まれ、「説教しておく」と約束した。そこへラフィークが現れたので、ロレンゾとボイルは令状を見せる。彼らはギャノン警察に出頭しなかったこと、マリファナ所持の罪で逮捕することをラフィークに告げた。
そこへギャノン警察のレオ・サリヴァン刑事たちが来て、ラフィークを連行しようとする。ロレンゾとボイルはギャノン警察に頼んで仕事を請け負っており、彼らを帰らせようとする。するとレオは「別の奴に用があるんだ。被疑者はカルヴィン・ジョイ」と言い、相棒と共に逮捕へ向かう。ボイルは同行し、残ったロレンゾは「医療センターにカージャック被害者の女性が治療を受けているので急行してほしい」という無線連絡が入った。カージャック犯は黒人男性で逃走しており、現場はアームストロング団地という情報も入った。いつの間にかラフィークは姿を消していたが、ロレンゾは医療センターへ向かった。
ロレンゾはアニル・チャタージー医師に挨拶した後、治療を受けた被害者のブレンダ・マーティンに会う。既に車や犯人の特徴は市内全域に手配されていたが、ロレンゾは念のために詳しく説明するようブレンダに求めた。ブレンダはアームストロングからギャノンの自宅へ戻ろうとしていたこと、近道するため公園へ入って道に迷ったこと、木陰から飛び出してきた犯人に車を奪われたことを語る。さらに彼女は5年前に薬物を断ち切ったこと、兄はギャノン警察のダニー・マーティン刑事であること、アームストロング団地の児童センターで勤務していることを説明した。
ロレンゾはブレンダの様子を見て不審を抱き、「何か他に心配事があるんじゃないか?襲って来た男は知り合いなのか?」と問い掛けた。すると彼女は、4歳になる息子のコーディーが車の後部座席で寝ていたことを明かした。ロレンゾは本部に連絡を入れ、すぐにコーディーの情報を伝えた。ダニーが医療センターに到着したので、ロレンゾはブレンダに付き添うよう促した。しかしダニーは彼に攻撃的な態度を示し、同僚と共に病院を去った。
ロレンゾはブレンダを車に乗せ、アームストロング団地へ向かった。するとギャノン警察が地区を封鎖し、住民が抗議していた。ボイルはロレンゾに「これ以上は騒ぎを大きくしたくない」と言い、ブレンダを連れて去るよう告げる。ブレンダが歩き回るのを見たロレンゾは、慌てて追い掛ける。ダニーは2人を見つけると、「ここで何してる?」と鋭く告げる。「この人は被害者だぞ」とロレンゾが言うと、彼は「そうか?ピンピンしてるように見える」と口にする。ダニーはロレンゾを睨み付け、「ここに犯人は戻って来ない。だが知ってる奴が必ずいる。誰かが名前を吐くまでは封鎖する」と述べた。
窓から逃亡を図ったカルヴィンが転落して怪我を負うと、ロレンゾは「俺の街で勝手な真似しやがって」と憤慨する。彼はギャノン警察の連中に掴み掛かろうとして、制止される。上司のゴールドはロレンゾを叱責し、自分の仕事をするよう命じた。ロレンゾはフェリシアにブレンダの住所を教えてもらい、彼女を自宅まで送り届けた。彼は「今夜はフェリシアが泊まってくれる」と告げ、家を出る。ビリーの車で到着したフェリシアは、約束を守るようロレンゾに要求した。彼女はロレンゾに、「あの街にはブレンダに手を出すような奴はいない。みんな彼女を尊敬してる」と語った。
ロレンゾはビリーが酒を飲んでいると確信し、「1時間経ったら返す」と車のキーを抜いて奪い取った。ブレンダの家を出たロレンゾは、尾行の車に気付いた。ロレンゾが車を降りて声を掛けると、尾行していたのは「ケントの友」という組織の代表を務めるカレン・コルッチとメンバーのマリーだった。「ケントの友」は行方不明の子供たちを捜索するボランティア団体で、ブレンダが同意すればコーディーを捜す手伝いをしたいと思っていることを説明した。
「せっかくだが」とロレンゾが断ると、カレンは「気が変わったら連絡して」と名刺を渡した。1年前に失踪した少女についてロレンゾが「まだ捜してるんだろ。たぶん死んでる」と言うと、カレンは「でも犯人は捕まってない。新しい証言が出てくるかもしれない」と述べた。ロレンゾは刑務所へ行き、息子のジェイソンと面会した。翌朝、ロレンゾがアームストロング団地へ行くと、封鎖に抗議する住民の怒りは全く収まっていなかった。ロレンゾはゴールドに「罪の無い住民が迷惑するだけだ」と訴えるが、「3年前にベルモント団地で射殺事件が起きた時も街を封鎖した。住民はすぐに犯人を差し出した。私が正しかったんだ」と言われる。ロレンゾが「ここの住人じゃないかもしれないでしょう」と語ると、ゴールドは「その可能性が無いから封鎖したんだ」と述べた。
ロレンゾはボイルに、「ブレンダは黒人に襲われたと証言したが、犯人より遥かに大きい黒人の俺が来たのに怖がらず握手を求めた」と言う。ボイルは彼に、ブレンダの事情聴取は任せるよう告げた。ロレンゾがブレンダの家へ行くと、ダニーが来ていた。ブレンダはダニーに「何があったか話してくれ。何も手掛かりが無いんだ」と言われるが、「ほっといて」と兄を拒絶した。彼女が泣き出すと、ダニーは呆れた様子で去った。
ロレンゾはブレンダ団地へ連れて行き、昼間の現場を見るよう頼む。しかしブレンダは「暗かったから良く分からない」と言い、詳しい説明を拒んで苛立った。ロレンゾに疑われていると感じたブレンダは、「コーディーは私の全てよ。あの子を殺すはずがない」と否定した。ロレンゾは暴動が起きそうになっている状況をブレンダに見せ、「この騒ぎを止められる情報を持っているなら教えてくれ」と頼む。しかしブレンダは「言いたいけど、辛くて」と漏らすだけで、何の情報も話そうとしなかった。フェリシアに話を聞いたロレンゾは、昨日もブレンダが児童センターに来たがコーディーは一緒じゃなかったと知った。
ロングウェイは住民が外へ出られない状況に怒って警察に抗議し、ロレンゾに「カージャックなんて、あの女のでっち上げだ」と告げる。ラフィークがレオたちに連行され、ロレンゾは「間違ってるぞ」と怒鳴った。アームストロング団地の住民は苛立ちを募らせ、ブレンダに対する風当たりも強くなった。ダニーはラフィークがコーディーを連れ去ったと決め付け、殴り掛かって同僚たちに制止された。ダニーに非難されたロレンゾは、「心の底じゃ分かってるんだろ。カージャックなんて嘘だ」と指摘する。
「ブレンダが殺したって言うのか?」とダニーが口にすると、彼は「へえ、コーディーは死んだのか。何か知ってるのか?」と追及した。ダニーが口をつぐむと、「嘘をついてる。それだけだ」とロレンゾは告げた。ラフィークの姉の2人が警察署へ乗り込んで抗議すると、ロレンゾは「ここは任せて帰れ」と諭す。姉たちはロレンゾを睨み、「仲間だと思ってたけど、もう近付かないで」と言い放つ。ロレンゾはボイルから、「捜査はFBIに任せることになった。もう板挟みにならずに済む」と言われる。「放り出せない」とロレンゾが話すと、ボイルは「子供はもう死んでる。母親が殺したんだ」と告げた。
ロレンゾは「決め付けるなよ。分かっているのは彼女が何か隠しているってことだ。上に掛け合ってみる」と言い、あと1日だけくれとボイルに頼んだ。彼はカレンと連絡を取り、「ブレンダが殺したと決め付けない」「自分に従う」という条件で手を組むことにした。彼はカレンに、「フリーダムランドを知ってるか?」と問い掛けた。カレンはロレンゾの仲介で、ケントの友のメンバーと共にブレンダと会う。カレンが事件について詳しく話してほしいと頼むと、ブレンダは「もう話したくない」と苛立って拒否した。カレンが「コーディーの居場所について母親の勘で答えて」と言うと、ブレンダは「車で逃げたのよ」と声を荒らげた。
カレンは地図を開き、候補となる場所はフリーダムランドだけだと教える。そこは児童養護施設という建て前で運営されていた隔離施設で、現在は閉鎖されている。ロレンゾたちは捜索のため、ブレンダを連れてフリーダムランドへ向かう。カレンは大勢のボランティアを集め、周囲を同時に捜索してもらうことにした。ロレンゾはケントの友のエレインから、カレンは10年前に息子のケントを拉致されて団体の活動を始めたこと、犯人は捕まったが証拠不充分で釈放されたことを聞いた。
ロレンゾたちは懐中電灯を照らし、フリーダムランドの建物に入って中を調べた。カレンは彼らに、「数え切れないほどの子供たちが、ここで酷い扱いを受けて来た。虐待を受け、忘れ去られて消えていった」と話す。彼女はブレンダに、「その内、家族も分かってくれなくなった。自分でも分かってた。早く立ち直らないと、家庭も夫婦の関係も駄目になるって。だけど、どうしても自分を抑えられなかった。父親は苦しいことに蓋をして、早く楽になりたいだけ。でも母親は諦めない」と話す。
カレンは釈放された犯人への怒りを語り、「坊やは死んだの?私を楽にして」とブレンダに頼む。するとブレンダは、「コーディーはここの子供たちとは違う。愛されてた。大事にされてた。別の所にいる」と告げる。彼女は外出中に一人でコーディーを留守番させていたこと、咳止めシロップを飲み干して死んだことを打ち明けた。しかし死体を埋めたという場所に案内されたロレンゾは、まだブレンダが嘘をついていると確信した…。

監督はジョー・ロス、原作はリチャード・プライス、脚本はリチャード・プライス、製作はスコット・ルーディン、製作総指揮はチャールズ・ニューワース、共同製作はリチャード・バラッタ、撮影はアナスタス・ミコス、美術はデヴィッド・ワスコ、編集はニック・ムーア、衣装はアン・ロス&ミシェル・マットランド、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はサミュエル・L・ジャクソン、ジュリアン・ムーア、エディー・ファルコ、 ロン・エルダード、ウィリアム・フォーサイス、アーンジャニュー・エリス、アンソニー・マッキー、ラターニャ・リチャードソン・ジャクソン、クラーク・ピータース、ピーター・フリードマン、ドメニク・ロンバルドッツィー、アーシフ・マンドヴィ、フィリップ・ボスコ、フライ・ウィリアムズ三世、ポーティア、ハニーファー・ウッド、ドリアン・ミシック、ジョー・フォーブリック、ドナ・カタグノ、ジュネヴィエーヴ・ハドソン=プライス、カルヴィン・E・ハート、マーロン・シャーマン、ビル・ウォルシュ、パトリシア・マウセリ、リチャード・プライス他。


リチャード・プライスの同名小説を基にした作品。
脚本も彼が手掛けている。
監督は『アメリカン・スウィートハート』『クランク家のちょっと素敵なクリスマス』のジョー・ロス。
ロレンゾをサミュエル・L・ジャクソン、ブレンダをジュリアン・ムーア、カレンをエディー・ファルコ、ダニーをロン・エルダード、ボイルをウィリアム・フォーサイス、フェリシアをアーンジャニュー・エリス、ビリーをアンソニー・マッキーが演じている。

まず事件の発生が明らかになり、「これから捜査が始まる」という時点で早くも「これは裏に何かあるな」と確信させる。
何しろブレンダは、ロレンゾに「何か他に心配事があるんじゃないか?襲って来た男は知り合いなのか?」と訊かれるまで、車に息子が乗っていることを打ち明けようとしないのだ。
それは誰がどう考えたって不自然でしょ。
大事な息子が乗っていたのなら、自分の治療よりも「息子が拉致された。助けて」と訴えるはずで。それを黙っているなんて異常だ。
なので、「ブレンダが何か隠している」「嘘をついている」という風に考えるのは、ごく当たり前だろう。

もっとハッキリ言っちゃうと、この時点で「こいつが息子を殺したんじゃないのか」という疑惑が生じるんだよね。
そうじゃなかったら、息子が連れ去られたことを内緒にしておく必要性なんて無いはずで。
それを刑事に追及されるまで隠そうとする理由を考えた時、「自分が殺した」ってことぐらいしか答えが思い浮かばない。
決して私の推理力が鋭いってわけではなくて、たぶん簡単にそういう推理が浮かぶような作りにしているんじゃないかと思われる。

「ブレンダの偽証が最初からバレバレ」という問題については後で詳しく書くとして、その事情聴取のシーンでは1つ疑問があるんだよね。
ロレンゾが「襲って来た男は知り合いなのか?」と質問するのは、変じゃないかと。
「ブレンダが何か隠している」と感じたにしても、その質問が出て来るのは不自然だ。最初から「顔見知りの犯行」と決め付けていなかったら、出て来ないような質問だ。
でも「最初からそう決め付けていた」と仮定した場合、「なぜそう決め付けるのか」という疑問が湧いてしまう。
この疑問に関しては、最後まで何の答えも用意されていないんだよね。

ロレンゾかブレンダが「息子が車にいた」と話した後、やたらと苛立って彼女に怒鳴る。呼吸器らしき物を取り出して口に当て、アニルが来てアドレナリンを注射する。
何か持病がある様子だが、詳しいことは全く分からない。そして、そのシーン以降、ロレンゾが同じ症状を起こすことは無い。
なので、その要素は無意味と化している。
ロレンゾの息子は刑務所に収監されており、面会シーンがあるが、この設定も物語には全く影響を与えない。
意味ありげだけど無意味に終わる要素が、ロレンゾの周囲には幾つかある。

ロレンゾは前半の段階で、ブレンダに疑いを抱く。「黒人が犯人なのに自分を見ても怖がらなかった」と彼は言うが、疑う根拠がしっかりしている。
さらに彼はフィリシアの証言で、ブレンダがコーディーを児童センターに連れて来なかったことを知る。これも前半の段階で明らかにされる情報だ。
なので、どんどん「ブレンダの証言は嘘」という可能性が濃くなっていく。
途中でブレンダがコーディーへの愛を訴えるシーンはあるが、そこで少し引き戻したかと思われた直後に前述したフェリシアの証言がある。

ついにロレンゾは、「カージャックなんて嘘だ」とまで断言する。「ブレンダが殺したって言うのか」と口にするのはダニーだけど、同じことをロレンゾも推理していることは明白だ。
これがミスリードだとしたたら、あまりにも執拗だし不自然だ。それに、もし犯人がいるとしたら、解決篇に向けた情報が何も出て来ないのはミステリーとしてマズい。
なので、もう中盤辺りで「ブレンダがコーディーを殺した。カージャックなんて無かった」ってのは確定事項になる。だから謎解きとしての面白味は皆無だ。
だったら、そんなトコで中途半端に真相を明かさず引っ張るより、さっさと片付けて「重点を置いているポイント」に集中した方がいいんじゃないか。

最初にアームストロング団地でロレンゾとレオが対面した時点で、ここが決して良好な関係でないことが示されている。
ダニーが登場した時も、ロレンゾに対して攻撃的な姿勢を見せている。ロレンゾの方も、ギャノン警察の連中に対して攻撃的な態度を示す。
でも、なぜ彼らが険悪な関係なのか、いがみ合っているのか、その理由がサッパリ分からない。
あえて理由を探すとすれば、「黒人と白人だから」ってことぐらいしか思い浮かばない。
まるで腑に落ちないけど、話の内容も考慮すると、そこで妥協するしか手が無いのだ。

そこに限らず、とにかく本作品は「白人と黒人の対立」という図式を積極的にアピールしようとしている。
終盤の展開から逆算してみれば、それは決して間違っちゃいない方針だ。ミステリーとしての面白さより、人種差別という社会問題を取り上げようとする意識の方が強いようにも思われるしね。
ただ、そうだとしても、やりたいことに中身が全く追い付いていない。
何が問題って、「白人が黒人を差別しており、それに黒人が反発して」という状況の見せ方が下手なのよ。

ホントなら、この映画って「コーディー拉致事件で警察が動き出し、これが引き金となって対立が激しくなって」という流れになるべきで。
だけど、その前から既に激しい人種対立が始まっていたような空気が匂いまくっているんだよね。そして、なぜ予兆が生じているのか、その理由がサッパリ分からないのよ。
そこを丁寧に描写していないから、「何だか良く分からないけど空気だけが先走っていた」ってな状態なのよ。
まるで「そっちで勝手に脳内補完してね」みたいな、ものすごく雑な下駄の預け方をしているのよ。

この映画って、捜査を仕切るギャノン警察の連中が揃いも揃って差別的な奴らなので、「白人が黒人を差別するのは仕様で、そうじゃない奴は例外」みたいなスタンスになっちゃってんのよね。
ホントは「ギャノン警察の連中は特に黒人への差別意識が強い」という風に見えるべきなんだろうけど、そうは見えない。
仮に「まだ黒人差別は根強く残っている」ってことを描くにしても、そこまで極端にしてしまうと荒唐無稽になっちゃうでしょ。

途中で「ケントの友」のカレンとマリーが登場すると、「子供が誘拐される事件は多発しているけど、警察は全く見つけ出せていない」という「警察の無能ぶり」をアピールする要素も加わる。
でも、ここを描くことで、人種差別という社会問題にピントを絞り込んでいたはずなのに、それがボヤけてしまう。
実際、フリーダムランドを調査するシーンに入ると、もう「黒人差別が云々」とか「警察と黒人住民との対立」という要素は完全に忘れ去られているしね。

粗筋にも書いているように、コーディーは咳止めシロップを飲んで死んでいる。
結局のところ、ブレンダが自己保身のために嘘を重ねたせいで暴動が発生し、多くの犠牲が出たわけで。「息子を死なせたショックで云々」という事情はあるけど、そもそも息子を疎ましく思うようになって薬を飲ませたのも彼女であって。
直接的に殺害したわけではなくて法的には「過失致死」かもしれないけど、実質的には殺人に近いからね。ほぼ未必の故意と言ってもいいぐらいだ。
だから、そこで生じる同情心よりも、「被害者ヅラで嘘を重ねて暴動を招いた張本人」に対する不快感の方が、圧倒的に上なのよね。
なのに最後まで彼女は「同情されるべき哀れな存在」として描かれているので、どうにもモヤッとしてしまう。

タイトルになっているぐらいだから、フリーダムランドが重要な意味を持つ場所なんじゃないかと思うのは何も間違っていない感覚だろう。
でも実際のところ、フリーダムランドという言葉がロレンゾの口から出てくるより前に、実質的に事件は終わっている。
ロレンゾたちはフリーダムランドを捜索するが、何の意味も無いことは分かっている。
まだコーディーの遺体がフリーダムランドに転がっている可能性は残っているけど、それも無いだろうなと感じるし、実際にその通りだし。

フリーダムランドではカレンが「ここでは多くの子供たちが虐待され、忘れ去られた」などと語るが、急に「かつて酷い児童養護施設がありまして」ってのを語られても「だから何なのか」と言いたくなる。
そういう社会問題を取り上げる話ならともかく、そうじゃないわけだし。そういう要素を持ち込んでいるせいで、また「人種対立の図式」からズレちゃってるし。
っていうか、もうさ、何を描きたいのか、どこに焦点を置いているのか、話が進むにつれて、どんどん分からなくなっていくのよ。
原作ではどんな風になっているのか気になるが、だからって読もうという気は全く無い。

(観賞日:2020年6月25日)


第29回スティンカーズ最悪映画賞(2006年)

ノミネート:【最も腹立たしい言葉づかい(女性)】部門[ジュリアン・ムーア]

 

*ポンコツ映画愛護協会