『フリー・ウィリー2』:1995、アメリカ&フランス

11歳になったジェシーと里親であるグレン&アニーのグリーンウッド夫婦が暮らす家に、孤児院の職員ドワイトがやって来た。ドワイトはジェシーの母親がニューヨークで見つかったが死去していたこと、ジェシーにエルヴィスという8歳の異父弟がいることを知らせる。ショックを受けたジェシーは、苛立った様子で家を飛び出した。追い掛けて来たグレンに、彼は「僕を捨てて弟を作るなんて。いい子にしていれば、きっとママが戻ると信じていたのに」と涙目で吐露した。
グレンはジェシーに、ドワイトが里親を見つけるまでエルヴィスを預かることを告げた。その夜、ドワイトに連れられてグリーンウッド家にやって来たエルヴィスは、夫妻の前で「貧乏な家は嫌だ。金持ちじゃないと馴染めない」と口にする。弟が来ることに不快感を抱いていたジェシーだが、グレンたちに促されて仕方なく挨拶した。するとエルヴィスは、「知るかよ」と生意気な態度を取った。
ジェシーたちは夏の休暇でキャンプへ出掛ける。キャンプ場へ向かう車中で、エルヴィスは「父はアル・パチーノだ」「航空母艦の中で生まれた」と嘘を並べ立てた。連絡船に乗ったエルヴィスは、シャチが跳ねるのを見て興奮する。キャンプ場に到着したジェシーは、マリーン・パークの監督係だったランドルフと再会する。ランドルフはジェシーを車に乗せ、マリーナへ向かう。その道中、彼は村から持って来たネックレスをジェシーに贈る。それを着けていれば、シャチと心を通じ合わせることが出来るのだという。
ランドルフのクルーザーにはネイディーンという少女が乗っており、ジェシーは好意を抱く。ランドルフによれば、ネイディーンは助手であり、自分が名付け親なので娘のような存在なのだという。ランドルフはジェシーに、1週間前に録音したシャチの鳴き声を聴かせる。それはウィリーの声だった。しばらく航行していると、シャチの群れが現れた。ランドルフはジェシーに、ウィリーの母や妹のルナ、弟のブチの存在を教える。ウィリーの姿を見つけたジェシーは、大喜びで呼び掛けた。
その夜、ジェシーはエルヴィスと同じテントで眠ることになった。嘘ばかりつくエルヴィスに苛立ったジェシーは、テントを飛び出した。埠頭でハーモニカを吹いていたジェシーは、不注意で落としてしまう。そこへウィリーが現れ、ハーモニカを拾ってくれた。ジェシーは「ママが死んだ。もう僕は一人ぼっちさ」などと語り掛ける。やがてウィリーは母の声を聞き、群れの元へと戻って行った。
翌朝早く、ジェシーがマリーナへ行こうとすると、グレンとアニーはエルヴィスも連れて行くよう促す。ジェシーが仕方なくエルヴィスを連れてマリーナへ行くと、ランドルフの船はポンプの故障で修理中だった。時間が掛かるというので、ジェシーはマリーナから去ったネイディーンを追うことにした。彼はエルヴィスに「キャンプ場へ戻って、グレンとアニーには船酔いしたと言え」と告げた。
ジェシーがネイディーンを尾行すると、彼女は小さな入り江に佇み、姿を見せたシャチの群れを眺める。ジェシーに気付いた彼女は、すぐ近くまでシャチが来る穴場であることを教える。エルヴィスは少し離れた木陰に身を隠し、シャチの群れを見物する。ジェシーは「いいもの見せてやるよ」とネイディーンに告げ、ウィリーを呼び寄せる。ジェシーがウィリーの背中に乗って泳ぎ出したので、ネイディーンは「凄い」と感動した。
リベリア船籍のタンカーを見つけたネイディーンは、「海を自分勝手に猛スピードで走る」と不愉快そうに呟いた。その夜、タンカーのニルソン船長は港への到着が遅れているため、苛立ちを覚えていた。強風注意報の連絡が入る中、タンカーはローソン湾に入り、操舵手のケリーは15ノットから12ノットに減速しようとする。湾内では減速するのがルールだからだ。しかしニルソンは、15ノットの維持を命じる。しばらく進んだところでスクリューが壊れ、タンカーは針路を外れる。タンカーは座礁し、積んでいた石油が海に流れ出した。
次の朝、入り江へ赴いたジェシーは、砂浜に接近しているルナを発見する。ルナの体に触れると、オイルがベッタリと付着していた。ジェシーは付いて来たエルヴィスに、「グレンを起こしてランドルフを呼べ」と命じる。ランドルフはサンプルを採取し、海洋研究所へ送るようネイディーンに指示する。彼はジェシーやグリーンウッド夫妻と共に、ルナを海へ戻した。座礁事故を受け、多くのマスコミが現地入りした。1999年から船底は二重構造が義務付けられているが、座礁したタンカーは旧式で一重構造だった。
シャチを救うため、獣医のケイト・ヘイリーが現地入りする。ケイトはランドルフと旧知の間柄だった。彼女はルナの状態について、「1分間に呼吸が4回。危険な状態ね」と話す。彼女はルナに抗生物質を注射しようと試みるが、ウィリーが妹を守ろうとして妨害した。石油会社のジョン・ミルナー社長はジェシーと会い、「この事故は我が社の責任だ。シャチを救いたい。力を貸してほしい」と依頼する。ジェシーは「ウィリーを説得する。ただし家族の元へ返して」と条件を付けて、協力を承諾した。
ジェシーはハーモニカを吹いて、ウィリーを呼び寄せた。彼が興奮しているウィリーを落ち着かせ、その間にケイトがボートでルナに近付き、抗生物質を注射した。しかし翌朝、また入り江にルナが打ち上げられる。グレンやアニーたちが必死で海へ戻そうとしていると、エルヴィスは「僕も手伝う」と言う。しかし浜辺にいるよう強い口調で命じられ、エルヴィスは不満そうな表情を浮かべた。
ランドルフはジェシーを車に乗せ、「先祖から伝わった大自然の知恵がある」と告げる。ランドルフは山に入り、薬草を摘んだ。シャチを海に戻したグレンたちはエルヴィスがいないのに気付き、慌てて捜索する。その夜、ジェシーとランドルフはウィリーたちを集め、薬草を与えた。翌朝、ウィリーたちの体調は回復していた。一方、ダイナーで朝食を食べていたエルヴィスは、漁師のビル・ウォルコックスがミルナーに「野生のシャチが3頭も手に入る」と持ち掛けている様子を目撃する。ミルナーはシャチの保護を名目としてウィリーたちを捕獲し、ショーに出して儲けようと企んでいた…。

監督はドワイト・H・リトル、脚本はカレン・ジャンツェン&コーリー・ブレックマン&ジョン・マッソン、製作はローレン・シュラー ・ドナー&ジェニー・ルー・トゥジェンド、共同製作はリチャード・ソロモン、製作協力はマーク・マーシャル&ダグラス・C・メリーフィールド&シェリー・フェイドリー、製作総指揮はリチャード・ドナー&アーノン・ミルチャン&ジム・ヴァン・ウィック、撮影はラズロ・コヴァックス、編集はロバート・ブラウン&ダラス・プエット、美術はポール・シルバート、衣装はエリカ・エデル・フィリップス、音楽はベイジル・ポールドゥリス。
出演はジェイソン・ジェームズ・リクター、マイケル・マドセン、オーガスト・シェレンバーグ、ジェイン・アトキンソン、ジョン・テニー、エリザベス・ペーニャ、フランシス・キャプラ、メアリー・ケイト・シェルハート、ミケルティー・ウィリアムソン、スティーヴ・カーン、ジョン・コンシダイン、ベイジル・ウォレス、ポール・テューペ、ニール・マタラッツォ、アル・サピエンザ、ウォーリー・ダルトン、クリフ・フェッターズ、ジュリー・イノウエ、ジャネット・ウー、ダグ・バラード、ジューン・クリストファー、マーガレット・モロー他。


1993年に公開された映画『フリー・ウィリー』の続編。
監督は『死の標的』『ラピッド・ファイアー』のドワイト・H・リトル。
ジェシーを演じるジェイソン・ジェームズ・リクター、グレン役のマイケル・マドセン、ランドルフ役のオーガスト・シェレンバーグ、アニー役のジェイン・アトキンソン、ドワイト役のミケルティー・ウィリアムソンは、前作からの続投。
ミルナーをジョン・テニー、ケイトをエリザベス・ペーニャ、エルヴィスをフランシス・キャプラ、ネイディーンをメアリー・ケイト・シェルハート、ウォルコックスをスティーヴ・カーンが演じている。

前作では、ケイコという名前のシャチがウィリーの役で起用されていた。
今回もケイコを使ったシーンはあるが、アニマトロニクスを使用している箇所もある。
前作に引き続き、動物愛護のメッセージ性を持ち込んだような内容になっているが、ケイコは本作品の撮影後もメキシコの曲芸用プールに入れられ、劣悪な環境で飼育されていた。
そんなわけで、もはや偽善的という表現さえ生温いと思えるぐらい、実は醜悪な映画である。

序盤、グレンから船の操縦を教わっているジェシーは、そんなことより向こうからやって来るガールフレンドのジュリーに気持ちが行っている。だからレクチャーを放り出してジュリーの元へ走って行き、彼女に話し掛ける。
ところが、マリーナでネイディーンに出会うと、一目で彼女に好意を抱く。
だったら、ジュリーに言い寄っていた場面は要らないでしょ。
ジェシーが女好きってのをアピールしたかったとすれば、それは成功している。だけど、そんなことをアピールして何の得があるのか。

「ジェシーの母が見つかった、でも死んでいた、でも異父弟がいる」というところから、物語が転がって行く。
「母が見つかったけど死んでいた」ってのは、ものすごく大きな出来事なのに、そこはあっさりと流して、すぐにエルヴィスを引き取って一緒に暮らすという展開へ移る。母の死を知ったジェシーがショックを引きずるとか、心を整理しようとするとか、そういうことは物語の中心に無い。
一応、休暇で出掛けた後にも「ママが死んだ」とウィリーに語り掛けるシーンがあったりするが、その描写は薄い。
あと、ジェシーはドワイトから母が死んだ事実は教えてもらえるが、墓参りにも行かせてもらえないし、どんな暮らしをしていたのかも教えてもらえない。でも、それに対して不満を抱いたり、情報提供を求めたりすることは無い。

エルヴィスはグリーンウッド家に来た時、夫婦に対してもジェシーに対しても、かなり生意気で横柄な態度を取る。
ところが、キャンプへ向かう道中では、そういう態度は完全に消えて、「やんちゃな嘘つき」というキャラがアピールされる。初対面では「知るかよ」と冷たく突き放したジェシーに対しても、積極的に話し掛けている。連絡船からシャチを見つけると、嬉しそうな様子を見せる。普通に「無邪気な子供」という感じだ。
キャンプ場所に到着すると、エルヴィスは素直に作業を手伝っている。
初登場から数分の間で、早くもキャラがブレブレになっている。

初登場での態度からすると、「エルヴィスが反抗的で生意気な態度を取るからジェシーは腹を立てて、兄弟関係は険悪になる」という形なのかと思った。
しかし、そうではなくて「ジェシーは母を奪った相手であるエルヴィスに冷たくする」という風に描きたいようだ。
だったら、なおさら「母が見つかった」「母は死んでいた」「弟がいた」という3つを一気に明かすのは望ましくないんじゃないか。
ホントは、ジェシーが母の死について気持ちを整理して、それから弟と暮らす展開に移った方がいいと思うんだよなあ。

それと、「ジェシーは母を奪った相手であるエルヴィスに冷たくする」という形での兄弟関係の描写も、中途半端になっている。
ジェシーのエルヴィスに対する態度って、本気で憎んでいるという感じじゃなくて、あくまでも「弟に対して邪険にする」という程度に見えるのよ。
それはヌルいんじゃないかと。もっと強い拒絶反応を示しておいた方がいい。
で、触れ合う中で少しずつ心情が変化していくとか、ある出来事をきっかけにして劇的に変化するとか、そういう形にした方がいい。

後半に入ると、エルヴィスは「ジェシーがえこひいきされてる」と羨ましがったり、「ジェシーを手伝いたい」と口にしたりする。
そのように、「エルヴィスはジェシーと仲良くやりたい」ということが、強くアピールされるようになる。
ただ、最初からそういう気持ちが強かったのか、ウィリーと触れ合うジェシーを見たことで気持ちが変化したのか、その辺りは良く分からない。
ジェシーのエルヴィスの兄弟関係は、少しずつ心情が変化していくとか、今まで分からなかった一面が見えて来るとか、そういうのではなく、ピントが絞り切れておらずに描写がボケボケになっているという印象を受ける。

で、いつの間にかジェシーとエルヴィスは仲良くなっているが、エルヴィスが失踪から戻って来た時にジェシーは冷たく接しているし、やっぱり良く分からんなあ。
それと、とりあえず仲良くなった様子を見せた後、グレンとアニーの態度に疎外感を感じたエルヴィスが失踪するという展開があるのだが、それは欲張り過ぎだなあ。
グレン&アニー(特に約束を交わしていたアニー)とエルヴィスの関係が不和になって云々というところまで描こうとしても、それは処理能力を大幅に超過しているでしょ。
それと、エルヴィスが失踪したのに、ジェシーは全く捜索しないのね。あと、グレンたちが警察に届けた様子も無いし。

っていうか、ジェシーとエルヴィスの兄弟関係って、そんなに大きく扱わなくてもいいような気もするんだよね。
何より重視すべきなのは、ジェシーとウィリーの絆であったり、動物映画としての部分であったり、そういうことじゃないかと思うので。
ジェシー&ウィリーの関係や、シャチを助けようとする話と、ジェシー&エルヴィスの兄弟関係を描く話って、あまり上手く絡み合っていないし。

あと、ジェシーはウィリーに「ママが死んだ。もう僕は一人ぼっち」と漏らしているけど、ってことは、まだグレン&アニーと完全に打ち解けていないのかよ。
本当の家族として馴染んでいるわけじゃないのかよ。
だったら、ジェシーとエルヴィスの関係が改善されるという兄弟の話を描く前に、まず「ジェシーとグレン&アニーの関係が、本当の家族のようになる」という手順を済ませようよ。

(観賞日:2013年4月17日)


第18回スティンカーズ最悪映画賞(1995年)

ノミネート:【最悪の続編】部門
ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会