『フレディVSジェイソン』:2003、アメリカ
かつてエルム街の子供たちを震え上がらせた悪夢の住人フレディ・クルーガーは、今や過去の存在と化していた。現在、エルム街に暮らす 若者は、フレディの存在を全く知らなかった。再びエルム街の子供たちを恐怖に陥れるため、フレディはクリスタル・レイクの殺人鬼 ジェイソン・ヴーヒーズを利用することにした。
フレディはジェイソンの夢に入り込み、彼の亡くなった母親の姿を借りて「エルム街へ行って子供たちを襲え」と命じた。フレディは ジェイソンによってエルム街に恐怖を広め、それを自分が復活するエネルギーに変えようと企んでいたのだ。永遠の眠りに就いていた はずのジェイソンは、フレディの狙い通りに復活し、エルム街へ向かった。
雨の夜、高校生ロリーは友人キーアとギブを自宅に招いていた。ロリーは母が亡くなって以来、父と2人で暮らしている。キーアたちは ロリーに内緒で、ギブの恋人トレイと友人ブレイクを呼び寄せた。彼女たちは、ロリーの相手にブレイクを呼んだのだ。しかしロリーは 何も言わずに姿を消した初恋の相手、ウィルのことが忘れられずにいた。
ギブとトレイは2階へ上がり、ベッドで関係を持った。しかしギブがシャワーを浴びに行った間に、トレイがジェイソンによって殺害 される。死体を発見したロリーたちは家を飛び出し、転任したばかりの保安官スタッブスに助けを求めた。ロリーとブレイクは、ずっと エルム街で勤務している保安官が「フレディ」という名前を口にするのを耳にした。
警察で事情聴取を受けたロリーは、帽子をかぶって鋼鉄の爪を持った男が登場する悪夢を見た。ブレイクも自宅前で悪夢に襲われ、 命を落とした。同じ頃、ウィルはウエスティン・ヒルズ病院にいた。フレディの夢を見た若者は、全て病院に収容されていたのだ。 そして彼らは夢を見ないように、ヒプシノルという薬を投与されていた。
ウィルはテレビのニュースでロリーの家が映るのを目にしたが、すぐに病院の職員によってスイッチを消されてしまった。ウィルは友人 マークと共に、病院から抜け出した。ウィルとマークは、フレディに関する記録が全て抹消されていることを知った。大人達はフレディ の存在を封印することで、2度と悪夢の惨劇を招かないようにしていたのだ。
ロリーは仲間と共にパーティーに参加するが、ジェイソンが現れて若者を殺害する。フレディはギブを殺そうとするが、ジェイソンに 獲物を横取りされて激怒した。既にジェイソンは、フレディにとって邪魔な存在と化していた。ロリーは会場に現れたウィルと共に 逃亡し、マークの元へ向かう。だが、マークはフレディによって殺されてしまう。
警察は全ての殺人をフレディの仕業だと決め付けるが、スタッブスだけはジェイソンに着目していた。ロリー、ウィル、スタッブス、 キーア、同級生のリンダーマンとフリーバーグはフレディの夢を見ないようにするため、ウエスティン・ヒルズ病院に潜入してヒプシノル を入手しようとする。フレディはフリーバーグの体を操ってジェイソンを眠らせ、夢の中で抹殺しようとする…。監督はロニー・ユー、キャラクター創作はウェス・クレイヴン&ヴィクター・ミラー、脚本はダミアン・シャノン&マーク・スウィフト、 製作はショーン・S・カニンガム、製作総指揮はストークリー・チャフィン&ダグラス・カーティス&ロバート・シェイ&レニー・ ウィット、撮影はフレッド・マーフィー、編集はマーク・スティーヴンス、美術はジョン・ウィレット、衣装はグレゴリー・マー、 音楽はグレーム・レヴェル。
出演はモニカ・キーナ、ケリー・ローランド、ジェイソン・リッター、クリストファー・ジョージ・マークエット、ロックリン・ マンロー、キャサリン・イザベル、ブレンダン・フレッチャー、ザック・ウォード、ロバート・イングランド、ケン・カージンガー、 カイル・ラビン、トム・バトラー、デヴィッド・コップ、ポーラ・ショウ、ジェシー・ハッチ、ゲイリー・チャーク他。
『エルム街の悪夢』シリーズのフレディと『13日の金曜日』シリーズのジェイソン、このホラー映画界の2大キャラクターを競演させた 作品。
監督は、『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』のロニー・ユー。第二班監督を、撮影監督のプーン・ハンサン(潘恒生)が 担当している。ダミアン・シャノン&マーク・スウィフトは、これが初脚本。
ロリーをモニカ・キーナ、キーアをケリー・ローランド、ウィルをジェイソン・リッター、リンダーマンをクリストファー・ジョージ・ マークエット、スタッブスをロックリン・マンロー、ギブをキャサリン・イザベル、マークをブレンダン・フレッチャーが演じている。 また、製作総指揮のマーク・シェイが、L・E・モコという別名義で校長役として出演している。フレディ役は、もちろんシリーズ全てで彼を演じたロバート・イングランド。
一方、ジェイソン役はシリーズ中で何名か交代している。まあジェイソンはホッケーマスクで顔を隠しているので、ちょっとフレディとは 意味合いが違う。とはいえ、シリーズ第7作『新しい恐怖』から第10作『ジェイソンX』までは、ケイン・ホッダーが続けて演じて いる。
しかし、この作品でジェイソンを演じるのは、そのケイン・ホッダーではなくシリーズ第8作『ジェイソンN.Y.へ』のスタント・ コーディネイターだったケン・カージンガー。
これはロニー・ユー監督が「フレディを見下ろすジェイソン」という姿を欲しがったため。
つまり身長の高さで、ケイン・ホッダーではなくケン・カージンガーを選んだということだ。亜種とは言っても、一応はシリーズ物の範疇に入る作品だろう。
シリーズ作品というのは基本的に、キャラクター紹介や世界観説明を省略してしまう、つまりシリーズを見ていない人をターゲット層から 外す場合が多い。
しかし、この作品では最初に簡単なキャラや世界観の説明がある。
とはいえ、両方のシリーズを1本も見ていない人は、たぶんスンナリと入って行くのは難しいだろう。製作が『エルム街の悪夢』シリーズのニューライン・シネマということで、メインはフレディ・クルーガーの物語で、そこにジェイソン を招き入れるという形。
ただし当然と言えば当然だが、ジェイソンの殺人シーンは『13日の金曜日』テイスト。
バカなカップルがエロい行為に及ぶので「ああ、ジェイソンが来るな」と思っていたら、予定調和でジェイソンに殺される。
序盤で若いネエチャンがオッパイをさらすのは、完全に『13日の金曜日』の世界観。ものすごく大雑把に言ってしまうと、終盤に至るまでは「フレディとジェイソンが殺人を繰り返す」という話。
つまりフレディ&ジェイソンの殺人パフォーマンス合戦だ。
フレディが悪夢を操って自由奔放に遊びまくるのに対して、ジェイソンは全身火ダルマになった状態でナタを持って若者達に襲い掛かると いうインパクトを見せる。感情の無い殺人マシーンのジェイソンに対して、フレディは愛嬌たっぷりの殺人アーティスト。同じ「ホラー映画の殺人鬼」であっても、 その質は大きく違っている。
殺人シーンでしかケレン味を作り出せないジェイソンに対して、フレディは殺人シーン以外でも悪夢を見せる描写でケレン味を作ることが 出来るので、かなり有利だと言えるだろう。
何しろフレディは夢の世界の住人なので、ある意味では「何でもアリ」なのだ。非現実的な出来事を、幾らだって見せることが出来る。
いきなり目を潰されて血を流す少女を出現させるとか、影を巨大化させるとか、その気になれば、やりたい放題である。
ってなわけで、パフォーマンスの勝負としてはフレディに軍配を上げておこう。終盤に入ると、ロリーたちはジェイソンを利用してフレディを抹殺しようとする。
クリスタル・レイクで戦わせれば、ジェイソンは自分たちに襲い掛からず湖の底へ戻るだろうという考えだ。
終盤では少年時代のジェイソンがイジメに遭う回想シーンなども挿入し、人間の味方サイドに寄せようとする。
『キングコング対ゴジラ』で言うところのキングコングがジェイソン、ゴジラがフレディって感じかな。ロリーたちはジェイソンをクリスタル・レイクに運んだり、最後にフレディを首チョンパにしたりするが、人間どもは所詮、刺し身のツマ に過ぎない。終盤はフレディとジェイソンのモンスター・バトルが繰り広げられる。
まずは夢の世界で、両腕を切り落とされたフレディが高笑いして両腕をニョキッと復活させるとか、猛スピードでジェイソンがあちこちに 叩き付けられるとか、オバカ風味の高いバトル。
続いてクリスタル・レイクでは、もう夢の世界ではないのだが、もはや何でもアリが継続する。
ただしエルム街でのバトルに比べると、ハードコア・プロレスのイメージが強くなっている。(観賞日:2005年7月7日)