『フリーキー・フライデー』:1976、アメリカ

アナベル・アンドリュースは13歳。歯の矯正中で、体重が少し気になる年頃だ。学校ではホッケー部で主将を務めており、水上スキーが得意だ。弟のベンは見た目が良く、いい子ぶった所があり、アナベルはムカついている。隣に住むボリスに惹かれている。母親のエレンが口うるさく言うので、アナベルは反感を抱いている。
エレンは、反抗期に入ったアナベルのことが理解できずに困っている。アナベルの成績が下がっており、ディルク校長と会うことになっている。エレンは広告会社に勤める夫ビルに相談しようとするが、彼は仕事のことで頭が一杯で、まるで耳を貸さない。
アナベルとエレンは、互いに相手のことが羨ましいと考えた。そして、同時に「ママになりたい」「娘になりたい」と思った。その瞬間、2人の中身が入れ替わってしまった。エレンの魂がアナベルに移り、アナベルの魂がエレンに移ってしまったのだ。
アナベルの姿をしたエレンは、学校で失敗ばかりを繰り返す。エレンの姿をしたアナベルは、次々に現れる来客への対応に困ってしまう。やがてアナベルはエレンとして、マリーナのパーティーのために25人分の食事を作ることになる。一方、エレンはアナベルとして、パーティー会場で水上スキーのショーに参加することになってしまう…。

監督はゲイリー・ネルソン、原作&脚本はメアリー・ロジャース、製作はロン・ミラー、製作協力はトム・リーチ、撮影はチャールズ・F・ウィーラー、編集はコットン・ウォーバートン、美術はジョン・B・マンズブリッジ&ジャック・センター、衣装はチャック・キーン&エミリー・サンドビー、音楽はジョニー・マンデル。
出演はバーバラ・ハリス、ジョディ・フォスター、ジョン・アスティン、パッツィ・ケリー、ディック・ヴァン・パッテン、ヴィッキー・シュレック、ソレル・ブック、アラン・オッペンハイマー、ルース・バジ、ケイ・バラード、マーク・マクルーア、マリー・ウィンドソー、スパーキー・マーカス、シエル・キャボット、ブルック・ミルズ、カレン・スミス、マーヴィン・カプラン、アル・モリナロ他。


メアリー・ロジャースの小説を、自身の脚本で映画化したウォルト・ディズニー・プロダクションの作品。エレンをバーバラ・ハリス、アナベルをジョディ・フォスターが演じている。2003年には、ジェイミー・リー・カーティス&リンゼイ・ローハンでリメイクされた。

落語家の桂枝雀師匠の言葉に、「笑いは緊張と緩和」というものがある。
この映画には、緊張が無い。
ずっとズルズルで緩みっぱなし。
どうやら、ディズニー作品の悪い所ばかりを抽出してしまったようで、少しでも尖ったポイントが現れそうになると、丸くしてしまう。
それは、笑いを甘くしてしまう、緩くしてしまうことに繋がっている。

誰かと誰かが入れ替わるという話は珍しくないが、この映画の入れ替わりは、ある意味で凄い。母と娘が同時に相手になりたいと思った瞬間、入れ替わるのだ。
ベタだが、ぶつかるとか、事故に遭うとか、そういうことも無い。予兆らしい予兆もなく、きっかけとしての仕掛けを見せる気も無い。
「そんなのでイイの?」と思ってしまう。

これ、元に戻る時も、似たようなもの。
「元に戻りたい」と同時に思ったら、その瞬間に元に戻る。
なんじゃ、そりゃ。
しかも、今度は魂ではなく、体が入れ替わる。つまり、車を運転していたアナベルは、エレンの体から自分の体にチェンジ。水上スキーをしていたエレンは、アナベルの体から自分の体に戻る。
また都合のよろしいことで。

自分の体が入れ替わったことに気付くのが早いし、順応するのも早いから、そこで「自分が入れ替わっていることに気付かず行動してしまう」という笑いを損している。気付いた時のリアクションの笑いも無い。そういう部分での笑いを全て放棄してしまう。
ドタバタ劇の内容で、ドタバタを和らげようとしているのだから、何がやりたいんだか。
それぞれが相手に成り切ろうとしてボロが出そうになるのを誤魔化すというのではなく、アナベルもエレンも、そのままの自分を崩さずに行動する。それぞれが自分を出したままで平然と行動するのだから、取り繕うためにアタフタするという笑いも弱い。リアクションが弱いからといって、スカした笑いになっているわけでもない。

見た目と行動のギャップだけで笑わせようとしているのかもしれないが、恐ろしくユルユルだ。本人が別人に成り切ろうとしていないのだから、失敗するのは目に見えている。それは先にオチをバラしてからオチを見せるようなもので、予定調和にも程がある。
心情をモノローグで語らせることが非常に多いが、説明臭いだけ。それに、モノローグによって、観客は常に、エレンの姿だが実際にはアナベルだ(逆も同じ)ということを意識するわけで、ただでさえ見た目と行動のギャップによる笑いが薄いのに、さらに薄めてしまう。

さらに厳しいのは、この映画のジョディ・フォスターがまるでイケてないってこと。
もちろん役柄のせいもあるのだろうが、小太りだし、おまけに歯の矯正具を装着しているもんだから、歯を見せると、見た目が見事によろしくない。
ここに魅力が無いのは苦しい。

 

*ポンコツ映画愛護協会