『フットルース 夢に向かって』:2011、アメリカ

アメリカ中西部にある田舎町のボーモント。フットボール部の圧勝を記念し、屋外でダンス・パーティーが開かれた。学生たちはディスコ・ナンバーに合わせて軽快に踊り、パーティーは大いに盛り上がった。5人の男女は車に乗り込み、パーティー会場を後にする。運転していたボビーは助手席の恋人とキスを交わすが、前方不注意でトラックと正面衝突する事故を起こしてしまった。この事故を受け、18歳未満の夜間外出禁止を定める条例案が町議会に提出された。
条例の内容は、平日は夜10時、週末は11時までに帰宅することを要求するだけでなく、アルコールやドラッグの摂取、低俗な音楽を大音量で聴くこと、学校や市民団体や教会の催し物以外で品位の無いダンスを踊ることを禁じるというものだ。ボビーの父であるショー・ムーア牧師は聴聞に来ている町民に向け、子供たちを守る必要性を訴えた。全ての議員が賛成し、最後に問い掛けられたジョーも迷わず賛成の意を示した。これを受け、条例は可決された。
3年後、高校生のレン・マコーマックは伯父のウェス・ウォーニッカーを頼り、ボストンからボーモントへやって来た。母を亡くしたレンが1人きりになったため、ウェスが引き取ることにしたのだ。中古車販売業を営む彼はは妻のルル、娘のエイミー&サラと幸せに暮らしている。レンは中古車販売業を手伝うつもりだったが、ウェスは友人であるアンディーの工場で働くよう勧めた。ボストンでは修理工場で働いていたことをレンが話すと、ウェスはガレージのボロ車を直せれば使っていいと告げた。
レンは携帯プレーヤーで好きな音楽を流しながら、車を修理する。車が動くようになると、彼は大音量で音楽を流しながら町に繰り出した。すぐにパトカーが来て停止を要求し、警官のハーブは治安妨害で裁判所へ出頭するよう命じた。レンはウェスに連れられて日曜の教会へ行くが、ジョーの説法は彼にとって退屈なだけだった。ミサの後、ウェスはレンをジョーに紹介し、ジョーは高校の校長であるロジャー・ダンバーに紹介した。ジョーの妻であるヴァイは、同級生になる娘のアリエルをレンに紹介した。
アリエルはジョーに、親友のラスティーの家で課題をやるのに夜中まで掛かるので泊まりたいと頼んだ。ジョーは徹夜になると聞かされ、「仕方が無い」と許可した。だが、アリエルの説明は真っ赤な嘘だった。彼女はラスティーと共に、恋人のチャック・クランストンが出場しているカーレースの会場へ赴いた。チャックは2連覇を達成し、アリエルを車に乗せてトラックを一周した。ラスティーが「バカやって死んだ人のニュース知らないの?」と批判しても、アリエルは気にしなかった。「ボビーが死んでからおかしいよ」とラスティーは告げ、チャックに送ってもらうと言うアリエルと別れて去った。アリエルはチャックのトレーラーへ行き、肉体関係を持った。
月曜日、アリエルは登校してラスティーに謝罪し、仲直りした。レンは登校して早々にウィラード・ヒューイットという同級生と知り合い、教室まで案内してもらった。彼はウィラードと同じフットボール部に入り、キャプテンのウッディーを紹介された。放課後、アンディーの工場へ顔を出したレンは、木曜から仕事に来るよう指示された。自宅に戻ったレンはウィラード&ウッディーと話し、ダンスが犯罪だと聞いて呆れ果てた。
ウィラードは「バカみたいな法律ばっかりだ。バンダナも不良っぽく見えるから禁止だ。プロムも無い」と愚痴をこぼし、ウッディーは「学校も何かあったら責任を取らされるからプロムを嫌がってる」と語る。彼はプロムの帰りに事故を起こした5人が死亡したこと、そのせいでダンスや音楽が罪になったのだと説明した。夜、レンとウィラードはスナックバー「スターライト」へ出掛け、ウッディーや恋人のエッタと会う。ウッディーと仲間たちは今まで2度も警察に捕まりながらも、店長のクロードにCDを掛けてもらうと、店の外で音楽に合わせて踊り始めた。これまでウッディーは2度も警察に捕まっているが、まるで気にしていなかった。
チャックと店に来ていたアリエルも踊り、レンもエッタから踊るよう誘われる。レンはウッディーにソロをやるよう促され、軽快な動きを披露した。彼は会った時から気になっていたアリエルを誘い、一緒に踊る。しかしチャックの視線に気付き、「見せ付けたいだけなら、他の男と踊れよ」と告げて離れた。店にジョーが現れ、アリエルが踊っている姿を目撃した。アリエルは父に呼び出され、一緒に家に帰るよう命じられた。彼女は渋々ながら従うが、帰宅すると露骨に不快感を示した。
次の日、治安妨害で裁判所に出廷したレンは、裁判長のエディーと親しいウェスの口利きもあって執行猶予付きの判決で済んだ。レンはウェスに質問し、日曜はビールを購入できないと教会が定めたことを知って呆れた。帰宅した彼の元へアリエルが来て、チャックが明日の2時にレーストラックへ来るよう言っていることを伝えた。次の日、レンが仲間たちとトラックへ行くと、チャックはバスを使った対決を要求した。レンはバスの後部に火が付くトラブルに見舞われるが、チャックの車両に突っ込んで横転に追い込んだ。
図書室で勉強していたレンは、同級生のリッチに「バスを吹っ飛ばすなんて凄いな。ボーモントも吹っ飛ばしてくれよ。ここは最低だろ」と声を掛けられる。レンが軽く受け流していると、リッチは「ドラッグは?俺は毎日やってる。放課後に2人でハイになろうぜ」と誘う。レンが「一緒にするな」と断ると、リッチは強引にマリファナを渡す。レンは突き返そうとするが、司書のパーカーに目撃されてしまう。リッチは慌てて逃走し、レンはドラッグ所持の罪を着せられてダンバーの元へ連行された。
レンが無実を主張すると、ダンバーは「リッチと一緒にいたらしいが、そのマリファナは彼の物か?」と訊く。レンは「俺は吸いません」とだけ答え、無実を証明するために検査をするよう求めた。ダンバーは「証拠が無い以上、今回は目をつぶる」と告げ、母親のサンディーを知っていたと語る。レンはダンバーの言葉に腹を立て、「俺の前で二度と母の話はするな」と告げて立ち去った。アリエルが声を掛けて来るが、レンは「俺のことは放っておけ」と怒鳴った。
レンは車を猛スピードで走らせて閉鎖された工場へ行き、大人たちへの不満を大声でぶちまける。彼は大音量で音楽を流し、激しいダンスを踊った。後を追って来たアリエルは、その様子を見て声を上げた。日が暮れてから、彼女は線路脇にある仲間の隠れ家にレンを案内した。「キスしたい?」とアリエルが誘うように言うと、レンは「ガス抜きの道具にされるのは嫌だね。チャックとは違う」と告げた。向こうから列車が走って来ると、アリエルは度胸試しと称して線路に立つ。彼女が逃げようとしないので、レンは慌てて突き飛ばした。
アリエルが帰宅すると、ジョーが「娘に外出禁止令を守らせることも出来ないようでは、信者に示しが付かない」と言う。アリエルは父に「酔ってるのか」と問われ、「煙草もお酒もダンスもやってません。ただ遅くなったただけ」と告げる。誰と一緒にいたのか訊かれた彼女は、レンだと答えた。ジョーが「二度と会うな。彼は厄介者だ」と告げると、アリエルは反発する。彼女はジョーの説教に耳を貸さず、自分の部屋に入った。
レン、アリエル、ウィラード、ラスティーは車で4時間を掛け、カントリークラブヘ出掛けた。大勢の若者たちが音楽に合わせて踊っており、アリエルとラスティーは参加する。レンはウィラードを誘って踊りに加わろうとするが、「踊れないんだ」と告白される。レンは「ただのカントリーダンスだ。すぐに踊れる」と言い、女性ダンサーに声を掛けてウィラードの指導を頼んだ。レンはアリエルと体を密着させて、激しく踊った。帰り道、アリエルは車が橋を渡る時、レンに「3年前の事故があったのは、この橋よ。車を運転していたのは兄貴。フットボール部のヒーローで、自慢の兄さんだった」と語った。
ジョーはウェスと会い、「レンが友達を欲しがるのは分かるが、娘を追い回すのは気に入らないな。娘に悪影響を与えてほしくない」と語る。ウェスは「レンが何をしたって言うんです?」と反発し、レンを擁護した。ジョーの動きを知ったレンはウィラードと会話を交わす中で、署名を集めて正式にダンス・パーティーを開く計画を思い付いた。彼は市議会を得たジョーの元へ行き、「俺はダンス禁止条例に反対する署名を集めます。正々堂々とやりたいんで」と宣戦布告した。
レンはパーティーに向けて、仲間たちと協力してウィラードにダンスを練習させた。彼はパーティーのビラを作成し、学校に貼り出した。アリエルはチャックに別れを告げ、納得できない彼に侮辱の言葉を浴びせられた。投げ飛ばされたアリエルは、バールを手にして彼の車を殴り付ける。チャックは彼女の顔にパンチを浴びせ、その場を去った。娘の傷を見たジョーはレンの仕業だと決め付け、警察に通報しようとする。アリエルが「何でもレンのせいにするんだね。全てお兄ちゃんのせいにしたみたいに」と言うと、彼は立ち止まった。
アリエルはジョーに、「ボビーはパパを喜ばせたがってた。それなのに、たった1つの間違いで、みんなは橋で事故を起こしたことしか覚えてないと告げる。アリエルが「ダンスが出来ないのも、夜間に外出できないのも、全てボビーのせいにされてる」と声を荒らげると、ジョーは子供を守ろうとしただけだと弁明する。アリエルが激しく反発すると、彼は衝動的に平手打ちを浴びせてしまう。ジョーは慌てて謝るが、アリエルは彼を睨み付けて去った…。

監督はクレイグ・ブリュワー、原案はディーン・ピッチフォード、脚本はディーン・ピッチフォード&クレイグ・ブリュワー、製作はクレイグ・ゼイダン&ニール・メロン&ディラン・セラーズ&ブラッド・ウェストン、製作総指揮はティモシー・M・バーン&ゲイリー・バーバー&ロジャー・バーンバウム&ジョナサン・グリックマン、撮影はアメリア・ヴィンセント、美術はジョン・ゲイリー・スティール、編集はビリー・フォックス、衣装はローラ・ジーン・シャノン、音楽はデボラ・ルーリー。
出演はケニー・ウォーマルド、ジュリアン・ハフ、デニス・クエイド、アンディー・マクダウェル、マイルズ・テラー、レイ・マッキノン、パトリック・ジョン・フルーガー、キム・ディケンズ、ザイア・コロン、サーダリウス・ブレイン、L・ウォーレン・ヤング、ブレット・ライス、マギー・ジョーンズ、メアリー=チャールズ・ジョーンズ、エニシャ・ブリュースター、ジョシュ・ウォーレン、コリー・フラスポーラー、アネッサ・ラムジー、ジェイソン・ファーグソン、フランク・ホイト・テイラー、ジェイソン・スミス、クロード・フィリップス他。


1984年の映画『フットルース』のリメイク。
監督は『ハッスル&フロウ』『ブラック・スネーク・モーン』のクレイグ・ブリュワー。脚本はオリジナル版のディーン・ピッチフォードとクレイグ・ブリュワー監督の共同。
レン役はザック・エフロンやチェイス・クロフォードがオファーを断り、『センターステージ2/ダンス・インスピレーション!』に出演していたプロダンサーのケニー・ウォーマルドが抜擢された。
アリエル役は『バーレスク』のジュリアン・ハフ。いずれも踊れる人を起用している。
ショーをデニス・クエイド、ヴァイアンディー・マクダウェル、ウィラードをマイルズ・テラー、ウェスをレイ・マッキノン、チャックをパトリック・ジョン・フルーガー、ルルをキム・ディケンズが演じている。

最初に書いておくと、私はオリジナル版を高く評価しているわけではない。っていうか、むしろ逆で、だから『ポンコツ愛護協会』でも取り上げているぐらいだ。
だから、「オリジナル版は素晴らしかったのにリメイク版は酷い」という形で批評するつもりは毛頭ない。
ただ、それでもオリジナル版と比較したくなる部分はあって、それは時代設定。
この映画、登場する道具などを見る限り、どうやら公開された2011年辺りの設定になっているようだ。そして、それが大きな失敗だと感じるのだ。

オリジナル版も1984年の時代設定だったが、その当時でも設定にリアリティーを感じられなかった。
それが2011年でも同じ設定を採用しているのだから、そりゃあ「あまりにも古めかしい」という印象になってしまうのは当然のことだろう。
ちょっとボンヤリした言い回しになってしまったが、ようするに「ダンスも低俗な音楽も全て禁止」という条例にバカバカしさを感じてしまうってことだ。
まるで御伽噺のような手触りになっているってことだ。

そりゃあ舞台はドが付くほどの田舎町で、だから都会に比べれば色んな物が随分と遅れているし、南部なので宗教的に厳格なルールを要求されるという部分もあるかもしれない。
ただ、それにしても冒頭で可決される条例案は、あまりにもバカバカしい。
さらに言うと、冒頭で流れるのはオリジナル版と同じケニー・ロギンスの『フットルース』なんだけど、その時点で2008年ってことだよね。
幾ら田舎町でも、2008年の高校生たちが『フットルース』で踊って大いに盛り上がるだろうか。これも違和感が強いんだよね。

ただ、ケニー・ロギンスの『フットルース』は素晴らしい楽曲だし、前述したようにオリジナル版をポンコツ扱いしている私でも、それが流れて来ただけでウキウキした気分になることは間違いない。曲に合わせて若者たちが踊るシーンも、タイトルに合わせて足元のステップだけをアップにするカメラワークも、そりゃあ楽しい気持ちにさせてくれる。
なので、そこは使いたい。
それを考えると、条例案の部分を全く変えずに踏襲するのであれば、いっそのこと時代設定も1984年にすれば良かったんじゃないかと。
『フットルース』をリメイクするのなら、それがベストかどうかはともかく少なくとも本作品よりはベターな方法じゃないかと。

レンは序盤から生意気な態度を取り、ちっとも可愛げが無い。ボーモント田舎としてを見下したような態度を取り、アンディーにも偉そうな言葉を吐く。
「母親を亡くして心がトゲトゲしくなっている」ということではなくて、どうやら「そういう性格」ってことらしい。
その辺りのキャラ設定は、どういう狙いがあるのか良く分からない。単純に、好感の持てない若者という印象を与えるだけじゃないかと。
それが改善されていくドラマがあるならともかく、そんなのは何も無いわけで。
マリファナの嫌疑でダンバーたちに尋問されるシーンにしても、やたらと生意気な態度を取るんだよね。なので、こっちはレンが無実なのを知っているけど、「そんな態度を取っていたら、疑われても仕方が無いぞ」と言いたくなってしまう。

そもそも、大音量で曲を流して車を走らせる時点で、ちょっと問題がある行動と言わざるを得ないんだよね。
それだけで切符を切るのは行き過ぎかもしれないけど、近所迷惑になるのは間違いないわけで。
レンがダンスや音楽を好きなのは別に構わないし、自分が楽しむために好きな曲を聴くのはいい。
だけど、それをガンガンと大音量で流しながら運転するのは、「田舎に来たのに自分のやり方を押し通そうとしている」という身勝手な奴にしか見えないのだ。「郷に入り手は郷に従え」って言葉を教えたくなる。

ボーモントに理不尽極まりない条例はあるものの、多くの若者たちはダンスや音楽を密かに楽しんでいる。
だから「レンが来たことで若者たちもダンスや音楽に前向きになる」ってことじゃなくて、レンは若者たちに誘われて初めて踊る形になる。
ガチガチに保守的な町ではあるが、それに若者たちは服従しているわけではない。反発しているし、行動も起こしている。
見つかったら条例違反で捕まるという問題はあるが、レンが来る前から若者たちはダンスや音楽を日常的に楽しんでいるのだ。

それだけでも上手くないと思うのだが、もっとマズいのは多くの若者たちが普通にダンスを披露していること。
これにより、レンの特異性が薄れてしまうのだ。
そもそも冒頭で大勢が軽快なステップを踏んでいる様子を見せる構成からして問題があるが、それは過去の出来事ってことで、ひとまず置いておくとしよう。
でも現在のシーンになっても、最初に踊るのはウッディーと仲間たちで、キレのある動きを見せている。その後にレンもソロで踊るが、圧倒的なレベルの差を見せ付けるわけではない。
そうなると、「レンがダンスの才能に秀でている」という印象は全く受けないのだ。

ダンスに対する情熱にしても、レンが抜きん出ているとは感じない。ウッディーと仲間たちは、今まで2度も逮捕されたのに、それでも屋外で踊るんだから。
もしかすると、ダンスへの熱い思いはレンより上かもしれない。
そうなると、レンの存在って何なのかと。
「条例に不満を持つ若者たちだが、仕方なく従っている」ってことなら、レンには「我慢せずに行動しようぜ」と先導する役割がある。だけど他の場所から来た新参者が「条例は間違っている。この町は閉鎖的で進歩が無い」と主張する前から、若者たちは条例に反発して踊っていたわけでね。
既に若者たちが行動を起こしているので、レンの扱いが難しくなってしまう。

(観賞日:2019年5月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会