『フライボーイズ』:2006、イギリス&アメリカ
第一次世界大戦は1916年初頭からヨーロッパ全土に拡大し、多くの死者を出した。発明されたばかりの飛行機は、既に兵器として取り入れられていた。その頃、テキサス州アバデイーンに住むブレイン・ローリングスという青年は、実家の農場を差し押さえられていた。銀行員を殴って怪我を負わせたローリングスは、映画館で戦争のニュース映画を見た。そこへ保安官が現れ、逮捕状が出ていることを通告する。「30分だけ待ってやる」と言い、保安官は映画館を出て行った。ニュース映画では、不戦の立場を取る米国の若者たちがフランス軍に志願したこと、戦闘機隊が新設されたことが描かれていた。
ネブラスカ州リンカーンでは、名家の嫡男であるウィリアム・ジェンセンが両親と恋人のローラに見送られて列車に乗り込もうとしていた。フランス軍に志願した息子との別れを寂しがる両親に、彼は笑顔で「必ず勲章を貰って帰るよ」と約束した。ローラは目に涙を浮かべ、「手紙を書いてね」と告げた。フランスのマルセイユ。プロボクサーのユージーン・スキナーはトレーナーに、引退して入隊することを話す。困惑するトレーナーに、彼は「この国は俺に良くしてくれた。恩返しがしたい。ラファイエット戦闘機隊に入る」と述べた。
ニューヨークの港では、ブリッグス・ロウリーが両親に見送られて客船に乗り込もうとしていた。不安そうなロウリーに、父は「この戦争は、お前にとって頭角を現すチャンスだ」と告げる。ロウリーが消極的な態度を取ると、彼は「ハーバードを中退し、このままでは我が家の恥さらしになるだけだ。ロウリーの名にふさわしいことをしろ」と説教した。ジェンセン、スキナー、ロウリー、それにエディー・ビーグル、ヴァーノン・トッドマンという5人の若者は、ラファイエット戦闘機隊の本拠地であるヴェルダンに集結した。
司令官であるセノール大佐と側近のジルーは、スキナー以外の面々がフランス語も話せない状態で入隊したことに呆れた。セノールは彼らに、3年前からフランスが参戦していること、百万人以上の若者が戦死していること、2ヶ月の訓練期間があることなどを話す。そこへ遅れてローリングスが到着し、自信満々で「俺がエースになる」と口にした。すると先輩パイロットのリード・キャシディーが現れ、新米を馬鹿にするような態度を見せた。ローリングスが生意気な態度で返すと、彼は苛立った様子で「戦場での平均寿命は3から6週間だ。飛行機乗りは楽しいと思ったか。今の内に帰れ」と告げた。
ローリングスたちは宿舎に使用されている豪華なシャトーへ案内され、部隊のマスコットとして飼われているライオンのウィスキーと遭遇した。部屋の割り当てで黒人のスキナーと同室にされたロウリーは、「使用人と同じ部屋に住むようなものです」と不満を訴えた。彼はビーグルと同室に変更してもらい、ローリングスがスキナーと同室になった。夜、新米たちが兵士の集まる酒場へ赴くと、カウンターで飲んでいたグラントという男が「お前らには入る資格が無い。人殺し専門の店だ」と告げた。
酒場の黒板には撃墜した戦闘機の数が記されており、キャシディーは他の部隊の面々と比べてもダントツだった。グラントに嘲笑されて頭を触られたスキナーは、パンチを浴びせた。グラントが反撃しようとすると、キャシディーが現れて「相手はプロボクサーだ」と制止した。彼は新米たちに、「俺たちは味方だが、ここへ入るのは実戦を経験してからだ」と告げた。翌朝から訓練が開始され、新米はセノールから戦闘機や装備の説明を受ける。最初の飛行を終えると、次は戦略と射撃の訓練に入った。
ローリングスはビーグルに射撃を教えるよう命じられ、同じ飛行機で空を飛んだ。射撃の下手なビーグルは標的に命中せず、「しばらく楽しもうぜ」と勝手に遊覧飛行を始める。しかし途中でガス欠になり、ローリングスは不時着するよう指示した。気絶したローリングスが意識を取り戻すと、ルシエンヌという若いフランス人女性に介抱されていた。そこは娼館で、他にも大勢の若い女たちがいた。先に目を覚ましていたビーグルがローリングスの元へ来て、飛行機から投げ出されて運ばれたことをに説明した。
ローリングスはルシエンヌに惹かれるが言葉が通じず、それでも何とかアプローチしようとする。ジェンセンが迎えに来たので、彼は娼館を去った。入れ違いにキャシディーが来て大勢の娼婦たちから歓迎される様子を、ローリングスはじっと見つめた。ローリングスたちが基地へ戻ると、デウィット、ポーター、ヒギンズ、ナンという若者たちが新たに入隊していた。1ヶ月後、ローリングスたちは専用の戦闘機を与えられ、胴体部分に個別のマークを入れた。
部隊はパリ侵攻の一環でムーズ川へ向かうドイツ軍を叩くため、2機の爆撃機を護衛してジャメへ向かうことになった。セノールは敵の武器庫を爆撃する目的を語り、作戦を説明した。翌朝、キャシディーが部隊のリーダーを務め、新米たちを率いて離陸した。地上から砲撃を受けた部隊は上昇して回避し、ドイツ軍の戦闘機隊と交戦する。トッドマンとデウィットが撃墜され、不時着したナンはブラック・ファルコンと呼ばれる戦闘機乗りに撃ち殺された。
部隊はジャメへ向かわず、基地へ帰還した。ナンが撃ち殺されたことへの憤りをローリングスが吐露すると、セノールは「戦争に正義を求めるな。空で決着を付けて来い」と告げた。キャシディーは敵機を追うため、すぐに単独で出撃した。その夜、グラントは新米たちを酒場へ招待し、仲間と共に最初の出撃を祝福して乾杯する。ローリングスが「仲間が3人も死んだんだぞ」と怒鳴ると、ジルーが「毎日、もっと死んでる」と告げる。
酒場の兵士たちが陽気に歌う中、キャシディーはローリングスに「俺たちの偲び方だ。明日は我が身だし、泣いても何も変わらない」と告げた。しかしローリングスは納得できず、酒場を去った。彼は娼館へ行き、ルシエンヌに会おうとする。しかしルシエンヌは娼婦ではなく、たまたま物々交換で来ていただけだった。彼女が娼婦ではないと知り、ローリングスは喜んだ。ローリングスはルシエンヌの住まいを聞き、馬を借りて会いに行く。彼女は兄夫婦を爆撃で亡くし、遺児であるジャック、リュック、マリーと暮らしていた。ローリングスはルシエンヌと子供たちを楽しませるため、カウボーイの真似事をした。
レヴィニーで操車場が爆撃されているという情報が届き、部隊は緊急出撃した。ヒギンズが撃墜されるが、ローリングスは2機、ポーターが1機を撃墜した。彼は弾詰まりで危機を迎えるが、ドイツ軍のパイロットは彼を見逃した。基地に戻ったローリングスが酒場でそのことを話すと、キャシディーは「撃墜王のフランツ・ウォルフェルトだ。ナンの一件の詫びだろう。次は無いぞ」と述べた。「ヒギンズは残念だったな。飲めよ」と勧められると、ローリングスはボトルを掴んで酒を飲んだ。
部屋に戻ろうとしたローリングスはロウリーから、「ビーグルは怪しい。誰からも手紙が来ない。撃てば外しまくる。ドイツ軍機に詳しい。何か隠してる」と告げられる。ローリングスは軽く受け流し、部屋に戻った。ジェンセンは強いショック状態に陥り、キャシディーは「しばらくは飛ばなくていい」と告げた。ローリングスは戦闘機でルシエンヌの家を訪れ、英語を勉強している彼女と話す。ローリングスはルシエンヌを戦闘機に乗せ、遊覧飛行を楽しんだ。ルシエンヌの家に戻った彼は、キスを交わした。
ローリングスが基地に戻ると、ビーグルはスパイ疑惑でセノールから調べを受けていた。ビーグルの本名はアーサー・ベッカーであり、出身地も偽りだった。ローリングスはビーグルに、真実を話すよう説いた。ビーグルはギャンブルで借金を作ったこと、玩具の銃を使って銀行から金を奪ったことを告白した。キャシディーは証拠書類を手に入れており、セノールにビーグルが12ドル36セントを奪ったことを話した。セノールは「犯罪は管轄外だ」と言い、ローリングスたちはビーグルを引き続き仲間として受け入れることを告げた。
フォッカー機群が住民を先導する歩兵部隊に迫っているという情報が入り、ローリングスたちは直ちに出撃する。ローリングスたちは敵機を攻撃しキャシディーがウォルフェルトを撃墜した。しかしビーグルが不時着し、敵の地上部隊から攻撃を受ける。ローリングスは戦闘機を着陸させ、救出に向かった。彼は機体に挟まれたビーグルの右腕を抜くため、スコップで殴り付けた。ローリングスは苦悶するビーグルを抱えて、自軍の陣地へ逃げ込んだ…。監督はトニー・ビル、原案はブレイク・T・エヴァンス、脚本はフィル・シアーズ&ブレイク・T・エヴァンス&デヴィッド・S・ウォード、製作はディーン・デヴリン&マーク・フライドマン、共同製作はマーク・ロスキン&キアリー・ピーク、製作協力はレイチェル・オルスチャン、製作総指揮はフィリップ・M・ゴールドファーブ&デヴィッド・ブラウン&ダンカン・リード&ジェームズ・クレイトン、撮影はヘンリー・ブラハム、美術はチャールズ・ウッド、編集はロン・ローゼン、衣装はニック・イード、視覚効果監修はピーター・チャン、視覚効果プロデューサーはマーク・フランコ、音楽はトレヴァー・ラビン。
出演はジェームズ・フランコ、ジャン・レノ、マーティン・ヘンダーソン、デヴィッド・エリソン、ジェニファー・デッカー、タイラー・ラビーン、アブダル・サリス、フィリップ・ウィンチェスター、ダニエル・リグビー、バリー・マッギー、オーグスタン・ルグラン、レックス・シュラプネル、キース・マッカーリーン、マイケル・ジブソン、クリスチャン・アンホルト、ピップ・ピッカーリング、カイル・ヘンシャー=スミス、エイドリアン・ブーブリル、ローレン・ダウニング、ヘイリー・ダウニング、ティム・ピゴット=スミス、マック・マクドナルド、ジャン=フィリップ・エコフィー、トッド・ボイス、カレン・フォード、イアン・ローズ他。
『忘れられない人』『母の贈りもの』のトニー・ビルが監督を務めた作品。
撮影技師のブレイク・T・エヴァンスが、初めて原案と脚本を手掛けている。
共同で脚本を務めたのは、『ラスト・スクリーム』のフィル・シアーズと『スティング』『めぐり逢えたら』のデヴィッド・S・ウォード。
ブレインをジェームズ・フランコ、セノールをジャン・レノ、リードをマーティン・ヘンダーソン、エディーをデヴィッド・エリソン、ルシエンヌをジェニファー・デッカー、ブリッグスをタイラー・ラビーン、ユージーンをアブダル・サリス、ウィリアムをフィリップ・ウィンチェスターが演じている。戦争の悲惨さや訓練の過酷さなどは、ほとんど感じられない。
むしろ、異様なほどに爽やかで清々しい。
そもそも、「第一次世界大戦は1916年初頭からヨーロッパ全土に拡大し、九百万以上の死者を出した。発明されたばかりの飛行機は、既に兵器として取り入れられていた。歴史に「戦闘機乗り」という新しい英雄が誕生したのだ」という冒頭に示される文章からして、「戦闘機乗りを英雄として描くのだ」という宣言だと言っていい。新米隊員たちがラファイエット戦闘機隊に入る動機は、かなり浅薄になっている。
ローリングスは「実家の農場を差し押さえられ、金を稼ぐため」ってことなんだろうけど、かなり弱い。
ジェンセンに至っては、サッパリ分からない。スキナーやロウリーに関しても、動機の部分の描写は弱い。
だから、その部分には観客の心を新米隊員たちに引き付けて感情移入させる力は無い。
あとビーグルとトッドマンに関しては、「いつの間にかメンバーに入っている」という状態で、紹介シーンが無いのよね。その5人は「同時に入隊する仲間」として描かれているわけだから、ビーグルとトッドマンだけ紹介シーンを用意せず、適当に片付けるというのは明らかにバランスがおかしい。それは明らかに手落ちでしょ。
っていうか、戦闘機隊を描く上で複数の面々を描く群像劇にしようという狙いは分かるが、結果としては失敗している。
手を広げ過ぎて、全員が薄っぺらい状態になっているのだ。
だったら、主人公はローリングスに限定して、あくまでも彼視点から進めるスタンスを取り、その上で「周囲の人々も描く」という形にでもしておいた方が良かったんじゃないかと。最初の5人だけでなく、ラファイエット戦闘機隊には後からデウィット、ポーター、ヒギンズ、ナンという4人が加わる。
しかし、この面々に関しては、最初の5人にも増して薄っぺらい。登場シーンで示されるのは、ナンが甘党でポーターが信心深いということだけだ。
デウィットとヒギンズに至っては、登場シーンで名前さえ出ない。で、登場した途端、すぐに1ヶ月後に移ってしまう。だから、こいつらの中身を描く時間なんて全く無い。
そもそもローリングスたちでさえ、中身なんてペラペラなんだから。
結局はローリングスを描くだけで、ほぼ手一杯なのよね。一応、チラッと人物を描く意識は見えるけど、まあ薄いこと。「駅に到着したジェンセンたちが男に行き先を訪ねようとするが、小便していることに気付く」というシーンは、明らかにユーモラスなタッチで描かれている。
スキナー以外の新米がフランス語を話せない状態で入隊したことにセノールとジルーが呆れるシーンも同様だ。
セノールが説明している間、煙を吐きながらフラフラと飛んでいる戦闘機が上空を回っており、それをジェセンたちが気にするシーンも、やはりユーモラスなタッチで描かれている。
そこから「最初は軽いノリで余裕のあった若者たちが、過酷な訓練の中で変化していく」という成長物語を描くのかと思いきや、そんなに変わらない。入隊直後のキャシディーの態度からして、訓練が始まったら余裕が無くなるのかと思いきや、相変わらず呑気で明るい雰囲気が漂っている。そこに厳しさは全く見られない。回転させた椅子から立ち上がって歩く平衡感覚の訓練シーンなんて、すんげえ楽しそうだ。
しかも、その訓練と簡単な説明の後、すぐに実際の飛行に入っちゃうのだ。
いや、早すぎるだろ。飛行機を飛ばすのって、そんなに簡単なのかよ。
しかも、そこで何かミスをやらかしたり能力の低さを露呈したりするのかと思いきや、「みんな楽しそうに飛行機を操縦する」というのがサラッと描かれるだけで終わってしまう。
その次は地上で戦略訓練に入るけど、模型を使って説明するセノールを描くのも、何となくユーモラスだし。開始から30分辺りで最初の任務が説明されるシーンでは、訓練ではノンビリで優しかったセノールが、「ランチまでには帰れますか」と冗談めかした質問を受けて「戦略的な質問をしろ」と厳しい態度になっているという変化を見せている。それに伴って、新米たちの間にも緊張感が漂う形になっている。
ひょっとすると「訓練と実戦は全くの別物」という狙いで落差のために、そこまではユーモラスに描いていたのかもしれない。
ただし、それを本当の意味で機能させるなら、そこから緊迫感に満ちた状態を持続させるべきだろう。
ところが、セノールの説明が終わると、新米たちの緊迫感はすぐに消え失せてしまう。そして翌朝の出動シーンに至っては、空を飛ぶ楽しさと爽快感に満ち溢れている。もちろん、いざ戦闘に突入すると余裕なんて無くなり、それなりの緊迫感が生じる。ただし、何しろキャラの描写が薄いので、誰かが死んでも全くドラマティックではない。悲劇性に乏しく、ちっとも心に響くモノが無い。
しかも、仲間の死にショックを受け、セノールや先輩隊員たちの冷淡だったり軽薄だったりする反応に憤りを見せていたローリングスからして、すぐにルシエンヌの元を訪れてヘラヘラしているのよね。
ようするに仲間が死んだショックなんて、惚れた女に会えば簡単に忘れてしまうのよ。
他の面々にしても、仲間の死を引きずる様子なんて全く描かれないまま、すぐに二度目の出撃シーンへ突入してしまうのだ。だから「戦争による死」ってモノが、ものすごく軽い。で、二度目の戦闘でヒギンズが死ぬと、今度は「すぐに忘却」という扱いにされている。
おまけに、その夜には「ビーグルが怪しい」という展開になってしまい、もはや仲間の死なんてどうでも良くなっている。
ジェンセンが精神を病むというトコで「仲間の死」の重さを出そうとしているけど、なんせローリングスが軽薄なのでね。
それは兵士としては「確実に成長している」ってことになるのかもしれないけど、主人公の動かし方としては、どうなのかと。ロウリーがビーグルを怪しむシーンは、「セノールがビーグルをスパイ疑惑で取り調べる」という展開へ繋がる。そしてビーグルが「過去 におもちゃの拳銃で銀行強盗をやった」と告白し、セノールが彼を許し、仲間たちも受け入れるというトコロヘ着地する。
そこは何となく感動的なエピソードのように描かれているけど、どうなのかと。
使った武器は玩具で、奪った金も少額だけど、それでも身勝手な犯罪には違いないわけで。ギャンブルで作った借金を返すための犯行だから、完全に自業自得で同情の余地は無いし。
そこは何か違う理由にしておいた方がいいんじゃないかと。後半には「ドイツ軍からルシエンヌを救うためにローリングスが戦闘機を飛ばす」という展開があるけど、そういう恋愛劇を持ち込んだせいで、なかなか「仲間の絆」ってのが深まらない。
ようするに、欲張り過ぎて捌き切れていないってことよ。
その後には女絡みじゃなく「ドイツ軍の侵攻を阻止するための戦闘」が用意されているけど、ポーターとキャシディーが死んじゃうから「敵をやっつけた」という盛り上がりは無い。
しかも、そんな仲間の死をローリングスが偲ぶのは一瞬で、すぐにルシエンヌの元へ向かうし。
一応、その後には「ジャメ攻撃」というクライマックスがあるんだけど、そこも時間が短いし、盛り上がりはイマイチなのよね。「まだ当時は開発されていなかった戦闘機が登場する」「その年代には使われていなかった道具や紋章が出て来る」「その戦闘機では実際には絶対に不可能な操作が行われる」など、この映画は歴史考証や科学考証に幾つもの不備があることが指摘されている。
私は戦闘機に関してマニアックな人間ではないし、第一次世界大戦の知識が豊富なわけでもない。
だから、観賞している中で多くのストレスを感じることは無かった。
しかし、そういうトコを雑にやっているってのは、まあ手抜きと言われても仕方が無いだろう。ただ、トニー・ビル監督は、ある程度は分かった上でやってるんじゃないかという気がするのだ。
と言うのも、トニー・ビルは14歳の頃に曲技飛行の免許を取得しており、複葉機のオタクらしいのよね。
そういう情報を知った上で鑑賞すると、前述した部分についても「ああ、なるほどね」と腑に落ちるんじゃないだろうか。
ようするに、歴史考証や科学考証の正確さを追求するよりも、「映像としての面白さ」「空中戦の醍醐味」ってのを優先したんじゃないかと。ようするに、トニー・ビル監督は「戦争映画」を作りたかったわけではなく、あくまでも「第一次世界大戦の戦闘機を使った空中戦」が撮りたかっただけなんだろう。
それを実現させるには、おのずと「第一次世界大戦の最中」という時代設定にせざるを得ない。そして、そういう時代設定で空中戦を描くには、「戦争に参加する兵士たち」を主役にせざるを得ない。
だから戦争映画っぽい体裁になっているだけであって、そこはトニー・ビルからすると「まるで興味の無いこと」なんだろう。
ただし、肝心の空中戦は「ほぼCG」という状態なので、セールスポイントとしての価値には疑問符が付くわけだが。(観賞日:2016年3月28日)