『フラバー』:1997、アメリカ

フィリップ・ブレイナードは私立メドフィールド大学の化学教授。彼は実験に熱中すると、それ以外のことは全て忘れてしまうという悪い癖がある。学長で恋人のサラとの結婚式も、これまでに2回もスッポかしてしまっている。
ある日、フィリップは新種の物体“フラバー”を発明した。それは驚異的な弾力性があって形の変化は自由自在という物体だ。しかし、フィリップは実験に熱中してサラとの3回目の結婚式を忘れてしまい、彼女に愛想を尽かされてしまう。
フィリップのライバルであるウィルソン教授は、サラにアプローチを開始した。フィリップはフラバーを使って2人のデートを阻止することに成功する。しかし、フィリップの発明を知った実業家ホーニッカーが、フラバーを盗み出してしまう…。

監督はレス・メイフィールド、脚本はジョン・ヒューズ&ビル・ウォルシュ、製作はジョン・ヒューズ&リカルド・メストレス、共同製作はマイケル・ポーライアー、製作協力はニーロ・ローディス=ジャメロ、製作総指揮はデヴィッド・ニックセイ、撮影はディーン・カンディ、編集はハーヴェイ・ローゼンストック&マイケル・A・スティーヴンソン、美術はアンドリュー・マッカルパイン、衣装はエイプリル・フェリー、視覚効果監修はピーター・クロスマン&トム・バーティノ&ダグラス・ハンス・スミス、音楽はダニー・エルフマン。
主演はロビン・ウィリアムズ、マルシア・ゲイ・ハーデン、クリストファー・マクドナルド、レイモンド・J・バリー、クランシー・ブラウン、テッド・レヴィン、ウィル・ウィートン、スコット・マイケル・キャンベル、エディ・マックラーグ、レスリー・ステファンソン、マルコム・ブラウンソン、ベンジャミン・ブロック、デイキン・マシューズ、ザック・ゼイグラー他。


1961年の作品『うっかり博士の大発明 フラバァ』のリメイク。
主人公フィリップを演じるのはロビン・ウィリアムズ。
この人が子供の心を持った大人を演じるというのは、お馴染みのパターン。
そして、駄作のパターンでもある。

フィリップは、「かわいげのあるウッカリさん」には思えない。
ハッキリ言えば、「うっとおしい」と感じてしまう。
彼が結婚式に遅刻しても、全く可哀想だという気持ちにはならない。
そもそも、彼が結婚を考えること自体が間違いだと思ってしまう。

フィリップは、ウィルソンの顔を見ただけで嫌悪感を示している。
あるいは、ウィーボのサラに対する嫉妬心に気付いている。
だから、研究以外には無頓着で純真無垢な男というわけでもなさそうだ。
その辺りのキャラ設定が、どうも中途半端に思える。

この作品では、ウィーボという人間の心を持った浮遊ロボットを登場させている。
このキャラクターは、非常に印象深い。
しかし、最初にウィーボを見せてしまっているので、フラバーが登場しても大して驚きを感じないという問題点も生み出している。

ウィーボが登場した時点で、大きな疑問が沸いてくる。
そのウィーボは誰が作ったのか。
フィリップは化学の博士だから、機械は畑違いのはず。
ということは、知性を持つ浮遊ロボットが当たり前になった未来の話なのだろうか。
しかし、他の人間がウィーボを持っているような様子は無い。
博士の家以外は、未来的な雰囲気が全く無い。
ということは、やはりフィリップの発明なのか。
その辺りが分からない。
つまり、世界設定の時点で大きなミスを犯しているわけだ。

フラバーが凄い発明のように描かれているけど、そうだろうか。
それよりもウィーボの方が、よっぽど凄いでしょ。
フラバーを使って車を飛ばすシーンが凄いことのように描かれているけど、それ以前にウィーボは空を飛んでいるのだから、驚くことではないし。

フィリップやフラバーよりも、ウィーボの方が遥かに強く印象に残ってしまう。
だから、まずフィリップのキャラ設定を変えて、ロビン・ウィリアムズをキャスティングから外して、フラバーも登場させなければいいのだ。
そして、博士とウィーボの関係を軸にした物語にすればいいのだ。
って、もはや別の映画になってしまうけど。

フラバーは単なるゴムの道具ではなく、生き物のように描かれている。
そのことによって、いったいどこにポイントを置くのかが完全に不鮮明になった。
大体、フラバーが生き物なら、盗まれても自分で戻ってくるような気がするぞ。

この作品の軸となるラインがハッキリしない。
フラバーを巡るドタバタを描くのかと思ったら、フィリップとサラの恋愛が出てくる。
2人の恋愛を描くのかと思ったら、今度は悪党連中が登場したりする。
どうやら、ストーリーはどうでもいいようだ。

どうでもいいのだから、手抜きをしても構わないのだ。
だから、ジョン・ヒューズは自分の手掛けた作品からエッセンスを引っ張ってくる。
ホーニッカーの手下2人組がフィリップの家を調べようとして痛い目に遭う場面などは、完全に『ホーム・アローン』の世界である。

この作品は、「どんな映像マジックをどのように見せるか」ということが全てである。
そのめに、物語の面白さは犠牲になることを強いられている。
映像のために強引に話を作り上げているので、ツギハギが目立つ形となっている。

デジタルエフェクトにビジュアル・エフェクト。
アニメーション効果にコンピュータ・グラフィックス。
これは、特殊な映像技術を楽しむための映画だ。
隠れた正式タイトルは、『フラバー/視覚効果だけを楽しみまショー』だ。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会