『ファイナル・カウントダウン』:1980、アメリカ

タイドマン重工と国防省の依頼を受けた働くラスキーが、ハワイの基地でヘリコプターに乗り込んだ。社長のタイドマンが見送りに来るが、車から出ようとはしなかった。タイドマンの姿を、ラスキーは見たことが無かった。ヘリコプターはハワイ沖を航行する原子力攻撃空母ニミッツに到着し、副長のサーマン大佐がラスキーを出迎えた。システム分析を仕事にしているラスキーがニミッツを訪れたのは、視察のためだ。サーマンは彼に、指揮担当のデイモン中佐と当直士官のペリー大尉を紹介した。
マシュー・イェーランド艦長はラスキーに、「出航が2日遅れた。君のボスから届いた謎の要求のせいだ」と軽く言う。サーマンは「彼は本艦建造の協力者だから特権でしょう」と言い、クルマン伍長をラスキーの当番に付けた。ラスキーは飛行隊長であるオーウェンス中佐の隣室に通された。激しい嵐の接近により、着艦機との通信が不可能な状態になった。新米のスタントンが操縦するA-7コルセアーが戻っておらず、オーウェンスは連絡を続けるよう指示した。
イェーランドは気象係のブラック・クラウドを呼び、天気予報が外れたことを冗談めかして指摘する。するとクラウドは真剣な表情で、今までに無い異常現象が起きていることを説明した。イェーランドは真珠湾へ引き返すことを決定し、スタントンの着艦を指示した。A-7のフックが出なくなったため、バリケード着艦させることになった。しかし着艦の用意をした直後、ニミッツは青白い謎の渦に飲み込まれ、高周波音に乗員たちが耳を押さえた。しばらくすると音と光が消え、それと同時に嵐も過ぎ去っていた。
着艦機の姿が見えないため、イェーランドは全員に配置発令を出す。全員が配置に付いた直後、A-7が確認された。A-7がバリケード着艦すると、スタントンは死んでいた。イェーランドは艦隊司令官と連絡を取ろうとするが、無線は通じなくなっていた。駆逐艦とは連絡が取れず、レーダーでは何も見えなかった。状況を把握するため、イェーランドは偵察機を飛ばした。彼は各部長を集め、「戦争の可能性もある」と告げて戦闘準備を指示した。
同じ頃、チャップマン上院議員と友人のアーサーを誘ってヨットを洋上に浮かべ、秘書のローレルに演説原稿を書いてもらっていた。犬のチャーリーが激しく吠えたので、ローレルや乗員たちは空を見上げた。ニミッツが飛ばした2機のF-14トムキャットが上空を通過し、その速度に一行は驚愕した。F-14はイェーランドに連絡を入れ、旧式のヨットが浮かんでいたことを報告した。イェーランドは燃料補給のために、A-6給油機を向かわせた。
ラジオから聞こえて来るのは、昔の番組ばかりだった。困惑するイェーランドに、サーマンは「軍の懐メロ番組でしょう」と口にした。ラスキーが「軍の秘密演習では?」と問い掛けると、イェーランドは否定する。しかしサーマンが「圧力下にある我々の行動を見るために、国防省が彼を派遣したのでは?」と意見を述べると、イェーランドは「それなら筋が通る」と告げた。ラジオから「ドイツ軍は南ソ連前線から撤退した」といった声が聞こえ、真珠湾の航空写真に写っていたのは見慣れた光景と旧式の軍艦だった。それは明らかに第二次世界大戦前、1941年の真珠湾だった。
低空飛行している国籍不明の戦闘機2機が確認され、イェーランドはF-14を向かわせる。すると、その2機は日本のゼロ戦だった。報告に困惑しながらも、イェーランドは見つからないよう監視を続けるよう命じた。イェーランドやサーマンたちは他国の策略だろうと推測し、実際に1941年へ来てしまったのではないかというラスキーの意見を一笑に付した。ヨットはゼロ戦の攻撃を受け、船長が死亡した。ヨット銃撃の報告を受けたイェーランドに、ラスキーは「真珠湾への通信を妨害しているんだ」と告げた。
まだラスキーの説を信じようとしないイェーランドは、日本艦隊の位置を確認するよう指示を出した。またゼロ戦が戻って来たため、F-14は発砲許可を求めが、イェーランドは認めなかった。チャップマンとローレル、乗員のハービーは海に飛び込み、その直後にゼロ戦の銃撃を受けたヨットは爆発した。ゼロ戦が生存者の銃撃に戻って来たため、F-14は発砲許可を求める。イェーランドは「追い払え。しかし発砲はするな」と命じ、ゼロ戦の銃撃でハービーが死亡した。
F-14の追跡を受けたゼロ戦がニミッツに近付いてきたため、イェーランドは発砲許可を出した。F-14は2機を撃墜し、1人の生存者が海上に浮かんだ。偵察に出ていたE-2は日本艦隊をレーダーで確認し、ニミッツに報告した。イェーランドはオーウェンスに、生存者を救出するよう命じた。オーウェンスは救助チームを組織し、チャップマンとローレル、犬のチャーリー、それにゼロ戦パイロットのシムラを艦内に収容した。チャップマンの名を聞いたオーウェンスは、彼が生きていた時代を知っているので驚いた。
真珠湾へ向かう日本艦隊を全ての乗組員が目撃し、ようやくイェーランドも自分たちが1941年12月6日にいることを受け入れた。彼に意見を求められたサーマンは、敵を撃退するしかないと主張する。「ニミッツが日本に宣戦布告するのか?まだ敵は真珠湾を攻撃していない」とイェーランドが難色を示すと、ラスキーは「1941年におけるニミッツの戦力を示せます」と告げる。するとオーウェンスは「一度起きた事実は変えられない」と言い、歴史を変えることに反対した。
ラスキーがオーウェンスに反論していると、サーマンは「学生の討論か」と感情的になった。イェーランドはサーマンをなだめ、「もしも米国が攻撃された場合、我々の任務は時代に関係なく国を守ることだ」と述べた。ラスキーはオーウェンスの部屋に入り、彼の資料を勝手に読んだ。そこには、真珠湾攻撃を予見したチャップマンが開戦2週間前に太平洋戦力の拡大を訴えたこと、しかし行方不明になったことが書かれていた。
シムラは隙を見て銃を奪い、乗員2名を射殺した。彼は現場に居合わせたラスキー、オーウェンス、ローレル、チャップマンに銃を突き付け、イェーランドに無線使用を要求する。イェーランドは要求を承諾するが、隠れていた乗員が撃つ構えを見せたのでシムラはローレルを人質に取った。ラスキーはオーウェンスに、「明日起きることを彼に言ってやれ」と告げる。イェーランドも許可し、オーウェンスは真珠湾攻撃を明かす。動揺したシムラは隙を見せ、乗員に射殺された…。

監督はドン・テイラー、原案はトーマス・ハンター&ピーター・パウエル&デヴィッド・アンブローズ、脚本はデヴィッド・アンブローズ&ジェリー・デイヴィス&トーマス・ハンター&ピーター・パウエル、製作はピーター・ヴィンセント・ダグラス、製作協力はロイド・カウフマン、製作総指揮はリチャード・R・セント・ジョンズ、撮影はヴィクター・J・ケンパー、編集はロバート・K・ランバート、美術はフェルナンド・カレル、特殊視覚効果はモーリス・ビンダー、衣装はレイ・サマーズ、音楽はジョン・スコット。
出演はカーク・ダグラス、マーティン・シーン、キャサリン・ロス、ジェームズ・ファレンティノ、ロン・オニール、チャールズ・ダーニング、ヴィクター・モヒカ、ジェームズ・C・ローレンス、スーン=テック・オー、ジョー・ロウリー、アルヴィン・イン、マーク・トーマス、ハロルド・バーグマン、ダン・フィッツジェラルド、ロイド・カウフマン、ピーター・ダグラス、テッド・リチャート、ジョージ・ウォーレン、ゲイリー・モーガン、フィル・フィルビン、ロバート・グッドマン、ニール・ロンコ、ウィリアム・クーチ、ジャック・マクダーモット、マサユキ・ヤマザキ他。


『新・猿の惑星』『オーメン2/ダミアン』のドン・テイラーが監督を務めた作品。
イェーランドをカーク・ダグラス、ラスキーをマーティン・シーン、ローレルをキャサリン・ロス、オーウェンスをジェームズ・ファレンティノ、サーマンをロン・オニール、チャップマンをチャールズ・ダーニング、クラウドをヴィクター・モヒカ、ペリーをジェームズ・C・ローレンス、シムラをスーン=テック・オー、デイモンをジョー・ロウリー、カジマをアルヴィン・イン、クルマンをマーク・トーマスが演じている。

一言で表現するならば、これは「空母ニミッツとF-14トムキャットの映像を見て楽しんでね」という映画である。
それが本作品のセールスポイントであり、他には何も無いと断言してもいい。
もしも製作サイドが「そんなことはない、他にも売りがある」と考えていたとしたら、それが結果に結び付いていないってことだ。
実際に観賞した限りは、「ニミッツとF-14を堪能する」という以外、この映画を楽しむための術が全く見えて来なかった。

あえて他の見所を探すとすれば、「それ以外の戦艦や戦闘機も見てね」ということになるだろう。
どのみち、そういう「米軍の乗り物を見てもらう」という部分が唯一のセールスポイントだということは変わらない。
キャラクターの魅力とか、ドラマの厚みとか、アクションの派手さとか、スケールの大きな世界観とか、そんなのは二の次とか三の次というレベルではない。
遥か向こうにチラッと見えるか、もしくは全く見えないかだ。

ラスキーがヘリコプターで基地から飛び立つ様子も、アリゾナ記念館を見下ろす様子も、ストーリー上は全く必要のない描写だ。
ラスキーがニミッツに到着した直後、トムキャットが着陸する様子を丁寧に描写しているが、そんなのもストーリー上は全く必要性が無い。
発令が出てから全員が配置に付くまでの様子とか、バリケード着艦の準備から着艦した後までの動きとか、偵察機がニミッツから離陸する様子とか、チャップマンたちをヘリで救助する様子とか、そういうのを丁寧に描写しているのは、ようするに「ニミッツと仲間たちを見てね」という意味合いが強いってことだろう。
トムキャットが通信した後でA-6給油機を向かわせるとか、実際に燃料補給する様子とか、まるで必要のないシーンだけど、「戦闘機を見せる」という目的からすると重要ってことだ。

タイムスリップした後、しばらくは状況の分からない時間帯が続き、その中でイーランドたちが「戦争かもしれない」と考えて戦闘準備を整える。
戦争かもしれないってことで、当然のことながら乗員は緊迫感に包まれているし、BGMも使ってサスペンスフルに盛り上げようとしている。
しかしハッキリ言って、そういうのが効果を上げているとは言い難い。
その状況で、戦争の可能性が高いと考えて戦闘準備をするってことに対して、どうにも違和感が否めない。

それと、「さっさとタイムスリップした事実を彼らに教えちゃえよ」と言いたくなる。
ぶっちゃけ、「全く状況が分かっていない」という時間帯が、無駄にダラダラと時間を費やしているようにしか感じないのだ。
そこも、「戦闘準備を進める」というニミッツの様子を丁寧に描くことが目的と化しているように感じるし。
ニミッツの様子を描くのは、あくまでも物語を進行したりドラマを厚くしたりするための手段であるべきなのに、そこが目的化してしまっているのだ。

まだイーランドたちが状況を把握していない中で、先にヨットの3人を登場させるのは構成として大間違い。
なんで観客に対して、先に「ニミッツはタイムスリップした」ってことを示すための証拠となるシーンを見せるかね。
そいつらを登場させるのは、ニミッツがヨットを確認するシーンを初にすべきでしょ。どうせ早い段階で、観客の大半は「ニミッツが第二次大戦直前にタイムスリップした」ってことを知っているんだし。
結局、ミニッツの乗員がタイムスリップした事実を認識した時には、もう上映時間の半分を過ぎているんだけど、それは展開として遅すぎる。

せっかく第二次大戦直前にタイムスリップするんだから、こっちとしては「当時の日本軍との戦闘」ってのを期待したくなる。それは過剰な期待でもなければ間違った望みでもなく、ごく普通の思考だろう。
しかし本作品に、そういうモノは用意されていない。
前半にF-14がゼロ戦を脅かして追い払うシーンがあるので、それを「日本軍との戦闘」に含めるとしても、その1つだけ。それは軽いジャブに過ぎず、その後に大々的な戦闘シーンが待ち受けているのかと期待していると、何も無いまま元の時代へ戻るのだ。
もうね、アホかと。

大規模戦闘を描かないのなら、何のための「真珠湾攻撃直前の太平洋に空母がタイムスリップする」というアイデアを持ち込んだのかと。
そのアイデアが完全に死んでいるとまでは言わないまでも、すっかり干からびちゃってるぞ。
そりゃあ、実際にミニッツと日本艦隊を戦わせたら、シャレにならないぐらいスケールがデカくなるし、予算も莫大になるだろう。それに何より、歴史を変えてしまうことになる。
だけど、そんなことは企画の時点で分かっているわけで。
歴史を変える覚悟が無いのなら、最初から「真珠湾攻撃直前に空母がタイムスリップする」という話をやるべきじゃないよ。そういう話にした以上、大規模戦闘シーンを描かないと大半の観客が満足してくれないことは、容易に想像できるはずでしょうに。
日本軍との戦闘に至る展開を予想させておきながら、「そうなる前に再び超常現象が起きて元の時代に戻りました」ってのは、あまりにも酷い肩透かしだわ。「日本軍との戦闘を決意したけど、嵐が来たので、やっぱり戦わずに元の時代へ戻る」って、なんだよ、そりゃ。

あと、ニミッツ乗員とローレル&チャップマンとの絡みも、ほとんど無いんだよな。
当時の人間で乗員が接触するのは、その2人とシムラだけなので、そこの絡みが薄いってことは、人間関係としても「ミニッツが1941年にタイムスリップした意味」ってのが乏しくなってしまう。
ぶっちゃけ、これって長い架空戦記のイントロダクションだけを引き延ばして、1本の長編映画に仕上げている感じなのよね。
だから「何かデカいことが起きそうで、何も起きない」という映画になっており、後に残るのは「ラストシーンで『聖母たちのララバイ』の元ネタになった曲が流れる」ということだけなんだよな。

(観賞日:2015年4月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会