『フィフス・エレメント』:1997、アメリカ&フランス

1914年。エジプトの地下神殿では、アメリカの考古学者が壁に書かれた文字を解明しようとしていた。しかし、火、水、土、風の4つの要素に囲まれた5つめの存在を解き明かそうとする行為を、神官はひどく恐れていた。
やがて神殿の入り口に巨大な宇宙船が降り立った。船から下りてきた謎の生物は特殊な鍵を使って神殿の壁を開き、その奥に保管されていた4つの石板を持ち去った。石板にはそれぞれ、火、水、土、風を表す絵文字が彫られていた。
2214年のニューヨーク。統一宇宙連邦大統領は、正体不明の飛行物体が急接近しているという連絡を受けた。彼は面会に来たコーネリアス神父から、地球滅亡を企む反生命体が宇宙から来襲するが、宇宙で最高の知力を持つモンドシャワン人が4つの石を持って助けにくることを知らされる。
だが、武器商人ゾーグがマンガロア人に命じ、モンドシャワン人の宇宙船を撃墜してしまう。死亡したモンドシャワン人の一部が地球に持ち帰られ、DNA再構成装置を使って細胞が再生された。すると、そこには美しい女性の姿が現れた。
彼女は外へ飛び出し、逃亡を図る。警察に追い詰められた彼女は、地上450階から空中へとダイブ。空飛ぶタクシーの壁を突き破って車内に落下し、運転していたコーベン・ダラスを驚かせる。だがコーベンは彼女の美しさにイカれ、彼女を連れて警察から逃亡する。
地球の言語を理解できない彼女だったが、唯一コーベンが理解出来たのはコーネリアス神父に会いたがっているということだった。コーベンはコーネリアスの元に彼女を連れて行く。彼女がリールーという名前だと知ったコーベンだが、コーネリアスに追い払われてしまう。
ナイルの神官の後継者として代々フィフス・エレメントの真実を受け継いできたコーネリアスは、リールーの言語を理解することが出来る唯一の地球人だった。彼はリールーから、宇宙船のモンドシャワ人達が4つの石版を持っていなかったことを知らされる。
モンドシャワ人は石板を女性オペラ歌手のプラヴァラグナに預けていたのだ。そのことは連邦政府も突き止めていた。プラヴァラグナはフロストン・パラダイスという星でコンサートを開く。マンロー将軍はコーベンをコロッケの懸賞当選者に仕立て上げ、フロストン・パラダイスへ送り込もうとする。
コーネリアスはコーベンから当選したチケットを奪い、弟子とリールーをフロストン・パラダイスへ送り込もうとするが、コーベンがチケットを奪い返し、リールーと共にフロストン・パラダイスへ。だがゾーグやマンガロア人、さらにコーネリアスもやって来ていた。
途中、大人気のDJルビー・ロッドに付きまとわれながらも、プラヴァラグナのコンサート会場にやってきたコーベン。なぜか隣の席はルビー。コンサートは大盛況だったが、ゾーグやマンガロア人が石版を狙って暴れ始める。
銃弾に倒れたプラヴァラグナに言われ、彼女の腹から4つの石版を取り出すコーベン。ルビーの協力を得てマンガロア人を撃滅し、リールーを連れてフロストン・パラダイスから脱出する。反生命体が接近する中、彼はエジプトの神殿へと向かう…。

監督&原作はリュック・ベッソン、脚本はリュック・ベッソン&ロバート・マーク・ケイメン、製作はパトリス・ルドゥー、共同製作はイアン・スミス、撮影はティエリー・アルボガスト、編集はシルヴィー・ランドラ、視覚効果監督はマーク・ステットソン、特殊視覚効果はデジタル・ドメイン、美術はダン・ヴェイル、衣装はジャン・ポール・ゴルティエ、音楽はエリック・セラ。
主演はブルース・ウィリス、共演はゲイリー・オールドマン、イアン・ホルム、ミラ・ジョヴォヴィッチ、クリス・タッカー、ルーク・ペリー、ブライオン・ジェームズ、トミー・“ティニー”・リスターJr.、リー・エヴァンス、チャーリー・クリード・マイルズ、トリッキー、ジョン・ネヴィル、ジョン・ブルーサル、マシュー・カソヴィッツ、クリストファー・フェアバンク、キム・チャン、リチャード・リーフ、ジュリー・T・ウォレス他。


お前は「ローランド・エメリッヒか」とツッコミを入れたくなるほど、「金を掛けた特撮やCGは凄いが、中身はカラッポな作品」を作り上げたリュック・ベッソン。
様々なSF映画のオイシイ部分を頂いて、それを寄せ集めただけ。緻密な計算とか綿密なプロットとか、そういうのはゼロ。

コロッケの懸賞に当選させて、コーベンをフロストン・パラダイスに送ろうとする政府。普通にチケットを用意すればいいだろ。そのチケットを奪おうとしたり、コーベンに成り済まそうとするコーネリアスも同じく。普通にチケットを取れば何の問題も無いだろうに。

そもそもゾーグは石を手に入れて何をする気なの?モンドシャワン人の一部はどうやって見つけたの?モンドシャワ人のDNAを再生したはずなのに、なぜモンドシャワ人ではなくフィフス・エレメントが出現するの?

地球の言語が全く話せないのに、どうしてコーベンはルーリーがコーネリアス神父に会いたがっていると分かったの?政府はどうやってプラヴァラグナが石版を持っていると知ったの?プラヴァラグナに石版を渡したのなら、地球を救うためには彼女が地球に来なければならないんじゃないの?

どうしてモンドシャワ人は石版を預ける相手としてプラヴァラグナを選んだの?どうしてプラヴァラグナは腹の中なんぞに石版を隠したの?反生命体って何だったの?フィフス・エレメントって、結局はどういう意味があったの?

不思議な行動や不思議な展開が続出するが、説明は全く無い。「だってSFだから、何をやってもいいんでしょ?」と開き直っているのかとも思える強引さ。
この作品、ひょっとするとスラップスティック映画なのかもしれない、と感じさせる。

序盤、ゾーグがノドをつまらせて死にそうになる場面がある。この辺りで、「ああ、この映画ってマジじゃないんだ」と気付かされる。
だが、その製作姿勢は中途半端。半端な気持ちで娯楽作品を作ろうとするから、後に何にも残らない。

結局、バカ映画としての突き抜けた感覚に欠けているのだ。
バカ映画のフリをした真面目なSF映画という感じがする。偽善という言葉があるが、この作品は偽バカという感じなのだ。つまりバカ映画の上っ面だけをマネしているように感じられるのだ。

この映画の中で、クリス・タッカー演じるルビー・ロッドというキャラクターが異常なハイテンションで浮いた存在になっている。
しかし、あのキャラが当たり前に思えるぐらいのムードが無ければならなかったはずなのである。あのキャラが馴染む雰囲気を、登場までに作り上げるべきだったのだ。

歌、格闘、ガンアクション、ギャグ、その他もろもろ、とにかく受けそうな要素は全て詰め込み、「これがエンターテインメントだぜ」と大々的に主張する。
しかし、あまりの過剰サービスに観客は辟易してしまい、食べ過ぎで胃もたれしそうになる。

ベッソンが少年時代に考えた物語が基本になっているのだから、ガキっぽくてデタラメで幼稚で深みが無いストーリーなのは当たり前なのか。
それにしたって、大人になったベッソンが修正を加えているわけで、実はベッソンってダメ監督なのかと疑ってしまう。

メビウスのジャン・ジローとジャン=クロード・メジャーズがセット・デザインを担当し、ジャン・ポール・ゴルティエが奇抜な衣装を用意し、マーク・ステットソン率いるデジタル・ドメインがSFX技術を惜しむことなく注ぎ込んでいる。
というわけで、皮は美味いが中身がマズイ饅頭である。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低助演女優賞[ミラ・ジョヴォヴィッチ]
ノミネート:最低新人賞[クリス・タッカー]
<*『フィフス・エレメント』『ランナウェイ』の2作でのノミネート>


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[リュック・ベッソン]
ノミネート:【最悪の助演男優】部門[クリス・タッカー]
ノミネート:【最悪の助演女優】部門[ミラ・ジョヴォヴィッチ]

 

*ポンコツ映画愛護協会