『ファースター 怒りの銃弾』:2010、アメリカ

初日。刑務所に服役していた“ドライバー”と呼ばれる男が、10年の刑期を終えて出所することになった。服役中、自分から仕掛けることは無かったが、挑発してきた連中は容赦なく叩きのめしていた。そんな彼に刑務所長は、非情さを忘れて暮らすよう説く。彼は「もう限界だと思ったら、ここに電話したまえ」と言い、名刺を渡した。しかしドライバーは、刑務所長の言葉など全く聞いていなかった。刑務所を出た直後、彼は名刺を破り捨てた。
ドライバーは走ってスクラップ工場へ辿り着き、用意されていた車のカバーを外す。車内に置いてあった革ジャンを着た彼は、対象者に関する資料を取り出した。資料には「車を楽しみな、R.G.」というメッセージが添えられていたドライバーは車内にあった拳銃と弾丸を確認し、エンジンを吹かした。彼は車を飛ばし、1人目の標的が勤務する通販会社へ赴いた。ドライバーは電話中の男を射殺し、防犯カメラの位置を確認して立ち去った。
定年退職を半月後に控えた刑事は公衆トイレで売人と接触し、金を渡してヤクを買った。事件現場に入った彼が「担当する」と話すと、女性刑事のシセロは「有り得ない。マロリー主任が組ませるわけない」と告げる。刑事は「俺だって嫌だが、上司から命令を受ければ流れに身を任せる」と言う。私立探偵のロイ・グロンは、テレビのニュースで事件を知った。事務所にドライバーが来ると、ロイは「いい車だったろ」と言う。
ドライバーが金を渡して「残りの名前を」と要求すると、ロイは「値上げした。連中を見つけるのに10年、費用も随分と掛かった」と告げる。ドライバーが拒否すると、ロイは腕の覚えのある手下のケニーを呼び寄せた。しかしドライバーの腕にある刺青を見たケニーは「アンタだったのか」と怯え、ロイに「こいつは幽霊だ、戦えない」と逃げ出した。ドライバーに詰め寄られたロイは、おとなしく情報を提供した。シセロは防犯カメラの映像を確認し、被害者がドライバーと顔見知りだと察知した。
2日目。ソフト会社の売却で多額の利益を手にした殺し屋は、リリーという女と暮らしている。ヨガを制覇したと感じた殺し屋は、次の挑戦をしたいと考える。殺し屋は電話を受け、「標的は依頼人を狙ってる。すぐ処分しろ」とドライバーの始末を要請された。殺し屋は車のナンバープレートを付け替え、リリーの用意した武器を持って出発した。彼は運転しながらセラピストに電話し、「仕事を続けるのが辛いが、休むと腕が鈍る」と相談した。
シセロは犯人がドライバーだと突き止め、刑事に知らせる。刺青を見せると誰もが退散するという情報は入ったが、理由は分からなかった。ドライバーは10年前の銀行襲撃事件で運転手を務め、逮捕されていた。ドライバーの兄を含む3人が実行犯だった。ドライバーは見事な運転で、追跡のパトカーを振り切った。殺し屋は2人目の標的である老人のアパートに到着し、車で待機する。セラピストに「何度か仕事を変えた。自分を試したくなる。だが退屈で物足りなくなる」と話す。
ドライバーが来たので、殺し屋は拳銃を準備した。彼は「リリーにプロポーズするよ」と言い、ドライバーの後を追った。シセロは刑事に、ある映像を見せた。それはドライバーたちが騙され、犯行後に待ち伏せを受けて発砲される様子を捉えた個人用のスナッフ・フィルムだった。風紀班が押収した映像だが犯人は写っておらず、捜査は行われなかった。脅されたドライバーは、金の隠し場所を吐いた。その直後、一味は兄を殺害した。その時にビデオを回していた男が、次の標的である老人だった。
標的の老人は親切な少女を騙して部屋に連れ込み、薬で動けなくしていた。そこへドライバーが乗り込み、「奴に強制されたんだ」と釈明する老人を銃殺した。怯える少女に「何もしない」と告げて部屋を出たドライバーの背後に、殺し屋が迫った。しかし別の部屋から黒人少女が出て来たので、殺し屋は発砲のタイミングを失った。殺し屋に気付いたドライバーは発砲し、その場から逃走した。スナッフ・フィルムの中でドライバーは撃たれ、死んだはずだった。しかし死亡宣告を受けた彼は、奇跡的に一命を取り留めていた。
帰宅した刑事は、離婚した元妻のマリーナから約束の時間に遅れたことを非難された。彼女は「親権を完全に失いたいの?」と言い、息子のトミーを野球の試合に連れて行くよう要求した。刑事が息子を車に乗せて運転しているとシセロから電話が入り、また銃撃があったので現場へ来るよう求められる。刑事は「息子を野球の試合に連れて行くので、少し遅れる」と告げた。遅れて現場に入った刑事はマロリーから、犯人と撃ち合う男が目撃されていることを聞かされた。殺し屋はリリーに電話してドライバーの印象を語った後、「結婚してくれ」と告げた。モーテルに入ったドライバーは、自分が警察から追われる身になったことをテレビのニュースで知った。
3日目。シセロに腕の刺青を見られた刑事は、ランパート署のギャング取締班にいたことを明かした。刑事は「女房は情報提供者だった。麻薬更生施設に入れたのが縁になった」と話した。アーヴィンの町に入ったドライバーは、ある女を観察する。女は結婚し、夫と息子、生後間もない赤ん坊の4人で暮らしていた。夫と息子が出掛けた後、ドライバーが家に侵入すると、女は「なぜ面会を拒んだの?」と訊く。ドライバーが「3人の人生が犠牲になる」と言うと、女は「刑期は10年よ。お腹の子は堕ろしたわ」と告げた。ドライバーが出て行くと、女は「テレビで知ったわ。皆殺しを祈ってる」と声を掛けた。
殺し屋は教会で結婚式を挙げ、リリーに射撃の練習をさせた。「家族を持とう。湖畔の家は売って、古風な家を買おう」と浮かれた様子で彼が話すと、リリーは「本気なの?」と質問する。「途中で仕事を辞められる?」という問い掛けに、殺し屋は「足を洗う」と告げた。刑事はマリーナの元を訪れるが、「私は準学士号を取ってトミーと新生活を始める」と冷たく告げられる。刑事は復縁を求めるが、彼女は拒絶した。マリーナに言われて持っていた薬を渡した彼は、「事件が解決したら更生施設に行くから」と言う。刑事は「トミーと一緒にいたい。今夜だけ泊まらせてくれ」と頼んだ。
福音伝道師のラジオを聴きながらネヴァダ州ヘンダーソンに入ったドライバーは、次の標的であるバフォメットの資料を確認した。身体検査を受けてクラブに足を踏み入れた彼は、アイスピックを手に取り、を追ってトイレに入った。するとバフォメットは「待ってたよ」と言い、ナイフを構えた。対決の末に刺されたバフォメットは、ドライバーに「息子がいる。済まないと伝えてくれ」と言う。彼は携帯電話を渡して短縮ダイヤルを教え、「奴が殺せと言った」と告げて目を閉じた。ドライバーはバフォメットの息子に電話を掛け、「父親が済まないと言っていた」と伝えた。
家で写真を見ていた殺し屋はドライバーのことを思い浮かべ、銃を磨き始めた。リリーに「辞めるはずよ」と指摘された彼は、「これが片付いたら辞める」と口にした。トミーと並んで寝ていた刑事は、異変を感じて風呂場へ行く。するとマリーナが薬を打って朦朧としていた。「どうして?」と刑事が言うと、彼女は「怖くて。報いを受けて地獄へ行くのよ。天国や地獄は私たちが作るんだわ。誰かに苦しみを与えたり、傷付けたりする度にね」と述べた。
4日目。刑事はシセロに電話を掛け、「被害者の2人は元情報屋だった」と聞かされる。シセロは彼に、「今日はずっと裁判所だから、この線を代わりに追って」と頼んだ。刑事が「ネバダで殺しがあった。奴の仕業という気がする」と言うと、シセロは「手口が違う」と否定する。しかし刑事は「少し調べたい」と言い、自分の線を優先するよう求めるシセロの要求を無視した。ドライバーはカーラジオのニュースで、バフォメットが医療センターに運ばれて治療中だと知った。すぐに彼は、医療センターへ車を走らせた。刑事は医療センターに顔を見せ、殺し屋は医療センターへ行くよう指示を受けた。ドライバーがバフォメットを射殺して立ち去ると、刑事が後を追った…。

監督はジョージ・ティルマンJr.、脚本はトニー・ゲイトン&ジョー・ゲイトン、製作はマーティン・シェイファー&リズ・グロッツァー&トニー・ゲイトン&ロバート・テイテル、製作総指揮はジョー・ゲイトン&ダラ・ワイントローブ、撮影はマイケル・グレイディー、編集はダーク・ウェスターヴェルト&ブレイク・マニキス、、美術はデヴィッド・ラザン、衣装はサルヴァドーレ・ペレス、音楽はクリント・マンセル。
出演はドウェイン・ジョンソン、ビリー・ボブ・ソーントン、オリヴァー・ジャクソン=コーエン、カーラ・グギーノ、マギー・グレイス、ムーン・ブラッドグッド、アドウェール・アキノエ=アグバエ、トム・ベレンジャー、マイク・エップス、ザンダー・バークレイ、レスター・スペイト、マット・ジェラルド、アニー・コーレイ、ジェニファー・カーペンター、マイケル・アービー、ジョン・シリグリアノ、コートニー・ゲインズ、エイディン・ミンクス、ジョナ・ウォルシュ、スティーヴン・チャールズ、シド・S・リウファウ、アーロン・ベーア、ジェフ・ダニエル・フィリップス、ナジャ・ミニオン、ジャン・ホーグ、スキ・カッティー・カー、キヨミ・ギャロウェイ他。


『ザ・ダイバー』『ノトーリアスB.I.G.』のジョージ・ティルマンJr.が監督を務めた作品。
脚本は『完全犯罪クラブ』『THE SALTON SEA ソルトン・シー』のトニー・ゲイトンと『ダーティ・ボーイズ』『ザ・プロテクター』のジョー・ゲイトン。2人は兄弟だが、一緒に劇場作品の脚本を手掛けるのは初めて。
ドライバーをドウェイン・ジョンソン、警官をビリー・ボブ・ソーントン、殺し屋をオリヴァー・ジャクソン=コーエン、シセロをカーラ・グギーノ、リリーをマギー・グレイス、マリーナをムーン・ブラッドグッド、福音伝道師をアドウェール・アキノエ=アグバエ、刑務所長をトム・ベレンジャー、ロイをマイク・エップス、マロリーをザンダー・バークレイ、バフォメットをレスター・スペイト、ドライバーの兄をマット・ジェラルドが演じている。

どうやら1966年のイタリア映画『続・夕陽のガンマン』(監督はセルジオ・レオーネ、主演はクリント・イーストウッド)と、1978年のアメリカ映画『ザ・ドライバー』(監督はウォルター・ヒル、主演はライアン・オニール)を意識しているようだ。
3人の男たちが対立の構図を作るのが『続・夕陽のガンマン』、主要キャストに役名が無く役職で表記されるのが『ザ・ドライバー』と共通している(ただし復讐の標的に関しては劇中で人物名が示されている)。
前者に関しては、『続・夕陽のガンマン』だけでなく、セルジオ・レオーネ作品をトータルで意識しているような部分も窺える。

ドライバーが復讐心を燃やす相手がボンヤリしているってのは痛い。
回想シーンに犯人たちは登場するが、チラッと写るだけだ。資料の中でも顔写真は出ているんだけど、一瞬なので覚えていられない。
ドライバーの怒りや憎しみの強さを示す意味でも、回想シーンで「いかに犯人グループが残忍で冷酷で卑劣な連中であるか」をアピールしておくべきだ。
それを考えると、復讐を遂行する直前に、ドライバーが標的を憎む理由となった行動を回想シーンとして挿入した方が効果的だろう。

なぜドライバーが標的を殺すのか、過去に何があったのか、車内にあった写真に写っていた男は誰なのかという辺りも、最初は全て謎にされていて、シセロの捜査で明らかにされる形を取っている。
しかし、その辺りは、さっさと明かしてもいいんじゃないか。最初に事情を明かしてしまえば、ドライバーの感情や行動は全て理解できるようになるし、それは「共感し、復讐劇に気持ちが入り込む」ということにも繋がる。
この映画って、そういうシンプルなことでいいんじゃないかと思うのよね。
どうせ始まってから30分も経たない内に事情を明かすんだし、だったら最初から明かしても大して変わらないんじゃないかと。

スナッフ・フィルムの中でドライバーは脅しを受け、弱々しい態度で金の隠し場所を教えている。
もちろん「言わなければ殺される」という状況なので、ビビっちゃうのも、金の隠し場所を白状するのも当然ではある。ただ、そこで弱々しい様子を見せるのは、得策とは思えない。
他の役者なら、「かつて脅されて弱々しい態度を取った奴が、兄貴を殺された復讐に燃えて鬼になる」という見せ方をするのもいいだろう。しかし主演がドウェイン・ジョンソンってことを考えると、その弱さは印象的にマイナスだ。見せてもOKな弱さもあるけど、それはダメなヤツだ。
せめて「兄貴を殺すと脅されて」という形にしておいた方がいい。
この映画だと、「殺されるかもしれないからビビって白状した」という形なのよね。そのヘタレっぷりはダメだわ。

スナッフ・フィルムの中でドライバーは撃たれているが、「病院で死亡宣告を受けた」というシセロの説明の後、ベッドからムクッと起き上がる様子が描かれる。
「弾は頭蓋骨の外を回って頬から出た」とシセロは説明するんだけど、そこは苦笑しちゃうなあ。
そりゃあ、あの状況からドライバーが生き延びった方法を考えた時に、「自力で逃げ出した」ってのは難しいし、「死んだはずだけど生きていた」ってことにするのが普通だろうとは思うよ。
ただ、それにしても、病院で死亡宣告を受けた直後に起き上がるという描写が、あまりにも滑稽なのよね。ちょっとコメディーっぽさを感じるぐらいであり、もうちょっと何とかならなかったのかと。

最初の標的である通販男は、アタフタしている間に射殺される。次の変態男は少女に薬を飲ませたところへ乗り込まれ、言い訳するけど殺される。
この2人は、復讐される相手として「クソみたいな奴」「情けない奴」という姿を露呈している。
ところがバフォメットは冷静に「待ってたよ」と言うだけでなく、トイレにいたジョーという老人に「外に行ってろ。後から1人が出て行く。それが誰でも警察には言うな」と指示する男らしさを見せている。
それは違うだろ。
そういうカッコ良さを、復讐相手のキャラクターに付けるなよ。もっとヘタレな姿か、卑劣な態度か、そういうのを見せろよ。そして「こいつなら復讐されて当然」と思わせて、復讐のカタルシスを与えろよ。

ところが、刺されたバフォメットは「息子がいる。済まないと伝えてくれ」と言い残し、同情まで誘うんだよな。
なんでだよ。
そもそも、そんな立派なことを言う男らしい奴が、なんでスナッフ・フィルムの中ではクソみたいな畜生でしかないんだよ。
10年間で別人になっちゃったのかよ。
「殺せ」と命じられたことは明かしているが、仕事として殺しただけじゃなく、明らかに楽しんでいただろうに。

バフォメットが同情を誘うから、「実は死なずに医療センターで治療中」と分かっても、すぐに医療センターへ向かうドライバーに共感できない。「もういいんじゃないか」と思ってしまう。
もちろん、スナッフ・フィルムの出来事を考えれば、殺したくなるのは分かるのよ。
だからこそ、その後でバフォメットに同情を誘う要素を持ち込んだ意図が理解不能なのよ。
っていうか、もっと言っちゃうと、そもそも「実は生きていて医療センターで治療中」という展開にする意味も無いでしょ。
それは「医療センターで刑事がドライバーを追う」という都合のためだけに用意された展開であり、そのために「ドライバーがミスをやらかし、同じ相手を二度狙う」という作業をさせるってのは、ものすごく不格好だわ。

前述したように、3人の男たちが対立の構図を作るのは『続・夕陽のガンマン』を意識しているんだろう。
しかし本作品の場合、その構図は綺麗な形で成立していない。
何が問題なのかというと、まずはドライバーと殺し屋の関係性が弱い。
過去に因縁があるわけでもないし、戦いの中で共鳴するなどして関係性が深まるわけでもない。ドライバーからすると殺し屋は「良く分からない赤の他人」でしかないし、殺し屋のドライバーに対する「強い奴を倒したい」という執念が伝わることも無い。

関係性が弱いどころじゃなくて、もはや殺し屋は「要らない子」になっている。
一応は2日目の段階で依頼を受けてドライバーを殺す仕事を開始するのだが、なぜか途中で簡単に足を洗う気持ちになってしまう。
まだ前半の段階で、まだ1度しかドライバーと会っていない段階で、もう彼は対決の構図から脱落してしまうのだ。
後半に入り、殺し屋は「やっぱり忘れられない」ってことでドライバーを殺す仕事に復帰するけど、こいつはドライバーの復讐劇に観客が集中するのを妨害する厄介者でしかない。

殺し屋が結婚しようと、足を洗うと決意しようと、こっちからすりゃ「どうでもいいこと」でしかないのよ。殺し屋のトコでドライバーと無関係なドラマを描いても、それが本筋と全く絡まないんだから、どういう狙いがあるのかサッパリ分からないのだ。
殺し屋が結婚する気持ちになったことでドライバーとの関係性が変化するとか、そういう連携があるなら別にいいのよ。
でも、まるで無縁なんだからさ。
ただ単に「一時的に戦いの構図から脱落する」というだけなんだから、何がしたいのかと思っちゃう。

「刑事がドライバーを追う」という構図も、ちっとも浮かび上がって来ない。
彼はドライバーを逮捕する仕事よりも、家庭のことで頭が一杯になっているのだ。
ようするに殺し屋にしろ刑事にしろ、「ドライバーより大事なことがある」という状況が設定されているので、当然のことながら「復讐に燃えるドライバーが刑事と殺し屋に追われる」という構図なんて成り立たないのだ。
ドライバーと刑事と殺し屋の3人を並列で描く群像劇を狙っていたとしても、それは形になっていないから失敗ってことになるし。

刑事と殺し屋が冴えない奴らなので、ドライバーも彼らを意識しながら行動することなんて全く無い。
ただ一直線に復讐を目指すだけで良くなっている。
老人のアパートで殺し屋に狙われているが、そこからドライバーが「あの男は何者だったのか」と気にすることなんて皆無だし、「次の標的の場所でも襲われるかも」と警戒することも無い。刑事の存在なんて、まるっきり念頭に無い。
そもそも刑事が行動していることを、ドライバーは終盤まで知らないわけだから。

刑事に関しては、息子と仲良く喋っている様子が描かれたり、妻とヨリを戻すことを願っている様子が描かれたりする。
完全ネタバレになるが、そうやって刑事の家族に対する思いを描いておいて、終盤に入ると「こいつが黒幕だった」ったことが判明する。
で、それが判明した時に、「家族への思いを描いていた狙いは何なのか」と言いたくなる。ドライバーが執念を燃やす憎き復讐相手に、どういうつもりで同情や共感を誘うような要素を用意したのかと。
この映画で、復讐のカタルシスを削ぐ作業を持ち込むメリットが見えない。
福音伝道師が改心していたから殺さずに済ませるとか、そういうのも要らんわ。「復讐の先に待っているのは茨の道」とか、「復讐は虚しいだけ」とか、そんなの要らんよ。単なる復讐劇じゃなくて凝ったことをやろうとしたんだろうけど、完全に外しているぞ。

(観賞日:2015年10月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会