『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』:2018、イギリス&アメリカ

1927年、ニューヨーク。アメリカ魔法省で厳重に拘束されているグリンデルバルドは、ヨーロッパへ移送されることになった。MACUSA(アメリカ合衆国魔法議会)議長のセラフィーナ・ピッカリーと護衛のスピールマンは職員のアバナシーに案内され、グリンデルバルドの姿を確認した。スピールマンは警備員たちと共に、グリンデルバルドの護送を担当する。しかしグリンデルバルドはアバナシーの協力により、スピールマンたちを蹴散らして逃亡した。
ロンドンのイギリス魔法省を訪れたニュート・スキャマンダーは、元恋人のリタ・レストレンジに声を掛けられて驚いた。ニュートはリタから、兄のテセウスが魔法省のファミリーに入れと言っていることを聞かされた。ニュートはテセウスと話した後、聞き取り調査に赴いた。彼は国外旅行禁止令を解いてほしいと申し立てていたが、魔法法執行部部長のトーキル・トラバースたちから聞き取りに非協力的だと指摘された。トーキルたちはニュートに、禁止令を解く代わりにテセウスと同じ闇祓いの部署で働くよう持ち掛けた。
トーキルたちはクリーデンスが生きていること、ヨーロッパのどこかにいることを話し、ニュートに捜索を要請する。しかしニュートは魔法省がクリーデンスを殺すつもりだと分かっており、嫌悪感を見せる。そこへ闇祓いのグンナー・グリムソンが現れ、ニュートを馬鹿にした。彼を使うと知ったニュートは、腹を立てて部屋を出た。テセウスが後を追うと、彼は「目的のためなら手段を選ばないのか」と言う。テセウスが「どっちに付くか、お前も選択を迫られる」と話すと、ニュートは「僕はどっちにも付かない」と反発した。テセウスは弟の態度を優しく受け入れ、見張られていることを教えた。
グリンデルバルドは手下のヴィンダ・ロジエールたちを引き連れてパリに現れ、ノー・マジの家族を始末して住処をアジトにした。彼は手下たちに、人間を全滅させずに家畜として使う考えを説明した。ニュートが尾行のステビンスを撒いた直後、ホグワーツ魔法魔術学校のアルバス・ダンブルドア校長が現れた。ニュートがニューヨークを訪れたのは、ダンブルドアからサンダーバードの密輸について聞いたからだった。
ダンブルドアはニュートに、クリーデンスがパリにいること、フランスの純血一族の1人と見られていることを語る。クリーデンスがリタの弟ではないかと感じ、ニュートは驚いた。ダンブルドアは危険な存在であるクリーデンスを見つけ出すよう指示し、旧友の住所を記したカードを渡して隠れ家に使うよう告げた。なぜ自分で捜さないのかとニュートが訊くと、ダンブルドアは「グリンデルバルドを倒せるのは君だけだ」と述べた。ニュートが困惑していると、ダンブルドアは「強制はしない」と告げて去った。
帰宅したニュートは、魔法動物の世話をしている助手のバンティーに声を掛けた。バンティーが危険なケルピーに軟膏を塗ろうとして怪我を負ったと気付き、ニュートは自分に任せるよう告げた。ジェイコブ・コワルスキーとクイニー・ゴールドスタインが訪ねて来たので、彼は驚いた。ジェイコブはオブリビエイトされておらず、クイニーの協力で消えた記憶も取り戻して元通りだと話す。ニュートがティナのことを気にすると、クイニーは彼女と喧嘩していると明かした。
クイニーはニュートに、ティナがリタと結婚するという記事を読んでショックを受けていたことを話す。ニュートはリタの婚約相手が自分ではなく兄だと告げるが、クイニーはティナがアキレス・トリバーという闇祓いと付き合い始めたことを教えた。クイニーは結婚のためにパリへ来たと話すが、ニュートはジェイコブが魔法を掛けられていると見抜いた。彼が魔法を解くと、クイニーは家を出て行った。後を追ったジェイコブは、「結婚したら監獄行きになる」とクイニーに翻意を促した。しかしクイニーは強硬な考えを譲らず、「イカれてる」というジェイコブの心を読んだ。ジェイコブは慌てて釈明するが、幻滅したクイニーは彼を残して立ち去った。
ニュートはクイニーが落とした手紙を見つけ、ティナがクリーデンスを捜す任務でパリにいることを知った。ニュートはクイニーも行くと確信したジェイコブと共に、パリヘ行くことにした。パリで巡業中のサーカス・アルカノスで働くクリーデンスは、見世物になっているマレディクタスのナギニに「居場所が分かった。今夜、ここを出る」と言う。その日の興行で、クリーデンスとナギニは団長のスケンダーが世界中で捕獲した魔法動物を解き放った。2人は騒動が起きている間に、サーカス小屋から逃亡した。
ティナはスケンダーに質問し、クリーデンスが母親を捜していることを知った。彼女は自分と同じように興行を見ていたユスフ・カーマという男に気付き、目的を尋ねた。するとユスフは、「噂が確かなら、クリーデンスは遠い親戚に当たる。自分も純血一族の最後の1人だ」と述べた。グリンデルバルドはクリーデンスが勝利の鍵を握ると考えていたが、彼が自分の意思で来ると確信しているため、手下を派遣しようとしなかった。手下のクロールが「そんなに大物なのですか」と懐疑的な態度を示すと、「ダンブルドアを倒せるのはクリーデンスだけだ」と告げた。
ニュートとジェイコブはポートキーを利用し、国外へ脱出した。パリに着いたニュートはサーカスの一件を知り、ティナと接触していたユスフの存在を知って足取りを追った。クイニーはフランス魔法省を訪れるが、ティナはいないと言われてしまう。魔法省にはヴィンダがおり、老女に化けた仲間のマクダフから荷物を受け取った。外へ出たクイニーはジェイコブの声を耳にするが、捜索しても見つからない。人々の心の声に彼女が苦しんでいると、ロジエールが声を掛けた。
クリーデンスはナギニを伴い、養子縁組の書類に名前のあったアーマ・ドゥガードを訪ねた。するとアーマは、自分がクリーデンスの実母ではなく小間使いだと教えた。そこへグリムソンが現れ、アーマを殺して姿を消した。彼はグリンデルバルドの手下で、クリーデンスを守るよう命じられていた。ニュートとジェイコブはユスフと会い、ティナについて尋ねた。するとユスフは、付いて来るよう促した。彼が案内した場所にはティナが閉じ込められており、ニュートとジェイコブも牢に監禁された。彼はクリーデンスを殺したら解放すると約束し、「彼が死ぬか、僕が死ぬかだ」と告げた。ニュートはユスフを気絶させ、牢から脱出した。
トラバースは部下たちを率いてホグワーツ魔法魔術学校へ乗り込み、ダンブルドアに会った。ニュートをパリに差し向けてクリーデンスを守らせている疑惑についてトラバースが指摘すると、ダンブルドアは全面的に否定した。ダンブルドアが「目的は同じ、グリンデルバルドの打倒だ」と言うと、トラバースは「渡り合えるのは君だけだ」とグリンデルバルドとの戦いを要請した。しかしグリンデルバルドを深く愛するダンブルドアが拒否したため、トラバースは魔法の使用を禁じて監視を強化した。ダンブルドアはテセウスに、グリンデルバルドが集会を開いても手出しするなと忠告した。
トラバースたちと別行動を取っていたリタは、魔法学校に通っていた頃のことを回想した。彼女は弟のせいで生徒たちから攻撃の対象になっていたが、ニュートとだけは交流を深めた。回想を終えたリタの前にダンブルドアが現れ、妹の死を明かして「まだ間に合う。自分を解放すれば楽になれる」と諭した。ロジエールはクイニーをアジトに招き、グリンデルバルドと対面させた。グリンデルバルドはクイニーに、「君を助けたい。私の元で働かないか。新しい世界を作るんだ。そうすれば魔法使いも自由に愛し合える」と説いた。
ニュートたちはダンブルドアに教わった隠れ家へ行き、ユスフを運び込む。ニュートとティナは、ユスフの手に破れぬ誓いの傷を見つけていた。2人はユスフの体を調べ、寄生虫を取り出した。ニュートはグリンデルバルドが信奉者を招集していると知り、先にクリーデンスを保護するとティナに言う。ティナから方法を問われた彼は、フランス魔法省の金庫に箱があること、それを見ればクリーデンスの事情が分かることを説明した。
グリンデルバルドはクリーデンスの元へ行き、目的を尋ねた。彼は地図を渡し、「そこへ行けば君が何者か示す証拠がある」と告げた。そして彼は、レストレンジ家の墓がある墓地に来るよう誘った。ジェイコブの前には隠れ家の住人である錬金術師のニコラス・フラメルが現れ、ジェイコブは彼の水晶玉を通じてクイニーが墓地にいると知る。いつの間にかユスフは逃げ出しており、ジェイコブはクイニーを救うためにフラメルの制止を無視して墓地へ向かう。魔法書を開いたフラメルは著者であるユーラリー・ヒックスから、グリンデルバルドが集会を開く墓地へ向かうよう促された。
フランス魔法省に到着したニュートとティナは、変装して建物内に侵入した。テセウスはリタに「クリーデンスは君の弟かもしれない」と言い、トラバースたちと共に出動しようとする。しかしニュートとティナに気付いたため、逃げる2人を追い掛けた。ティナは彼の動きを封じ、ニュートと共に素性を詐称して記録室へ侵入した。リタは記録がレストレンジの墓にあることを調べ、ニュートたちを見つけた。3人は保管人のメリュジーヌに襲われて逃亡し、レストレンジ家の墓へ向かう…。

監督はデヴィッド・イェーツ、キャラクター創作はJ・K・ローリング、脚本はJ・K・ローリング、製作はデヴィッド・ハイマン&J・K・ローリング&スティーヴ・クローヴス&ライオネル・ウィグラム、製作総指揮はティム・ルイス&ニール・ブレア&リック・セナ&ダニー・コーエン、共同製作はマイケル・シャープ、製作協力はジョシュ・ロバートソン&ロブ・シルヴァ、撮影はフィリップ・ルースロ、美術はスチュアート・クレイグ、衣装はコリーン・アトウッド、編集はマーク・デイ、視覚効果監修はティム・バーク&クリスチャン・マンツ、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はエディー・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、エズラ・ミラー、ゾーイ・クラヴィッツ、カラム・ターナー、カルメン・イジョゴ、クローディア・キム、ウィリアム・ナディラム、ケヴィン・ガスリー、ポピー・コービー=チューチ、アンドリュー・ターナー、マジャ・ブルーム、サイモン・ミーコック、デヴィッド・サクライ、クローディウス・ピータース、ヴィクトリア・イェーツ、フィオナ・グラスコット、ジェシカ・ウィリアムズ他。


「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第2作。
監督のデヴィッド・イェーツ、脚本のJ・K・ローリングは、いずれも前作からの続投。
ニュート役のエディー・レッドメイン、ティナ役のキャサリン・ウォーターストン、ジェイコブ役のダン・フォグラー、クイニー役のアリソン・スドル、グリンデルバルド役のジョニー・デップ、クリーデンス役のエズラ・ミラー、リタ役のゾーイ・クラヴィッツ、ピッカリー役のカルメン・イジョゴは、前作からの続投。ダンブルドアをジュード・ロウ、テセウスをカラム・ターナー、ナギニをクローディア・キム、ユスフをウィリアム・ナディラム、アバナシーをケヴィン・ガスリーが演じている。

ニュートはクリーデンスの捜索を魔法省から要請された時、反発して拒絶する。テセウスから現実を見るよう諭された彼は、「どうせ僕は自分勝手で無責任で」と嫌味っぽく告げる。
でもニュートが自分勝手で無責任なのは、紛れも無い事実なんだよね。
それは前作でも明確な形で露呈していた。彼は自分の違法行為や不用意な行為で大きな問題を引き起こしても、全く反省せず罪悪感も抱いていなかった。
そして今回も、ニュートの身勝手ぶりは相変わらずだ。

ニュートは前作の体験があるのだから、クリーデンスを放置しておいたら危険だってことは分かっているはずだ。
そして前作で起きた事件を考えれば、少しは責任を感じてもおかしくないのだ。
しかしニュートは魔法省からの捜索依頼に反発し、冷たく拒絶する。せめて申し訳なさそうに断るならともかく、「魔法省は間違っている」ってな感じで批判的な態度を取るのだ。
前作にも増して、ニュートは愛せないどころか不愉快な主人公になっている。

「たくさんの魔法動物が登場し、ニュートと一緒に活躍する楽しいファンタジー」なんてのは、この作品には無い。
これも前作で露呈していたことだが、魔法動物の存在意義など皆無に等しい。
ニュートが自宅で魔法動物の世話をするシーンも、まるで必要性が無いモノだ。でも、そういうシーンでも用意しないと、魔法動物を出せるチャンスが乏しいのだ。
仮に魔法動物の登場シーンを全てカットしたとしても、何の問題もなく物語は成立してしまうのだ。

まだ前作では「ニュートが逃げ出した魔法動物を捜索する」という作業があったが、今回は「グリンデルバルドやクリーデンスを見つけて 悪事を阻止する」ってのが目的であり、魔法動物を巡る話ではない。そしてニュートが敵と戦う上でも、魔法動物の必要性は薄い。
本来はニュートと魔法動物の物語であるべきなのに、初期設定に対する物語の方向性を間違えているとしか思えない。
連載漫画の人気が出なくて途中で路線変更するケースは良くあるけど、このシリーズはJ・K・ローリングが全権を掌握しているわけだからね。
つまり自分で用意した設定を、充分に活用していないだけなのだ。

「ハリー・ポッター」シリーズでは話が進むにつれて、暗くて重いテイストが増していった。このシリーズでも、同じ方向へ進んでいる。
しかも「救い」とか「希望の光」ってのが、少なくとも今回は全く見えて来ない。なんせ問題は何一つとして解決しておらず、全てを食べ残したままで「第3作へ続く」って形になっているのでね。
もちろんシリーズは続いて行くので、それも仕方がないのかもしれない。
でも、一応は区切りを付けて、何かしらの希望を見せてほしいんだよなあ。

前作にも増して、ニュートは主人公としての魅力が乏しい。ノー・マジであるジェイコブの方が、主人公にふさわしいんじゃないかと思うぐらいだ。
さらに厄介なのは、「主人公としての」という冠を抜きにしても、ニュートにはキャラクターとして引き付ける力が弱いってことなのだ。
ダークサイドに落ちるクリーデンスやクイニーの方が、遥かに深みや奥行きを感じさせるキャラになっている。
あくまでも「ニュートより深みや奥行きがある」ってだけで、クイニーはヘドのでるようなクソ女に成り下がっているけどね。

ニュートは闇祓いやイギリス魔法省がクリーデンスを始末しようとしていることを、厳しく批判する。
だから協力しないのは分かるけど、じゃあクリーデンスを守るために積極的に動くのかというと、そういうわけではない。
彼はパリに行くが、それはクリーデンスを守ったり見つけたりするのが目的ではなく、ティナと会うのが目的だ。
ティナと再会した後には「クリーデンスを保護する」と言い出しているが、そこも「ティナに気に入られたいから」ってのが見えちゃうし。

「リタの弟がクリーデンスなのでは」ってことで、話を引っ張っている。リタがクリーデンスと対面するシーンでは、テセウスに「こんな経緯がありまして」と語らせ、回想シーンも使って説明する。
ところが、この2人は姉弟ではないのだ。
テセウスが「クリーデンスはリタの弟だ」と断言した直後、リタが「もう弟は死んでいる」と言い、真相を説明する。彼女は最初から、クリーデンスが弟じゃないことを知っていたのだ。
そうなると、「今までの話は何だったのか」と言いたくなってしまうぞ。

完全ネタバレを書くが、そんなリタは終盤にグリンデルバルドと戦って命を落とす。
その死を悲劇として描いているつもりなんだろうけど、「ただの無駄死に」にしか思えない。
彼女がグリンデルバルドに挑んでいる間に、周囲にいるニュートたちが逃亡していれば、その死も意味があると思うのよ。でも、その場に留まっているからね。ニュートたちが脱出するのは、リタが死んだ後だからね。
なので、「リタが命懸けでニュートたちを逃がした」という形が成立してないいのよ。

(観賞日:2021年6月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会