『ファミリー・マン ある父の決断』:2016、アメリカ&カナダ

デイン・ジェンセンはシカゴのブラックリッジ社で、ベッドハンターとして働いている。彼は様々な会社に電話を掛け、自信に満ちた態度で相手を勧誘する。デインは妻のエリース、長男のライアン、長女のローレン、次男のネイサンと暮らしている。彼はライアンのお腹が出ていることを知り、「チョコレートの食べ過ぎじゃないか」と運動するよう勧める。エリースはデインに、ライアンを病院で診てもらうつもりだと話す。デインは単なる肥満だと思っていたが、エリースは疲労感が強くて痣が出ていることを教えた。
出社したデインと同僚のリン・ウィルソンは社長のエド・ブラックリッジに呼ばれ、「契約を取れなかったら、コスト削減のためにボブをクビにする」と通告される。「どうやって?」とリンが質問すると、エドは「しょうがないな。見てなさい」と立ち上がってボブの元へ行く。リンはデインに、「エドは金の亡者。稼げるなら性別や人種、年齢はお構いなし」と言う。エドはボブに、「3か月間で契約がゼロか」と告げる。「妻に離婚されて、子供が2人いて」とボブが釈明すると、彼は「報酬に見合う成果のために、時間を惜しまないと約束しろ。やる気を出せ」と凄んだ。
エドはデインとリンの元へ戻り、「これで休日も出勤するだろう。だがボブが辞めたら注意しろ。ウチの顧客に手を出せば、競売行為で訴訟を起こして徹底的に潰す。家族もろとも路上生活に追い込む」と語った。彼は2人に、プラハへ旅行に行くことを話す。それから彼は、「君たちを後継者候補にする育成計画も終盤だ。すぐに実権は渡さないが、今期の成績で勝った方が隣の個室を使う。新しい統括部長は年初に発表する」と述べた。
翌日、デインは早朝にライアンを起こし、ランニングに連れ出した。出勤した彼は、部下のサムナーを呼んだ。サムナーの成績が悪いことから、デインは電話での話し方について指導した。彼はサムナーに、ルー・ウィーラーを使うよう指示した。59歳のルーは、ずっと仕事が決まらずに困ってデインに相談していた。デインはルーの利用法について、「年齢を書き換えれば使える」と教えた。サムナーが「面接でバレます」と言うと、デインは「面接は受けない」と告げた。
デインはサムナーに、「ルーは曳光弾だ。電話が終わったらルーを情報源にするんだ。企業の動向や面接の質問内容を、後ろに控えている奴らに共有するんだ」と説明する。「それはちょっと」とサムナーが難色を示すと、彼は「ヘッドハンターだろ。厳しい業界だ。後はお前次第だ。嫌なら去れ」と説いた。デインはルーに電話を掛け、「面接はダメだった。他に決めたらしい」と告げる。落ち込むルーに、彼は新しい担当者としてサムナーを紹介した。ルーは妻のバーナディンに、また面接に至らなかったことを話す。バーナディンは全く気にしておらず、一緒にいて幸せだと告げた。
デインはリンへのライバル心を剥き出しにして電話を掛けまくり、強引な弁舌で契約を勝ち取った。帰宅した彼はエリースから「ライアンが心配。様子が変なの」と相談されるが、「息子が病気のはずがない」と軽く告げる。デインは妻にフェラチオを要求し、「新しいことを試したい。いつも同じで退屈なんだ」と述べた。「満足してないのね」と言われた彼は、「もっと上に行きたい。セックスだけじゃない。仕事も家も、人生もだ」と語る。「だったらセックス以外の時間も大切にしましょう」とエリースが求めると、デインは「くだらない」と賛同しなかった。
ハロウィンの日、エリースはデインに電話を掛け、子供たちのために早く帰宅するよう頼む。しかしデインは面倒そうに「電話が入った」と言い、早々に電話を切った。月末最終日の成果をサムナーに尋ねた彼は、「ブライアン・カーティスが部品メーカーに内定しましたが、新聞の求人でヘイズ製造にも内定が」と聞いて苛立った。「引っ越したくないと言っているので、ヘイズに決定です」とサムナーが話すと、デインは「電話して祝福しろ。ヘイズの工場責任者の情報を聞き出せ。そして、すぐに電話を切れ」と命じた。
デインはサムナーに、契約を決まったことを知らせる鐘を鳴らすよう指示する。サムナーが困惑しながらも指示に従うと、デインは密かにヘイズ製造の人事担当者へ電話を掛けた。彼はFBI捜査官を詐称し、カーティスが性犯罪者だという偽情報を知らせて内定が取り消されるように仕向けた。デインが仕事を終えて帰宅するとハロウィン・パーティーは終わっており、ライアンは寝室でビルの絵を描いていた。デインが「また建物か」と話し掛けると、ライアンは「将来の夢なんだ。設計に興味がある」と語った。彼は「シカゴ美術館に行きたい。美術のジーン先生がシカゴの好きな建物を教えてくれた」と言い、リストを見せた。
デインが夫婦の寝室へ行って寝ようとすると、エリースが「ハロウィンだったのに。待ってたのよ」と責める。「外せない電話があった。ハロウィンなんて子供がお菓子を貰うだけじゃないか」とデインが疎ましそうに言うと、「いつも仕事のことばかり考えてる。後悔する時が絶対に来るわ」とエリースは声を荒らげた。デインは腹を立て、「家族のために働いてる。俺が稼いでいるから、君は家にいられる。楽な仕事じゃないんだぞ」と言う。しかし彼の言葉にエリースが吹き出し、険悪な空気は解消された。
デインとエリースはライアンを病院へ連れて行き、専門医のシンに診てもらう。シンは2人に、「掛かり付け医の判断は正しかった。急性リンパ性白血病です」と告げる。動揺して信じようとしないデインとエリースに、彼はライアンの状態が深刻だと教えた。入院することになったライアンは、心細そうな表情を浮かべた。失職から1年が過ぎたルーは、バーナディンが離れて暮らす娘との電話で話すのを聞いた。「私の薬代は車代と同じぐらい。お父さんは頑張ってるわ。でも不安になる。グレッグによろしく。必ず返すって言ってね」と喋る妻の言葉を聞いて、彼は気付かれないよう立ち去った。
デインはローレンから「ライアンとママはいつ帰るの?」と訊かれ、「しばらく病院に泊まるんだ。お婆ちゃんが来る」と答えた。会社で遅くまで仕事をしていたデインは、ルーからの電話を受けた。「連絡が無かったから掛けたんだ。技術職の求人があれば、お願いしたいと思って」とルーが言うと、デインは「技術職じゃ俺に手数料は入らない」と告げる。「家族の問題で立て込んでるんだ」と彼が口にすると、ルーは心配して「話してみるか。子供なら3人いる。孫は2人だ。力になれる」と言う。「大丈夫だ。サムナーを捕まえて朝一番に対応させる」とデインが話すと、彼は「急がなくてもいい。俺のことは心配するな。家族を大切にしろ」と語った。
クリスマス、プラハのエドがデインに電話を掛けて来た。現在までの成績を問われたデインが答えると、「酷いな。ウィルソンに負ける気か」と告げた。ライアンの病状を訊かれたデインは、「回復してきました」と答えた。リンはデインに、「シン医師を調べた。超大物よ」と教えた。仕事を終えて病院へ赴いたデインは、シンから「化学療法の初期反応が良くありません。遺伝子治療を考えましょう」と提案される。治療法の説明を受けたデインが抗議すると、シンは「治療に交渉は無益です」と述べた。
学校へライアンの荷物を取りに出掛けたエリースは、息子の机に他の子供たちの荷物が置かれているのを見た。彼女は荷物を乱暴に退かし、ヒステリックに喚いてしまった。帰宅した彼女は、ライアンの建物リストに気付いた。彼女はデインを呼び出し、ライアンをリストの建物を巡るよう促した。デインはライアンを連れてルッカリービルへ行くが、仕事の電話を受けると迷わずに優先した。しかしライアンがロビーへ移動して立っている様子を見ると、彼は電話を切る。デインはライアンの隣へ行き、大きく息を吸う彼の真似をした。
別の日、またデインと出掛ける約束をしていたライアンは、父が病室へ来るのを待った。なかなかデインは来なかったが、ようやく姿を見せたのでライアンは笑顔になった。2人はトリビューンタワーへ行き、デインは仕事に戻った。感謝祭の日、親族との食事会に参加したデインは、エドからの電話で中座する。エドは今月の見込みについて聞き、「出世する気が無いな。あと4週間ある。勝つか負けるかは売り上げ次第だ」と告げた。
エリースから「エドより家族でしょ」と非難されたデインは、「出世が懸かってる。仕事なんだ」と反論した。「聞き飽きた」と言われたデインは憤慨し、「仕事を辞めれば満足か。だったら君の仕事を探しに行こう。10年も専業主婦で、市場は見向きもしないぞ。誰が金を払ってるんだ」などと嫌味っぽく言い放った。彼はライアンの前で、「仕事が不調だ。10月は良かったが、今月はシカゴの建物を回ったから負けた。12月に懸けてる。年末年始は忙しい」と話す。エリースは幻滅した様子で、「分かってないのね。貴方の言う通り、私に就職できるスキルは無いわ。でも優先順位は間違えない」と述べた。
仕事に戻ったデインはバーナディンに電話を掛け、ルーに別の会社からスカウトの連絡があって面接に言っていることを知る。技術管理職のポストだと聞いた彼は、祝福しているように装った。すぐに彼は人事担当者へ連絡を入れ、別の技術管理者を推薦することでルーの採用を潰そうと目論んだ。デインとエリースは病状の悪化したライアンを車に乗せ、リグレー・ビルを見せた。クリスマスの社内パーティーに出席したデインはリンを見つけ、「勝負はこれからだ」と言う。しかし彼は20万ドルも負けており、見込案件の半分が嘘であることもリンに気付かれていた。ライアンは病状が急変し、一命は取り留めるが昏睡状態に陥った…。

監督はマーク・ウィリアムズ、脚本はビル・ドゥビューク、製作はニコラス・シャルティエ&マーク・ウィリアムズ&クレイグ・J・フローレス&アラン・シーゲル&パトリック・ニュウォール、製作総指揮はビル・ドゥビューク&ジョナサン・デクター&ダン・ベーカーマン&ダニエル・ロビンソン、撮影はシェリー・ジョンソン、美術はシャリーズ・カーデナス、編集はトム・ノーブル、衣装はクリストファー・ハーガドン、音楽はマーク・アイシャム。
出演はジェラルド・バトラー、グレッチェン・モル、ウィレム・デフォー、アルフレッド・モリーナ、アリソン・ブリー、アヌパム・カー、ダスティン・ミリガン、マックスウェル・ジェンキンス、ジュリア・バターズ、ミミ・カジク、ドウェイン・マーフィー、キャスリーン・マンロー、メイコ・ニューエン、サディー・マンロー、スティーヴン・ボガート、ティム・ホッパー、ビル・レイク、スコット・エッジコーム、キャロライン・ヘフェーナン、ロメイン・ウェイト、シエラ・ウッドリッジ、ラッセル・ユエン、サミュエル・ファラチ、ジム・アナン、ジミー・シュラグ、ジェシー・グリフィス他。


『ジャッジ 裁かれる判事』『ザ・コンサルタント』のビル・ドゥビュークが脚本を務めた作品。
『マリス・イン・ワンダーランド』や『パーフェクト・ヒート』など数々の作品にプロデューサーとして携わってきたマーク・ウィリアムズが、初監督を務めている。
『ヘッドハンター・コーリング』という邦題でテレビ放送されたこともある。
デインをジェラルド・バトラー、エリースをグレッチェン・モル、エドをウィレム・デフォー、ルーをアルフレッド・モリーナ、リンをアリソン・ブリー、シンをアヌパム・カー、サムナーをダスティン・ミリガン、ライアンをマックスウェル・ジェンキンスが演じている。

粗筋でも書いているように、デインとエリースには3人の子供がいる。
しかしライアンとローレンは主要キャラとして何度もデインたちと絡むが、ネイサンは全く存在感が無い。最初の家族シーンから姿は登場しているが、「そこにいる」というだけだ。
まだ幼くてマトモに話すことも出来ないので、デインとの会話シーンを用意することは出来ないという事情はある。
ただ、ホントに存在意義が見えないので、「だったら要らなくねえか」と言いたくなる。彼を除外しても、困ることなんて何も無いのよね。

この映画は、ザックリ言うと「ワーカリックで家庭を顧みなかった主人公が、家族の大切さに気付いて生活を改める」という話である。
この簡単な説明を聞いだけで、「おやっ、どっかで聞いたような話だなあ」と思った人は少なくないんじゃないだろうか。
それは決して、「本当は体験していないのに体験した気がする」というデジャヴュなんかではない。ほぼ間違いなく、貴方はどこかで同じプロットの映画を観賞しているのだ。
なぜなら、それはハリウッド限らず世界中の映画界で、腐るほど使われてきたプロットだからだ。

使い古されたプロットを使う場合、そこで勝負することは出来ない。それどころか、「見たことのあるパターン」という部分がマイナスに作用する可能性は高い。
なので、他の部分で「この映画ならでは」のセールスポイントを用意し、同じプロットを使った他の映画との違いを付ける必要がある。
具体的な方法としては、例えば「意外性」ってのが挙げられる。
あるいは、登場人物の設定に工夫を凝らしたり、ものすごく丁寧に描いてドラマを充実させたりと、幾つかの方法が考えられる。

さて、この映画はどういう形でセールスポイントを用意し、同じプロットを使った他の作品との違いを付けようとしたのだろうか。
「特に何も無い」というのが、その答えになる。
いや、ひょっとすると製作サイドとしては、「ここがセールスポイント」「ここが違い」という要素を用意したつもりなのかもしれない。
しかし実際に観賞した限りでは、それは全く見えて来ない。
結果として観客に伝わって来ない以上、「セールスポイントや違いは何も無い」と言わざるを得ないのである。

あえて違いを探すとすれば、「主人公の好感度が著しく低い」ってことが挙げられるだろう。
ワーカホリックでも、家族を大切にする意識は持っているというケースもある。
例えば大事な約束をドタキャンしてしまい、後で家族に謝罪するシーンがあるような映画を見たことがあるかもしれない。
仕事に燃えているが、「家族が後回しになっているだけで大切にする気が無いわけじゃない」という描き方をするのが、この手の作品では定番だ。
しかし本作品は、そこが大きく異なっている。

デインは家族を大切にする気持なんて、これっぽっちも持っていない。子供たちを可愛がる様子は見せるものの、それは表面的でしかない。
だからエリースからライアンの様子が変だと言われても、まるで気にせず「ただの肥満」と決め付ける。
エリースに対しては、セックスの相手としか考えていない。そのセックスでは「マンネリだから新しいことを試したい」と言うが、それも自分本位でしかない。相手の都合は全く考えていない。
そして「セックス以外の時間も大切にして」と頼まれても、まるで耳を貸さない。

そして仕事の部分でも、やはりデインはクズ野郎だ。
単純に「仕事に燃えている」というだけでなく、「成績を上げるためなら卑怯なことも平気でやる」という奴なのだ。
彼はルーが再就職できずに困っていること、面接がダメだと聞かされる度に落ち込んでいることを知っているが、罪悪感なんて微塵も抱かない。自分の成績を上げるために、都合良く利用できる捨て駒としか考えていない。
彼は家族に対しても、ルーに対しても、思いやりや誠実さを微塵も持ち合わせていない。心の無い男なのである。

「仕事が多忙な中で、つい家族に冷たくしてしまう」とか、そういうことなら分からんでもない。上司からプレッシャーを掛けられ、苦悩しながらもルーを利用してしまうってことなら分からんでもない。
しかしデインは、自らの意志で仕事に邁進しているのだ。自分の考えでルーを利用しているのだ。
上司からの圧力で追い込まれているわけでもなければ、多忙な中で正常な判断力を失っているわけでもない。
彼は至って冷静にルーを利用し、至って冷静に家族への愛を失っているのだ。

「家族への愛を失っている」と書いたが、そもそも「以前は家族への愛があったのか」ということさえ疑問に感じるほど、デインには愛情のカケラも見えない。
たぶん設定としては、「以前は家族を愛していたが、次第に薄れていった」ということなんだろう。エリースの台詞からすると、そういうことなんだろうってのは推測できる。
しかし、実際の描写を見ている限り、その設定とは合致していない。
例えるなら、デインは「アンドロイドが人の心を知って云々」みたいなキャラ描写になっているのだ。

ハロウィンの日、エリースに非難されたデインは、「家族のために働いてる。俺が稼いでいるから、君は家にいられる」と告げる。
それは絶対に言っちゃいけない台詞だけど、それでもホントに「家族を愛しているから、家族のために頑張って働いている」という意識が明確に見えて来るなら、まだ理解できなくもない。
しかしデインが仕事をしている様子を見ている限り、「家族のため」という意識があるようには到底思えない。
その前に彼が「もっと上に行きたい」と言っていたが、そこにしか意識が無いようにしか思えない。

そのシーン、デインが「必死に働いて悪者にされるなら、喜んでなってやる。哀れなヒーローだ」などと言う辺りまでは、ずっと夫婦の間に険悪な空気が漂っている。
ところがデインが「人気者なんだ」と口にするとエリースがプッと吹き出し、2人は笑って抱き合う。
そこの和解は、無理があるように感じるなあ。そんなに簡単にデインを許しちゃダメでしょ。
ハロウィンに戻らなかったことを彼は全く反省していないし、その主張も全面的にアウトだろ。
そこは口論のままで終わっていいのよ。

そこからシーンが切り替わると、デインとエリースがライアンをシンに診せた結果を聞いている様子が描かれる。
これは構成として、大いに違和感がある。いつの間にデインは、「ライアンを専門医に診てもらう」ってことを了解したのか。
彼は「ただの肥満」としか思っていなかったはず。ハロウィンの夜、ライアンの足にある痣には気付いているけど、「だから診てもらおう」と思う経緯は何も無かった。そしてエリースが、「やっぱりライアンを診てもらうべき」と彼に話すシーンも無かった。
いや、もう冒頭の段階で「病院で診てもらう」とは言っていたけどさ、そこから随分と経っているんだし、デインも同行するんだし、改めて「診察してもらう」という意志を示してデインに了解を得る手順は用意すべきでしょ。

ライアンが白血病で入院しても、デインの仕事優先主義は全く変わらない。
これが「高額な治療費を工面するためには金が必要」ってことで仕事を詰め込むなら分かるけど、それ以前と何も変わっちゃいないからね。
息子が白血病で、しかもエドへの説明とは裏腹で全く回復に向かっていないにも関わらず何も生活を変えようとしないんだから、とことん心が腐り切っているんだよね、デインって。
一応は「家族を思っています」ってのを匂わせる描写も入るけど、見事なぐらいの焼け石に水だわ。

建物リストを見つけたエリースは病室へデインを呼び、ライアンと一緒に巡るよう促す。
ただ、ここでデインがライアンのために仕事より建物探訪を優先するのは、「なんか急に変わったな」という違和感が強い。
「息子が病気になったので考え方が大きく変化した」ってことかもしれんが、デインが反省して考えを改めたようには思えないし。
デインの心の変化を丁寧に表現できていないから、違和感や不自然さでギクシャクしちゃってんのよね。

っていうかさ、ホントはライアンが急性リンパ性白血病だと通告された時点で、もっとガラリと大きく変化すべきじゃないかと思うのよ。
ところがデインは相変わらず仕事を優先し、ライアンへの一定の配慮は見せるものの、「全てを息子のために捧げよう」という意識は全く持っていない。
ライアンが昏睡状態に陥り、エリースから激しく批判されて、ようやく本気で「ライアンのために」という意識が芽生える。
そこまでの犠牲が無いと本気で父性に目覚められないって、そりゃ父親失格じゃないのかと。

(観賞日:2020年2月29日)

 

*ポンコツ映画愛護協会